2015年09月24日

◆ 燃料電池と炭酸ガスの嘘

 燃料電池は炭酸ガスを出さない、という嘘があいかわらず出回っている。その嘘を指摘する。 ──

 燃料電池は炭酸ガスを出さない、というのは嘘だが、懲りもせず、朝日が記事に書いている。そこで嘘を指摘しよう。
 《 CO2出さないクリーン発電 燃料電池 》
 燃料電池は、水素と酸素を化学反応させてできた電気を電力エネルギーとして使う。燃料は水素で、発電時には水しか生成されず、石油など化石燃料による発電のように、地球温暖化の原因となる CO2が排出されないため、クリーンな発電として期待されている。
 普及が始まっているのは、家庭用燃料電池(エネファーム)だ。エネファームは住宅に設置した燃料電池で、都市ガスやプロパンガスから水素を取り出し、空気中の酸素を利用して発電する。その際に出る熱も給湯に利用する。水素を取り出すときに CO2は排出されるが発電時はゼロ。各家庭で電気を作るため送電ロスも無くなる。エネファーム導入で削減できる家庭あたりの CO2排出量は年1330キロになるという。
 燃料電池車も今後の普及が見込まれる。(以下略)
( → 朝日新聞 2015-09-24

 よくもまあ、こういうまるきりの嘘を書くものだと呆れるが、東京ガスの嘘をそのまま信じて疑わないのだとすれば、いくらか同情も湧く。そこで、無知を指摘する形で、以下で解説しよう。

 (1) 炭素は消えない

 記事では「 CO2 を出さない」と記してある。以下のように。
 「燃料は水素で、発電時には水しか生成されず、石油など化石燃料による発電のように、地球温暖化の原因となる CO2が排出されない」
 「水素を取り出すときに CO2は排出されるが発電時はゼロ」
 「エネファーム導入で削減できる家庭あたりの CO2排出量は年1330キロになる」
 これらを読むと、「 CO2 を排出しないので、これほど炭酸ガスの削減効果があるのだな」と読者は思うだろうが、とんでもない。
 仮にそうだとしたら、燃料に含まれる炭素はどこに行ったのか? 炭素が使われずに蓄積されるとしたら、多大な炭素が無駄に眠ることになり、大きな損失だ。かといって、炭素が燃焼されるとしたら、元の燃料の炭素と水素はすべて燃焼されることになるので、 CO2 の削減効果などはないことになる。
 ここまで考えればわかるだろう。燃料に含まれる炭素は消えることはない。とすれば、「水素だけが使われて炭素は使われない」ということは、ないのだ。

 (2) 論理のペテン

 では、真相は? 
 記事をよく読めばわかるが、「水素だけ」で、「炭素は使われない」のは、発電のときだけだ。一方、炭素は給湯の熱源として使われる。つまりこうだ。

             水素 ── 発電
   元の燃料(ガス)
             炭素 ── 給湯

 元の燃料のうち、水素は発電に使われ、炭素は給湯のために使われる。全体としては、水素と炭素はどちらも使われるので、特に「 CO2 は排出されない」ということは、ない。
 しかしながら、この図の上半分だけを見て、下半分を隠すと、「水素が発電するだけで CO2 は排出されない」と見える。これぞペテン。(手品みたいなものか。)
 確かに、上半分だけを見れば、炭素は使われない。しかし、下半分では、「水素と炭素」のかわりに「炭素だけ」が使われるのだから、通常よりもはるかに多大な CO2 が排出されている。
 まとめれば、こうだ。
  ・ 発電時 ……  CO2 は排出されない。
  ・ 給湯時 ……  CO2 がすごく排出される。

