2015年11月19日

◆ 欧州の集団的自衛権

 フランスのテロ事件のあとで、EUが集団的自衛権の行使を決めた。 ──

 記事を示そう。
 《 EU、初の集団的自衛権の行使表明…仏を支援 》
 パリ同時テロを受け、欧州連合(EU)は17日、ブリュッセルで国防相理事会を開き、フランス政府が求めたEU基本条約に基づく集団的自衛権の行使について全会一致で支援を表明した。
 加盟国が武力攻撃を受けた場合、他の加盟国が軍事的手段を含めた支援を行う同条約の条項で初めて発動される。北大西洋条約機構(NATO)と違って軍事同盟ではないため、協力内容は仏政府が加盟国と個別に協議して決める。
( → 読売新聞 2015年11月18日

 さて。これは、日本の集団的自衛権と同じだろうか? いや、異なる。次の点だ。
  ・ EUの方は、国家間の集団的自衛権
  ・ 日本の方は、軍隊の集団的自衛権


 説明しよう。
 EUの方は、国家間の集団的自衛権だ。ある国が攻撃されたとき、他の国が仲間として助ける。これは国家間の「同盟」とほぼ同義である。(二国間とは限らない点が異なるが。)
 日本の方は、軍隊の集団的自衛権だ。たとえば、米艦が攻撃されたときに、日本の自衛隊が「米艦を助けるため」と称して、敵軍を攻撃する。

 この両者は、「集団的自衛権」という名称は同じでも、内容はまったく異なる、という点に留意しよう。

 EUの方は、国家の存立に関わる。フランスが攻撃されたときに、イギリスやドイツが敵を攻撃するというのは、欧州諸国が一体となって敵に対立するということであり、欧州が全体として自分たちを守るということだ。これをやらない場合には、欧州のどこかが攻撃を受けることになる。(今回はフランスが攻撃された。)

 日本の方は、国家の存立に関わらない。たとえば、日本海にいる米艦が攻撃されたとして、そのことで米国という国家や国民には影響しない。米艦は日本海から退去するだけで、攻撃を免れる。要するに、勝手に北朝鮮を攻撃しようとするから、北朝鮮の攻撃を受けるだけだ。朝鮮半島なんかほったらかしておけ、という方針を取れば、何ら攻撃を受けずに済む。……ここでは、米国が守ろうとしているのは、米国の海外戦略であって米国の本土や国民ではないのだ。
 これは米国の自衛とは何の関係もない。したがってこれは米国との間の集団的自衛権ではない。(米国の存立が脅かされるわけではないからだ。この点、欧州の場合とはまったく異なる。)
 簡単に言えば、海外派兵した軍隊に対して、「集団的自衛権」を持ち出すのは、まったくの見当違いだ、ということになる。例として、米国がベトナムで勝手に戦争をしたり、イラクで勝手に戦争をしたとき、その米軍を守ろうとして自衛隊が敵軍を攻撃するのは、ナンセンスだ。これでは自衛隊が米国の手下になることになる。
 もっとも、これでは駄目だということは、政府もわかっている。だから政府は、「わが国の存立に関わる場合に限り」と制限を加えている。とはいえ、「わが国の存立に関わる場合」というのは、政府の解釈でいかようにもなるから、これでは政府に参戦の判断を白紙委任したことに等しい。朝日新聞もそう指摘している。
 他国への攻撃によって日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態――。そんなときに個別的自衛権では対応できないことが、現実に起こりえるのか。根本的な問いに答えがない。
 もともと安倍首相が掲げたのは、日本人の母子が乗る米国の軍艦のイラストだった。「日本人の命を守るため、米国の船を守る」とし、それには集団的自衛権が必要だと語った。
 だが、今週の参院で民主党が「邦人が米軍艦に乗っていることの、どこが『存立危機』なのか」とただすと、中谷防衛相は「邦人が乗っているかは判断の要素の一つではあるが、絶対的なものではない」と述べた。これでは説明になっていない。
 これまでに政府側が挙げた具体例としては、公海上で弾道ミサイル対応に当たる米艦の防護や、中東ホルムズ海峡での機雷掃海がある。だが、艦隊を組む米艦が自衛隊に守ってもらうような事態に現実味があるとは言い難い。
 国民の目にはっきりと見える日本への攻撃と違って、他国への攻撃が日本の存立に影響するかを判断する認定は、政府の恣意に左右されやすい。
 だからこそ一定の基準が必要なはずだが、政府のいう武力行使の新たな要件は歯止めにはなり得ない。このままでは集団的自衛権を行使する決断を政府に白紙委任するに等しい。
( → 朝日新聞 2015年8月28日

