鬼怒川の堤防整備に、政府は 600億円もかける。
《 鬼怒川緊急整備始まる 》
11日、常総市で記念の式典が行われました。
石井国土交通大臣が「今回と同じ規模の洪水に耐えられるよう、堤防の整備や掘削を集中的に実施し、安全度を飛躍的に向上させたい」とあいさつしました。
今回の整備事業は、今年度から6年間でおよそ 600億円をかけて国が行い、堤防を整備したり川底を掘り下げたりするなど。
( → NHK 首都圏 NEWS WEB )
かなり馬鹿げた方針である。
(1) 「今回と同じ規模の洪水に耐えられるよう」というが、今回は特殊な条件がいろいろと重なった、きわめて例外的な気象だ。同じようなことが同じ場所で起こる確率は、ごく小さい。たぶん、今後 200年ぐらいは起こるまい。 200年たっても起こらないような稀な事象のために対策するのは、馬鹿げている。
(2) その一方で、鬼怒川領域以外でなら、似たような豪雨が起こる確率はかなりある。とすれば、鬼怒川だけを整備しても、意味がない。同じように対策不十分な、全国各地で堤防整備する必要がある。鬼怒川だけをやっても意味がない。(頭隠して、尻隠さず、ふうだ。)
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ともあれ、馬鹿馬鹿しい。洪水が起こる前に対処するなら、まだわかるが、洪水が起こった後で対処しても、「馬が逃げたあとで、厩(うまや)の扉を閉める」(ことわざ)に等しい。「泥棒に金を盗まれたあとで、金庫の扉を閉める」ようなものだ。ほとんど無意味。
では、どうするべきか? 鬼怒川だけに 600億円をかけるかわりに、全国で数千億円、いや、数兆円の金をかけて、堤防整備をするべきか?
なるほど、それだけの金をかければ、同じような災害は起こるまい。しかし、それで救われる被害は、数十億円程度だろう。
つまり、数十億円の被害をなくすために、数兆円のコストをかける……という政策。馬鹿馬鹿しい。
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正解は何か? たぶん、こうだ。
・ 低コストで済む堤防対策
・ 被害者への補償
前者は、前に述べたものだ。(越流堤)
→ 洪水対策の越流堤
→ 洪水防止の画期的な方法
後者は、「被害が起こるのを予防する」かわりに、「被害が起こったあとで、被害者に補償する」というものだ。「保険」と同じ考え方である。
この場合には、天文学的な金額の予防策をとる必要がないので、かなり低コストで対策が可能となる。これが最も現実的だろう。鬼怒川の被害の場合でも、数十億円で済むはずだ。
しかし現実には、堤防建設に 600億円を出す一方で、被害者にはほとんど金を出さない。
《 常総市水害、補償求め「被害者の会」 》
関東・東北豪雨の被災者らが「常総市水害・被害者の会」を結成した。鬼怒川の氾濫(はんらん)は国の責任だと認めさせ、被害の補償を求めていく。会員や支援者を増やして国への圧力を強めようと、5日には決起集会に向けた準備会を開く。今回の水害で、被害補償を求める被災者の組織化は初めてとみられる。
「落ち度のない私たちが、こんな理不尽な仕打ちを受ける理由があるのか。泣き寝入りはしたくない。被害補償のほか、早期の築堤も要求していく」と話している。
県によると、同市では全壊51件、大規模半壊1452件、半壊3520件などの家屋被害のほか、多数の損害が出た。
( → 毎日新聞 2015年12月5日 )
ほとんど補償がなされていないようだ。とはいえ、補償が皆無というわけでもないようだ。不十分ながらも、いくらかは補償がなされている。
常総市は下記における支援制度が適用されることになりました。最大額を記載します。
「災害救助法適用による応急修理制度」:最大で56万7千円
「被災者生活再建支援法の支援金」:最大で200万
詳細については下記表を参照ください。
( → Yahoo!ニュース )
上記ページに表があるが、全壊の場合には 300万円の補償金が出るらしい。ただし、半壊とか、床上浸水では、たったの3万円。(修繕の場合は 56万円まで)
ま、気休め程度の額だと言える。とても生活再建はできない。
とすれば、600億円のうちの 100億円ぐらいを補償金に回す方がいいだろう。一方で、堤防建設の方は、600億円も必要ない。越流堤のような方式なら、はるかに低い金額で済みそうだ。
結論。
鬼怒川の水害対策で、600億円もかけて工事するのは、馬鹿げている。(馬が逃げたあとで……という愚。)
それよりは、被害者に補償金を出すべきだ。
また、将来の予防は、越流堤の方式でやれば十分だ。
[ 付記 ]
もう一つ、「遊水池を作る」という方式もある。
この件は、独立した項目として、すでに述べた。
→ 堤防よりも遊水池
一部抜粋しよう。
鬼怒川の氾濫のあとで、堤防を作ろうとしているが、堤防よりも遊水池を作るべきだ。
なお、この項目では、「政府方針のような大がかりな工事をすれば、巨額の費用がかかるだろう。1000億円ぐらいになりそうだ」というふうに述べた。その予想の数値は、おおざっぱに当たっていたことになる。( 1000億円ぐらいだと予想したら、今回のニュースでは 600億円。どうせ途中で工費が積み上げられるから、最終的には 600億円をかなり上回りそうだ。1000億円に近づくだろう。)
[ 余談 ]
同じような被害だが、東日本大震災の被災者には、途方もない金額が投入されている。1世帯あたり 1000万〜4000万円という、途方もない金額だ。
( ※ 仮設住宅は 600万円+撤去費で、計 1000万円程度。陸前高田などの土地改良費は1世帯 4000万円程度。東日本大震災の全体では、20兆円程度。)
ひるがえって、同じような被害でも、鬼怒川の被災者はごくわずかな金しか補償されない。
不条理の極み。
タイムスタンプは 下記 ↓
東北は色々不条理が積み上がってますね。
買取対象の津波で流された土地が相続人の行方不明(震災で不明では無い)で市や県が買えない。土地計画が成り立たないとか。
公共の福祉、時効要件を考えないあたり、底流は同じなんでしょうね。