2015年11月11日

◆ 海外派兵と PTSD

 集団的自衛権の法案が成立して、海外派兵が実現しそうだ。これについて少し論じる。 ──

 集団的自衛権の法案が成立して、海外派兵が実現しそうだ。ただ、これまでのような後方支援ぐらいならばあまり問題はないが、今後は現実の戦闘活動をすると大変なことになる。殺し殺される環境に入れば、非常に大きな負担が自衛隊員にかかる。敵のいないところ(攻撃されないところ)でこっそり支援するのとは事情が異なるのだ。
 特に問題なのは、PTSD(心的外傷後ストレス障害) が起こりがちなことだ。


 (1) 過去の海外派兵

 過去の海外派兵では、どうだったか? 実は、たいしたことがなかった。
 「( PTSD で)自殺者がたくさん発生したぞ」
 と主張した人もいたが、これは、「データの取り方を間違っているだろ」と高橋洋一が批判した。
  → イラクに派遣された自衛隊員の自殺率
 これを受けて、上記の主張者は間違いを認めた。
  → イラク派遣自衛官の自殺率 誤り 東京新聞が訂正

 要するに、過去のイラク派遣では、自殺率はことさら高くはなかったし、PTSD の影響もたいしたことはなかった。そう結論できる。
 ただし、である。これは、過去のイラク派遣が後方支援だったからだ。自衛隊員は殺し殺されるような戦闘活動をしなかった。したがって、過去のことは、今後の海外派遣に適用可能ではない。過去では自殺者が出なかったからといって、今後には自殺者が出ないとは言えない。


 (2) 朝日記事

 では、実際に「殺し殺される」ような体験をすれば、どうなるか? それについては、体験者について語ってもらえばいい。具体的には、イラクなどに参戦した米兵に語ってもらえばいい。その体験談が、朝日新聞に掲載されている。一部抜粋しよう。
 ネブラスカ州グランドアイランド。トウモロコシ畑に囲まれた人口約5万人の町や近隣ではこの秋、悲劇が相次いだ。40日間に、4人も帰還兵が自ら命を絶った。37歳の若い元海兵隊員もいた。
 「アフガンやイラクの帰還兵が、いまも深い心の傷に苦しんでいる」。
    *
 アフガンとイラクからの帰還兵は全米に二百数十万人いる。米シンクタンクのランド研究所の研究では、このうち約20%が戦闘体験や恐怖から心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ症状を患っているという。米退役軍人省などによると、すべての退役軍人のうち1日平均18〜22人が自殺している
 カウフマンさんも、その一人になる寸前だった。01年9月に同時多発テロが起き、翌月に通信兵としてアフガンに派遣された。「死にたくないと思ったが、責任だと思って現地に向かった」
 戦闘部隊ではなかったが、いつ頭上に弾が飛んでくるかと思うと神経がすり減った。寝食を共にした仲間も戦場で失った。03年に派遣期間を終えて一時帰国したが、食事ものどを通らず、眠れない日が続いた。酒におぼれ、マリファナにも手を染めた。
 「半年前まで世界最強の米陸軍の一員だった自分が、ホームレスになっていた」。支援施設や友人宅を転々とする毎日で、酒に酔って自殺未遂に及んだこともあった。
 退役軍人支援団体の仲間が支えてくれ、立ち直るまで8年の歳月がかかった。
( → 朝日新聞 2015-11-11


 (3) 死傷の比率

 では、参戦した兵士のうち、どのくらいの割合が死傷して戻ってくるのか? それについては、下記の数値がある。
 米軍の場合、出撃している隊員数に比して 39%もの人が死傷者になっている。[ 39% という数字の出典
( → 自衛隊への勧誘ページ , )

 ま、こんな感じ。

jiei4.jpg




 [ 付記 ]
 こういうふうにして戦死するにしても、それが正しい戦争であれば、まだ意義がある。
 しかしながら、第二次湾岸戦争では、「大量破壊兵器がある」という名分で戦争を仕掛けたものの、実際には大量破壊兵器は存在しなかった、とあとで判明した。つまり、嘘の名分で戦争をして、嘘の名分のせいで人々は戦死したわけだ。さらには、この戦争のせいで、イラクにテロ勢力が拡大して、ISIS みたいなテロ組織が跋扈することになった。ISIS は、フセインよりも、はるかに手に負えないテロ組織だ。こういうテロ組織をもたらしたのが、第二次湾岸戦争だったのだ。

