2015年08月26日

◆ ホテル・オークラの建て替え

 ホテル・オークラの建て替えが話題になっている。これにうまい対案はあるか? ある。 ──

 ホテル・オークラの建て替えが話題になっている。現在の建物を取り壊して、新しい建物を建築して、東京五輪に間に合わせるというわけ。
 理由は、現在の建物は半世紀を経て古くなっており、部屋も狭いので、高級ホテルの競争を勝てないから。
 しかしながら、ホテル・オークラの建物は日本の名建築であり、世界各地から「取り壊し反対」という声が上がっている。これは滅多にないことだ。
 日本を代表する高級ホテル「ホテルオークラ東京」(東京都港区)の本館が建て替えられることになった。半世紀以上、国内外の賓客を迎えてきたが、老朽化が進み、営業は今月末で休止する。数々の意匠を凝らした建物の取り壊しを惜しむ声も上がっている。
 本館は「日本モダニズム建築の最高傑作」とも言われた。建築家の故・谷口吉郎氏が設計委員長を務めた。
 計画では、11階建ての本館(408室)を取り壊した跡地に41階建てと16階建ての2棟を建設し、計510室程度に増やす。開業は2019年の予定だ。
( → 朝日新聞 2015-08-26
 取り壊し決定には世界の有名デザイナーらが反対を唱え、「オークラを救え」と署名活動も進んでいる。
 オークラが2014年5月23日に本館建て替え計画を発表すると、特に海外で大きな話題となった。米ニューヨークタイムズ電子版は2014年8月15日付の社説で「サヨナラ、オークラ」と題した記事を掲載。「日本の美とモダニズムデザインが独特に融合」したホテル、その解体は「一つの時代の終わり」と評した。
 米ワシントンポスト電子版は2015年2月2日付記事で、オークラは「日本の『取り壊し』文化における最新の犠牲者」と表現。米CNN日本語電子版2014年7月15日付記事では、「何でも取り壊して大きく作り直すのが主流のアジアにあって、ホテルオークラはかつて素晴らしかったものへの敬意を思い起こさせる存在だった」とする一方、「ホテル側は建て替え後も日本の伝統的な美を保つ意向だが、古い建物の趣をすべて再現するのは不可能に思える」と、建て替え後にどれだけ「遺産」が受け継がれるか不安を示した。
 海外の有名人も惜しんでいる。デザイン・インテリア誌「カーサブルータス」のウェブサイトでは、「なくならないで、私のオークラ! MY MOMENT AT OKURA」と題した特設ページを開き、各界から寄せられたコメントを紹介している。ファッションデザイナーのポール・スミス氏は「クリエイティブな仕事をしている人たちが宿泊したいと思うのは、オークラなのではないでしょうか」と述べ、建築家のスティーブン・ホール氏も「オークラの本館が取り壊されるのは悲劇です」「次世代に伝えるべき宝物なのですよ」と訴えている。
 一方で、解体反対の署名活動もインターネット上で始まっている。英誌「モノクル(MONOCLE)」は「セーブ・ザ・オークラ」というサイトをオープンし、本館保存に賛同する人たちに署名を呼び掛けている。イタリアのブランド「ボッテガ・ヴェネタ」のクリエイティブディレクター、トーマス・マイヤー氏はSNS(交流サイト)を活用したキャンペーンを開始した。ネットユーザーに対して、オークラで撮った写真を画像共有サイト「インスタグラム」に共通のハッシュタグを付けて投稿するよう促した。この試みを通じて、貴重な建築物の取り壊しという問題について人々の関心を高めるのが目的だ。
( → ホテルオークラ取り壊しに世界が動いた ポール・スミス氏ら有名デザイナーが続々「待った」

 実際にどういう建物であるかは、下記ページでわかる。
  → ホテルオークラ、アートの塊 ハウエルも惜しむ、モダンと伝統の芸術(画像多数)

 ──

 これほどの話題を呼んでいるからには、ぜひとも現在の建物を残したい。では、それは可能か? 対案はあるか?

