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ジャニーズ「嵐」のチケットが入手難で、高値転売がなされる。これへの対策として、入場時の「顔認証」による本人確認が導入される、と話題になった。
1万円のチケットが数十万円――。音楽ライブ市場が拡大するなか、人気コンサートのチケットがネット上で高額転売される事例が後を絶たない。音楽業界は、入場時の「顔認証」による本人確認を導入し、対策に乗り出している。
23日に福井県で始まる人気アイドルグループ「嵐」の全国アリーナツアー。ファンクラブ(FC)向けのメールで2月、入場時に「顔認証」で本人確認することが告知され、ファンの間に衝撃が走った。
ネット上には「ついに嵐も!」といった書き込みが相次いだ。
嵐のチケットは「日本一入手困難」とも言われる。ファンらによると、申し込めるのは基本的にはFC会員のみで、抽選で購入できる人が決まる。
チケット争奪戦が過熱するなか、同事務所は申込時にメールで顔写真を送信することを求め、当日の入場時に顔認証を行うと公表。
( → 朝日新聞 2016年4月7日 )
本項は顔認証をテーマにしている……と思うかもしれないが、そうではない。物事の隠れた本質を明かすことが目的だ。
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まず、次の疑問があるはずだ。
「高値転売がなされるのであれば、高値転売がなされないようにすればいい。そのためには、主催者がもともと高値で販売すればいい」
たとえば、もともと1枚3万円で販売する。この値段で正規に販売すれば、買える人の数は激減する。その一方で、「どんな高値でも買いたい」という人はちゃんと買えるようになる。というわけで、3万円ぐらいの価格を付ければ、うまく需給が均衡するはずなのだ。(もし売れ残るようなら、次回は2万円ぐらいにすればいい。もし足りないなら、次回は4万円ぐらいにすればいい。)
さらに、である。常識的には、安値で売るよりは、高値で売る方が儲かるはずだ。転売がなくなるだけでなく、利幅も増えるのだ。いいことずくめだろう。
ではなぜ、そうしないのか?
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なぜ、高値販売しないのか?
答えを言おう。実は、高値販売しないのは、高値販売しない方が儲かるからだ。
そう聞くと、文句を言う人も出てくるだろう。
「そんなバカな! 高値で売るより安値で売る方が儲かるなんてことが、あるはずがない」
しかし、あるのだ。ここには、からくりがあるのだ。
比喩的に言おう。スマホでは「実質0円」というふうに超安値で販売する。なぜか? 安値で販売したら、損するのではないか? いや、安値で販売すると、ボロ儲けできるのだ。そのわけは、機械は0円でも、毎月の契約料が高額だからだ。つまり、右手では0円にするが、左手では超高額を請求する。なのに人々は、右手にばかり目を奪われて、左手を見失う。そのせいで「安値だ」と思い込む。
というか、通信会社がそういうふうに錯覚させる。右手ばかりを見せて、左手をこっそり隠す感じにする。こうして「実質0円でお得ですよ」と見せかける。
嵐のチケット販売も同様だ。右手では「お買い得の価格ですよ。安いですよ。数十万円の価値のあるチケットがお安く買えますよ」と見せかける。その裏で、左手ではがっぽりと別の料金を請求する。
これがジャニーズのインチキ商法だ。
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では、「左手ではがっぽりと別の料金を請求する」というのは、何のことか? それは、次のことからわかる。
「チケットを入手するためには、ファンクラブに加入しなくてはならない」
実は、建前上は、ファンクラブ以外の一般枠もあるのだが、有名無実であって、一般枠なんてものは実質的にはないも同然だ。
「FC会員優先」ということで、「一般枠」も設けられる可能性はありますが、…… 一般枠だけでは当選するのは奇跡的といえるほどかなり厳しいです。
一般枠は電話先着抽選で、電話はかけてもかけても全然繋がらないことで有名です。なので本当にかなりの気合と運がないと絶望的といっても言い過ぎではないです。
( → 出典 )
というわけで、チケットを入手するには、ファンクラブに入会するのが必須だ。
そのファンクラブに入るには? 入会金と年会費が必要だ。
入会金1,000円+年会費4,000円 合計5,000円(税込)
( → ジャニーズ公式 )
では、この年会費を払えば、チケットを入手できるか? いや、年会費を払っても、チケットを入手できる確率は低い。
150万人以上もいる嵐のファンクラブ会員なのに、嵐アリーナツアー2016は、たった17万1,000人のみ
( → 嵐アリーナツアー2016チケット倍率は )
いっぱいあるコンサートのどれか一つでもチケットがほしい、と思っても、チケットが手に入る確率は 10分の1ぐらいだ。
ここから、重大なことがわかる。こうだ。