 第二次湾岸戦争は、まったく馬鹿げた戦争だった。だから、これをやった子ブッシュに関連して、親ブッシュが子ブッシュの側近を批判した。(本当は子ブッシュが馬鹿なのだが、親が子を批判するのには情があるから、子ブッシュの取り巻きのせいにした。)
 朝日の記事がある。
 米国のジョージ・H・W・ブッシュ元大統領(91)=写真=が、近く発売される伝記「運命と権力」の中で、息子が大統領だった時代の側近らを酷評した。当時副大統領だったチェイニー氏を「頑固者」と呼び、「中東で武力行使をしたがっていた前のめりの連中に従っていた」と批判した。
 ブッシュ元大統領は、チェイニーログイン前の続き氏を国防長官に起用したが、息子のブッシュ前大統領(69)の政権での同氏の振る舞いを「なぜ強硬路線になったのかは分からない。私の知るチェイニー氏とは全く違った」と述懐。ホワイトハウスに「独自の帝国を築いた」とその増長ぶりを指摘し、それを許した息子にも「大きな誤り」があったと苦言を呈した。
( → 朝日新聞 2015年11月7日

 父ブッシュに批判されるほど、子ブッシュは大失敗した。これが、子ブッシュだけの失敗に留まっていればまだ良かったが、子ブッシュの失敗のせいで大量の米国人が死に、大量の米国人が( PTSD で)自殺した。

 そして、これは、海外派遣をすることになった自衛隊員においても、そのうち起こるはずの事態なのである。(そのために、先に安倍首相が法案を提出したからだ。)



 【 関連サイト 】

 本項では、PTSD という医学的な話題に焦点を置いて論じた。
 一方、実際の戦闘でどのくらいの死者が出るか……という軍事的な話題もある。それは、本項のテーマではないので、ここでは論じない。
 詳しく知りたい人は、かわりに、次のページを見るといいだろう。
  → 自衛隊海外派遣で想定される死傷者に我々は耐えられるか?
 
 これは一つの試算だ。その妥当性については、私はいちいち論評するつもりはない。知りたい人が勝手に検討してください。(私の知ったこっちゃない。私は軍事マニアではない。)
 
 ──

 それでもちょっと興味があったので、調べてみた。次のページが見つかった。
  → ドイツにおける戦死者数
  → アフガニスタン戦争における犠牲者数(各国)

 前者は、ドイツ政府公式。
 後者は、個人による推定。著者は、慶應義塾大学経済学部教授。
posted by 管理人 at 22:28| Comment(6) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
PTSD、戦死者数の記事見ました。
身も蓋もないですが、この程度の数字ならなんてことはないと考えます。(私自身は個人的にはそう思いたくないですが、、、。)
というのも、、、、交通事故死者数は世界で年間120万人以上、日本国内でも年間8000人以上いるのですが、実のところ誰も気にしていないですよね、、、。しかも、年代別では20歳代が最も多いです。事故死の最大要因はスピードの出しすぎという研究結果もあります。
報道による影響もありますが、これこそが世の中の評価そのものと考えます。

今回のテーマとは少し離れるのですが、個人的には、交通事故削減のために、自動車、二輪車の速度制限システムの導入、飲酒時の自動判定によるエンジンストップシステム等を入れるのが急務と考えます。

今回の件に話を戻すと、私は日本は先の大戦の失敗を反省していないお国柄(牟田口、栗田、南雲などの将官の指示による敵国に味方したとしか思えない日本兵の虐殺、日本兵器の破壊行為を誰も咎めないですよね、、、。)なので、むしろ自衛隊員による同士討ち、或いは自衛隊による日本人虐殺を半ば真剣に危惧しています。

あらゆる戦力を合理的かつ臨機応変に活用する能力が求められる戦略なんていう相当高度な問題解決手法をマスターしていない日本人に海外派兵は敷居が高すぎると考えています。

