2016年03月05日

◆ スキーバス事故の賠償金は?

 軽井沢のスキーバス事故があったが、死者 15人の賠償金はどうなるか? たぶん会社側からは1円も支払われないことになるだろう。 ──

 死者 15人の賠償金はどうなるか? ── これに興味があったので、調べてみた。

 (1) 法的責任

 法的には、基本は運転手個人の責任だが、バスの運行会社とツアー会社(旅行会社)が連帯責任を負うそうだ。弁護士の解説がある。
  → スキーバス転落事故で多数の死傷者 賠償責任は誰が、どのように負うのか?

 これを受けてのことだろうが、遺族団が結成され、会社側に賠償金を請求するそうだ。
  → 軽井沢スキーバス事故で遺族会結成

 (2) 関越自動車道のツアーバス事故

 上記の事故では、まだ話は始まったばかりだから、賠償金がどうなるかはわからない。そこで、過去の似た事例を見よう。関越自動車道のツアーバス事故があった。( → Wikipedia
 この件では、遺族は会社側に 7000万円を請求した。
  → 約7千万円の損害賠償を求めて提訴
 しかしながら、バス会社は、自社では金を払わず、すべてを保険金だけで済ませようとしている。
  → 関越道バス事故 陸援隊「補償は損保に一任」
 ここで、会社側は「対人、対物無制限の任意保険で補償する」と言っている。「これでは補償金は下りまい」という気がしたのだが、調べてみたら、対人の保険金で同乗者の保険金は下りるようだ。
  → 弁護士谷原誠の法律解説ブログ
  → 弁護士ブログ:群馬県関越道ツアーバス事故説明会・賠償問題
  → 同乗者がケガをした場合には「自賠責保険」「対人賠償保険」も利用できる
  → 対人賠償と搭乗者または人身傷害の両方から保険金がもらえます
 というわけで、保険会社から保険金は出るようだ。

 一方、ツアー会社やバス会社からは、金が出るか? 通常、保険会社から保険金が支払われる場合には、ツアー会社やバス会社は金を払わずに済むようだ。(そのために保険料を払ってきた。) だから、結果的には、どっちみち、会社側は金を払わずに済むようだ。
 ただ、それとは別に、この事故では、会社はどちらも破産してしまった。
  → 陸援隊(運行会社)は倒産
  → ハーヴェストホールディングス(ツアー会社)は破産
  → 破産管財人の弁明
 というわけで、会社が倒産してしまったので、関越自動車道の事故では、遺族は会社側からは金を1円ももらえないことになったようだ。( ※ ただし債権があるので、少しはもらえたかも。)
 ま、どっちみち、保険で対応してもらうことになりそうだ。

 (3) 今回の会社は? 

 関越自動車道の会社は、どちらも破産してしまった。では、今回の会社は、どうか?
 調べたところ、どちらもすでに事業停止しているとわかった。
  → キースツアーの公式サイト
  → イーエスピーの公式サイト
 ツアー会社も運行会社も、すでに事業停止している。ま、当然だろう。莫大な債務(賠償金の支払い)があるので、大幅な赤字となるので、倒産はほぼ確実だからだ。莫大な賠償金を払って赤字になるよりは、黒字のままさっさと黒字倒産させてしまえば、手元にある金を社内で分配することができる。こうすれば、賠償金の支払いから逃げおおせるわけだ。
 逆に言えば、被害者(遺族)の側は、会社側からは1円ももらえないことになりそうだ。

 一方、保険金はどうか? 今回の事故では、(関越自動車道の事故と違って)対人・対物の無制限の保険には入っていなかったようだ。となると、自賠責保険しかない。つまり、規定により、3000万円が払われるだけだ、となりそうだ。




 以上により、どうなるかがわかった。
 ただし、金の計算をするのが本項の目的ではない。本項の目的は、物事の真理を明かすことだ。では、真理とは? こうだ。
 「小泉行革によって、規制緩和の一環として、バス運行の分野には多大な小規模業者が参入した。これによって市場原理における競争が進んで状況が改善される、と目論んだ。しかしながら、実際に起こったのは、労働ダンピングによる粗悪業者の横行だった。粗悪な業者が、粗悪な運転手を使って、粗悪な保険金のまま、安さだけを取り柄にして、シェアを伸ばした。その結果、粗悪さゆえに事故がおり、粗悪さゆえに保険金も払えないことになった。その一方で、粗悪な業者は、賠償金を払う前に会社を倒産させて、トンズラした」


 このような行為は、一種の「詐欺」である。次の形だ。
 「安全性のためにかけるコストを、徹底的に手抜きする。それで事故が起こらないうちは、黒字を懐に入れる。それで事故が起こったら、会社を倒産させて、赤字を払わずに逃げる」

 このタイプの詐欺を「安全詐欺」と呼ぶことにしよう。
 安全詐欺は、安全性のためのコストを徹底的に手抜きすることで、料金を引き下げて、シェアを奪う。このようなものは、当然、当局が規制によって排除するべきだ。(安全審査を通らないような企業は排除するべきだ。)
 しかしながら、小泉行革の規制緩和は、このような安全詐欺をのさばらせることになった。「規制緩和」と「安全詐欺の横行」は、ほとんど同義だった。その結果、起こるべくして、バス事故が起こった。

 小泉行革における「規制緩和」という発想は、ある意味では妥当であったかもしれない。余計な邪魔くさい緩和は、有害であったかもしれない。(郵政事業など。)
 とはいえ、ことが「安全性」に関する限り、「規制」は絶対的に必要なのだ。この規制を緩和することは、すなわち、安全性を手抜きすることと同義なのだ。

 ここでは、安全性に対する意識がまったく欠落していた。そこに問題の根源がある。そして、このことは、福島原発事故とも共通する体質でもある。
 
 そういう風潮があるからこそ、私は何度も、「安全性」に関する議論を語るわけだ。



 【 関連項目 】

 スキーバス事故と規制緩和の話。
  → スキーバス事故の原因は 2
  → スキーバス事故の補足情報
  → スキーバス事故・1カ月
  
  ※ それぞれの項目内で「規制緩和」という語を検索する。
posted by 管理人 at 16:50| Comment(1) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
・ツアー会社の社長
・バス会社の社長
・死亡した運転手の親族
などの個人に対して民事訴訟を起こした場合に芭蕉金を受け取れる確率はどうなんでしょう?
Posted by 菊池 at 2016年03月07日 13:50
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