鬼怒川の堤防が決壊した理由は、前項で示した。つまり、コンクリの被覆がないせいで、堤防が洪水によって崩壊してしまったのだ。

出典( PDF )
これを避けるには、コンクリで被覆すればいい。しかし、そうなっていなかったから、鬼怒川では決壊が起こった。
では、鬼怒川以外の堤防はどうか? 調べてみたら、恐ろしい状況がわかった。日本中の大部分の堤防は、鬼怒川の堤防と同様で、コンクリの被覆がないのだ。
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これを調べるには、最も重要な箇所を調べればいい。つまり、最も危険そうで、最も人家の集中している箇所だ。それは、どこか? 江戸川だろう。ここは、何度も氾濫が起こっているし、かつ、人家も密集している。東京都も重要地点に指定している。
→ 江戸川区――ゼロメートル地帯が憂う「大型台風で堤防決壊」という恐怖のシナリオ
これほどの危険地帯であるならば、堤防はコンクリで被覆されていて当然だ、と思えるだろう。ところが、実際には、そうではない。
次のいずれも、表側(川側)であるにもかかわらず、コンクリの被覆は皆無または一部であるにすぎない。しかも、堤防の高さも不十分であることが多い。
以上の例では、「下流 → 上流」という順で示したが、いずれにおいても、堤防にコンクリの被覆はない。
表側(川側)でさえこうなのだから、まして裏側には、コンクリの被覆はあるはずもない。(いちいち画像では示さなかったが。)
というわけで、「最重要の堤防でさえ、コンクリの被覆がない」ということが判明したわけだ。
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もっとも、首都圏の堤防がみんなこういうひどい状況にある、というわけでもない。荒川は、(中流域はともかく)下流域では、コンクリの護岸があることもある。(必ずあるとは言えない。)
比較的まともなのは、鶴見川である。この川の下流域では、だいたいどこもかもコンクリの護岸がある。(実は、裏側も、コンクリで被覆されている。立派だ。)
とはいえ、鶴見川は例外に近い。たいていの一級河川には、まともな護岸がないようだ。
とすれば、その結果はただ一つ。「大雨が降れば、鬼怒川と同様に、堤防は決壊する」ということだ。
それが日本の河川の現状なのである。
【 追記 】
鶴見川は、現状では、コンクリの護岸が見えなくなっている箇所もある。というのは、コンクリの護岸の表面に、芝生が張られたからだ。そのせいで、一見、コンクリの護岸がなくて、芝生の面だけがあるように見える。
→ 解説文書(PDF)
コンクリの護岸の上に芝生が張られた箇所と、コンクリの護岸がない箇所は、どうやって区別が付くか? 次の諸点に注目するといい。
・ 斜面が完全な平面状ならば、コンクリ護岸あり。
斜面がなだらかに起伏していれば、コンクリ護岸なし。
・ 上面と斜面がきちんと区別されていれば、コンクリ護岸。
上面と斜面がなだらかにつながっていれば、コンクリ護岸なし。
・ 上面にアスファルト面があれば、どちらとも言えず。
上面にアスファルト面がなければ、コンクリ護岸なし。
[ 付記 ]
危険な河川のうちでも、特に江戸川は危険だ。
江戸川のそばの地下鉄・篠崎駅などは、地下鉄が地下を走っているので、駅が洪水で水没しかねない。
この件は、前に「津波が来たら」という話題で扱った。
→ 東京湾の津波被害
→ 東京に津波が来たら?