作戦そのものが比較的単純かつ明快で、臨機応変さや創造力に欠ける指示待ち屋他人と同じ事をする事しか評価されない日本人にぴったりな本土防衛とか、米軍の指示のもと何も考えずに一部隊としての役割を果たすとかが関の山と考えます。
Posted by やまさん at 2015年11月12日 01:20
昨年の交通事故死者数は 4113人。

 死者の半数は高齢者で、理由は、致死率が高いから。
>  死者のうち65歳以上の高齢者は2193人(速報値)で、全体の53.3%を占めた。前年より110人(4.8%)減ったが、割合は0.6ポイント上昇し過去最高となった。担当者は「高齢者の人口が増えている上、64歳以下と比べて致死率が6倍高いため」とみている。

http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_soc_tyosa-jikokoutsu

 もともと死にやすい人が、普通なら助かる事故でも死んでしまった、ということ。高齢者だから、仕方ない意味もある。自動車のせいだけとは言い切れない。(体力の弱さも原因だ。)
 純然たる交通事故死の数は、2000人余りと見ていいだろう。
 さらに、そのうち半分ぐらいは、ドライバーのデタラメな運転(交通違反とか、スピード超過とか、路線はみ出しとか、酒酔いとか)なので、まともなドライバーは適用外。
 ドライバーの責任でないアクシデントとしての交通事故死は、1000人ぐらいと見ていいだろう。
Posted by 管理人 at 2015年11月12日 12:19
海外派兵は65歳以上の老人にしよう。葬儀も国がやってくれるし、一石二鳥だ。
但し、俺は除外してね。
Posted by passerby at 2015年11月12日 19:06
> 海外派兵は65歳以上の老人にしよう

 もっと合理的な方法がありますよ。
 例の(違憲)安保法案への賛否を、国民に尋ねて、「賛成」と答えた人だけを、海外派兵させる。自衛隊じゃなくて、徴兵で。
 マイナンバー制度を使えば、可能でしょう。マイナンバーで、うまく徴兵しよう。

 ※ 私は法案反対なので、私は徴兵されない。
   賛成の人が勝手に外国で戦えばいい。
   合理的でしょ?
Posted by 管理人 at 2015年11月12日 20:02
管理人さん

最新の交通事故分析ありがとうございます。だいぶ減ったんですね。びっくりしました。ちょっと前までは1万人以上で、高度経済成長の頃は毎年2万人なくなっていたころと比べると格段の進歩ですね。

先般のコメントについて一部訂正します。20代の死者が多いのは全世界でのデータであり、日本はちょっと違っていました。

ちょっとこの記事のテーマとずれるのですが、個人的にはでたらめ運転でさえも本質的に車両側で制御すべきであると考えています。幸いにも技術的にある程度可能になっているので早期普及に努めるべきと考えます。

海外派兵については現在志願者(自衛隊員)がいるのでわざわざ徴兵する必要はないと考えます。

しつこいようですが、(汗)そんなことより、自衛隊員による日本人虐殺が心配です。

書いている私自身「そんなアホなことあるかいな」と思っているのですが、先の大戦では「もっとアホ丸出しの作戦?(個人的には反日テロと同意と思ってます。)」が幾つも行われて、しかもそれに対する反省も皆無という状況を考えると、可能性は相当高いと言わざるを得ないと考えます。
Posted by やまさん at 2015年11月12日 22:21
> 志願者(自衛隊員)がいる

 志願していないですよ。自衛隊に入るときは「日本が侵略されられたとき」「自衛のため」「お国のため」という前提で戦うことを決めただけであり、必要もないのに海外に出掛けて誰かを殺すことは当初の契約には入っていません。契約書を勝手にあとで書き換えられたのも同然。

 実際には、海外派兵の前に「志願する」という志願届けを出しますが、これを出さないと、隊内での出世の道が閉ざされるので、幹部はみんな志願届けを出さざるを得ない状況に追い込まれています。(今さら自衛隊をクビになって民間人になって失業するわけには行かないから。)
 ところが、そうなると、戦死の危険が出る。そこで親が「志願をやめてくれ」と何度も息子に頼む。息子はそれを聞くわけには行かないから、親と連絡を絶つ。親子断絶。
 こういうふうに親子関係を破壊された自衛隊の親子の例がたくさんある。可哀想に。
Posted by 管理人 at 2015年11月12日 23:03
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