2015年10月01日

◆ VW の不正はガソリン車も?

 VW の不正(排ガス偽装)は、ディーゼルだけでなく、ガソリン車にも及ぶかもしれない。 ──

 VW の不正は、ディーゼルだけだろうと思われていたが、どうも雲行きが怪しくなってきた。
 まず、これは末端の職員だけでなく、経営者が関与していたらしいという報道が出た。
 《 VW不正、歴代経営陣が関与か 鈍い対応 》
 独DPA通信は関係者の話として、VWの開発部門が2005〜06年に導入を決めたと伝えた。
 今年9月に不正問題で引責辞任したマルティン・ウィンターコルン氏が会長に就いたのは07年1月。導入を決めたとされる時期は、前任のベルント・ピシェツリーダー氏が経営トップだった。独検察当局はウィンターコルン氏への捜査を始めたが、独メディアは前の経営陣も不正を知っていた可能性があると報じている。不正に関わった疑いがある幹部ら十数人が停職処分になったとの報道もある。また、検察当局はVWグループで高級車を展開するアウディも捜査する検討を始めたという。
( → 朝日新聞 2015年9月30日

 経営者が関与していたのだとすれば、大がかりな組織的な工作であるから、工作がディーゼルだけに留まっていたとは思えない。このような工作があったとすれば、「1車種だけ」ということはありえない。同様に、「ディーゼルだけ」というのも考えにくい。

 ──

 以上は、論理的な推理だが、実測データによる傍証もある。
 実は、「ドイツ車は日本車に比べて実燃費が圧倒的に高い」という評判があった。10・15モードに比べると、実燃費は大きく劣る……というのが、通常の日本車だ。ところが、ドイツ車は、10・15モードと実燃費が同じぐらいなのだ。
 このことは、「ドイツ車の方が優れているから」というのが、これまでの解釈だった。しかし、現在のように各社が技術革新にしのぎを削っていて、情報がよく伝わる時代に、このように圧倒的な差があることは考えにくい。(日本がドイツに比べて浦島太郎状態で時代に取り残される……ということは考えにくい。)
 というわけで、私はちょっと前から、「ガソリン車も怪しいぞ」と思っていた。
 そこへ、上記の「経営者も関与していた」という報道が出た。こうなると、「すごく怪しい。ほとんど黒だ」という感じがしてくる。

 そこで、ネットを調べてみたら、私と同じことを考えている人がいた。この人は自分で燃費も測定して、データを示している。
  → VWの不正はガソリン車にも及ぶかも
  → その続編

 後者のページから引用しよう。
 結論から書きましょう。
排ガスを浄化すると、実燃費は20〜30%低下します。(多分)

 逆に言えば、排ガス浄化をしないと、このくらい燃費が良くなるわけだ。
 
 前者のページを見ると、具体的な例がある。実燃費を、日本車とドイツ車で比較している。
 日産自動車「マーチ」が「15キロメートル/リットル」(10-15モード燃費は「26キロメートル/リットル」)。
 ハイブリッド動力のホンダ「CR-Z」がCVT仕様、6速マニュアルトランスミッション仕様ともに「17キロメートル/リットル」(10-15モード燃費はCVT仕様が「25キロメートル/リットル」、6速MT仕様が「22.5キロ/リットル」)

 フォルクスワーゲン「ゴルフ・トレンドライン」、新しい1.2リットル過給エンジンと7速デュアル・クラッチ・トランスミッションを搭載した仕様が「17キロメートル/リットル」(10-15モード燃費は「17キロメートル/リットル」)。
 同じく「ポロ」の1.4リットル自然吸気エンジンを積んだ仕様(現在は1.2リットル過給エンジンに変更)がやはり「17キロメートル/リットル」(10-15モード燃費は「17キロメートル/リットル」)。


 実燃費は、日本車が大きく落ち込んでいるのに、ドイツ車は落ち込まない。これを見ると、ドイツ車は大いに怪しい。(ドイツ車といっても、VW車ばかりだが。)

 ただし、「不正はしていなかった」という可能性も、あることはある。
 「日本車は、日本の燃費測定で良い数値が出るように特別にチューニングしてあるので、日本の燃費測定ではすごくいい数値が出るのだ」
 というふうな。さらには、
 「日本車は CVT を使うので効率が悪いが、VW車はデュアル・クラッチ・トランスミッションなので効率がいいのだ(だから実燃費がいいのだ)」
 というふうな。
 まあ、そういう可能性もある。だから、ここでははっきりと「黒だ」と決めつけることはできない。
 とはいえ、大いに怪しい、とは言える。

 だから、問題がガソリン車にまで波及したとしても、決しておかしくはないのだ。というか、ガソリン車に波及する方が、ずっと自然なのである。(経営者の犯行ならば、ディーゼルだけということはなさそうだ。)
 


