ザリガニのせいでトンボが絶滅するというと、ザリガニがトンボを食べてしまうと思われがちだが、本当は、ザリガニが水草を食べてしまうからだ。
アメリカザリガニは……ブラックバスに比肩する環境への危険性も指摘され、身近な水辺の大半はすでにザリガニに破壊された後、と考える研究者もいます。
ザリガニに脅かされるトンボの楽園、静岡県磐田市の桶ヶ谷沼……。絶滅危惧1A類に指定するベッコウトンボの生存が本州で確認できるのは、現在はこの沼と山口県だけです。
7ヘクタールほどの沼で……その一角にある4メートル四方の囲い。内側の浅い水中に茂った水草は、米粒ほどの黄色い花を咲かせていました。
このザリガニ侵入を防ぐ囲いの外はほぼ、水草がありません。生えてもザリガニに食べられるといいます。
98年、ザリガニが大発生し水草が激減。水草はトンボの幼虫にとって重要な存在で、トンボも激減しました。……ベッコウトンボなど大半の種は計13箇所のザリガニを防ぐ囲いなどに頼って生き延び、ザリガニ駆除で水草が復活した一角でやっと一部の種が復活し始めた状況です。
少なくとも2006年までは、絶滅危惧1A類のゲンゴロウ……が多く棲息していた金沢市の池で、08年、ザリガニの大発生が確認され、翌年ゲンゴロウは姿を消しました。三重県でも05年、別の絶滅危惧1A類のゲンゴロウがザリガニ侵入で消滅した例が報告されました。
ザリガニ被害の特徴は水草を駆逐すること。在来動物は水草に依存していた住み処や餌を失い、水草にかわって増えるアオコなどの植物プランクトンで、水は濁ります。
「水草は複雑な環境を生み出す役割を持ち、失われれば生態系の構成員が根底から変わる」
( → 朝日新聞・土曜版 be 赤色版。2015-08-22。一部抜粋。)
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というわけだ。ザリガニが増えるとトンボが絶滅するのは、ザリガニがトンボを食べてしまうからではなく、ザリガニが水草を食べてしまうせいだ。水草がなくなると、生態系がまったく変わってしまうのだ。特に、(文中にもあるように)トンボの幼虫にとって水草が大切だ。
トンボの幼虫は、ヤゴという。ヤゴは、水草のそばにいる小さな昆虫や、メダカのような小魚を食べる。だから、水草が必要なわけだ。(水草がないと、これらの昆虫や小魚がいなくなる。水草は、ヤゴの食物になるのではなく、ヤゴの食物を生み出す環境を提供する。)
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ザリガニは水草を食う。
では、ザリガニを駆除するためにカモを導入するとして、カモは水草を食うか?
合鴨は、水田では稲のそばの雑草を食べる。だが、水草を食べることはなさそうだ。少なくとも、ザリガニがいっぱいいる状況では、まずは美味しいザリガニを先に食べるはずだ。葦のような固い水草を食べることはなさそうだ。
ま、ザリガニがいなくなったら、合鴨もやっかいになるかもしれないが、ザリガニがいる限りは、カモを使ってザリガニを駆除するのがよさそうだ。
また、合鴨ならば、空を飛ぶこともない(あまりない)ので、いくらでもつかまえることができる。だから、とりあえずは、カモでザリガニを駆除するのがよさそうだ。前出項目の通り。
→ トンボの絶滅を救え
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カモを使うとして、カモはどうやって用意するか?
合鴨ならば、ヒナが 400円かかる。だが、育てたあとは、食べてしまえる。鴨鍋になる。
野鴨はどうか? デコイでおびきよせることができるから、デコイを水面に浮かべておいてもいい。
→ デコイ - Google 画像検索
上野の不忍池では、カモなどの鳥が多数いる。これは、餌付けのせいだ。ともあれ、上野の不忍池では、水鳥が多数いて、それらの水鳥がザリガニを食う。
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上野の不忍池は、水田ではなく、池だ。
前出の桶ヶ谷沼は、沼だが、これも池みたいなものだ。湿原と言ってもいいが。
→ 桶ヶ谷沼 - Google 画像検索
というわけで、トンボのための環境としては、次の二点セットがよさそうだ。
・ カモなどの水鳥 (ザリガニの捕食者)
・ 湿原・池・沼 (水のある環境)
前に述べたときは、「ザリガニを食べるのはカモ」というふうに示したが、それは水田における話だった。
一方、前項では、湿原・池・遊水池という環境を示した。
本項では、その双方を組み合わせて、「鳥 / 湿原・池・沼」という二点セットで提案する。
( ※ 水田はなくてもいい、水田よりも、湿原や遊水池の方がいい、ということは、前項でも示した。次項でも示す。)
【 追記1 】
カモなどの水鳥があると、ヤゴが食われてしまうかもしれない。そういう危険がある。
この問題を避けるには、カモなどの水鳥の量を制限するとよさそうだ。そうすれば、まずはアメリカザリガニが先に食われて、ヤゴが食われる量は少なめで済むだろう。
なお、カモのいる時期を調整することで、ヤゴが羽化する直前の時期(や後が大きくて、かつ、トンボになっていない時期)を避けることができそうだ……と思ったが、そううまくは行かなかった。羽化する時期は、春・夏・秋など、いろいろある。種ごとに違いはあるが、とにかく、一定の時期ではない。
→ 羽化の時期
だから、時期の調整では、うまく行かない。
【 追記2 】
アメリカザリガニを食べるのは、水鳥だけではない。魚もそうだ。具体的な例は、Wikipedia に示されている。
天敵はオオクチバス、ライギョ、ナマズ、ウシガエル、サギ類、イタチ、カメなど。
( → Wikipedia )
このうち、オオクチバス(ブラックバス)は侵略的な外来魚で、問題がある。そこで、ナマズを使うのがよさそうだ。ナマズがザリガニを捕食する動画もある。
ナマズを放流すると、ナマズがザリガニを食べてくれるだろう。
( ※ ただし、釣り人がナマズを釣ってしまう可能性があるので、釣りを禁止する必要がある。)
ナマズがザリガニを補食する動画など。
・ アメリカザリガニがいる。ヤゴはいない。水草もない。
・ ナマズが入り、ナマズがアメリカザリガニを食う。
・ アメリカザリガニは食われて、ほとんどいなくなる。
・ 水草が繁茂する。
・ ヤゴがやって来る。
・ 人間がナマズを釣る。
・ ヤゴは半分ぐらいがナマズに食われるが、残りは隠れて無事。