2015年11月28日

◆ バター不足の理由

 バター不足の理由について、NHK が報道しているが、間違いだ。 ──

 バター不足の理由について、NHK が報道している。
  → バター“品薄”本当の理由は

 牛乳の行先が、(価格の高い)生乳向けが優先されて、(価格の低い)バター向けは後回しにされるから……というふうに述べている。

 しかしこれは、正しくない。
 ここで述べているのは、あくまで、国内生産の分だ。そして、国内生産の分ではバター向けの牛乳が足りないのであれば、国外から輸入すればいいのだ。それだけのことだ。
 なのに、そうならない。なぜか? 輸入制限があるからだ。

 その輸入制限は、TPP によって、改善するはずだった。少なくとも、そう期待された。しかるに現実には、消費者の期待は無視され、生産者の都合ばかりが有せされた。かくて、バターの関税は少しも下がらない。また、輸入枠もわずかに増えただけだ。
 結果的に、輸入制限が続くので、いつまでたってもバター不足は解消しない。輸入枠が少し増えたので、不足がいくらか改善されるというだけだ。
 一方で、酪農家は減りつつあるので、国内生産分の牛乳はどんどん減少する。このままでは、バター不足は改善するどころか、悪化しかねない。
 
 とにかく、諸悪の根源は、国によるバターの輸入制限だ。これが TPP でもほとんど改善されなかった。
  → TPP の結果(バターの関税率・輸入量)

 これが真相なのだから、この真実を、マスコミは報道するべきだ。なのに、報道しない。かわりに、真相とは関係のないことばかりを報道する。困ったことだ。



 【 追記 】
 もう一つ。マスコミは、政府の嘘も指摘するべきだ。
 「バターの輸入制限をするのは、農家の所得を守るため」
 というふうに政府は主張している。つまり、
 「輸入制限しないと、バターの市場価格が暴落するから、農家の所得が下がってしまう」
 という理屈だ。しかし、これは嘘だ。

 正しくは? 冒頭の NHK のページからわかるように、バター向けの牛乳の買い取り価格は大幅に安い。
 生乳はなま物であるため日持ちせず、気候などによって生産量が変動しやすいという特徴があります。このため、牛乳、生クリームなど鮮度を求められるものほど優先され高い価格がつきます。
一方、加工され、保存がきくバターは相対的に優先度が下がるため価格は安くなり、後回しになってしまう傾向があるのです。バター用と牛乳の生乳の価格の差は4割近くにもなります。

 つまり、バター向けの価格は、もともと大幅に安いので、農家の所得を守る効果はないのだ。(農家の所得を守るためならば、バター用の牛乳の買い取り価格を上げるか、牛乳用の牛乳の買い取り量を増やせばいい。)
 バターの輸入を増やすと、確かに市場が価格は下がるが、それで困るのは、バター生産会社(雪印メグミルクなど)だ。農家は関係ないのだ。(どっちみちバター向け牛乳の買い取り価格は大幅に安いからだ。安すぎて、売りたくない。)
 政府の言っていることは、嘘八百である。嘘八百の理屈で、消費者に莫大な負担を押しつけている。
 では、この嘘によって得をしているのは、誰か? 消費者が損をしているのだとしたら、得をしているのは誰か? 
 バター生産会社か? いや、バター生産会社は、普通の利益を得ているだけであって、特にボロ儲けをしているわけではない。
 ボロ儲けをしているのは、「農畜産業振興機構」という機関だ。そして、それは農水省の利権となっている。
 《 バター不足の元凶。農水省バターマフィアのセコ過ぎる利権構造とは? 》
 農水省の天下り団体「農畜産業振興機構」によるバター輸入業務の独占。……実のところ「農畜産業振興機構」の仕事といえば、書類を右から左に流すだけ。それだけで巨額の収益を得ていることになる。
 輸入業者はわざわざ機構にバターを買い入れてもらい、農水大臣が定めた1kgあたり最大806円の輸入差益(マークアップ)なるものを上乗せされた価格で買い戻さないといけないという、不可思議な制度になっているのだ。
 「この団体設立の大義名分は酪農家保護ですが、実際には消費者、バター関連業者、さらには酪農家にも厄災をもたらす厄介者です。百歩譲って本当に農水省がバターの国家貿易が必要だと信じているなら、農水省本体がやればいいこと。なぜ民間開放の流れにかこつけて独立行政法人に仕事を回すのか。いずれその天下り団体で自分たちが高給を得るためなのです」
 「解決策は実にシンプルです。輸入利権を廃止し、バター輸入を自由化するだけなんですから」
( → ハーバービジネスオンライン

 消費者が大損をしている理由は、酪農農家の保護ではなくて、農水省の利権なのである。だからこそ TPP の交渉では、農水省は徹底的に抵抗したわけだ。「酪農家を守るため」という嘘の美名の下で。

( ※ 実を言うと、農畜産業振興機構は、差益を丸々かすめ取っているわけではない。支出の大部分は、農家への補助金支出などで、農業振興のための正当な業務となっている。とはいえ、その支出は、農業とは関係のない箱物建設などに使われることも多く、きわめてずさんだ。おかしな浪費をするために、消費者の金をむさぼっている。そして、そこに寄生して甘い蜜を吸うのが、農畜産業振興機構の連中だ。連中が振興するのは、農業生産そのものではなくて、甘い蜜を吸う事業だ。これも農業か?)



 【 関連項目 】

 → バターとチーズの関税
  ※ これは、本項と似た話題。

 → TPP とバター
  ※ これは、TPP の側から、話題を取り上げる。
  ※ 本項の 【 追記 】 の内容にも言及済み。

 → 備蓄の大切さ(バター不足)
  ※ これは、備蓄の側から、話題を取り上げる。
posted by 管理人 at 23:07 | Comment(1) | 一般(雑学)3 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
後半に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2015年11月29日 15:20
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