2016年02月05日

◆ シャープは無償で譲渡?

 シャープは鴻海に買収される見通しとなったが、その価格はゼロになる(無償譲渡になる)可能性がある。 ──

 シャープは鴻海に買収される見通しとなったが、その価格はまだ決まっていない。「 7000億円」という報道もあるが、これは、融資の額を含んでいると思える。たとえば、「出資 3000億円で、融資が 4000億円」というふうな。
 では、鴻海はシャープを買収する代金として、いくらを払うか? よく考えると、「無償」になる可能性がある。
 
 そういう話を聞くと、「とんでもない!」と思う人が多いだろう。しかし、「無償」というのは、実は、適正価格だとも言える。
 いや、これは間違いだ。シャープの適正価格は「マイナス 1500億円」である。つまり、たとえ無償であっても、鴻海が引き受けてくれれば、日本側としては「マイナス 1500億円であるものを、ゼロ円で引き取ってくれたのだから、 1500億円の得」となる。(借金を肩代わりしてもらうのも同然だからだ。)
 以下では、その根拠を示そう。

 ──

 第1に、シャープの適正価格は、産業革新機構の提案を見ればわかる。朝日新聞 2016年1月27日 に記してあるように、機構は銀行に対して、2000億円の債権放棄を求めた。
  → 前項
 一方、2月3日現在のシャープの時価総額は、2000億円ちょっとである。
 以上を勘案すれば、シャープの正当な処理方法は、次のことだとわかる。
 「 100%減資して、株主に出資責任を果たしてもらう。その一方で、時価発行増資して、2000億円を入手する。この 2000億円で銀行への借金を返済する」

 ここでは「 100%減資」という方法が取られる。つまり、株主は株券が紙屑になる。つまり、この会社の価値はゼロである。というのは、2000億円の借金と、2000億円の価値が、相殺するからだ。……こういう形で、「シャープの価値はゼロ」となる。それが産業革新機構の評価だ。(そうでなければ、銀行に債権放棄を求めるはずがない。)

 以上のことからして、鴻海としても、正当な方法は、次のことである。
 「 100%減資してから、鴻海が 2000億円を新規出資して、その金で銀行への借金を返済する」

 というわけで、鴻海がシャープを買収する正当な価格は「ゼロ円」なのだ。つまり、無償譲渡が正当なのだ。
( ※ 無償譲渡したあとで、鴻海が適当に好きなだけ出資して、新規株主となるだけでいい。)

 第2に、2016年3月期の決算がある。今はまだ顕在化していないが、2016年3月期の決算は大幅赤字となる見込みだ。
 《 シャープ決算 1000億円超の最終赤字 》
 シャープは去年4月から12月までの9か月間の決算を発表し、主力の液晶事業の不振で最終的な損益が1083億円の赤字になったと発表しました。
( → NHKニュース 2月4日

 9か月間で1083億円の赤字。年度後半ほど状況は悪化していることを考えると、12か月間では 1500億円程度の赤字となるだろう。この赤字はこれまで考慮されていなかったが、新規に追加される赤字だ。
 つまり、シャープの価値は、現在ではゼロ円だが、3月決算を迎えたあとでは、新規に 1500億円程度の赤字が追加され、それがシャープの価値となる。(時間がたてばたつほど、シャープの赤字は増える。価値はどんどん巨額のマイナスになる。)

 ──

 以上の二つの点を考慮すれば、シャープの価値は、
   ゼロ円 + マイナス 1500億円

 だとわかる。合計して、マイナス 1500億円だ。これがシャープの本来の価値だ。
 とすれば、これをゼロ円で引き取ってもらえれば(無償譲渡すれば)、日本側としては 1500億円の丸儲けだ。(簡単に言えば、返ってくるはずのなかった融資を、きちんと返してもらえることになる。シャープの作った巨額の赤字を、鴻海がかわりに返済してくれることになる。)
 というわけで、シャープを無償譲渡することは、きわめて有利であることになる。大損どころが、大儲けとなる。

 ──

 実際には、鴻海は、それに色を付けてくれるらしい。シャープへの「のれん代」や「技術使用料」みたいなものを払ってくれるようだ。シャープの技術を使い放題にするかわりに、その代金として、数千億円を払ってくれるつもりであるようだ。これはこれで、日本側としてはありがたいことだ。
( ※ たとえば、鴻海が TOB で 3000億円を払ってくれるとしたら、日本側としては、0円が 3000億円に化けるので、何と 3000億円のボロ儲けだ。)
 
 ところが、である。そうならないかもしれない。
 というのは、日本側が過大な要求をするかもしれないからだ。

 (1) 技術の海外流出

 シャープは「技術の海外流出」を恐れているようだ。しかし、鴻海が自分の子会社であるシャープの技術を、海外の自社工場で使うのは、当たり前のことだ。金を払って買った技術を使うのは、当たり前のことだ。仮に、シャープがこれを拒むとしたら、それは、「自分の技術を売らない」ということを意味する。とすれば、「技術使用料」に相当する数千億円をもらえなくなる。
 すぐ上では、「日本側としては、0円が 3000億円に化けるので、何と 3000億円のボロ儲けだ」と書いたが、シャープが技術流出を拒めば、技術売却もなくなるので、技術使用料に相当する巨額の金を失う。かくて、元の無償譲渡に戻るかもしれない。
 となると、 3000億円は、ぬか喜び。捕らぬタヌキの皮算用。