「主催者は、チケットを入手できない人からも、年会費の名目で、多大な金を入手できる」
わかりやすく言うと、こうだ。
「主催者は、チケットを購入できる人にはチケットを安値で販売するが、チケットを購入できない人からは、チケットを一枚も売らないまま、年会費をがっぽりと徴収する」
まとめて言うと、次の差だ。
・ 1人にチケットを 40,000円で売る
・ 10人から 年会費を 4,000円取る(合計 40,000円)
というわけで、「1人にチケットを 40,000円で売る」という高値販売のかわりに、「10人から 年会費を 4,000円取る」というふうにしても、どっちにしても同じ金額を取れるのだ。しかも、である。後者の場合は、さらに、当選者1人からチケット代を徴収できる。その額は 9,500円だ。
→ 嵐 2016年アリーナツアーのチケット代が9500円に
年会費が 10人分で 40,000円。チケット代が1人分で 9,500円。さらに入会金の分が若干ある。合計して、50,000円を突破する。となると、「1人にチケットを 40,000円で売る(一部は売れ残り)」というよりは、ずっと儲かる計算だ。
こうして、「チケットを安値で販売しても、かえって儲かる」という商法が成立する。右手では安値で販売しても、左手でがっぽり徴収すれば、結局は大儲けできるのだ。
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さて。以上の方法は、商売としては合理的である。次のことがあるからだ。
「1人にチケットを 40,000円で売る(一部は売れ残り)」というのにすると、売れ残りが生じるので、チケットの飢餓感がない。一方、慢性的にチケット不足にしておくと、チケットの飢餓感が生じるので、ファンはいっそうのめりこむ。
こうして、ファンを一種の中毒症状に落とし込むわけだ。「うまくたらしこむ」という感じだ。
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だが、ここまで見ると、これはもはやギャンブル中毒の症状に似てきている、と言えるだろう。パチンコやバクチの中毒症状と同様だ。
実際、バドミントンの選手も、バクチにのめりこんで、1000万円もつぎこんだ。
→ “闇カジノ”60回で1000万円…バドミントン2人謝罪
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実を言うと、嵐のチケットもまた、ギャンブルと同様なのである。次のことがあるからだ。
「 10回に1回当たる、というぐらいの当選確率で、チケットを販売する」
これはもはや、ギャンブルそのものだ、と言えるだろう。当選したときにもらえるものが、現金でなくチケットだ、という点が異なるだけだ。それ以外の点は、完全にギャンブルだ。
要するに、主催者(ジャニーズ)がやっていることは、コンサート業ではなくて、「コンサートのチケットを当選品とする賭博業」なのである。
この賭博業によって、ファンを賭博漬けにして、ボロ儲けしているわけだ。当選者には、数十万円もの価値のあるものを安値で販売すると見せかけて、その裏では、落選者から多大な金を徴収しているわけだ。落選者は「ギャンブルですってしまった」という形になる。
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このような賭博業は、正当なものとは見なされない。それは、バドミントンの選手が処分されたことかもわかる。また、巨人の選手が処分されたことからもわかる。
にもかかわらず、嵐のコンサートでは、それと同様のこと(賭博業)が、白日の下で堂々となされているのだ。それというのも、人々が「これは賭博業だ」と気づかないからだ。
そこで私が、物事の本質を指摘するわけだ。「これはギャンブルだ」と。
[ 付記1 ]
では、どうすればいいか? 簡単だ。「ファンクラブ限定」というふうにはしないで、すべてを一般販売にすればいい。これなら、ギャンブルにはならない。ただの抽選だ。
ギャンブルと、ただの抽選とは、どこが違うか? 「ハズレの場合にも損をしない」のならば、ギャンブルではなくて、ただの抽選だ。一方、「ハズレの場合には損をする(金を取られる)」のであれば、ギャンブルだ。
ジャニーズの場合は、年会費を取るので、ギャンブルとなる。年会費を取らなければ( or ファンクラブ限定でなければ)、ただの抽選となる。
( ※ ま、それだと、ファンクラブ収入を失って、主催者が大損する。だから、その場合には、チケットは妥当な水準まで高額化するだろう。)
[ 付記2 ]
本項では、違法であるかどうかは問わず、「悪徳である」という趣旨で述べている。
一方、法的に違法であるかどうかは、ここでは問題としていない。
改めて法的に考えると、法的には、違法ではないかもしれない。(形式的に違法要件を満たしていないのかも。法が不備だということになる。)
ただ、その場合は、法的には、違法ではないので、脱法ギャンブル(合法ギャンブル)ということになるだろう。
これらのことは、SNSゲームの「ガチャ」も同様である。次項を参照。
→ ギャンブルは悪か?
