2015年12月15日

◆ 北京の公害対策

 北京の大気汚染はひどいが、その対策として、北京の首都機能を移転するそうだ。 ──

 といっても、遷都とは違う。首都機能の一部だけを、北京の外に移す。また、移すといっても、遠い土地に移すのではなくて、移す先は北京郊外だ。
 《 大気汚染最悪レベルの北京市、ついに「首都圏機能」移転を決定 緑豊かな通州区に「副都心」建設へ 》
 北京市の李士祥・常務副市長が……大会(市人代=議会に相当)、市政治協商会議(市政協)という市の4大機構がすべて通州区に移転することを明らかにした。
 すでに、市党委が「首都機能移転のため、通州区に新副都心を建設する」ことなどを正式に決定しており、建設ラッシュの真っ最中だった。行ってみて驚いたのは、区内中心部に片側5車線の高速道路が建設されているほか、30階以上もの高層ビルが所狭しと建っていたことだ。
( → レコードチャイナ

 ここで、移転先の通州区というのは、北京の中心部からの南東 20〜30km のあたり。





 図の赤い領域が通州区だ。北京中心から 20〜30km ぐらいの距離である。このあたりは、本来ならば北京の外周部となっていていいはずだ。
 ところが、地図から航空写真に切り替えるとわかるように、このあたりのほとんどは田畑である。この距離は、日本ならば、多摩川や、さいたま市のあたりなので、建物が密集していていいはずなのだが、どういうわけか、田畑ばかりで、恐ろしく過疎である。中国は人口が途方もなく多いのに、北京の中心からちょっと離れただけで、農地ばかりとなるのだ。
 これはどうしてだろう? 不思議である。

 ──

 この謎は、地図を見ると、解消する。こうだ。
 「北京には鉄道がほとんどない。今回の通州区も、鉄道はまったく通っていない。したがって、ここから北京中心にまで至るには、自動車で行くしかない」


 このように鉄道がないという点については、Wikipedia にも記述がある。
 《 中華人民共和国の鉄道 》
 欧米諸国や東南アジア、オーストラリア、日本、韓国などの大都市圏では、都市近郊鉄道が発達しているが、中国では、地下鉄や路面電車、モノレール、トロリーバスが存在する都市はあるものの、その数は、中国の大都市の数に対して非常に少ない。日本の国電や、ドイツのSバーンのような、都市近郊電車網は、中国では皆無であった。しかし、近年は上海や北京などで全区間高架または地上を走る軽軌と呼ばれる都市近郊鉄道も開通しており、蘇州などでも建設が始まっている。
( → Wikipedia

 近年ではいくらか鉄道も建設されてきたとはいえ、それは「皆無ではなくなった」という程度のことだ。鉄道網が充実している日本とは雲泥の差だ。
 そして、このように鉄道が不足していることが、さまざまな問題をもたらす。
  ・ 自動車への依存
  ・ 渋滞
  ・ 排ガスによる大気汚染
  ・ 人口の極端な集中

 こういう問題が結果的に生じる。

 ──

 ここまで見れば、問題の本質がわかるだろう。
 中国は、大気汚染対策とか、首都機能移転とか、そんなことをやろうとしているが、そのすべては、方向が狂っている。やっても無駄だとは言わないが、いくらやっても焼け石に水だ。なぜなら、根本である「鉄道不足」という問題(つまり 主因 )が放置されているからだ。……ま、病気を根源的に治さないで、対症療法だけでやるようなものだ。
 だから、中国としては、今すぐ鉄道網を整備するべきなのだ。特に、通州区のあたりは、まだ建物もないので、地上に鉄道を敷設できる。つまり、地下トンネルを掘る必要がない。だから、短期間に低コストで多大な鉄道路線を建設できるはずだ。……これが正解である。

 なのに、中国政府は、その正解を取らない。かわりに、インドネシアで高速鉄道を受注したり、国内で安全性の不足した高速鉄道を建設したりする。(そのあげく大事故を起こしたりする。)
 中国政府は、やることを間違っている。最も必要な鉄道建設をしないで、かわりに、国威発揚になるような目立つことばかりをやっている。……そういう間違った政策による歪みが、「大気汚染」という形で噴出したのだ。
 ここで、「大気汚染がひどいから、自動車を規制して、首都機能を移転する」なんていう方針を取っても、しょせんは焼け石に水なのである。根本原因を放置しているからだ。