 この合計を見れば、 CO2 の排出量は同じである。しかしながら、上半分だけを見て、下半分を見なければ、「 CO2 は排出されない」というふうに見えるのだ。

 比喩。
 「手品をします。100円玉を二つ貸してください。はい、ありがとう。この 100円玉で、手品をします。今、右手に 100円玉がひとつ。左手に 100円玉がひとつ。ここで手を合わせてから離すと、あら不思議。右手にあった 100円玉が消えてしまいました。消えてしまったので、もう存在しません。存在しないのだから、 100円玉はお返しできません。諦めてください。じゃあね、バイバイ」

 ここでは「右手にあった 100円玉が消えた」という手品をしている。しかし実際には、「右手にあった 100円玉が消えた」のではない。「右手にあった 100円玉が左手に移った」だけだ。右手では 100円玉が消えたが、その分、左手では 100円玉が増えている。全体では、増えも減りもしない。しかし手品師は、右手だけを見せて、「 100円玉が消えました」と言ってだましている。
 これが、朝日の記事のやっているペテンだ。
 「発電では CO2 は排出されません」と書いて、「 CO2 が消えてしまったように見せつける。しかし本当は、「発電では CO2 は排出されませんが、給湯では CO2 はたっぷり排出されるので、全体では、 CO2 は減りません」というのが真相だ。
 読者は朝日のペテンにだまされている。

 (3) 熱効率の分だけ

 では、「エネファーム導入で削減できる家庭あたりの CO2排出量は年 1330キロになる」というのは、嘘だったのか?
 実は、この数字自体は、嘘ではないようだ。ただし、ここで CO2が削減されるのは、「熱効率が向上した」からであるにすぎない。
 実際、家庭用燃料電池は、たしかに熱効率がいい。だから、「 CO2排出量が大幅に削減される」というのは、まんざら嘘ではない。
 ただし、記事には、故意のミスリードがある。それは、
 「 CO2排出量を排出しないから、CO2排出量が大幅に削減される」というふうに誤読されるように記していることだ。本当は、「 CO2排出量を排出しないから」ではなくて、「熱効率が向上したから」というだけのことなのだが。
( ※ だから、CO2排出量の削減は、熱効率の向上した分だけだ。CO2排出量が 100%削減されたかのように見せつける記事は、嘘八百だ。)
 
 (4) 給湯の分だけ

 では、少なくとも熱効率が向上する分は、有効なのだろうか? 理屈ではそうだが、理論と現実とは異なる。
 たしかに、会社側は高い熱効率を誇っているし、政府もその数値をそのまま信じて転載している。
  → 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 の資料
 ただし、会社側の説明は、「理論上の最高効率」であるにすぎない。しかしそんなものは現実からは懸け離れている。
( ※ 自動車で言えば、理論上の最高効率というものは存在するが、実際の運転では、理論上の最高効率になることなんか、ほとんどない。それと同様だ。)
 具体的にはどういうことか? 「理論上の最高効率」には、次の制限があるのだ。
 「発電したときに付随して(炭素を使って)給湯するが、その給湯のお湯はすべて使い切る」

 つまり、付随的に生じたお湯をすべて使い切ることが前提となる。しかしながら、現実には、そういうことはあり得ない。実際に、利用しているユーザーの証言がある。
お湯の使い道を何とかしないと、お湯が余ってどうしようもない

  ̄ ̄
冷房で電気を使い水道が暖かい夏はお湯があまり、床暖房で電気をあまり使わず水道が冷たい冬はお湯が足りない。

  ̄ ̄
エネファームは冬は連続発電するけど夏はだめだよ。
ウチのも取り付けた時はタンクが空になると発電始めたけどプログラムを
バージョンアップしてから1日発電したら翌日はタンクが空でも怠けて
お休みするようになった。
たぶんオンオフの回数を制限するためだろう。
タンクが空なのに働かないのはオレも怠けてると感じるw