 これの何が問題か? 米軍を守ってあげることぐらいは、何も問題はないのではないか? そう思うかもしれない。そこで説明しよう。

 朝鮮有事の事態になったとしよう。ここで、北朝鮮の軍事力は貧弱なのだから、放っておいても構わない。北朝鮮が韓国と米国の双方を打破することなどはあり得ないからだ。日本としては何もしないのが最善だろう。(何もしなくても自動的に解決されるから、特に問題ない。)
 ところが、北朝鮮のミサイルが米艦に向かったとする。米艦に向かったとしても、米艦は自力でミサイルを撃破できるはずだが、ミサイルを節約するために、「日本のイージス艦で迎撃してくれ」と頼むことはあるだろう。(お金と兵器がもったいないからだ。)
 で、日本がイージス艦で迎撃したとする。この場合、自動的に、日本は戦争に参戦したことになる! それまでは日本は関与しない第三者の立場だったのに、ここでいきなり参戦することになる。
 参戦したのだから、日本は北朝鮮と戦争関係になる。当然、北朝鮮から日本へ、ミサイルが発射される。ミサイルが発射されても、命中精度は低いから、日本の山や川や道路に落ちる可能性が高い。それでもまあ、人的被害が十人ぐらい出るかもしれない。そこで日本は「戦争だあ! 大変だあ!」と大騒ぎになる。このとき、「イージス艦は何をしている! ミサイルを迎撃しないのか!」という批判が起こる。だが、仕方ない。手持ちの迎撃ミサイルは、米艦を防護するために、すでに使い果たしてしまったのだ。日本の本土を守るための分は、もはやなくなってしまったのだ。
 米軍は、そうなることがわかっているから、「日本のイージス艦で迎撃してくれ。おれたちはミサイルを節約するからね」と思って、日本に頼んだわけだ。で、結局、そのもくろみ通り。かくて、米軍は守られ、日本の本土はミサイルの被害を受ける。
 本来、軍というものは本土を守るためにある。だが、この例では、「軍を守るために本土を犠牲にする」という形になる。また、「同盟国を守るために自国を犠牲にする」という形になる。愚の骨頂。

 ──

 以上から何がわかるか? 
 「国家間の集団的自衛権」というEUの方針は、妥当である。
 「軍隊の集団的自衛権」という日本の方針は、馬鹿げている。わざわざ遠い国まで出掛けて戦闘行為をしようという軍隊を、日本がわざわざ守ってあげる必要はないのだ。
 日本が守ってあげるとしたら、米国の本土が攻撃されたときだろう。そのような場合には、日本も米国に協力した方がいい。(たとえば将来、米国と中国が戦争をしたときには、日本は全面的に米国の側に付いて、中国の侵略を打倒した方がいい。)
 一方、米国が勝手に朝鮮や中東に軍隊を派遣したときには、それが日本に影響しようがしまいが、日本が米軍という軍隊を守ってあげる必要などはないのだ。それは、米国の存立には関係なく、米国の海外戦略に関係するだけだからだ。こんなものは、集団的自衛権とは関係がないのだ。このような場合には、米国は単に手を引くだけで片付くことだ。そんな場合に、日本がいちいち手を出して、こちらから戦争に参加する必要はない。
 はっきり言って、韓国が北朝鮮に攻められたときには、日本は放置するべきだ。韓国自身が「日本の軍隊が来たら困る」と言っているからだ。そういうふうに「助けられたくない」と思っている国のために、日本が何かする必要はない。仮に、韓国が北朝鮮に侵略されて占領されたとしても、別に構わない。韓国の全体が焼け野原となって、韓国人が何百万人も殺されたとしても、別に構わない。韓国人は日本に助けられたいとは思っていないのだから、ほったらかしておけばいいのだ。
 ただ、韓国が北朝鮮に徹底的に侵略されたら、その時点で、「助けてくれ」と言うだろう。そうなったら、その時点で、よっこらしょと腰を上げて、北朝鮮を撃破すればいい。それで十分だ。
 日本は韓国を守る必要など、さらさらない。韓国がすっかり侵略されてから、ようやく腰を上げればいいのだ。それまでは何もしなくていいのだ。したがって、朝鮮有事の際には、日本は何もしないのが最善だ。勝手に参戦しても、ミサイルが来たときに、「あれ。全部撃ち尽くしちゃって、もうミサイルが残っていないよ」と嘆くのが関の山だ。
 タマを撃ち尽くしてタマのない日本なんて、無精子症も同然だ。