 物事の本質を知ることが大切だ、と私はいつも言っている。そのことが、本件にも当てはまる。



 【 関連項目 】 
 この問題は、他人の問題ではない。日本にも影響する。汚染粒子が西日本に押し寄せるからだ。前にも述べたとおり。
  → 中国の大気汚染が日本へ
  → 中国の大気汚染と日本



 【 関連サイト 】 
 中国の鉄道サービスは、量的にはかなりあるのだが、長距離(都市間)の貨物輸送に偏っているようだ。
  → 中国における鉄道輸送サービスに関する一考察 (PDF)
   ※ 日通総合研究所のレポート
 ま、産業を優先して、国民を犠牲にする、というのは、いつもの方針かもしれないが。
(まるで共産主義者の批判する資本主義の欠点みたいなことが、共産主義国家では起こるわけ。皮肉ですね。ついでに言えば、搾取も同様だ。)
posted by 管理人 at 23:47| Comment(9) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
主旨としては確かに。

枝葉ですが、中国ほどの規模の首都であれば、都市内公共交通は地下鉄がいいでしょう。
地上は道路を寸断しますし、高架は景観を損ないます。
地下は地下で地下水対策など、メンテナンスコストがバカにできないですが、高架も無視できる程度ではありませんしね。

もちろん、当初は地上で構\わないわけです。地下化は都市の成長にあわせればいいのですから。
といっても本気の首都の移転となれば、中国のような巨大な新興国は成長もあっという間という気もします。
どこぞの国のようなお粗末なものだと話は違うでしょうが、そうでないならキャパがあるなら地上で開業しつつ、地下鉄建設も当初から始めていてもいい路線もいくつかあるほどでしょう。

また、大気汚染対策を主眼におくならば、公害対策、特に中小の工場からの排煙にも対策を集中すべきで、このあたり、お偉方が避難するためでは?などとゲスの勘ぐりもできてしまいそうです。
といっても汚染が沈静化するまでのことでしょうが。北京という価値ある土地を投げ出すはずはありませんしね。
むしろ、ただの田畑が広がる土地の価値を上げて、土地バブルを狙っているのかもしれませんね(笑)

移転しようがしまいが、北京においても対策は進めなくてはならないはずで、いかに実効性のある規制を敷けるか、見物ではあります。
Posted by ういぬ at 2015年12月16日 17:26
地下は、コストがかかることもさることながら、工期に非常に長い期間がかかります。地上にレールを敷くだけなら、ごく短期間で済みますが、首都全体に日本みたいな地下鉄網を建設するとなると、完成まで早くても 20年はかかるでしょう。
 これはどうしてかというと、地上や高架ならば各箇所で同時に敷設できますが、地下鉄だと、トンネルを掘るのが一箇所だけだからです。100倍ぐらいの工期がかかると考えていいでしょう。
 というわけで、時間的制約から、地下化はダメです。
 現実的には、高架しかないでしょう。

 なお、東京圏のように、環状線から放射状に鉄道が延びているというのは、鉄道同士の交差がないので、優れた方式です。環状線の内部では地下鉄にしないと交差できないだろうが、東京でも渋谷駅みたいな大深度地下を使うのは、大失敗の見本ですね。地上に出るまで 10分もかかる。
Posted by 管理人 at 2015年12月16日 19:09
指導者の共産党にまつわる汚職撲滅キャンペーンがおわるまで、大規模な鉄道のようなインフラ整備は、行えないのではないかな。

近隣の自称先進国の日本の轍を踏まないように、国を運営してるんだけなんじゃないかな。百年千年先を見越して…。

なにせ、今、最も優秀な指導者の一人ですもの。
オバマ破産管財人、プーチン、おんかほう
Posted by 素人 at 2015年12月16日 22:42
>環状線から放射状に鉄道が延びているというのは、鉄道同士の交差がないので、優れた方式です。