 (2) 第三者割当増資

 シャープは、買収されることを拒んで、「自主的な再建」を望むかもしれない。そのために、経営権をなるべく奪われまいとして、「第三者割当増資で、株式所有比率を 50%未満」とするように要求するかもしれない。
 その場合、鴻海としては、売却代金に色を付けることはできなくなる。のれん代も払わないし、技術使用料も払わない。当然、シャープの売却代金は、ゼロ円となる。(あるいは、マイナス 1500億円となる。)……なぜなら、それが市場価格(適正価格)だからだ。
 となると、 3000億円は、ぬか喜び。捕らぬタヌキの皮算用。

 ──

 まとめ。

 シャープは、本来の価値はゼロ円(またはマイナス 1500億円)である。産業革新機構の方針に従うなら、その価格で評価される。
 一方、鴻海に完全買収してもらうつもりならば、(うまく行けば)TOBで 3000億円ぐらいで売却できる。
 しかし、シャープが「技術流出はイヤだ」「経営の自主性を保って、買収でなく再建にしたい」と言い出したら、シャープは本来の価格、つまり、ゼロ円に戻ってしまう。そうなると、日本としては大損だ。(損するわけじゃないが、得するはずの金を失うことになる。)

 ──

 なお、この先、どうなるかは、予断を許さない。シャープが賢明ならば、「買収される」という方針を選ぶだろうが、愚かにも「あれもこれも」と欲張ると、結局は何も得られず、無償で鴻海に譲渡されることになるだろう。



 [ 補足1 ]
 産業革新機構の方針では、「銀行の債権放棄」という形を取る。これは、銀行から 2000億円を投入してもらって、その金を株主に贈与する、ということに等しい。

         2000億円
     
銀行 ────→ 株主


 という形で、2000億円が流れるわけだ。
 これは、銀行側が 2000億円の丸損であり、株主は(ゼロ円のものが 2000億円になるので)2000億円の丸儲けだ。
 こんな案は、ほとんど犯罪だ。こんな案を出すということで、産業革新機構はほとんど犯罪者みたいなものである。産業革新機構と銀行は、株主代表訴訟や背任罪や共謀罪などで、2000億円の賠償責任を負ってもいいくらいだ。
 まったく、こういう犯罪的なことをやろうとするなんて、まったく狂っているね。
 産業革新機構は「 2000億円を寄越せ」と恫喝して、2000億円を巻き上げるヤクザと同様だ。ゴロツキ。
 
( ※ どうやら未遂で終わるようなので、とりあえずは良かったと言えるが。……先は不明だ。また、このゴロツキ連中の体質は、まったく変わっていない。さらに言えば、このゴロツキ連中の「ゆすり」みたいなことを容認する日本のマスコミも滅茶苦茶だ。……文句があるなら、私に 2000億円ちょうだい。お願いね。)
 
 [ 補足2 ]
 「鴻海に無償譲渡するくらいなら、産業革新機構に売却する方がマシだ」
 と思うかもしれないが、そう思う人は本項をちゃんと読んでいないので、読み直してほしい。
 産業革新機構の提案もまた、無償譲渡と同等である。ただし銀行から 2000億円を注入するので、形式的には無償譲渡に見えないだけだ。実質的には無償譲渡と同じである。このことは、すぐ上の [ 補足1 ] で示した図式を見てもわかる。
 産業革新機構の提案は、実質的には無償譲渡である点では、鴻海の案と同じだ。ただし銀行に 2000億円の提供を強いるという点で、犯罪も同然だ。銀行の金を 2000億円も盗むことに相当する。史上最大の「銀行金庫破り」みたいなものだ。(ただし盗む人は、銀行強盗ではなく、銀行の頭取だ。頭取が盗むわけ。そのあとで株主代表訴訟で「 2000億円を返せ」と訴えられる。)
 こんな犯罪をしないで済むという点で、鴻海の提案の方がマシだ。これは、経済的合理性において損得で上回るという意味ではなく、倫理的に犯罪をしないで済むという意味だ。(犯罪をしてでも利益にこだわるというのでは、もはやただの犯罪者だ。産業革新機構の提案は、国家権力によって泥棒を推進するという、前代未聞の提案だ。)

