廃棄された桃でバイオディーゼルをつくる、というリサイクルがある。
《 バイオディーゼル燃料 廃棄モモと微生物の力 》
廃棄するしかなかったモモからバイオディーゼル燃料(BDF)を生み出そうとする取り組みを、市と山梨大が共同で2012年から進めている。
BDFを生み出す舞台は、閉鎖された市営の温水プール施設に設置された大型の微生物培養装置だ。廃棄モモの果汁45リットルを投入して加熱滅菌し、リポミセスを混ぜ合わせると培養が始まる。リポミセスは増殖しながら糖分を分解。6日後に遠心分離機で分離すると、約0.3リットルの油分が含まれているという。
現状では油分を取り出すのに薬品が必要でコストがかさむ。
( → 朝日新聞 2015-12-21 )
これは驚くべき記事である。コストについてだが、記事では「油分を取り出すのに薬品が必要」と述べている。しかし、薬品代なんかは差し置いて、エネルギー収支そのものを考えるべきだろう。
・ モモの果汁45リットルを投入して加熱滅菌
・ 遠心分離機で分離
これだけやっても、「約0.3リットルの油分」が回収されるだけだ。
一般に、植物オイルのカロリーは、100 g あたり 920kcal 程度だ。(ググればわかる。)
300 g ならば 2760kcal。
カロリーの定義は
「水1gの温度を1℃上げるのに必要な熱量を1カロリーという」
なので、2760kcalだと、45リットル(45,000cc)の水を 61 度上げることができるだけだ。
∵ 2760/45 = 61
これは理論効率で、実際には熱効率が 100%であることはありえないので、40度ぐらいしか上昇させることはできない。20度の水を 60度にまで上げる程度だ。
たったのこれっぽっちのカロリーを得るために、水を高温で加熱殺菌したり、遠心分離にかけたりする。さらには、モモを運搬して投入するためのエネルギーが別途かかる。
ま、ざっと見て、得られるエネルギーに比べて、投入するエネルギーは 5〜10倍ぐらいになるだろう。つまり、リサイクルをすればするほど、莫大なエネルギーが浪費される。リサイクルという名の浪費。
こういうのを、詐欺という。リサイクル詐欺。
「リサイクルにご協力ください。ゴミから宝を生み出します。その宝を 10円分、差し上げます。だからリサイクル協力費を 100円下さい」
「リサイクルで炭酸ガスを 1グラム削減します。そのために炭酸ガスを 10グラム浪費しますが、リサイクルのためにご協力ください」
ま、詐欺師が詐欺をするのは仕方ないが、朝日新聞が詐欺師の片棒を担いで宣伝するのは、やめてもらいたいものだ。
また、記事によれば、「南アルプス市と山梨大の共同研究」ということだが、詐欺のために公金を浪費するのは、いかがなものか。
[ 付記1 ]
実際には、これは詐欺ではなくて、これが詐欺だとわからないほど、頭がおめでたいのだろうが、しかし、情けないね。
ま、オウムに加担した菊池直子みたいなものなのだろう。無知ゆえの犯罪。
とはいえ、菊池直子が無罪になった主因は、時効であったと思える。これに比べると、現行犯である上記団体は、はるかに加罰性が高いと言えるだろう。
( ※ 爆弾事件の菊池直子の場合、殺人未遂容疑だが、法的に厳密に考えるなら、悪くても傷害致死罪で、人が死んでないので、傷害致死罪にはならない。ただの傷害罪。傷害罪の時効は7年。だから、17年後の起訴なら、「時効による釈放」が妥当。……それを前提に「無罪」にしたと見なせる。)
( ※ ひるがえって、本項の詐欺罪は、時効にはならない。れっきとした詐欺だね。リサイクル詐欺。……ま、本人に詐欺の意識がなくて、ただの馬鹿か低知能だから、起訴猶予または不起訴になりそうだが、犯罪性そのものは成立しそうだ。実際、人々をだまして、公金をかすめ取っている。公金泥棒。)
[ 付記2 ]
では、かわりにどうすればいいか? 一般的には、
「リサイクルより、リユース(再利用)を」
と言える。これを本項に即して言うなら、
「規格外だったり、傷んだりして出荷できないモモ」
というのを、廃棄しないで、安値販売すればいい。日本の果物はやたらと見映え重視で、大きさや形が不揃いだったり、ちょっと傷があったりすると、すぐに廃棄してしまう。そういうのを安価で販売すればいいのだ。スーパーなどでは規格品しか扱えないのだろうが、八百屋ならば規格外の品でも扱えるはずだ。だから、廃棄しないで、安値で売ればいいのだ。それが最善だ。
( ※ 近所の八百屋でもときどき規格外品が激安で売られる。そういうのを増やしてほしいね。今は出荷しないんだろうけど。)
【 関連サイト 】
燃料の回収率を考えると、「枝ならばそのまま燃やす」という手法が効率的だ。しかしそれでもコスト回収は大変らしい。
→ 公園の枝・下水ガス…探せ、都会の隠れたエネルギー:朝日新聞 2015-12-21
これが現実なのに、「モモからバイオディーゼル」という発想は、あまりにも現実離れしすぎている。そんな研究をするなら、桃のなかから桃太郎を探す研究でもした方がいい。その方がまだしも可能性が高そうだ。
