炭酸ガスの削減を市場取引するのに似て、電気の削減(つまり節電)を市場取引する制度が、「ネガワット取引市場」だ。これを創設する旨、政府が方針を示した。
《 政府 COP21 前に省エネ推進の新方針 》
政府は省エネを推進するため、企業などが節電した電力を売買できる市場を、再来年までに創設することなどを含む、新たな方針を取りまとめました。
家庭や企業が節電した電力を売買できる「ネガワット取引市場」を再来年までに創設するほか、来年度、照明器具メーカーなどへの省エネ性能に関する規制を強化し、白熱灯や蛍光灯から LEDへの切り替えを促すとしています。
( → NHKニュース )
節電を優遇するというのは、前からあった。「需給調整契約」というものだ。あらかじめ契約した会社にたいして、電力会社が「明日は節電してください」「本日午後は節電してください」というふうに要請すると、契約した会社は強制的に機械を止めたりして節電する、というものだ。
この方式は、どうしても節電が必要なピーク日だけに節減する方式なので、とても効率がいい。
一方、「とにかく節電が大切だ」とばかり、夏には毎日やたらと節電の努力をするのは、無意味なことだ。
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では、この「ネガワット取引市場」というのは、どちらのタイプか? 前者(指定日だけ)か、後者(毎日節電)か?
念のため、調べてみたら、このページに解説があった。
→ 節電した電力を売れる、「ネガワット取引」が小売自由化で活発に
一部抜粋しよう。
「ネガワット取引」は文字通り、電力量(ワット)の削減分(ネガティブ)を売買することである。通常は「アグリゲータ」と呼ぶ仲介会社が間に入って、電力会社の要請に応じて一般企業が節電に協力する方法をとる(図1)。
このように電力会社からの要請を受けて節電に協力することを「デマンドレスポンス」と呼び、デマンドレスポンスを実施することによってネガワット取引が発生する仕組みだ。
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実際のネガワット取引の流れは次のようになる(図5)。電力会社が需給状況の予測に基づいてアグリゲータに節電を要請すると、アグリゲータは必要な節電量をもとに需要家ごとの節電量を設定する。アグリゲータから要請を受けた需要家はガイドラインに従ってベースラインを設定してから、必要な削減量を確保できるように節電を実施する段取りだ。
というわけで、「前者(指定日だけ)であり、後者(毎日節電)ではない」とわかった。
ならば問題ない。大いに推進するといいだろう。「需給調整契約」は主導の方式だったが、それを電子的に自動化するわけだから、一段上の進歩的な方式だと言える。リアルタイム制御も可能となる。
ただ、現実には、これが発動される可能性はとても小さい。実際、「需給調整契約」が発動されたことは、これまで一度もなかった。東日本大震災のあった 2011年の夏でさえ、「需給調整契約」は発動されなかった。(具体的な需給は下記にデータがある。)
→ 東電の電力状況(2011年)
2011年の夏でさえ、余裕があった。まして、それ以後の年では、電力の供給量は常に余裕があった。「ネガワット取引市場」が実際に機能することは、まず、あり得ないだろう。あるとしたら、また大震災が起こって、また原発が放射性物質をまき散らしたような場合か。まさか、そんなことは、二度とあるまい……と思うが。
( ※ しかし自民党は、浜岡原発の再稼働をめざしているので、福島原発の二の舞は起こらないとは言えないな。電力不足より、こっちの方が怖いね。)
[ 余談 ]
「ネガワット」って、語感があんまり良くない。ネガティブな感じ。
ちなみに、NOTTV というサービスは、つぶれた。
→ 報道発表資料 : 「NOTTV」サービスの終了について | NTTドコモ