 まず、ホテル・オークラの言い分を聞くと、こうだ。
 ホテルの広報担当者は、理由を「設備の老朽化により、トップホテル相応の快適な時間と空間を提供し続けることが難しくなった」と話す。本館の8割の客室は30平方メートル台。他の高級ホテルに比べて手狭な上、近隣に高層ビルが次々と建ち、眺望も悪くなった。
( → 朝日新聞[前出] )

 つまり、「老朽化」と「手狭」が理由だ。

 しかしこの問題は、簡単に解決が付く。こうだ。
 「現在の建物は閉鎖せずに、現在の建物を他のホテルに売却する。ホテルオークラは、別の土地で新規建設する(引っ越す)」

 
 この場合には、次のメリットがある。
  ・ 現在の建物を保存できる。
  ・ 現在の建物を無駄なく利用できる。
  ・ 現在の建物を高額で売却できる。(取り壊しならばゼロ。)
  ・ 5年間ほどの閉鎖期間がないので、売上げ停止がない。
   (従業員の労働力を無駄にしないで済む。)

 ──
 
 では、以上の案を実現するとして、適当な土地は近辺にあるか? 探してみたら、あった。それは、現在のホテル・オークラの南南東1km ぐらいの位置に当たる、東京プリンスホテルの近接地だ。





 だから、基本的には、次のようにすればいい。
  ・ 東京プリンスホテルの建物を取り壊す。
  ・ その跡地に、ホテル・オークラの新ビルを建設する。
  ・ その間、ホテル・オークラは現在地で開業し続ける。
   一方、東京プリンスホテルは休業する。
  ・ 5年後に、ホテル・オークラの新ビルが竣工する。
   その新ビルに、ホテル・オークラは引っ越す。
   現在のホテル・オークラの建物で、東京プリンスホテルが開業する。


 これならば、取り壊しもないし、建物の無駄もない。ほとんどうまく行く。基本的には、これで問題は解決する。

 ──

 ただし、現実にこれを実行するには、微調整が必要だ。というのは、東京プリンスホテルの場所は、あまり良い場所ではないからだ。
 そこで、東京プリンスホテルの隣接地を含めて、この一帯を一挙に再開発してしまう。
 具体的には、下記の航空写真を見ると良い。





okuramap.jpg
クリックして拡大


 東京プリンスホテルは、やや奥まった場所にある。
 一方、その右側には、広大な駐車場がある。(日比谷通りに面している。)
 さらにその北側には、みなと図書館がある。
 そのまた北側には、御成門小学校と、隣接する陸上競技トラックがある。
 一方、駐車場の南側には、東京プリンスホテルのビア・レストランがある。
 これらはすべて一体的に再開発が可能だろう。

 一案として、次のような案が考えられる。
  ・ 北東から南東までの一帯を、ホテル・オークラの新ビルにする。
  ・ みなと図書館と御成門小学校は、東京プリンスホテルの跡地に移転する。

 
 なお、この案にした場合、ホテル・オークラの新ビルの敷地は広大になるので、ホテル・オークラ別館もまた、この新ビルの敷地に移転した方がいい。
 となると、現在のホテル・オークラ別館は空っぽになるので、この別館もまた売却した方がいいだろう。売却先は、東京プリンスホテルが妥当だが、他のホテル会社でもいい。

 ついでだが、この案には、次の大きなメリットがある。
 「東京プリンスホテルは、1964年に開業した古い建物であり、そろそろ建て替えの時期に来ている。このホテルを、現在のホテル・オークラおよびホテル・オークラ別館に移転することで、東京プリンスホテルは、低コストで( or 無料で)建て替えが可能となる」

 要するに、ホテル・オークラの現在の建物は、超一流ホテルであるホテル・オークラには手狭ではあっても、準一流である東京プリンスホテルには十分な広さなのだから、それを無駄なく使えばいい、ということだ。一種のリサイクルである。資源の無駄がない。
 このアイデアを使えば、大切な歴史的な遺産を残すことができる。日本が残すべきは、昔の汚い建物(軍艦島など)だけではないのだ。もっと立派な文化遺産であるホテル・オークラという建物があるのだ。あと 50年もすれば、立派な世界遺産になるかもしれない。それを今という時点で取り壊すべきではないのだ。

( ※ ちなみに、米国のエンパイア・ステート・ビルは、100年ぐらいは使うはずだ。すでに 85年も使っているし。)
 
( ※ 参考で言うと、赤坂プリンスホテルの建て替え費用は 980億円 だ。これからすると、ホテル・オークラは 1300億円ぐらいはかけるつもりだろう。まるで新国立競技場みたいな高額の費用だ。これだけの費用を出せるのであれば、あちこちの玉突き移転みたいな費用も出せるだろう。たとえば、図書館の移転費用も出せるだろう。こんなのは大した額にはならないからだ。特に、場合によっては、ホテル・オークラ別館の一部を、図書館にしてしまってもいい。)
 