  ̄ ̄
やっぱり夏はダメなんだw

  ̄ ̄
冬場浴槽に湯を張り込んだら、湯が貯まるまでシャワーも使えない
湯の貯め込み完了まで9時間以上、シャワー1回で80L位湯を使う
シャワー用の湯が貯まるまで待っていたら浴槽の湯が冷めている
仕方がないから、湯が貯まるまで布団にもぐって寝ていたのだが
さて発電した電気は何に使ったのだろう。
エアコンと電気毛布で使ってしまったのだな。
ガスストーブで暖房するよりはCOP分ECOってことなのだろう
それなら買電でエアコン運転した方がECOだろう

( → ユーザー体験記(2ちゃんねる)

 まとめると、こうだ。
  ・ 夏はお湯を使わないので、タンクがいっぱいで、ろくに発電しない。
  ・ 冬は、お湯が不足するので、別の給湯器を使うハメに。
  ・ 冬は、湯が足りないので、湯が溜まるまでが大変。
  ・ むしろ、エアコンで暖房する方が、高効率。


 (5) 元が取れるか

 いろいろと不便さが続出するが、それでもコストが低ければ、我慢できる。では、コストは下がるのか? 「効率が大幅に向上した」という言葉を信じるのであれば、コストは下がるはずだ。しかしながら、次の問題点もある。
  ・ 初期投資のコストがいっぱいかかる。
  ・ 足りない湯や暖房をまかなうために、別の装置が必要だ。
  ・ 併用する別の装置は、効率が悪いので、全体効率が下がる。
  ・ 湯が冷めると、熱が無駄となり、効率は低下する。


 以上をまとめた全体の結果は、次の通り。
エネファームの出力は0.7kwくらい。
24時間フル発電すると16.8kw
月に500kwくらいは発電できる。
だけど夏はお湯がすぐに満タンになるからかなり発電量が落ちる。
採算を合わすのは不可能だよ。
自分の道楽で付けるなら別だけどw
( → 同上 )

 つまり、「エコ信者」が趣味でエコを楽しむ(不便さを楽しむ自虐趣味)という意味以外には、何もない。コストは通常よりも高くて、採算に合わない。

 (6) もっといいのは? 

 では、どうすればいいのか? 何もしなければいいのか?
 いや、代案はある。同じページに、次の記述がある。
趣味でなく実用性ならエコジョーズ1択ですね。
( → 同上 )

 つまり、エコジョーズを使えばいいのだ。
  → エコジョーズ
 これは、ガスを高効率で給湯に使うもの。ただの給湯器だから、ガスを使って、いつでも必要なときに必要な量だけを使える。一方、電気の方は、普通の電力会社から買えばいい。……これで何も問題はない。採算も合う。(上記リンク)

 (*)結論

 結論としては、こうだ。
 「家庭用燃料電池(エネファーム)は、ペテンである。理論的な数値は上だが、実際には従来方式よりも劣る。使い勝手が悪いし、コストも上がる。 CO2 削減の効果は確かにあるが、その量はたいしたことはない。どうせなら、エコジョーズの方がいい。こちらは、採算は合うので、お得である。また、 CO2 の削減も、そこそこ見込める」



 [ 付記 ]
 ついでだが、記事にはひどい印象操作がある。

nenryoden2.jpg

 この記事を見ると、まるで、「燃料電池車は CO2 を出さないのでエコである」という感じだ。写真は燃料電池車なんだし。
 しかし、記事は、家庭用燃料電池の話だ。燃料電池車は、オマケで少し言及しているだけにすぎない。それでいて、
 「CO2 を出さないクリーン発電」
 なんていう見出しで、印象操作をしている。

 繰り返して言うが、燃料電池は、CO2 を出さないということはない。同じ燃料を使う以上は、同じように CO2 を排出する。
 ただし、右手を見る限りは、「右手では排出しない」とは言える。しかしながら、その分を、「左手では排出する」というふうにしている。差し引きすれば、CO2 の排出量は同じなのだ。
 なのに、この現実に対して、
 「CO2 を出さないクリーン発電」
 なんていう見出しで、印象操作をしているのは、とんでもないペテンだ。
posted by 管理人 at 10:39| Comment(0) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
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