 [ 付記1 ]
 これが組織的な犯行であることを示す報道。
 ロイター通信によると、EPAとカリフォルニア州大気資源局(CARB)の問題提起に対して、VWは15カ月以上いい加減な釈明で誤魔化そうとした。あるときは、NGOの国際クリーン交通委員会(ICCT)を経由してCARBの調査を委託されたウエストバージニア大学(WVU)の研究者たちのテストのやり方に問題があると言い、またあるときは、路上走行時に排ガスの有害物質濃度が急上昇するのは調査対象になった車両に固有のエラー(誤作動もしくは不良品の意)だと主張したという。業を煮やしたEPAが、VWとアウディが来年発売する予定のディーゼル車の承認を保留すると圧力をかけたこともあった。 

 ロイターの取材に対してVW米法人の元幹部は、米法人でディーゼル車開発に関わった人間はいないし、「ソフトウエアの変更について何も知らない」と答えたという。真相は依然として藪の中だが、このコメントが事実ならば、不正な規制逃れのためのDefeat Deviceの組み込みなどは、ドイツ本国サイドで行われたと考えるべきかもしれない。世界中で販売された1100万台に問題があるとVWが認めているだけに、同社の中枢部に根深い病巣が存在する可能性がありそうだ。

 この点に関連して独紙ビルトは9月27日、問題のソフトについて、VWの内部調査で部品メーカーのボッシュROBG.ULが供給したものだが、07年の段階で規制逃れに使うことは違法だと文書で指摘していたことがわかったと伝えた。また、独紙フランクフルター・アルゲマイネも同日、VWの監査役会に9月25日に提出された社内報告書に、11年の段階で社内から不正な排ガス規制逃れに関する警告があったと報じた。
( → フォルクスワーゲンの排ガス不正 意図的に規制逃れを狙った手口

 日産のゴーン社長の見解。
 日産自動車(7201.T)のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)は22日、フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正操作問題をめぐって、自動車メーカーが排ガスのデータを改ざんしていた場合、それを内部で隠ぺいするのは難しいのではないか、と述べた。
 社長は、VW内で何が起きたのかに関してコメントを控えたが、会社内部でそのような不正が行われていた場合、大勢の人が知っていた可能性が高いと指摘。「隠し通すことができるとは思わない」と語った。
( → 22日 ロイター

 つまり、「内部で少数の人だけがこっそり実行していた、ということはありそうにない」と述べているわけだ。
 とすれば、こっそり隠して不正をしていたのではなく、組織ぐるみで大がかりに会社全体でやっていたことになる。
 だったら、ガソリン車も……と考えるのが自然だろう。
 
 [ 付記2 ]
 ただし、あとで良く考え直すと、ガソリン車では不正はなかったかもしれない。なぜか? 不正をする意思が経営者にあったとしても、不正をするソフトを入手できるとは限らないからだ。
 そもそも、この不正ソフトは、VW社が自社開発したものではなくて、ボッシュが開発用に提供したものであるにすぎない。試験車両にだけ搭載するべきものを、市販車に搭載してしまったのだ。
 一方、ガソリン車の場合は、ボッシュが提供したとは言えない。(少なくとも、コモンレール式のディーゼル燃料噴射装置ではない。)だから、不正をしていたと決めつけることはできない。

 ただ、よく考えると、ガソリン車でも、ダウンサイジング・ターボならば、燃料噴射装置を使っているので、ボッシュの燃料噴射装置を使っている可能性は高い。とすれば、その装置にも同様の「試験車両用のソフト」が搭載されていた可能性もかなりある。ひょっとすると、「ターボ車に限って、ガソリン車も不正をしていた」というふうになるかも。(自然吸気車ならば、ボッシュの装置を使っていない可能性がある。)
 なお、VW車のほとんどすべては直噴ターボだから、ひょっとして、「VW車のほとんどすべてのガソリン車は不正ソフトを搭載していた」という可能性も、かなりある。
 けっこう、怪しい。(黒と決めつけることはできないが。)
 
 [ 付記3 ]
 「会社ぐるみ」というふうに見なしたが、実際はもっとひどいようだ。「国ぐるみ」「欧州ぐるみ」であるらしい。というのは、トヨタが欧州当局に訴えたのに、欧州当局はこれを握りつぶしたからだ。
 トヨタ自動車が数年前から、独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車の排ガス性能に疑問を持ち、欧州の規制当局に取り締まりを要請していたことが「日経エコロジー」の取材で明らかになった。
 背景にはディーゼル車の開発において、VWと同じような燃費や走行性能を求めると、排ガス性能が発揮できなかったことがある。競合他社のデータと比べてもVWが不正ソフトを使っていなければ説明できないデータだったという。
 しかし、規制当局は動かなかった。実際、2013年の欧州委員会共同研究センターの調査で、不正ソフトを見つけていたと欧米メディアが報じている。EUではこうしたソフトは以前から違法としていたが、「規制当局は問題を追及しなかった」(英紙フィナンシャル・タイムズ)という。
( → 日経ビジネスオンライン 2015-10-01

