読売・朝刊 2015-11-29 に詳しいが、ネットにも簡単な情報はある。転載しよう。
《 診療報酬、マイナス改定へ… 1700億円を抑制 》
政府は、医薬品の値段(薬価)や、医師、薬剤師らの技術料の価格(本体)を見直す 2016年度の診療報酬改定で、全体の改定率をマイナスとする方向で調整に入った。
16年度予算編成の焦点である社会保障費の抑制は、目標とする約1700億円の抑制分をほぼ診療報酬のマイナス改定でまかなう考えだ。
( → 読売新聞 2015-11-29 )
これだけ読むと、医師の診療報酬が大幅に引き下げられるように読めるが、新聞記事を詳しく読むと、そうではないとわかる。
要点は、「薬剤師の技術料の引き下げ」であるようだ。
診療報酬のうち、薬価については毎回、実勢価格下落に合わせ1〜2%程度下げてきた。来年度も同水準の引き下げをする。一方、本体でも、大病院に隣接して多くの処方箋を受け付けるだけで、服薬指導などをしていない「門前薬局」の報酬引き下げなど薬剤師の技術料にも切り込む。
( → 診療報酬:マイナス改定へ 本体の引き下げ焦点 - 毎日新聞 2015年11月22日 )
薬剤師の報酬が高すぎる。この点が問題だ。
この点については、以前、本サイトでも言及したことがある。
薬局(処方箋薬局)が開店した。呆れた。これでいくつめだろう? たいして大きくもない駅前周辺に、やたらと多数の薬局がある。
( → 薬局が多すぎる )
やたらと数が多いから、規模は小さくなる。そのせいで、在庫の品目が不足して、必要な薬も入手できなくなる。
処方薬局の薬の数は、1部屋に収まる程度の数でしかない。そんなもので足りるのだろうか……とかねがね疑問に思っていたが、足りません。その被害に遭った。
この薬は、ごく平凡な抗生物質だ。ただの化膿止めである。アスピリンや胃散みたいに平凡な薬だ。こんなものでも、ジェネリックというだけで、どの薬局にも在庫がなくなる。呆れた。
で、ジェネリックが使えないから、国の医療費用も高くなるわけだ。(今回の分で言えば、先発薬は倍額になる。私の支払いも、国の支払いも、倍額。)
薬局の数はあまりにも多すぎる。数を減らして、ひとつずつの規模を大きくするべきだろう。そうすれば、在庫不足もなくなるはずだ。
( → 薬局が多すぎる 2 )
これについては、医師から指摘のコメントがあった。
>小規模の方が有利なような、何らかの事情がある。
これが正解。
http://kanri.nkdesk.com/kasan/kasan1.php
集中度の高い薬局の報酬が低くなるよう、点数設定されています。
Posted by 井上晃宏
( → 薬局が多すぎる 2 コメント欄 )
上記のリンク先を見ると、「集中度の高い薬局の報酬が低くなる」つまり「小規模の薬局ほど報酬が高くなる」ように設定されている。そのせいで、やたらと薬局が増えるのだ。しかも、国庫からの支払いも増えてしまう。
本来は、その逆にするべきだろう。つまり、大規模な薬局ほど、報酬が高くなるようにするべきだ。そのことで、集約を薦めて、効率を高める。
そうすると、需要のバラツキがなくなるから、患者としては待たされる時間が減る。薬局は必要な人員を減らせる。だから、報酬は低レベルで済ませることができる。
ま、現実的には、「大規模な薬局ほど、報酬が高くなる」というのは無理だろうが、少なくとも、「規模の差による報酬の差」はなくすべきだ。(どの規模でも同じ報酬にするべきだ。)
それにともなって、報酬を大幅に引き下げるべきだ。
とりあえずは、現在の小規模向けの報酬を、大規模向けの報酬にまで、引き下げるべきだろう。
とにかく、今のままでは、街中に薬局が多すぎる。非効率の極みだ。小さなものをたくさん作るより、大きなものを少数作ればいい。そうしてこそ、医薬分離の意味がある。(できなければ、医薬分離の意味がろくにない。かえって支払いが増えてしまう。)
[ 付記 ]
医師の診療報酬は、引き下げるべきかどうかは、私としては特に述べない。現状はかなり高いが、医師は過酷な労働環境にあるのだから、かなり高いのはやむを得ないとも言える。上げろとも下げろとも言わない。
ただし、全体的な水準は別として、個別には、上げるべき診療科がある。
・ 救急医療
・ 産科
この2分野だ。この2分野では、診療報酬を上げる必要があるだろう。
救急医療については、単純に診療報酬を上げるといい。今は人手不足なので、「診療報酬を上げる」「休みを増やす」という二点セットで実行することで、救急医療の医師の総数を増やすことができる。
産科については、医師そのものを増やすというよりは、医師を助ける助産師の高度版みたいなものを増やす方がいいだろう。また、医師の集約化も有効だろう。この件は、前にも述べた。
→ 助産師の根本問題
→ 産科医院を集中設置せよ
→ 産科医不足を集約と女医で
産科の場合は、「報酬を上げれば医師が増える」というものではない。「内科医を引っ張ってきて、産科医にすればいい」というものではない。内科医よりは、助産師の方が、産科医に近い。ここから戦力を引っ張ってくる方がいいだろう。