2015年12月24日

◆ モルタル落下事故

 トンネルの天井からモルタルが落下した、という事故があった。その原因が推定されているが、見当違いだろう。 ──

 トンネルの天井からモルタルが落下した、という事故があった。
 《 トンネルの天井モルタル、23.5トン落下 千葉・君津 》
 23日午前8時10分ごろ、千葉県君津市広岡の国道410号のトンネル「松丘隧道(ずいどう)」(全長91.3メートル)で、天井部分のモルタルがはがれ落ちた。落下した部分は長さ約20メートル、幅約5メートル、厚さ約10センチ、重さは約23.5トン。
 14年6月から、古いモルタルを削るなどの工事をしており、落下したモルタルは1カ月ほど前に吹き付けたばかりだった。
( → 朝日新聞 2015-12-23

 新しいモルタルが落下したので、古い天井が落下した笹子トンネルの場合とはまったく事情が異なる。今回なした工事そのものが原因だったと言える。
 ここで注目するべきは、「厚さ約10センチ」という点だ。これは通常のモルタル吹きつけとは大きく異なり、厚さがきわめて厚すぎる。
 一般に、コンクリとモルタルの違いは、コンクリには骨材(砂利)が含まれているということだ。コンクリの強度のほとんどは骨材が担う。骨材以外(モルタルと同じ)は、接着剤としての役割があるだけだ。
 なお、モルタルは、ひび割れやすく、かつ、コストが高いという弱点がある。
 それでも、コンクリで構造物を作ったあとでは、表面にモルタルを塗ることが多い。それは、構造物であるコンクリ部分を風雨から保護するためだ。したがって、その部分はモルタルである必要はなく、何らかの化学物質などを塗ることで代用することもある。
 ともあれ、モルタルの目的は、構造物であるコンクリートの表面を保護することだ。とすれば、そのモルタルが厚さ 10センチにもなるということは、不合理きわまりない。モルタルならば、厚さはせいぜい数センチもあれば十分で、多くても5センチぐらいだろう。厚さ 10センチにもなれば、きわめて剥離しやすくなる。まして、横壁でなく、天井にモルタルを塗ったとすれば、きわめて剥離しやすい。そこで 10センチもの厚さでモルタルを塗れば、落下するのは当然すぎる。
 つまり、今回の落下事故は、ただの偶発的な事故ではなくて、起こるべくして起こった必然的な事故だったと言える。厚さ 10センチのモルタルなんて、落下して当然なのだから。
 ともあれ、ここでは、「厚さ 10センチ」というのが、決定的な理由だったことになる。

 ──

 ところが、ネットの報道を見ると、この点を理解した報道が見当たらない。見当違いのことばかりを指摘している。
 なぜ、補修工事中の現場で事故は起きたのか。
 地盤調査システム研究所の近久博志所長は「当初調査された所の地質より、若干悪かったところがあったとか、(モルタルが)固まってくる時の収縮の関係で剥がれやすい。押されたり荷重がかかると、パカッと開いてしまう現象はあり得る」と話した。
 国交省の担当者は「詳細につきましては、今後調査が必要。吹き付けモルタルの足元を払ってしまったため、崩落した原因につながったのでは」と話した。
( → fnn-news
 現地調査を行った専門家は、アーチ状のモルタルとコンクリートの基礎部分との間に隙間があって下に支えのない状態になり、山の地肌との接着力が不足して剥がれ落ちた可能性があるという見方を示しました。
 トンネルの地面から高さ1.5メートルより上部はアーチ状にモルタルを吹きつけたあとコンクリートで固め、それより下の両端はコンクリートの基礎部分を設ける設計でした。
 ところが千葉県によりますと、発生当時は工程上、コンクリートの基礎部分とモルタルの間に15センチの隙間ができ、モルタルを下で支えるものがなく宙に浮いた状態になっていたということです。
 真下部長は「アーチ状のモルタルが宙に浮き、下で支える状態になっていなかった」と述べるとともに、「岩盤が柔らかく、モルタルとの接着力が足りなかった可能性がある」と述べました。
( → NHKニュース

 「接着力が足りなかった」というが、こんな重たいものを接着しようという発想そのものがおかしい。こういうふうに重たいものを付けるなら、単にモルタルの接着力に期待するだけでなく、入念な接着工事が必要だ。下記ページに詳しい。(図あり。)
  → モルタルの浮きの原因と補修
 本来ならば、このような接着の措置を取るべきだった。それもしないで、10センチもの重いモルタルを吹きつけるなんて、とんでもないことだ。

 さらに言えば、「アーチ状のモルタル」なんてものを使う工法そのものがおかしい。(動画によると)モルタルを吹きつけてから、さらにコンクリを塗って内壁を作るつもりだったらしいが、それなら、モルタルはずっと薄くていいはずだった。というか、モルタルなしでも大丈夫だっただろう。何でこんなところに厚いモルタルを吹きつけようとしたのか? 
 まったく無駄な(余計な)手間をかけたせいで起こった事故、というふうに見なせそうだ。
posted by 管理人 at 22:05| Comment(0) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
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