 ただ、この記事を見た限りでは、ガソリン車はセーフかもしれない。(よくわからん。)
posted by 管理人 at 19:35| Comment(8) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ボッシュの提供したテスト用プログラムが生産品に入るはずが無い、との主張がありますが、通常ECUにはプログラムが書き込まれて車両メーカーに納入されます。つまりBOSCHが知らないはずが無い。
ただ、BOSCHが主体的にそのプログラムを故意に入れる事は考えにくいので、発注仕様に明記されて記録が残っているでしょう。
ISO9001に準拠している筈の欧州メーカーであれば発注側、受注側双方に記録が残っているので近いうちに詳細が判明するでしょう。
どっちも記録がないとかになったら。。。大変なことになりそうですね。
Posted by 徳明 at 2015年10月02日 22:08
テスト品と量産品とで、まったく別のソフトを搭載するのは面倒なので、そうするとは思えない。たぶん、同一のソフト(双方をともに含むソフト)を搭載した上で、初期設定でモード切替をしているのでしょう。
 で、そのモード切替は、VWの側でもできる。だからテスト時には、モード切替でテストモードでテストした。
 その後、量産車では、量産モードにするべきなのだが、テストモードで出荷した。そのモード切替については、ボッシュの側は知らなかった。……というふうに思える。
 ただし、故障車がボッシュに来ることがあるから、そのとき修理して、モードが狂っていることに気づいたはず。ボッシュは事後には知ってはいたが、事前には関知しなかった……というふうになりそうだ。
Posted by 管理人 at 2015年10月02日 23:40
http://gigazine.net/news/20151001-euro-car-fuel-gap/
http://news.livedoor.com/article/detail/10663186/

http://jp.reuters.com/article/2015/09/28/volkswagen-emissions-tests-idJPKCN0RS13U20150928

VWだけでなく他のメーカー(特に独メーカー)も、実燃費が公表値より乖離がひどいようです。政府もグルでやっていたような印象です。二酸化炭素削減を名目に欧州基準の排ガス規制を採用させ、車を売りまくるつもりだったのでしょう。
Posted by 名無し at 2015年10月03日 15:08
上の記事の内容は、本項の話とは逆で、ドイツ車の方が実燃費が悪い、というもの。
 とすると、各国のテストにうまく合格するように、それぞれの国別にチューニングしているのかも。ドイツ車は、欧州のテストで良い数値を出し、日本のテストでは悪い数値を出す。日本車はその逆。……というふうに。
 そういうチューニングをしただけなのかな? それにしては数値の差が大きすぎるようでもあるが。
 また、実燃費が悪いとしたら、排ガス浄化でゴマ化しはしていないことになる。この件はシロだったか。
Posted by 管理人 at 2015年10月03日 15:36
ディーゼル車に関してはVWのみが不正ソフトを使用した。但し、他のメーカーも今まで販売した車は実際の
走行モードでは、排ガス、燃費ともにかなり悪くなる。
ガソリン車では、排ガス規制は簡単にクリアできたが、燃費は、実際の走行モードでは悪く、燃費をごまかしている。

すべて、EUでは検査がザルなら納得できる気はしますね。自動車は国策ですから。車に関して言えば、欧州のハイパフォーマンス信仰は病気ですからね。
燃費と両立するわけないのですが、環境先進国という建前と日本車の技術力に圧迫されて、徐々に検査のザルさが拡大していったのではないでしょうか。
Posted by 名無し at 2015年10月04日 08:51
http://n-seikei.jp/2015/09/vweuco2.html

とにかく、無茶苦茶ですな。
日米では、欧州車は少ないですからね。
ただでさえ、値段の高い車の燃費を疑う者はいないですから。
Posted by 名無し at 2015年10月04日 09:02
経営者の関与がはっきりしてきた。以下、引用。

  ̄ ̄
『Automotive News』によれば、マーティン・ヴィンターコルン氏は2007年にフォルクスワーゲンのCEOに就任した際、ウルリッヒ・ハッケンベルク氏とウォルフガング・ハッツ氏にそのエンジン、つまり "VWグループを窮地に導くエンジン"の開発を、まだ露呈していないだけで問題となるであろうソフトウェアを搭載したまま、続けるよう指示したのだ。その当時、この指示に物申すものは誰もいなかった。

VWが受けた警告はボッシュ社からだけではなかったようだ。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の報道によれば、2011年にVW社内の技術者が同じ警告を会社側にしたという報告が監査役会に提出されていたという。

→ http://jp.autoblog.com/2015/10/03/vw-diesel-fix-would-have-cost-335-per-vehicle/
Posted by 管理人 at 2015年10月04日 14:03
VW社がヒョウロンカに金を払ってスズキのネガキャン書かせようとしていたとか
伏木悦郎のFacebookだけがソースなので真贋はわかりませんが、実際そういう方がいるんですよね
全体主義国家が生んだ企業らしいやり口かと
Posted by よしお at 2015年10月06日 23:48
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