2015年10月22日

◆ トンボと湿原

 前項 の続き。トンボの絶滅を救うには、別の方法もある。水田のかわりに湿原を増やすことだ。 ──

 前項 では、「トンボの絶滅を救う」ことを目的として、「トンボの天敵であるアメリカザリガニを、カモに食わせる」という方法を提示した。

 ただし、この方法には、難点がある。それは、「水田の維持」だ。
 そもそも、「カモに食わせる」という方法は、大規模農法には適していないので、小規模農法が基本となる。
 しかしながら、稲作に関する限りは、「小規模農法をやめて、大規模農法にせよ」(大規模集約せよ)という方針を、別項で打ち出した。
  → nando ブログ : TPP後の農業政策 2

 とすれば、この両者は矛盾する。
  ・ トンボの維持のためには、カモを使う小規模農法
  ・ 農家の自立のためには、大規模農法

 後者の方針を取ると、「小規模農家は、稲作をやめて、生鮮野菜を作れ」ということになる。すると、カモを使う小規模農法(つまり前者)を取れなくなる。
 矛盾! 
 つまり、(トンボを守る)環境維持と、(コストダウンを狙う)農家の自立は、両立しない。

 では、どうする? 

 ──

 そこで、本項では、新たな方法を提示しよう。こうだ。
 「水田のかわりに、湿原を増やす」


 これはどういうことか? 
 一般に、アメリカザリガニの棲息する環境は、流れのゆるやかな水のあるところだ。水田とか、用水路とか。
 生息環境:
 平野部の水田、用水路、池など、水深が浅くて流れのゆるい泥底の環境に多く生息し、流れの速い川には生息しない。
( → アメリカザリガニ - Wikipedia
 P. clarkii is most commonly found in warm fresh water, such as slowly flowing rivers, marshes, reservoirs, irrigation systems and rice paddies.
(アメリカザリガニが最も普通に見つかるところは、暖かな淡水中である。たとえば、ゆっくり流れる川、沼地・湿地、貯水池、潅漑システム、水田など。)
( → Procambarus clarkii - Wikipedia[英語版]

 これらに共通するのは、「水がかなりきれいである」ということだ。最も水が澱(よど)んでいそうな marsh でさえ、かなりの水量があって、水は清らかであるようだ。
  → Marsh - Google 画像検索

 一方、ところどころに大きな水溜まりふうに水があるだけで、水流のないところでは、水は汚れている。そういうところは、アメリカザリガニが棲息するのには適していないようだ。日本の湿原にはそういうところが多い。
  → 湿原 - Google 検索
 一方、こういうふうに水溜まりふうの湿原であっても、トンボが産卵するには問題ない。

 そこで、後者のような湿原をたくさん用意すべきだ、というのが、私の提案だ。

 ──

 実を言うと、湿原というのは、とても大切だ。ただの森林や草原ならば日本中にたくさんあるが、湿原はそう多くはない。一方で、湿原は、生物多様性をもたらし、生物界においては非常に重要な役割を果たす。
 にもかかわらず、文明の発達とともに、各地の湿原は干拓などでつぶされていき、どんどん減少していった。(人間が湿原をどんどん破壊していった。)……これは一方的な自然改造だった。だから、その自然改造をやめて、逆に、元に自然に回復させるべきだ、という狙いがある。
 つまり、日本の各地で湿原が破壊されて、自然環境が損なわれて、生物多様性に著しく悪影響をもたらしてきたから、これを原状回復するために、湿原を増やすべきだ、というわけだ。
 
 ──

 では、湿原を増やすとして、どうやって増やすべきか? やたらと自然回復事業なんかをすると、やたらと金ばかり食うので、それはまずい。もっとうまい方法はないか?
 うまい方法は、ある。それは、こうだ。
 「河川の氾濫への対策としてある各地の遊水池を、湿原に転用する」

 
 遊水池は、普通は、池になっているか、ただの草地になっていることが多い。しかし、その中間形態として、浅い水のある湿原にすることもできる。それが、本項の提案となる。

 具体的な例は、下記にある。
  → 水びたしの公園がすごい
 ここには多数の写真があるが、いずれも浅い水で地面が覆われている。
 東京の東久留米にある白山(はくさん)公園。
野球場やサッカー場などがある普通の公園なのだが、とにかくすべてが水びたしなのだ。