だが、怖いのは、津波だけではない。洪水も怖いのだ。洪水のせいで、地下駅が水没しかねない。この話題は、前にも述べた。
→ 地下鉄の水害
洪水、怖いですねえ。地下鉄だと、蟻んこの穴に水を注がれたようなものか。
[ 余談 ]
江戸川の氾濫を防ぐには、別の案もある。利根川と江戸川の分流点で、江戸川への流入を止めて、水を利根川に多く流すのだ。
見ればわかるように、左上から分流点に来た水は、下方に向かう江戸川の方にぶつかるようになっている。洪水のときの水は、江戸川にばかり多く流れてしまうのだ。これではおかしい。
ここを工事して、まっすぐ来た水は利根川の方に多く流れるようにするべきだ。江戸川にはあまり流れないようにするべきだ。( 口を絞ってもいい。)
そもそも、利根川の方は、下流域の河川敷も広くて、余裕がある。周囲には農地もたくさんあって、河川敷の拡張も可能だ。
一方、江戸川の方は、周囲に市街地が多い。とすれば、こちらには、あまり水を流さない方がいいのだ。
日本の河川政策は、どうも、わざと被害が大きくなるような設計になっている。むしろ、「洪水のときには被害を小さくする」というふうにするべきだ。(具体的には、「都市の被害を縮小して、郊外の被害を拡大する」というふうに、被害の場所を移せばいい。)
【 追記 】
すでに上記で述べた設備は存在する、と指摘を受けた。(コメント欄。)
調べたら、下記ページで紹介されている。
→ 関宿水閘門
水門で、江戸川への流入を抑止するわけだ。
(特に綱島〜鶴見にかけての中・下流地区で)
そのため、治水対策は相当な年月と労力をかけてやっているはずです
一例では
・新横浜(日産スタジアム)に遊水地を作っている
・鶴見川の下流地域で大規模な浚渫を行っている
・堤防のかさ上げ工事を行っている
→これは今でも鷹野大橋を超えた下流地域でやっていたはず
管理人さんの投稿を見る限り、同じ第一級河川である江戸川で洪水対策が進んでいないのが不思議ですね?
(歴史的に水害に悩まされたことがないからでしょうか?)
参考サイト
http://junior.minicity-plus.jp/2010/04/2012/
http://www.city.yokohama.lg.jp/seisaku/seisaku/chousa/kihou/134/kihou134-042-046-1.pdf#search='%E9%B6%B4%E8%A6%8B%E5%B7%9D+%E6%B2%BB%E6%B0%B4'
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~sfuku/sfuku/03_paper/paper/dron63_238.pdf#search='%E9%B6%B4%E8%A6%8B%E5%B7%9D+%E6%B2%BB%E6%B0%B4'
http://www.kaikou.city.yokohama.jp/journal/086/086_02_03.html
江戸川や利根川は、河川敷が広い。その分、余裕がある。
とはいえ、その分、堤防も低いから、長時間にわたって大量の水が流れれば、土のままだと決壊しやすいはず。「河川敷が広いから大丈夫」なんて思っていると、鬼怒川の二の舞だ。
タイムスタンプは 下記 ↓
私が批判してるのは、巨額であることではなく、コスパが悪いことです。批判しているのは、一世帯当たり1000万円ぐらいになるような例ばかり。
コンクリ護岸は、1世帯1000万円になるはずがない。今回、被災者は 6600世帯。
→ http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2584636.html
1世帯1000万円なら、660億円。このくらい巨額になるなら、反対しますが、実際には、10億円でお釣りが来るでしょう。
> 農地を遊水池代わりに利用できるよう、意図的に堤防を弱くしておく
それはそれで、別項で示しましたが、コンクリ護岸の方が、コスパはいいと思います。今回の場合だと、あたりの約32平方キロ四方の住宅地で浸水したということなので、農地に水を入れたとしても、どっちみち床上浸水の家が多くなって、決壊に似た状況になります。堤防のそばの家だけは、流されないでしょうが、市内の大部分は浸水してしまうので、被害を防ぐことができない。
コンクリ護岸の方が、コスパはいいでしょう。そのための金は、たっぷりと余っているんだし。たとえば、陸前高田の馬鹿建設をやめるだけでいい。あるいは、無駄な防潮堤をやめる。
あるいは、都心部の地下貯水池という超巨額の建設をやめる。(本日別項を参照。)
あと、利根川と江戸川の河川敷はT字になっていて、横棒が利根川で縦棒が江戸川です。地図で確認してください。w
穂谷川 7.7km 56億円、牛滝川 7.4km 78億円
なんていうのが見つかるが…
10億円ではいったい何km「護岸工事」できるのやら…コスパ良いのか?
鬼怒川の氾濫した部分前後の1kmくらい護岸工事する提案ですかね。
それとも鬼怒川広域で工事が必要であり例えば660億円規模の巨額の事業になり反対しないといけない案件なのか?
→ http://openblog.meblog.biz/article/26239646.html