介護制度にはいろいろと問題がある。以下では複数の話題を示そう。(章別の形。)
劣悪な現状
朝日の記事によると、有力老人ホームの現状はひどい劣悪さのところが多いという。
認知症の祖母が着ていたカーディガンや寝具には便がこびりついていた。トイレの便座、手すりも便で汚れていた。洗面台に水あかとかび、テレビ台にはほこり。ナースコールを押しても反応はなかった。
部屋や衣類の汚れを指摘すると、「すぐ確認します」という返答があった。気になって翌日に再訪問すると、祖母は前日と同じ汚れた服を身に着け、部屋は清掃されていなかった。施設側は「人手不足で、できませんでした」と平謝りだった。
入居費用は月額25万円程度。
東京都内の有料老人ホームで介護職員として働く 50代の女性は「人手不足で、ネグレクト(放置)と言っても過言ではない状況が常態化している。質のよい介護などしたくてもできない。それが月 30万円近くを入居者から受け取る有料老人ホームの実態です」と打ち明ける。
夜勤帯は特に忙しい。個室やトイレの複数のナースコールが同時に鳴る。「早く来てー」と叫ぶ入居者たち。対応が追いつかず、ナースコールを引き抜きたい衝動をこらえながら「待ってくださいね」と言い続ける。「そのうち鳴っている状態に心身がまひしてしまう。最後は(入居者が)叫んでも無視しています」
おむつを外してしまった認知症の入居者を「だめじゃない!」と叱責(しっせき)する同僚の姿を時折見かける。「心を鬼にするか、まひさせないと、今の現場では生きていけません」
虐待の実態をつかむ難しさもある。13年度中に自治体が相談や通報を受けて調査した事案のうち3分の1は虐待の有無を認定できなかった。
さいたま市は家族らから通報があると、「調査に入ると施設側に入居者を特定される可能性がある」と家族の意向を確認。すると、調査を拒む家族が多いという。入居者が行き場を失うといった懸念からとみられる。
( → 朝日新聞 2015年10月28日 )
ひどい状況だ。まるで豚小屋だ。大金を払っても、このありさま。
公費負担でカジノ
こういうひどい状況になるのは、国や自治体が渋ちんであるせいだ。では、渋ちんであるのは、金欠であるせいか? いや、そうは言えない。介護施設で(ギャンブルの)カジノをやらせて、そのために公費を9割も支出している。
パチンコやマージャンなどを介護予防につなげる「アミューズメント型」「カジノ型」と呼ばれるデイサービスが関東を中心に増えている。
カジノを活用する自治体もある。埼玉県和光市は07年から……導入した。
介護施設のサービス利用量は、原則9割が公費負担。「事業者任せにしてカジノを集客に使われたら介護財政は破綻しかねない」(和光市)
( → 朝日新聞 2015年10月26日 )
記事によれば、そこそこの効果はあるらしいし、「やるな」とは言わない。しかし、公費で9割負担というのでは、公費の無駄遣いだろう。介護というよりは、有料老人ホームの娯楽費みたいなことのために、公費で9割負担というのは、無駄遣い過ぎる。
金がない金欠状態というよりは、浪費のし放題という感じだ。
歴史建築の破壊
無駄な金を出しても効果があるなら、まだマシだ。
一方、無駄な金を出して、マイナスの効果をもたらす、という例がある。介護のために金を出して、歴史建築を破壊する、という例。
作家の太宰治(1909〜48)が戦前に暮らした東京都杉並区の下宿「碧雲(へきうん)荘」が、区の複合施設の整備に伴い、来春までに取り壊される可能性が高まっている。太宰は青森県から上京後に転居を重ねたが、居住先で当時のまま残っている建物はほとんどない。地元住民らは「文学的遺構として残して欲しい」と保存を呼びかけている。
建物の老朽化が進むなか、杉並区は周辺の土地と一体で特別養護老人ホームなどを整備する計画をつくり、今年4月に田中さんから土地のみを取得した。契約では来年4月末までに更地にして引き渡される予定で、区の担当者は「現状のままでは取り壊すことになる」と話す。
( → 朝日新聞 2015年10月15日 )
こんな都会に老人ホームなんかを作れば、土地の取得費だけでも馬鹿高い金額が必要となる。それだけの大金をかけて、良いことをするどころか、せっかくの文化遺産を取り壊してしまう。
記事の写真を見ればわかるが、昭和の雰囲気を残す歴史的な建物だ。由緒ある建物であり、残す価値はある。なのに、それを取り壊すために大金をかけて、そのあとには大赤字となる特別養護老人ホームを建設するという。ひどいものだ。
そもそも特別養護老人ホームというのは、次のようなものだ。
特別養護老人ホームは、要介護1から5の認定を受けた65歳以上の方を対象としており、身体上または精神上著しい障害により、常に介護が必要な状態で、居宅において適切な介護を受けることが困難な方が入所する施設です。
( → 特別養護老人ホームとは? )
ずっと寝たきりなのだから、通勤の必要もない。都心部に作る必要もないし、駅のそばに作る必要もない。なのに、「荻窪駅から徒歩 11分」という交通至便なところに、この特別養護老人ホームを作る。
こんなところに作るのだから、大金がかかる。莫大な税金を費やすわけだ。どうも、よほど無駄遣いをしたくて仕方ないらしい。「どうせ税金だから、自分の懐は痛まないし、いくらでも無駄遣いしてやろう」という魂胆なのだろう。(皮肉)
だが、本来なら、このような特別養護老人ホームは、23区内に作るべきではない。もっと郊外に作るべきだろう。そのことは、前にも論じた。
→ 介護老人は地方へ移住?