公園から水が湧いている、というと井の頭公園と神田川みたいな例があるけど、ここはベンチとか野球場から水が湧いてるのだ。気合の入り方が違う。

調節池とか遊水池とか呼ばれている。この公園は、まさにそのための機能を持っているのだ。

地元の人に話を聞くと、
・夏に雨が多く降った年の秋はこんなふうになる。
・冬には乾き、春には子供たちが普通に遊んでいる。
とのことだった。

 一年中、湿原になっているわけではなく、ごく限られた時期だけ、湿原になるようだ。ただ、ここに川の水の一部を流し込めば、一年中、湿原にすることも可能だろう。
 ま、この公園に川の水を流し込むのは無理だろうが、そういう方法を取れば、各地の遊水池を湿原にすることは可能だ、とわかる。
 そして、湿原ができれば、そこでは生物多様性が生じるのだ。

( ※ 湿原のほかに、干潟もある。こちらは、淡水域ではなく、海水域にあるが、やはり同じ理由で、生物多様性が生じる。東京湾では、干潟が大幅に減少したせいで、海水の浄化能力が大幅に損なわれ、東京湾が「死の海」「汚れた海」になりかけている。干潟もまた、トンボの産卵地としては、有益である。)



 [ 付記 ]
 生物多様性を強調した概念で、「ビオトープ」という概念もある。
  → ビオトープ - Wikipedia
 
 参考文献としては、次のページもある。
  → 学校ビオトープづくりの基礎・基本(本論)
 あまり読みやすい文書ではない。お薦めしない。

 お薦めするのは、次の二つの PDF だ。

  → 横浜市 環境創造局 学校ビオトープのすすめ
 これは、簡単な説明。すぐ読める。

  → 学校ビオトープづくりの基礎・基本 から維持管理まで
 これは、長くて詳しい。ちょっと読み切れない。
posted by 管理人 at 00:29| Comment(3) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
公園を水浸しにしたら、ヒトスジシマカが大繁殖して、デング熱の感染が増加する可能性がある。
やはり、アキアカネの減少の原因は農薬の可能性が大きいのでは?
ある研究で、育苗箱用殺虫剤のアキアカネ幼虫への影響を調べた結果、プリンスという殺虫剤では羽化が見られず、ネオニコチノイド系の殺虫剤(アドマイヤーとスタークル)も、使用しなかった場合の30%ほどの羽化にとどまった。一方、古くから使われているパダンは使用しなかった場合と差がなく、ほとんど影響がないことが分った。また、新潟を含めた北陸4県で調べた観察個体数の地域差と農薬流通量から求めた推定個体数の地域差もよく一致した。(http://nacsj.net/magazine/post_936.html表)。

アメリカザリガニは50年以上も前からいた。最近急に増えたわけではない。赤トンボは2000年頃から急激に減少し始めたらしい。

ただし、最近除草剤が水田によく使われる。それが植物プランクトンの減少により食物連鎖の上にあるトンボのヤゴの食物の減少をまねいたかもしれない、ということも検証する必要があるかもしれない。
Posted by ドラゴン at 2015年10月22日 10:27
> 公園を水浸しにしたら

都会の公園を水浸しにするわけじゃありません。そんなことをしたら、人間にとって大切な公園を使えなくなって、困る。
主として郊外の(人のあまりいない地域の)話。遊水池など。
本文中にも「遊水池を湿原にする」と書いてあるでしょ。公園じゃなくて。

参考 : 遊水池
「氾濫原となるため高度な土地利用が難しく、放置されたままアシや雑木が繁る草原になる場合がほとんどである。人が近寄らない環境となることから、多数の貴重な動植物が住み着き、新たな自然環境が出現することもある。」
→ http://j.mp/1ZYWwNe 

 こういう土地の真ん中へんに、水溜まりをたくさんつくればいい。

 なお、遊水池については、
 「土地利用が進んだ日本国内では設置が困難な場合も多い」
 とも説明してあるが、水田はありあまっているので、水田をつぶせば、遊水池を造ることは可能。水田をつぶせば、水田のための補助金を減らせるので、一石二鳥。
Posted by 管理人 at 2015年10月22日 12:28
遊水池について、了解しました。
水田の利用は賛成です。最近野鳥保護ために「冬水田んぼ」なる活動も始まっていますが、「夏水田んぼ(無農薬・乾田化しない)」の活動も始まれば良いと思います。トンボだけでなく、ヘイケボタルやカエルや湿原性の野鳥も復活するかもしれません。
Posted by ドラゴン at 2015年10月22日 13:54
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