2015年11月22日

◆ フローレス原人

 フローレス原人はジャワ原人から派生したことが判明したそうだ。

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    ( ※ 本項の実際の掲載日は 2015-11-21 です。)



 フローレス原人は、もともとは系統が不明で、「ホモ・フロレシエンシス」または「ホモ・フローレシエンシス」と呼ばれていた。その後、原人の一種であることが判明したが、このたび、ジャワ原人から派生したことが判明したという。
 これは、先に私が予想したとおりだ。

 ──

 これまでの経緯は次の通り。
 2003〜2004年、ホモ・フロレシエンシスの化石が発見されたが、この時点では、系統は不明だった。
 2004年,インドネシア・フローレス島の洞窟を発掘していたオーストラリアとインドネシアの研究者チームが身長1m足らずの小さなヒトの骨を発見したことをNature誌で発表した。このヒトの仲間は今からほんの1万3000年前まで生きていたという。
 化石を分析したオーストラリア・ニューイングランド大学のブラウン(Peter Brown)らは,この人骨を新たなホモ属の一員と結論づけ,ホモ・フロレシエンシスと命名した。脳の大きさはグレープフルーツほどだが,化石が見つかった洞窟からは高度な石器も発見されており,現生人類に匹敵する認知能力をもっていた可能性もうかがえる。
 一方,ホモ・フロレシエンシスを新種とする見方に異を唱える研究者もいる。オーストラリア・アデレード大学の古人類学者ヘンネバーグ(MaciejHenneberg)は,見つかった人骨の特徴が小頭症という病気で説明できると反論。これに対してブラウンは,ホモ・フロレシエンシスの小型化はいわゆる島嶼化によるもので,環境への適応だったと述べる。
 また,小柄で脳が小さく,大腿骨頸部が長いといった特徴は,ホモ・エレクトスではなく,ホモ属の初期のメンバーであるホモ・ハビリスの系統に連なる祖先を暗示するという見方もある。ミシガン大学のウォルポフ(MilfordH. Wolpoff)は,さらに時代をさかのぼり,彼らがアウストラロピテクスから枝分かれした可能性もあると指摘する。こうした謎を解明するには,今後の発掘成果を待たねばならない。
( → 人類進化の定説を覆す 小さな原人の発見 | 日経サイエンス

 こうして、謎が生じた。わけがわからないというありさまだった。
 しかしながら私は論理的に、「これは原人の一種である」と推定した。(仮説)
  ・ 基本的には、原人(ホモ・エレクトス)の仲間と見なせる。
  ・ 新人(ホモ・サピエンス)の一種ではない。
   (新人ならば、そこまで極端に脳が縮小するはずがない。)
  ・ 縮小の直接的な理由は、島嶼化でなく、成長ホルモンの分泌停止。
   (つまり、小人症の一部と同じ理由。一種の奇形。)
   (このことからして、完全な新種ではなく、既存種の仲間。亜種ふう。)
  ・ 多数の個体が残ったわけは、環境への適応。(森林への適応 )

 ──

 ホモ・フロレシエンシスは、
 「原人よりも進化しているのに、原人よりも脳が小さい」
 というふうに見える。だが、そうではない。実は、
 「あくまで原人の一種である。原人よりも進化しているということはない。また、原人よりも脳が小さいということもない。脳は、原理的に小さいのではなくて、原理的には大きいのだが成長を途中で止めただけだ。」
単に成長を途中で止めただけだ。

 小人症.....の人々は、新種の人類であるわけではない。単に成長を途中で止めただけだ。
 ホモ・フロレシエンシスも同様であろう。原人から進化した別種であるわけではない。あくまで原人の枠内に留まる。ただ、成長を途中で止めたのだ。そして、そういう集団ばかりが生き延びた理由は、「環境への適応」である。
 ただし、その「環境への適応」は、人類が進化の過程で通った道筋( 森林 → 草原 )ではなく、その逆( 森林 ← 草原 )であった。そのせいで、一見、進化の逆行(退化)のように見えるのだ。
( → ホモ・フロレシエンシス

 こういうふうに「原人の一種である」というふうに推定した。(2010年04月11日)