( ※ 弾切れの話は別項でも。 → 迎撃ミサイルは有効か?



 [ 付記 ]
 朝鮮有事に対しては、日本は「不介入」という原則を立てた方がいい。
 なぜか? 介入しても、韓国に感謝されるどころか、恨みを買うだけだからだ。
 「日本が介入した! また韓国を植民地化しようという魂胆だ。どさくさにまぎれて韓国を支配しようとしている! 日本に謝罪させよ。日本が謝罪するまで、介入を許すな!」
 こういうふうに批判してくるはずだ。感謝なんかするはずがない。日本が韓国のために貢献すれば感謝されるとは思わない方がいい。
 したがって、朝鮮有事に対しては、あくまで「不介入」という原則を立てた方がいい。米艦への支援を含めて、一切、不介入とするべきだ。そして、韓国がすっかり侵略されて、どうにも立ちゆかなくなったら、その時点で、よっこらしょと腰を上げればいい。この時点であれば、日本が介入しても、文句は言われまい。
 逆に言えば、そうなる前には、介入してはならないのだ。介入しても、相手は感謝せず、批判するだけだからだ。韓国のために介入して、恨みを買うなんて、馬鹿げている。
( ※ 仮に、介入したその時点ではちょっとだけ感謝するとしても、以後数十年にわたって、ずっと「日本は謝罪しろ」と文句を言うに決まっている。歴史は繰り返す。)
( ※ そもそも韓国は「日本との間で集団的自衛権を構築するのはまっぴらごめんだ」と言っている。つまり、「攻撃されたときに日本には助けてもらいたくない」と言っている。ならば、いざというときには、助けるべきではないのだ。相手が厭がっているのに、どうしてわざわざ助ける必要がある? 朝鮮有事のときの介入なんて、そんな余計なおせっかいはする必要がないのだ。)



 【 関連サイト 】

 米艦が日本人を乗せて退避させてくれる……というモデルケースがあったが、それは現実にはあり得ない、と否定されている。下記に新聞記事がある。
  → 朝日新聞 2014年6月16日
  → その紙面画像(PDF)
posted by 管理人 at 23:52| Comment(2) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
しょうがないじゃない。
宗主国様からやれと言われたら、やらないと。
宗主国様に楯突くと、殺されちゃったりするから。
国民のことより、自分の明日ですよ。
Posted by 素人 at 2015年11月22日 03:31
安倍内閣が集団的自衛権を導入する前の日本は、別に殺されなかったですよ。

 だいたい、日本を殺すような国と同盟関係を結ぶなんてナンセンス。中国やロシアと同盟関係を結ぶようなもの。つまり、殺すはずがないという確信があるから、同盟関係を結んでいる。

> 国民のことより、自分の明日ですよ。

 米国が安倍首相の暗殺計画を狙うということ? フィクションの見過ぎじゃない?
Posted by 管理人 at 2015年11月22日 09:29
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