( ※ どうしてホテル・オークラが莫大な金を支出できるかというと、現状では容積率がありあまっているから。たぶん一部を他社に販売するつもりなんだろう。 → 「法定容積率の約半分しか使っておらず」)

( ※ 容積率を使うためには、現在のホテル・オークラを取り壊す必要はない。買収した隣接地に、高層ビルを建てれば、そこで容積率を使えるからだ。)



 [ 付記 ]
 東京プリンスホテルのところでは、道路が無駄に直角に2度も曲がっている。(南北 → 東西 → 南北 )そのせいで、交通渋滞をもたらしかねない。
 そこで、この角をなくすといい。具体的には、現在の東京プリンスホテルのある場所に道路を建設して、北側の道(国道301号)と、南側の交差点とを、短絡するといい。これで交通の流れが良くなる。
 新たにできた道の西側には、空地ができるが、その空地は、さらに西側にある公園と連結すればいい。その上で、この連結した公園をすべて取りつぶして、ビル建設地として再開発すればいい。
 一方、消滅した公園の分だけ、新たに公園を新設するといい。その場所は、再開発地の南部分(ビア・レストランのある部分)である。
 再開発地の南西部分(東京タワーに近い部分で、東京プリンスホテルの跡地のあたり)には、図書館を設置するといいだろう。ここなら、東京タワー前の交差点に近いので、交通の便が良く、区民にとって使いやすくなる。

 以上のようにすると、いろいろとメリットが生じる。
 (1) ホテル・オークラにとっては、そばに公園と隣接地があるわけだから、とてもありがたい。
 (2) 南にある神社などの緑地に、新設の公園が隣接するので、大きな緑地帯ができる。
 (3) 直角に2度も曲がる道が短絡されると、道路の長さが短くなり、道路の面積が減るので、有効利用できる土地の面積が増える。(都心の土地が増えるようなものだ。)
 (4) 東京プリンスホテルのそばの南北の道(国道 301号)の流れが良くなる。(現状では、芝公園三丁目の交差点で、東西の道が優先されているので、国道 301号の流れが悪くなる。主従の優先度が逆転しているという倒錯。)
 (5) 東京タワー前の交差点は、十字路でなく、変に道が入り組んでいるが、再開発にともなって、きちんとした十字路に直せる。



 (6) この十字路から東側の道は、現状ではごく狭い。しかし、この細い道を大幅に太くすれば、日比谷通りとうまくつながるので、芝公園三丁目の交差点を通る東西の道を廃止できる。その結果、「道路を減らして、有効利用できる土地の面積が増える」ことと、「交通の流れが良くなること」という、二つのことを同時達成できる。非常に合理的。

 ※ 要点を言うと、こうだ。
 「東京プリンスホテルは、現在、この地点のボトルネックとなっており、交通の流れを悪くしている。再開発によって、このボトルネックを解消すれば、交通の流れが大幅に改善して、地域の状況が良くなる」



 [ 付記 ] ( ※ 細かな話。読まなくてもよい。)
 「耐震性の問題はどうだ?」
 という反論も来そうだ。そこで答えよう。
 本項は、文中にあるように、

> 「老朽化」と「手狭」が理由だ。

 ということへの対案を示している。それだけだ。
 耐震性の問題は、ホテル・オークラは示していないし、それゆえ、私も反論していない。この件は、言及外である。

 耐震性がどうかは、判明していない。ゆえに、本項では、話の枠外となる。
 あえて私の見解を言えば、こうだ。
 「建物の倒壊を防ぐレベルの耐震性があれば十分で、建物のひび割れを防ぐレベルの耐震性は不要。実際にどうであるかは、調査するまでわからない」
 ホテル・オークラは、ホテルという建物ゆえ、当時としてはかなり耐震性があったと思う。それが現代の耐震性の基準を満たしているかどうかは、調査するまでわからない。
 ま、倒壊を防ぐ程度まで耐震工事をすることは、さして不可能ではあるまい、という気がするが、私は素人なので、特に主張するつもりはない。(耐震性の専門家に委ねる。)




 【 関連サイト 】

  → ホテルオークラの建て替えは時代に逆行している!
posted by 管理人 at 20:21 | Comment(1) | 一般(雑学)3 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
このアイデアが実現したら・・・と思わずにいられません。
オークラOBです(^^;
Posted by 丸義 at 2015年08月27日 13:13
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