 その後、「原人の一種である」ということは裏付けられた。(2013年)
 インドネシアのフローレス(Flores)島で化石が発見され、その体の小ささから「ホビット」という通称で呼ばれているフローレス原人(学名:ホモ・フロレシエンシス Homo floresiensis)は、食料が少ない小さな島の中で進化する過程で小型化した可能性があることが分かったと、国立科学博物館(National Museum of Nature and Science)の研究チームが発表した。
 2003年にインドネシアとオーストラリアの合同チームによって初めて化石が発見されたフローレス原人については、それよりはるか昔に生息していたヒト科の一種「ホモ・ハビリス(Homo habilis)」の子孫だとする説や、フローレス原人が生きていた時代には現生人類ホモ・サピエンス(Homo sapiens)も存在していたことから、フローレス原人はクレチン病(先天性甲状腺機能低下症)で成長が阻害されたホモ・サピエンスにすぎないとする説などが出されていた。
  国立科学博物館の.....研究チームによると、最初にアフリカ大陸を出たヒト科の一種「ホモ・エレクトス(Homo erectus)」の身体が小型化して、脳がフローレス原人程度の大きさになることは十分に考えられるという。ホモ・エレクトスは170万〜5万年前に生息していた種で、ホモ・サピエンスと比べると背丈と体重はほぼ同じだが、脳の大きさは小さい。
 ホモ・エレクトスの亜種であるジャワ原人がフローレス島の環境に合わせて「島しょ化」と呼ばれる現象によって小型化した可能性を示唆している。
( → インドネシアのフローレス原人、進化の過程で小型化か:AFPBB News

 もっと詳しい話は下記。
  → 小型の人類「フローレス原人」の脳サイズが確定(PDF)

 こうして、ジャワ原人の系統であることが推定されたわけだ。そしてこのたび、化石を通じて、ジャワ原人の系統であることがほぼ確定したそうだ。
 インドネシアのフローレス島で化石が見つかった身長1メートル程度の「フローレス原人」が、現代人並みの身長のジャワ原人から進化したことを示す有力な証拠を見つけた、と国立科学博物館などのチームが発表した。孤立した島で、外敵がいないことなどから大型動物のサイズが劇的に小型化する現象が人類にも作用したと考えられる、という。
 身長や頭蓋骨のサイズが小型の猿人ほどしかないことから、初期の原人の特徴をそのまま引き継いだ子孫なのか、そこから一度大型化したジャワ原人が進化の過程で小さくなったのか、学説が対立していた。
 国立科博の海部陽介・人類史研究グループ長らは、フローレス原人の歯の化石を詳細に分析。多様な化石人類や現代人と比較したところ、175万年前より新しい原人、中でもジャワ原人と特徴が似ていて、それより古い原人の特徴は認められないことが分かった。「歯は人類の系統進化を探る上で最重要の部位の一つ。ジャワ原人か、その仲間から進化した、という仮説を強く支持する結果だ」としている。
( → 1メートルの原人「進化して小型化」 国立科博など発表:朝日新聞

 こうして、「ジャワ原人の系統にある」ことが判明したわけだ。
 この意味で、私の仮説は正しかった、と見なしていいだろう。

 ──

 なお、国立博物館の認識は、まだ私の仮説に追いついていない。いくつかの点で矛盾があるからだ。

 (1) 脳の小型化

 国立博物館の認識では、脳の小型化を説明できない。「孤立した島で、外敵がいないことなどから大型動物のサイズが劇的に小型化する現象」というのは、「島嶼化」という概念であり、「フォスターの法則」とも言われる。
 とはいえ、この概念では、「脳の小型化」は説明されない。
 一般に、進化にともなって、脳が小型化することは起こりにくい。脳の小型化は、知性の低下を意味するので、有利どころか不利になるからだ。脳の小型化が知性の低下をともなわないためには、脳が構造的に大きく進化する必要があるが、それは容易に起こるものではない。種の進化をともなう。
 ところが、ジャワ原人とフローレス原人は、ほとんど種の進化がない。亜種レベルといってもいいぐらいだ。とすれば、脳の構造的な変化などはあり得ない。ならば、小型化は脳の知性低下をともなうはずだ。それが進化であるはずがない。
 このような矛盾が生じる。

 この問題は、「成長を止めただけ」という説でなら、十分に説明可能だ。たとえば、小人症の人間もいるが、特に知性が低いわけではない。
 これはどういうことかというと、たぶん、脳細胞も小型化しているせいだろう。というか、脳細胞が大型化しなかったせいだろう。人間は、成長にともなって脳のサイズが増えていくが、脳の細胞数が増えていくわけではない。脳の細胞数は、生まれたときが最大であり、あとは減るばかりなのだ。
 脳の神経細胞は、損傷すると再生することはありません。出生後、一度も細胞分裂せず、ほぼ同じ細胞を一生使い続けます。
 脳の神経細胞は、5歳ぐらいまで急速に成長します。20歳になるまで脳の重量は増え続けます。しかし、20歳を過ぎると脳の重量と容積は減少していきます。
 脳の神経細胞の数は、生まれたときが一番多く、加齢とともに減っていきます。
( → ニッスイ企業情報サイト

 小人症であろうとなかろうと(脳のサイズが大きかろうと小さかろうと)、脳の細胞数は同じだ。とすれば、(多少の不利はあるとしても)特に大幅に知性が劣るということはないはずだ。こうして、「脳のサイズの小ささ」が説明される。「成長を止めた」という理解によって。

 国立科学博物館の認識には、その観点がない。単に「島嶼化で小型化した」というだけだ。これでは「進化した」ということを説明できていない。

 (2) 進化か?