 というわけで、
 「鴻海に無償譲渡するくらいなら、産業革新機構に売却する方がマシだ」
 という提案は成立しないのだが、だからといって、
 「鴻海に無償譲渡せよ」
 と私は提案しているわけじゃない。
 「鴻海に 3000億円で売却せよ」( TOB をしてもらえ)
 と推奨している。これがベストだ。ただし、そのためには、「技術流出はイヤだ」(= 鴻海に技術を有償販売するのはイヤだ)なんてごねていてはダメだ、と指摘している。
 だいたい、シャープの技術を 3000億円で購入してくれる会社なんて、鴻海ぐらいしかない。なのに「 3000億円で売却するのはイヤだ。自社内で保有して外部流出させたくない」なんて言っているんだから、シャープの経営者は頭が狂っているとしか言いようがないね。ならば、馬鹿会社は、さっさと倒産しろ。売れる物を売らなければ、倒産するしかない。
posted by 管理人 at 23:25| Comment(10) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
時価総額プラス負債総額が企業価値ですよね。
時価総額:2500億円で、負債:9500億円程度から企業価値はざくっと一兆2000億円程度。純資産が2兆円弱だから7000億円で買えるようなら御の字。
なお、債務超過額は単年赤字とは異なると思いますよ。
資本金も5億円で自己資本比率も低いからホンハイとは厳しい交渉になりますね。
Posted by 京都の人 at 2016年02月06日 00:42
> 時価総額プラス負債総額が企業価値ですよね。
一般的に言われている企業価値は違います。
時価+将来収益 が企業価値ですね。
Posted by kuro at 2016年02月06日 01:39
今の時代も士農工商なんですね
Posted by 先生 at 2016年02月06日 06:49
時価総額って、負債も、総資産も、企業能力(営業能力)も、将来収益も、すべて含めた値でしょ?

> 債務超過額は単年赤字とは異なると思いますよ。

 それはそうですけど、これまでの金額は「過去のすべてをひっくるめた上で、今年3月の決算の分だけは含まない数値」だと思います。今年3月の決算の分だけが将来の修正要因となる。それがマイナス 1500億円。

 なお、この新規赤字の情報が出たのは 2月4日なので、鴻海も産業革新機構も、提案時にはこの情報を知らなかったはず。

 ついでの情報。

> 2014年12月末時点において、シャープの純資産は2500億円ほどしかない

 → http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20150428/416360/

 これは過去の情報なので、すでに債務超過でしょう。
Posted by 管理人 at 2016年02月06日 07:49
最後に  [ 補足2 ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2016年02月06日 11:19
前回のコメント蘭にも指摘(京都の人)がありましたが、鴻海の欲しいのは、SHARPというロゴだと思います。中国大陸で大々的にSHARP製品を売りたいのでは。付録に、液晶技術がついてくるとの認識と思います。
シャープという名前が残ると言い訳ができ、経営者も数年の年収が保証されればハンコを押すでしょう。
我が家には、シャープのVTR,TV,クーラーがありますが故障無く動作しています。
Posted by senjyu at 2016年02月06日 11:26
のれん代だと思っている人が多いようですが、シャープにはきちんとした技術力があります。それは鴻海にはないものであり、鴻海にとっては喉から手が出るほどほしいもの。

 → http://srad.jp/comments.pl?sid=676819&cid=2953069

 ──

 この件は、Google がハード技術を欲したことと共通する。私が前に指摘した。
  → http://openblog.meblog.biz/article/5189882.html

 ここでは次のように予想した。( 2011年)

>  私の想像では、Google の製造した Android 搭載 スマホが出現する。Google 製 の iPhone ,iPad だ。

 この予想は的中した。Google はのちに、Nexus というハードを自社開発して販売した。(製造工場は下請け任せだが、とにかく自社開発。)
 ただしこのニュースが出たのは、三日前だ。次項で指摘しておこう。
Posted by 管理人 at 2016年02月06日 11:38
鴻海の買収案の詳細が判明した。
 以下、引用。

 ──

 シャープの株式取得や事業を再建する資金として5000億円を投じる。シャープの主力取引銀行が保有する優先株の買い取りに1000億円を充て、残る500億円は堺市で共同運営している大型液晶パネル工場の土地購入などに使う。

http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160220-OYT1T50014.html

 ──

 完全買収で子会社化するということだから、TOB で時価買い取りであろう。実質的には無価値に近い株をこれだけの高値で買い取ってもらえるのだから、株主や銀行は万々歳だろう。

 一方、産業再生機構の案に従えば、銀行は債権放棄を強いられるので、1000億円の丸損。銀行が債権放棄しなければ、その分を、一般株主が株って、一般株主が 1000億円の丸損。さらに、株価低下による損が加算される。
 「技術流出を防ぐ」なんていうアホなことをいわなければ、技術を高値で売却できることになる。
 それにしても「売却」を「流出」と表現するとは、経営陣はアホばかり。もしかして、6500億円を出すと言っている相手に、タダで売るつもりなんだろうか?
Posted by 管理人 at 2016年02月20日 13:33
第三者割当増資で、ホンハイが6割取得に決まりましたね・・・
こりゃ投げ売りするしかないです。
Posted by 七氏 at 2016年02月25日 18:44
> ホンハイが6割取得

 これなら、本項で仮定した「5割未満」ではないので、問題ない。
 計算してみたところ、妥当な価格よりは好条件であったようだ。この件は、本日分の項目で書く予定。
Posted by 管理人 at 2016年02月25日 19:12
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