介護ロボット
介護のためには、介護ロボットが有効だ。そこで政府か介護ロボットの開発を支援しようとしている。紙の新聞に詳しいが、ネット上にも簡単な記事がある。
政府は、高齢者の自立した生活を可能にするといった機能を持つ介護ロボットの開発を支援する拠点を、2016年度に全国で 10か所程度設ける方針を固めた。
政府は 13年度から、研究開発費を最大3分の2補助している。
( → 読売新聞 2015年10月26日 )
方針としてはいいが、「全国で 10か所程度」というふうに分散するのが駄目だ。政府が開発拠点を分散するのは、「地域振興」のためだが、こういうふうに各地でバラバラに開発しているのでは、二重投資どころか十重投資という無駄になる。
どうせ開発するのであれば、1箇所に集中するべきだろう。重複を避けて分散するなら、3箇所ぐらいか。
政府は、「介護のため」という名目で金を出すつもりのようだが、実際には「地域振興のため」となる。おまけに、「3分の2補助」というのだから、これでは、開発支援というより、ただの金の垂れ流しだ。補助するのであれば、本気で開発する企業のために、1割程度を補助するだけでいいはずだ。(ただし上限なしで、数十億円でも出す。)
上限つきで、小規模投資に3分の2補助なんて、ただの金の無駄遣いだ。ひどい浪費。
介護詐欺
有料老人ホームでは、詐欺がまかり通っている。「 2000万円以上の金を取って終身介護を約束するが、実際は5年で追い出す」……という形で、大金を得て、ボロ儲けするわけだ。
(終身介護を約束して大金を得るが、実際には終身介護をしないで、金だけ取る、という手口。)
→ 介護詐欺(有料老人ホーム)
一方、こういう詐欺がまかり通らないような対策もできている。「最初に大金を一括払い」というのをやめて、毎月、妥当な額だけを払う、というタイプだ。
→ 新しい介護施設モデル
対策
さて。いくつかの話題を示したが、冒頭の問題の解決にはなっていない。つまり、「人手不足ゆえに、劣悪な介護環境」という問題だ。
ここで、私としては、次のことを提案したい。
「職員数によって受け入れ人数の上限を定める。たとえば、職員1人ごとに高齢者4人」というふうに。そして、この基準を割り込むほどに職員が減ったならば、収容している高齢者には、退所してもらう。(金は返金する。)」
現状は、この逆である。高齢者がたくさんいるのに、職員は不足したまま。(冒頭の記事の通り。)すると、どうなるか? 収入は変わらないまま、人件費を削減できる。すると、施設の経営者は、ボロ儲けできる。
つまり、劣悪な環境にすればするほど、施設の経営者はボロ儲けできるのだ。本来なら、職員数が不足するというのは、違法行為なのだが、違法行為をすればするほど、ボロ儲けできるわけだ。
これはもはや制度的な欠陥だと言えるだろう。
とすれば、対策は、「違法行為を取り締まること」、つまり、「高齢者に対して職員数が不足するならば、高齢者を退所させること」の義務づけだ。そして、この義務づけに違反した場合には、数カ月間の営業停止命令を出すべきだ。
ま、そうなったとすれば、その施設はつぶれるだろうが、別に、問題ない。そこで勤めていた介護士が、別の介護施設に転職して、別の介護施設が老人を受け入れるからだ。
介護施設において大切なのは、施設の建物や会社組織ではなく、介護士そのものだ。介護士そのものが消えない限りは、施設の建物や会社組織はつぶれて消えてしまってもいいのである。(かわりのものはいくらでもできる。)
ちなみに、厚労省のページで介護施設の総数を見ると、3年間で1割ぐらい増えている。毎年毎年、莫大な数の介護施設ができている。今では総数で3万を超えている。
→ 介護施設 総数 - Google 検索
というわけで、「人手不足状態を放置する劣悪な施設」については、つぶしてしまっていい。そういう方針で、「職員数に応じる形で、収容する高齢者の数を減らす」というふうにするべきだ。
それでも収まりきらなければ? 需要と供給の問題については、市場原理の方針を取ればいい。
「需要が多くて、供給が少ないならば、価格を上げる」
ということだ。
具体的には、こうだ。
「介護報酬の金額(公定価格)を上げる」
「介護を受ける側の自己負担分(1割)を、引き上げる」
これにともなって、介護士の賃金も引き上げればいい。そうすれば、状況は改善する。
[ 付記 ]
なお、「金を払いたくないが、高度なサービスを受けたい」という人もいるだろう。
そういう人のためには、「海外の介護施設」という選択肢を用意すればいい。海外(アジアの途上国)ならば、人件費が格安なので、高度なサービスを格安で受けることができる。おまけに、気候は温暖なので、長命に有効だ。
→ 介護老人は地方へ移住? の [ 付記 ]

認知症ケアの本には、認知症の周辺症状とその原因の関係について、下記のように書いてあります。
◎原因⇔周辺症状
・便秘⇔落ち着かない
