2016年02月02日

◆ 民泊と規制緩和

 民泊について「規制緩和」との関連を考える。 ──

 民泊については前にも述べた。

 「民泊の話題」という項目では、ざっと情報を紹介した。民泊の概念や、問題点について、報道などをかいつまんで紹介した。(私の見解はない。)

 「民泊と特区」という項目では、「とっくに限って認める」という政府方針を紹介したが、「規制緩和をしよう」という政府方針そのものがおかしいという見解を示した。要するに、やたらと規制緩和をめざそうという自由放任流の発想には難点がある、と指摘した。

 ──

 さて。一方で、前項では、スキーバスツアー事故に絡めて、最後で次のように述べた。
 「安全対策を法的に義務づける」という方法は、あらゆる意味で最善なのだ。
 一方、「任意にする」というのは、「正直者が馬鹿を見る」という制度なので、あこぎな粗悪な業者がまかり通るようになる。その一例が、先の格安スキー・ツアー・バスの事故だ。この事故は、「安全対策は任意にする」という小泉流の規制緩和から生じた、当然の帰結だとも言える。
( → 安全費用の負担は?

 規制緩和を重視する人々は、「何でもかんでも規制緩和するべきだ。そうすればコストが下がって、状況は改善する」と信じる。
 しかしながら、安全対策に関する限り、その発想は成立しない。なぜなら、粗悪な業者は、「安全対策を手抜きして、コストを下げよう」と思うからだ。こうして「安かろう、悪かろう」という会社が跋扈(ばっこ)して、危険な商品が出回る。そのあげく、危険が具現した事故が発生する。その例が、先のスキー・バス事故だ。
 
 これに対して、国交省は、事後的に処罰を下した。
 15人が死亡した長野県軽井沢町のスキーバス事故で、石井国交相は2日、バス運行会社「イーエスピー」に対し、事業許可の取り消し処分を行うと発表した。
( → 日テレNEWS24

 しかし、事故が起こったあとで処分を下しても、馬が逃げたあとで厩(うまや)の扉を閉めるようなものだ。「手遅れ」であるにすぎない。死者が生き返るわけこともない。

 では、どうするべきか? もちろん、事前に対策するべきだ。それはつまり、事前に監視するということだ。それは「規制強化」を意味する。(規制緩和の逆だ。)

 私としては、以上のような立場を取る。つまり、「安全対策に関する限り、規制緩和はダメだ。十分な規制が必要だ」と。
 そして、そうとすれば、民泊についても同様のことが言えると考える。

 ──

 まず、政府の現状の方針については、問題がある。これは、誰でもすぐにわかることなので、私の意見としては示さず、他のページから引用しよう。(識者の見解、という形。)
 「今年1月、厚生労働省は民泊をカプセルホテルなどと同じ簡易宿所と位置づける決定を下しました。これに伴い、客室の最低延べ床面積は10人の宿泊を前提にはじき出した33平方メートルから、ひとりが宿泊するために必要な3平方メートルへと緩和された。つまり、今後は一般的なマンションのワンルームでも民泊がOKになるということです」(シンクタンク研究員)

 民泊には貸主が客と一緒に寝泊まりしてもてなす「ホームステイ型」と、ホスト不在のまま、マンションの空き室などを貸し出す「投資型」の2タイプがある。
 「望ましい民泊は『ホームステイ型』です。こちらなら、ホストが家庭でもてなすので、外国人客は地域の文化や暮らしに触れることができる。日本の魅力を満喫できる分、リピート来日してくれる可能性も高い。
 一方の『投資型』はホストがいません。ただ泊まるだけなので、魅力に乏しい。それどころか、見知らぬ外国人が出入りしてゴミ出しや騒音をめぐるトラブルが発生したり、部屋が麻薬や売春、不法滞在の拠点となって周辺の治安悪化につながる恐れもある。民泊の実現は地域社会の合意が大前提ですが、『投資型』では受け入れられない可能性があります。
 今回の厚労省の規制緩和はワンルームマンションでの宿泊も可能になるなど、『投資型』民泊を認めるもの。本来の民泊の理念からはかけ離れており、この規制緩和は全面的には賛成できません」(玉井教授)
( → エキサイトニュース

 読んで呆れるばかり。
 「客室の最低延べ床面積は10人の宿泊を前提にはじき出した33平方メートルから、ひとりが宿泊するために必要な3平方メートルへと緩和された」
 とのことだが、これじゃ、タコ部屋だろう。33平方メートルに 10人であれ、3平方メートルにひとりであれ、とんでもないすし詰めだ。
 ちなみに、単身用マンションの平均面積は 20〜35平方メートル程度で、平均して 27平方メートルぐらいだ。間取りは大半が 1K だ。
  → 20代社会人シングル男女の一人暮らしデータ 2009

 こういう単身者向けマンションは、原則、1人暮らし向けだし、せいせい(一晩の恋人との)2人向けだ。
 そういう狭いマンションに、10人もの宿泊者を泊めよう、というのが政府の方針だ。
 粗悪も極まれり! 格安スキー・ツアーもビックリの粗悪さだ。