 国立科学博物館の認識は、これを「進化」と見なす。しかしながら、たかがサイズの違いぐらいを「進化」と見なすのは妥当ではない。
 たとえば、現生人類でさえ、小型化した種族がいる。ピグミーがそうだ。彼らは小型の人類ではあるが、ホモ・サピエンスの一種だ。
 mtDNAの集団内多様性や核DNAの研究から、実際にはピグミーと他の人々は6-7万年前に分岐し、2万年前に東と西にピグミーが分岐した。
( → ピグミー - Wikipedia

 小型化の理由は、「成長がストップ」であるようだが、その時期は、二通りあるそうだ。
 ピグミーと呼ばれる小柄な人々の集団。彼らは平均的な体格で生まれるが、幼児期の早い段階で成長が遅くなることが、新たな研究で分かった。低身長の理由についてこれまで支配的だった「思春期の急成長が起こらないため」という定説に疑問を投げかける結果だ。
( → 人類の低身長化の過程で新発見、ピグミーの研究で | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

 詳しくは下記だ。
 西アフリカの少数民族ピグミー(Pygmy)は、近縁関係にある東アフリカのピグミーとは非常に異なる形で、独自に低身長形質を進化させたとする研究結果が28日、発表された。
 バンツー(Bantu)語を話す共通祖先から約6万年前に派生したピグミーの身体発育が、他の人類種族とどのように異なっているかについて、科学者らは長年、研究してきた。
 ピグミーは生まれつき低身長なのか。それとも、ある時点で成長が止まるのだろうか。
 カメルーンのバカ(Baka)ピグミー族数百人の出生から成人までの発育データに基づく今回の最新研究により、同族の成長パターンが、低身長でない人類種族とも、他のピグミー族とも異なっていることが分かった。
 バカ族の場合、新生児は標準サイズだが、生後2年間の発育が著しく遅くなった。論文によると「その後はおおよそ標準的な成長パターンがみられ、青年期には成長スパートも起きる」という。
 東アフリカのエフェ(Efe)族やスア(Sua)族の場合、出生時にすでに低身長であることが、これまでの観察で判明していた。
 成長パターンが異なるにもかかわらず、西部と東部のピグミー族は、成人時には同程度の身長になる。
 「これは(約2万年前に)ピグミーが東アフリカと西アフリカに分離した後に起きた」と語った。
( → ピグミーの小型化、人類繁栄を解明するカギに :AFPBB News

 いずれにせよ、同じホモ・サピエンスという種のなかで「成長の停止」という形で小型化が起こった。これは決して「新しい種に進化した」というようなものではないのだ。あくまで同一種内の、亜種レベルの差にすぎない。

 したがって、「フローレス原人はジャワ原人が進化した小型化したもの」という国立博物館の認識は妥当ではなく、「フローレス原人はジャワ原人のうちの小型化した亜種」と見なすのが妥当だろう。それが私の判断だ。
 


 [ 付記 ]
 「進化した」という言葉について言うと:
 小進化も進化の一種である、という認識を取るならば、形態が変化したのを「進化」と見なすのも、おかしくはない。
 しかしながら、「ジャワ原人から進化した」と見なすのはおかしい。進化したあとも、あくまでジャワ原人と同種のものであるからだ。これは、次のような矛盾した表現と同様だ。
  ・ 日本から、日本へ出た。
  ・ 1階から、1階へ上がった。
  ・ 部屋の中から、部屋の中へ出た。

 要するに、変化をともなうときには、変化の前と後とが同じであってはならない。ジャワ原人とフローレス原人は、同じレベルの進化段階にあるのだから、「ジャワ原人からフローレス原人へ進化した」という表現は成立しない。
 では、何が成立するかというと、こうだ。
 「ジャワ原人の一部から、フローレス原人へ、という小進化があった」
 同様に、次のことも成立する
 「ホモ・サピエンスの一部から、ピグミーへ、という小進化があった」
 一方、次のことは成立しない
 「ホモ・サピエンスから、ピグミーへ、という進化があった」




 【 地図 】

 フロレス島は、ジャワ島のすぐ東にある。








 【 関連項目 】

 → ホモ・フロレシエンシス ( 2010年の項目 )
posted by 管理人 at 18:23 | Comment(0) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
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