環状線のエリアに行きたい人にはとても優れた方式ですが、環状線のエリアが通過点に過ぎない人にとってはあまり優れていません。
たとえば、JR大和路線の王寺駅が最寄の人が兵庫や京都へ行きたい場合、大阪環状線を通ることになりますが、天王寺〜大阪が短距離なのに20分かかるのがストレスです。
東京のことはよくわかりませんが、環状線をショートカットする路線が無いなら大阪と同じようなストレスがあるのではないでしょうか。
Posted by クルマ好き at 2015年12月16日 22:56
> 環状線をショートカットする路線が無いなら

あります。東京の山手線は  ◯  型の環状線ではなく、 θ 型の環状線です。
 http://minimini-chuou.jp/images/yamanote/info_img.jpg

 東西をショートカットする路線(中央線)があります。(東京駅や神田駅から新宿駅へ)
 南北は、もともと南北に細長いので、ショートカットしてもしなくても、大差ありません。巣鴨や駒込は、ちょっと不便ですが、ここはターミナル駅というほどではないので、さして問題となりません。

> 王寺駅が最寄の人が兵庫や京都へ行きたい場合、大阪環状線を通ることになります

 これは、環状線があることの難点ではなくて、「環状線しかないこと」つまり「中心がないこと」の問題です。
 東京の場合は、環状線があることとは関係なく、東京駅が「中心」となっていて、ここで全方向への乗り換えが可能です。飛行機で言うハブ空港ですね。
 大阪って、そもそも中心がないんですよね。梅田駅なのか、新大阪駅なのか、難波駅なのか。

 ──

 それとは別に、次の話題もあります。
  http://www.asahi.com/articles/ASHCZ3CP9HCZUTIL002.html
 大阪の地下鉄は、道路の下を走っているので、碁盤の目状に配置される。そのせいで、経路によっては、余分に時間がかかる。(短絡する路線がない。)
Posted by 管理人 at 2015年12月16日 23:39
放射状路線の欠点は環状線もしくは中央駅を経由するしかアクセスの方法がないことです。蜘蛛の巣の様に放射状路線をつなぐ外環状線が必要と思います。
関西圏は奈良線と大和路線、和歌山線がそれを担っているかもしれません。ちなみに王寺〜京都は奈良経由が一般的で。王寺〜神戸は梅田経由となります。
むしろ困るのは枚方や八幡から王寺、香芝へ行く路線がないことでしょう。

北京も風が強いと綺麗に晴れるとのことです。
Posted by 京都の人 at 2015年12月17日 00:04
> 蜘蛛の巣の様に放射状路線をつなぐ外環状線が必要

あんまり必要ないみたいです。あればあったで便利なのでしょうが、利用者は非常に少ないでしょう。いったん山手線(環状線)に入ってから、また出ていくだけで、だいたいは足ります。

 ただ、それは東京圏の場合で、関西圏は違うかもしれませんね。神戸、大阪、京都、奈良がそれぞれ分布していて、それぞれを結ぶ経路が必要だろうし。東京圏は、山手線を経由して、放射状に移動すれば、たいていは足ります。

 あと、都心に行く用事ならばしょっちゅうありますが、郊外へ行く用事というのはほとんどありません。千葉、埼玉、東京西部、横浜というのは、それぞれを結ぶ用事というのは考えられません。それぞれの内部で用事は完結しますし、完結しなければ都心に出向くだけです。別の郊外に行っても、何もありません。郊外に行く用事があるのは、奥多摩や丹沢へのピクニックぐらい。
 関西ならば、神戸や奈良などが独自の文化圏を持っていますが、東京の郊外は、文化圏なんかありません。神戸や奈良などへの旅行は意味がありますが、埼玉や千葉は旅行の意味はほとんどありません。せいぜい横浜に中華街があるぐらい。
Posted by 管理人 at 2015年12月17日 00:15
> 外環状線
東京圏では、南武線と横浜線を思い浮かべます。この線から放射状路線への乗り換えが多いため、黒字線となっているはずです。(近距離定期は効率がよいよです)
Posted by senjyu at 2015年12月17日 18:23
南武線と横浜線は、川崎または横浜を始発とする放射状路線とも見なせるので、採算はいいでしょう。

外環状線と言えるのは、北側の武蔵野線でしょう。
http://j.mp/1ZdyNrd
Posted by 管理人 at 2015年12月17日 19:14
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