・脱水⇔元気がなくなる
・発熱⇔徘徊する
・慢性疾患の悪化⇔様子がおかしい
・季節の変わり目⇔興奮する
・薬の効き過ぎ⇔足もとがふらつく
だから、周辺症状が現われたら、その原因を探し、原因を取り除くと、周辺症状もなくなるのです。
ダメな介護施設は、(1)介護が行き届かないので、入所者に周辺症状=問題行動が現われ、(2)その周辺症状=問題行動が介護をより困難にさせる、という悪循環にはまっているのでしょう。
ちなみに、伯母が入所しているグループホームの費用は、月20万円弱で、伯母の年金+預金の引き下ろしで、何とか足りています。介護士は、昼は高齢者3人に1人で、夜は9人に1人です。全体で2フロア、計18人の認知症高齢者が暮らしています。
医療施設(病院)と同様、介護施設にもその種の基準はあり、概ね守られています。
医師が薄給→看護師は医師より少なくしないと→薬剤師→検査技師→介護士の職能・責任に応じた給料の差をつけていくと、ワープアになってしまうんです。
給料の差をつけなければ、職能に応じた能力をもつ人材が集まりません。
GDP比の医療比が先進国中最低レベルなのに、最高の平均寿命と過剰なサービスを要求(寝たきりに胃瘻、病気が治らなければ訴訟、安価で介護)するので、当然無理がかかる、それが底辺である介護にいっていますが、底辺だけの小手先の修正では解決困難です。
なにが解決策がないものか、常日頃悩んでおります。
基準を未達成であることは、ググればわかります。
> 47.2%の特別養護老人ホームで「『計画上定める配置基準もしくは特別養護老人ホームの指定基準』を満たしていない」ことが分かった
http://www.kaigo-kyuujin.com/oyakudachi/break/17904/
> どの施設も、どうやって国の基準を満たすだけの人材を確保するかに苦心しており、
http://www.tefujita.com/entry/2015/03/19/205343
> 辞めた人の穴を埋めるため、施設は人員を募集するが、思うように集まらず、人手不足は慢性的だ。
http://www.waseda.jp/sem-fox/memb/14s/suzuki/suzuki.index.html
> 回答があった305の特養のうち、半数近くの145の施設で介護職員の数が基準の人数を下回っていました。このため、部屋が空いていても入所を断っている施設が9つあるほか、高齢者を一時的に預かる「ショートステイ」を止めた施設が2つある
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/207428.html
145のうち 9+2 だけが順法で、あとは違法状態。さらに、アンケートに未回答の施設では、もっとひどい状態だと推定される。
政府がやるべきことなので、末端の人の手には終えません。
政府がやるべきことは:
・ 介護費用の総額を増やす。
・ 海外に施設を作る。
の二つです。これで解決。
──
将来的には、介護ロボットの導入も効果的です。
政府は介護ロボットの開発を推進しているが、ただしそれを、介護のためでなく、地域振興のためにやっている。本末転倒。金の浪費。
※ この件、本文中に、新たな章を加筆しました。
認知症の人がオムツにうんちした後 気持ち悪いのかオムツの中に手をいれる。その手で顔を触ったり所内をウロウロするから そこら中にうんちが付着する
こういうのの対応ってホントやりきれない
-----引用はじめ----
介護でのゲームは換金を禁止しており、ギャンブル依存につながるという批判は根拠に乏しい。ただ、高齢者に多いパーキンソン病の治療を受けている人は、ギャンブル依存症になるリスクが通常より数倍高い。依存症は遺伝的要素も大きく、一律にゲームを利用することは勧められない。
-----引用おわり-----
パーキンソン病は、後述するレビー小体型認知症の原因である、レビー小体が脳の運動を司る部分にできることで発症する。ドーパミンが欠乏するので、関節が動きにくくなったり、手の震え、体の傾きが現われ、歩行困難・嚥下障害などを引き起こす。
治療薬の多くがドーパミンを補うようになっているので、治療薬を飲んでいる人が、ギャンブルをすると、ドーパミンの影響でギャンブルをとても気持ちよく感じてしまう。だから、依存症になってしまうのだろう。
レビー小体型認知症は、レビー小体が脳全体にできることで発症する。パーキンソン症状をともなうことが多いので、パーキンソン病の治療薬を使うことがある(ただし、効き過ぎるので、マトモな医者は弱い薬しか使わない)。こっちも、ギャンブル依存症になる危険性が高そうだ。
ただし、パーキンソン病の患者も、レビー小体型認知症の患者も、そもそもどこかに自力で移動することができないので、ギャンブルをすることがそもそもムリのような気がする。
マイケルJフォックスに謝らないと。