→ 桃太郎 の画像一覧
【 関連項目 】
本項の続編。
→ リサイクルとエントロピー
桃果汁から油を作るよりも、発酵させて桃ワインにするほうが付加価値が高くなりそうです。
ちなみに、世間で売っている「桃ワイン」というのは、「桃果汁入りの葡萄ワイン」のことであるようだ。ほとんど白ワインで、ほんのちょっと赤ワインを混ぜて、さらに桃果汁をちょっぴり混ぜる。
→ http://j.mp/1Oljn2o
羊頭狗肉みたいなものだが、仕方ない。100%桃果汁で作ると、1瓶1万円ぐらいになりそうだ。
http://iwanohara.shop-pro.jp/?pid=64041245
しかも1400円/本
「桃の果汁を加えたジュースレゼルブ製法」
ということなので、主原料は葡萄だと思えます。
「主要品種:2015年新潟県産桃100%」
という表現はあるが、これは、桃のうちの品種の割合だと思える。葡萄でなく桃100%を意味しているのではなさそうだ。「主要原料」ではなく「主要品種」なので。
実際に「葡萄入り」というふうに書いてあるページもある。
http://www.chateauk.co.jp/products/detail.php?product_id=81
「甲州ぶどうと、桃の果汁のマリアージュをお楽しみ下さい」
ただし、原料という表記をはっきりと示して「桃 100%」と示した商品もあるのかもしれない。よくわかっていない。
……と思ったが、よく読むと、
> 単に「ワイン」と呼ばれる場合には他の果汁を主原料とするものは含まない。
ということなので、「ワイン」でなく「桃ワイン」というふうに記すのならば、桃 100%であってもいいのかもしれない。どうも、よくわからなくなってきた。ますます混迷。
ただ、よくわからないので、ちょっと調べてみたのが動機だが、こんな用語の定義みたいなことで、あれこれ調べるのは、時間の浪費かもね。どうてもいい話みたい。
こう言うのは生産量以上に密度が重要です
南堂さんは部屋から出て現場を知ったほうが良いですよ
脱スネップ応援してます
http://blog.livedoor.jp/genkimaru1/archives/1890848.html
手間賃考えると安くはないのかもしれませんが、管理人さんのご意見を聞いてみたいです。
ちなみに、桃の方は、ずっと有利です。収穫するためのエネルギーがゼロだからです。なぜか? 収穫するエネルギーコストは、「傷なし桃」が全額を負担するからです。桃の全体を収穫したあとで、傷なし桃だけを選別する。ここまでのエネルギーは、「傷なし桃」が全額を負担する。その後、「傷あり桃」の山(廃棄物)が自動的に出来てしまう。この廃棄物は、自動的に出来てしまうので、廃棄物を集めるためのエネルギーコストはゼロです。とても有利ですね。(それでも、以後にエントロピーの分の負担が莫大にある。)
芋の場合は、「すでにある廃棄物の山」を利用するのではなく、広大な農地から収穫する必要があるので、収穫のためのエネルギーコストが莫大になる。だから、ダメです。
ただし、「傷あり芋」だけを使うのならば、大丈夫だろう。とはいえ、傷みやすい桃と違って、芋は「傷あり芋」が廃棄されることはほとんどない。ゆえに、「すでにある廃棄物の山」なんてものは、ありません。
ちなみに、収穫まで考えて、最も有利な農産物は、(エネルギー取得のためであれば、)ミドリムシ(ユーグレナ)でしょう。ただし、これも、普通の石油などに比べると、5倍ぐらいのコストになる。最近ではいくらか向上したようだが、まだまだ実用化の水準にはなっていない。まして、芋でやるなら、途方もないコストを覚悟する必要があるでしょう。
そして、その理由は、エントロピーじゃなくて、収穫コスト。
おまけで、エントロピーの部分が加算される。だめ押しふう。
──
芋を生産するなら、そのまま芋として食べるのが最善です。さらに、焼き芋にすれば、付加価値を増すことも出来る。
参考:
→ http://r.gnavi.co.jp/g-interview/entry/bhb/2693
ではなぜ桃ワインが滅多に見つからないのかというと、
・ やはり葡萄よりはコストが高い。
・ 傷みやすいので収穫が面倒。
・ あまりおいしくない。
最後の点が決定的だと思う。果実(ジュース)とアルコールの組み合わせは、私もいっぱいやってみたが、(良質の)葡萄が圧倒的に美味しい。アルコールを加えることで異次元の味に高まるのは、(良質の)葡萄だけ。
だから、葡萄のワインのために高額を払う人はいても、桃ワインのために高額を払う人はほとんどいないのだと思う。どうせなら、桃ジュースにホワイトリカーを混ぜて飲むがマシ。だから、需要がないのだろう。つまり、作っても売れない。(金を払う価値のある味にならない。)
そういうことなのだと思う。農業の問題というより、酒飲みの味の問題となる。
飲んべえ理論。
多分アイスワインの様な超甘口なのでしょう。それでもブドウは種の周りの有機酸やタンニンが発酵で深い味わい、コクを作る様ですが、林檎や桃では厳しいのでしょう。