2015年08月29日

◆ 新国立競技場の 1550億円はペテン

 新国立競技場の新しい予算は 1550億円だが、その積算の根拠はペテンだ。 ──

 新国立競技場の新しい予算は 1550億円だと決まった。同時に、その積算の根拠も示された。
 官邸であった新国立競技場の整備計画に関する関係閣僚会議。首相は、建設費を1550億円に絞り込んだ新計画に胸を張った。
 遠藤氏のチームは、この建設費に説得力を持たせようと様々な数字を持ち出した。過去に海外であった五輪競技場と比べて、「新国立の建設費が高額」との批判への「反論」を用意した。
 新国立の半分程度の面積だった2012年ロンドン、00年シドニーの主会場について、新国立と同程度の面積と仮定。さらに、いまの為替レートを用いて建設費を「補正」した。その結果、ロンドン(建設当時の為替レートで約650億円)は1474億円、シドニー(同約460億円)は1514億円との数字をはじき出した。遠藤氏は、新計画で1350億円とした競技場の本体価格を念頭に「実質的にロンドンより安くなった」と主張した。
 国内にある競技場についても、補正を実行。味の素スタジアム(東京都調布市)は307億円が補正後1307億円、埼玉スタジアム(さいたま市)は356億円が1918億円と、4〜5倍以上に跳ね上がった。補正方法は「延べ床面積、建設物価の上昇、消費税率により補正し、さらに新国立競技場に固有の条件を上乗せした」という。


skprices.jpg

( → 朝日新聞 2015-08-29


 もっともらしい理屈をこねているが、「4〜5倍以上に跳ね上がった」という点からして、論理にペテンがあるとわかる。では、どこがおかしいか? 
 「新国立と同程度の面積と仮定」というところがおかしい。

 (1) そもそも新国立の面積を、他のスタジアムの倍にする必然性がない。ロンドンやシドニーでもちゃんと開催できたのだから、ロンドンやシドニーと同程度の面積で足りるはずだ。必要なのは客席の数だけであり、面積ではないのだ。勝手に巨大な面積を導入するところからして おかしい。巨大なキールアーチのかわりに、巨大な面積を、勝手に天下り式に導入して、それを前提としている。まったく反省ができていない。

 (2) 埼玉スタジアムに比べて3倍の面積にする必要がない。なるほど、埼玉スタジアムは、サッカー専用球場であり、陸上競技場よりは一回り小さい。しかしながら、グラウンド部分の建設コストはあまりかからないのだ。かかるのはスタンド部分の建設コストだ。で、そのスタンド部分だが、埼玉スタジアムは 63,700人 で、新国立は常設席が 68,000 人だ。ほとんど変わらない。だとしたら、「面積が3倍だから、建設費も3倍かかる」という理屈は成立しない。むしろ、「埼玉スタジアムに比べて、スタンドの大きさは1割増しだから、建設費も1割増しで済む」というふうに計算するべきだ。それができないのだとしたら、観客席以外の無駄な面積が膨大にあることになる。そこを削るべきだ。
( ※ そもそも、埼玉スタジアムの3倍の建物面積なら、観客席は 19万人になる計算だ。そんなにでかいスタジアムを作る気なんだろうか? 滅茶苦茶だ。)

 ──

 以上からして、政府の主張する 1550億円という数字の根拠はペテンだ。たぶん、1550億円という数字を先に出して、そのために無駄な建物面積を膨大に算出したのだろう。(観客席以外の部分で。)
 では、観客席以外の部分とは、何か? たぶん、売店だろう。売店による売上げを(オリンピック期間だけしかないので)5億円ぐらい見込む。その5億円を稼ぐために、建設費が 500億円ぐらい余計にかかるわけだ。つまり、5億円を稼ぐために 500億円ぐらいも余計に建設費をかけよう、というわけ。樽俎のせいで、面積が、外国の2倍になってしまうわけだ。
 そして、「こういう数字が出たから、1550億円という数字は正当です」と主張するわけだ。
 論理的ペテン。人々はそれに引っかかって、「ああ、そうですね。はい、わかりました」と素直にうなずく。