 ──

 こういう粗悪な民泊が増えると、どういう弊害が生じるか? もちろん、前述のように、防犯問題とか、ゴミの不始末とか、いろいろと環境悪化もあるだろう。だが、もっと極端な問題もある。
 それは、火事だ。たとえば、こういうふうに大量の宿泊者が宿泊している状況では、火事が起こりやすい。いい加減な宿泊者が大量にいれば、火事が起こる確率も急増する。
 また、いったん火の不始末から火事が起こったら、狭い非常階段や出入口をめざして、大量の宿泊者が殺到し、出入口が混雑したあげく、誰も通れなくなる、ということも考えられる。美味く通れたとしても、非常階段はエレベーターを通れる人数は限られているので、大量の死者が出ることは免れないだろう。最悪の場合には、タワーリング・インフェルノとなる。





 政府のやろうとしていることは、日本各地で「タワーリング・インフェルノ」みたいな火事の大被害を招くようなものだ。
 こう書くと、「架空の話で脅すなよ」と文句を言いたがる人も出るだろうが、架空の話ではない。実際、似た例は、つい先日も起こった。ドバイの63階建て高層ビル火災 だ。( → ロイター記事





 ここでは、幸いなことに、被害は 14人の軽傷者だけで済んだ。しかしそれは、エレベーターや非常階段などを利用して、きちんと退避できたからだ。
 一方、ここで「30平方メートルに宿泊者が 10人」みたいに大量の宿泊者がいたら、どうなったか? もちろん、エレベーターでも非常階段でも、大量の人々があぶれて、大量の被害が生じただろう。
 そして、そういう「極端なタコ部屋状態」を、政府はあえてめざしているのだ。狂気の沙汰だ。それが政府の「民泊」制度なのだ。

 ──

 政府や自民党のめざす「規制緩和」というものが、いかに危険でいかに間違ったものであるか、上の想定からも明らかだろう。
 それはいわば、「原発の発電コストを下げることを最優先にして、原発の安全対策コストを徹底的に切り詰める」というのと同根だ。あくまでコストダウンばかりを狙って、安全性をいい加減にする。そして、その結果何が起こったかは、福島を見ればわかる。
 それと同じ方針の結果が、格安スキー・バスの事故だ。
 こういうふうに次々と問題が生じているのに、それでも懲りずに、コストダウンをめざして、「民泊」という規制緩和に突き進もうとする。ブラック環境のブラック国家だね。死者がどんどん出そうだ。

 なお、これを見て、平然としている人もいるだろう。
 「民泊で死ぬとしても、それは民泊する外国人旅行者ぐらいだ。自分は民泊なんかしないから大丈夫」
 しかし、そう思ったとしても、あなたがマンションに行っているとき、火事が起こるかもしれない。そのとき、あなたが逃げようとしても、まわりには(別の部屋に泊まった)民泊の外国人が大量に押し寄せてくるかもしれない。いくらあなたが民泊をしなくても、あなたのまわりには民泊する人が大量に押し寄せかねないのだ。あなたはそれに飲み込まれて、身動きできないまま、火事のさなかで火と煙に焼かれて死ぬ。
 これが「規制緩和」の効果だ。

 人が死ぬのは、安いスキーバスに乗ったときの雪のさなかだけではない。マンションにいるときに高熱の火で焼かれることもあるのだ。地獄の業火で焼かれようなものだ。



 [ 付記 ]
 では、どうすればいいか? 
 私の個人的な案としては、次の案を提唱しよう。
 「民泊は認めるが、年間の稼働日を制限する。たとえば、 150日または 180日」

 1年は 365日なので、そのうち半分ぐらいの日数のみ、民泊としての稼働を可能にする。残りの半分は、稼働禁止とする。

 このことで、次の効果が生じる。
 (1) 稼働日数が半数なので、採算に乗らない。したがって、金目当ての業者は参入しなくなる。参入するのは、個人が「自分が使わない日に or 自分が使わない部屋を、部分的に貸し出す」ということぐらいになる。
 (2) 稼働するのは、自動的に、客の多い日に限られるようになる。具体的には、土曜と日曜と祝日の前夜。夏休み中や年末年始や黄金週間。……これらの期間には、ホテル不足となるので、民泊が増えると、ホテル不足が緩和する。また、どうせシティ・ホテルは満員状態なので、シティ・ホテルが客を奪われるという被害も生じにくい。一方で、民泊の家主としても、こういうときには客がたくさん来るので、こういうときに稼働したがる。(需要過剰のときに限り、供給量を増やす、というわけ。需要過剰でない平日については、民泊による供給を増やさない。)

 というわけで、「稼働日数を半分ぐらいに減らす」という方式をとることで、次の二つが同時に実現する。
  ・ ホテル不足の日に、ホテル不足の解消ないし緩和。
  ・ 低品質の粗悪ホテルを作ろうという悪徳業者の排除。


 ただし、次のことは同時に必要だ。
 「面積制限。宿泊者1人あたりの面積を、最低でも 10平方メートルぐらいに設定する」

 これによって、タコ部屋状態を防ぐ。(火事のときの混雑も防ぐ。)

 なお、責任者の設置ないし常駐も必要かもしれない。この件は、識者が別途言及しているので、私としては特に言及しないでおく。



 【 関連項目 】

 地震対策で、自家発電や灯油ストーブの設置が必要だ、という話は、前々項で述べた。
  → 停電孤立と自家発電
posted by 管理人 at 22:13| Comment(1) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
0か1か、という議論になりがちですが、その間を提案されるのは、さすがです。
Posted by いいですね at 2016年02月06日 13:27
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