[ 付記3 ]
チケットの転売が容易になされるようになると、換金性が高いということで、このギャンブルは違法になるだろう。
とすると、主催者が顔認証を導入するのは、「換金性が高い」という状況をなくすためだ、と判断できる。つまり、脱法行為が違法行為になることを阻止するためだ、と判断できる。
つまり、主催者が顔認証を導入するのは、何らかの善なる行為ではなくて、自分の悪徳行為が違法行為にならないため(i.e. 自分が逮捕されないため)である、と見なせる。
あこぎな業者のやりそうなことだ。
すごい商売と認識しました。知らなかった。
真理とは隠されているものなのか。
嵐のファンクラブになると、コンサートの優先獲得権以外にもいろいろ特典がついてくるわけで。
・年4回のファンクラブ会報
・誕生日のバースデーメッセージ
・事務局からの嵐情報メール
・番組観覧募集の申し込み
・メンバーそれぞれの自筆メッセージが印刷された嵐の写真年賀状
・2009年には10周年アニバーサリー記念品
http://trend-777happiness.com/arashi-kaiinn-tokuten-4861
ファンクラブ会報の内容は・・・
「松本潤の好奇心いきあたりばったり」
「大野智の美術空間めぐりアートな散歩道」
「二宮和也の男子カメラおひとりさま写友会」
など定期的に続けられている個人の企画もあったり、
メンバーの座談会もあったり、 盛りだくさんだそうで。
熱烈なファンからすれば、会員限定のファンクラブ会報に4000円以上の価値を見いだすかもしれません。
1/10の確率のコンサートの優先獲得権のみが目当てでは、1万人を騙すならともかく200万人近くもの人をファンクラブ会員には到底できないと思いますよ。それ以外の特典にも魅力があるからこそ、200万人近くの人がファンクラブ会員になるのでしょう。
それは私も考えたけど、たかが知れている。コスト的には年に500円にもならないと思える。適正価格で言えば、年 1000円でしょう。残りの 3000円ぐらいが過剰利益に当たる。
> 1/10の確率のコンサートの優先獲得権のみ
「のみ」だとは言っていません。「主要目的」だということ。
仮に、副次的なものにすぎない会報だけがあって、コンサートの優先獲得権なしなら、会員数は 10分の1ぐらいに激減するだろう。
ちなみに AKB48 なら、一般男性 3,100円/一般女性 2,100円/ で、ライブコンサートを見られる。
→ http://j.mp/25U4IRR
乃木坂でも、6000円で済む。
4000円も払って、ただの会報を買うなんて、お金がもったいない。
→ http://ashikagunso.blog.jp/archives/55560892.html
※ ただし、悪徳さや賭博性は、指摘されていない。
懸賞の一種と考えると違法ではない。
しかし、チケット代は正価9500円でも、高価格で転売されているらしい。
4000円の20倍は8万円なので、実勢価格がそれ以上であれば違法の可能性が生ずる。
顔認証などを使って転売を防止するのは、実勢価格を表に出さないようにするためだったのか。
大変賢いやり方だ。違法にならないようよく考えている。