 [ 付記 ]
 だまされた例が、河野太郎だ。
  → 1540億円の競技場|河野太郎公式ブログ
 1550億円という数字をそのまま認めた上で、固定席六万八千人を固定席六万人と仮設席八千人に減らせばいい、と主張する。
 しかしそれでは、コストは1割以下の削減率にしかならない。1550億円が 1450億円になる程度だ。ほとんど意味がない。
 むしろ、建物の面積そのものをほぼ半減するべきだろう。つまり、外国のスタジアム並みにするべきだろう。そっちが優先だ。

 なお、どうしても面積を減らせないというのであれば、建設そのものを取りやめて、味の素スタジアムか、日産スタジアムを使えばいい。席は、味の素スタジアムなら 5万人だから、仮設席を 18,000人ぐらい追加するだけで足りる。日産スタジアムなら 72,327人だから、そのまま使える。

 ※ 開会式と閉会式だけ巨大な日産スタジアムでやって、陸上競技は
   都内の味の素スタジアムでやる、というのが合理的かもしれない。
   


 [ 余談 ]
 「冷房がないのはけしからん。特に、身障者には大変だ」
 と大騒ぎする人が多いが、この点は特に問題ない。

 (1) 身障者だからといって特に暑さに耐えきれないわけでははない。暑さへの対応は、健常者と同様だ。また、暑さに耐えきれないほどの病人ならば、もともと病室にいるべきであり、こんなところに出てくるべきではない。
 それでも一部の高齢者などは、冷房が必要かもしれないが、それなら VIP ルームに行けばいい。ここでは冷暖房完備だ。気温も 27度ぐらいまで下がる。
 一方、一般客席に冷房設備を付けても、36度が 33〜34度になる程度の部分的効果しかないと報道されている。こんな中途半端な冷房設備は必要ない。それよりは料金を値下げしてくれる方がありがたいだろう。

 (2) そもそも真夏の日中に競技をするのが馬鹿げている。陸上競技は、早朝または夜間にやるべきだ。カールルイスが来たとき(世界選手権)だって、夜間にやっている。(前出)
  → 新国立競技場レポート 1
 早朝または夜間にやれば、気温は 27〜30度程度で済む。日中に冷房を効かせるよりも、ずっと涼しい。こうするのが正解だ。また、この場合は、特に冷房の必要はない。

( ※ 陸上競技は早朝または夜間にやり、室内スポーツは日中にやる。……これで問題ないはずだ。真夏の炎天下で競技をするという発想が、そもそもおかしい。)
 


 【 追記 】
 ペテンの構造がわかった。
 まず、本文中の画像に記してある日産スタジアムの数字を見ると、非常に大きいことがわかる。他に比べて倍ぐらいの床面積だ。これはどういうことか? 「たぶん2階構造になっているのだろう」と推測を付けて、調べてみたところ、まさしくそうだとわかった。
  → 日産スタジアムの構造
 この図からわかるように、2階構造になっている。つまり、スタンド(観客席)の下には、別の建物構造がある。具体的には、「レストラン」「日産ウォーターパーク」というふうに示してある。(上記リンクの画像に書いてある。)
 このうち、日産ウォーターパークというのは、下記だ。
 日産ウォーターパークは、温水を利用した22種類のプール施設
( → 日産ウォーターパーク 公式サイト

 22種類のプール施設なんていうものを設置しているから、床面積が2倍になってしまうわけだ。
( ※ 正確に言うと、3階は観客席で、2階は日産ウォーターパークとレストランで、地上1階は何もない広場。→ 画像

 ともあれ、プールだのレストランだの、必要性の低いものがたっぷりとあるから、床面積が増える。とはいえ、これはスタジアムの本質とは何の関係もないものだ。あってもなくてもいいものだ。
 で、日産スタジアムや新国立競技場が、埼玉スタジアムの3倍の床面積をもつからといって、埼玉スタジアムの3倍の観客席があるわけでもないし、埼玉スタジアムの3倍の建設コストがかかるわけでもない。したがって、「埼玉スタジアムの3倍の床面積だから、埼玉スタジアムの3倍の建設コストがかかる」というような論理は、数字をこねくり回しただけの滅茶苦茶論理だ。……ここにペテンがある。
( ※ 仮にそのインチキ数字が成立するなら、埼玉スタジアムの3倍の観客席があることになるが、それはあり得ない。)
posted by 管理人 at 11:06| Comment(2) |  東京五輪・豊洲 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に <STRONG>[ 余談 ]</STRONG> を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2015年08月29日 13:56
最後に <FONT COLOR="#dd0000">【 追記 】</FONT> を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2015年08月29日 21:49
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