2015年11月11日

◆ 漢方薬とビッグデータ

 漢方薬の薬効を調べるには、二重盲検法よりも、ビッグデータの処理の方がいい。 ──

 漢方薬の薬効がはっきりしないこともある、という話題を先に扱った。
  → 漢方医学は疑似科学か?

 これに対して、コメント欄で、
 「ならば漢方薬の薬効を二重盲検法できちんと調べるべきだ」
 という見解が寄せられた。

 なるほど。それは一案だ。しかし、難点がある。
 漢方薬は、もともと、個人ごとに異なる個別的な処方をする。通常、一つの薬だけでなく、複数の薬を組み合わせて使う。また、対応する患者の状況も、「証」(しょう)の違いによって、個別的に多様な違いがある。このような状況は、二重盲検法には適していない。なぜなら、二重盲検法とは、
  ・ どの患者も同一状況だと仮定する。
  ・ 使う薬は1種類だけ。(多様な多剤併用をしない。)
 という原則の下でなされるからだ。この二つの条件を、漢方薬はまったく満たしていない。
( ※ どうしてもやるとしたら、同一条件のサンプルだけを使う必要があるが、そうなると、サンプル数が極端に少なくなる。同一条件の人は少ないからだ。)

 では、どうするか? 
 個人ごとに異なる個別的な処方をするのを調べるとしたら、「多変量解析」をするしかない。つまり、複数の結果変数からなる多変量データを統計的に扱うわけだ。
  → 多変量解析 - Wikipedia

 このようなことは、普通の医者には無理だ。しかし今は、コンピュータが発達している。医者がやらなくても、コンピュータ屋がやってくれる。医者はデータを渡すだけでいい。

 で、コンピュータ屋は何をやるか? いわゆる「ビッグデータ」だ。日本中にいる漢方薬の患者を調べて、そのたくさんあるデータを統計的に処理する。すると、そこに、何らかの傾向が見出されるはずだ。……これこそ、コンピュータ屋のやる「ビッグデータ」の仕事だ。

 だから私は提案する。
 「漢方薬の効果を調べるには、二重盲検法ではなく、ビッグデータの処理で調べよ」
 と。
 これが結論だ。



 [ 付記 ]
 従来の方法とは、次の点で根本的に異なる。
  ・ 少数のサンプル患者でテストする
  ・ 現実の超多数の患者のデータを取る


 前者は、サンプルとなる 300人ぐらいの患者でテストするだけだ。
 後者は、現実に漢方薬を使っている何十万 〜 何百万の患者のデータをすべて使う。
 つまり、データのサイズがまったく異なる。また、対象となる患者の範囲もまったく異なる。

 統計処理の仕方もまったく異なる。
 前者は「確率と検定」という普通の統計処理の方法を使う。
 後者は「ディープラーニング」みたいなコンピュータ技術を使う。統計理論ではなく、AI 理論を使う。
 まったく分野が異なるので、両者をはっきりと区別してほしい。目的は同じだとしても、過程は全然違うのだ。(風力発電と原子力発電ぐらい、大きく異なる。目的は同じでも、やっていることはまったく異なる。)



 【 追記 】
 どうやって調査するか……というと、結果も知るには、単に調査伝票を見るだけでは駄目で、診療内容も知る必要がある。とすると、カルテの内容を理解する必要がある。(個人情報なしで。)
 そのためには、全国共通の電子カルテを用意して、それに記入するソフトも用意して、電子カルテから必要情報(個人情報なし)を抜粋して、自動的に中央センターに送るようにするといい。
 となると、これは、漢方だけでなく、あらゆる病気について、薬や治療の効果をビッグデータとして処理することになる。「さまざまな病気について薬の効果をビッグデータ知る」ということになる。漢方に限らずに。
 こうなると、相当すごい IT技術になりそうだ。



 【 関連項目 】
  
  → 漢方医学は疑似科学か?
posted by 管理人 at 23:20| Comment(4) | 医学・薬学 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
<FONT COLOR="#dd0000">【 追記 】</FONT> を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2015年11月12日 07:34
ロシアのドーピング問題に絡めて、漢方薬の隙を突いた問題提起か?!「さすが南堂さん!」と色めき立ちましたが、違ったんですね(汗
Posted by 菊池 at 2015年11月12日 09:16
疫学分野でやられている後ろ向きコホート研究とは何が違うのでしょう?
単に規模でいえば数十万から数百万規模のデータを扱ってるコホート研究は普通にあります。
コホート研究だと数は多くても普通に統計処理をするだけなので、管理人さんが想定しているものはまた違うものなのでしょうが、門外漢なのものでAI理論と言われてもいまいちイメージが。
数理モデルみたいなのを作って、患者の病態ごとに効果の有無を判定出来るとかでしょうか?
Posted by KOON at 2015年11月13日 17:49
> 何が違うのでしょう?

 人がやるのではなく機械(ソフト)がやる、という点が違います。
 また、統計処理でなくディープラーニングをする、という点も違います。本文中に書いてある通り。
 
> 門外漢なのものでAI理論と言われてもいまいちイメージが。

 ディープラーニングという概念を理解していないのなら、その先には進めません。これは、医学の話ではなく、AI の話です。門外漢には意味不明。
 初心者向け解説ならこれ。
  → http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1507/27/news067.html

> 数理モデルみたいなのを作って

 ディープラーニングは、コンピュータが数理モデルを発見するんです。
Posted by 管理人 at 2015年11月13日 21:43
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