2015年08月18日

◆ 集中豪雨の予測という研究

 集中豪雨を予測するという研究が進められるそうだ。しかし、災害対策としては、見当違いだろう。 ──

 集中豪雨を予測するという研究が進められるそうだ。
 昨年8月に広島市で土砂災害を発生させたような局地豪雨を、雨雲ができる前の気流の変化などから30分以上前に予測するための大規模研究を、京都大、神戸大、情報通信研究機構(本部・東京都)など11の大学・研究機関が始めた。
 豪雨が発生しやすい兵庫県南部の六甲山系を中心にした関西地域で、今年度から5年間、約20基の最新機器で観測を続け、豪雨の兆候となる気象状況を明らかにするという。
 豪雨が起きる仕組みは、
〈1〉地表付近の水蒸気が、強い上昇気流で上空に運ばれる
〈2〉水蒸気が小さな水滴に変わり、雲ができる
〈3〉上昇気流が続いて大きな積乱雲へと発達し、水滴が大きな雨粒となって地上へ落下する
 ――と考えられる。
 最近は気象レーダーの性能が向上し、雨粒ができた〈3〉の段階は精度よく観測できるようになってきた。レーダーで上空の雨粒をとらえ、地上に降ってくる前に予測情報を出すシステムの開発も進む。
 ただ、豪雨が降り出すまでの時間は10分くらいで、自治体や消防団が注意を呼びかけたり、山間集落や地下街から避難したりするには、より早い予測が求められている。
 研究では、六甲山系を取り囲むように観測機器を配備し、上昇気流や風向きの急激な変化、大気中の水蒸気の変動など〈1〉〈2〉の段階の観測精度を高める。蓄積したデータから雨雲の兆候をつかみ、豪雨をもたらす気象状況を絞り込む予定だ。
( → 読売新聞 2015-08-18

 妥当な発想のように見えるが、災害対策としては見当違いだろう。
 なぜか? 集中豪雨と被害の間には、かなり時間差があるからだ。一般に、集中豪雨が起こっても、すぐには被害は生じない。数時間の連続降雨のあとで、土壌がたっぷりと水分を含んだあとで、土砂崩れが起こる。だから、その数時間の間に逃げれば、土砂崩れの被害を防ぐことはできるのだ。
 最近の例で言うと、広島県の土砂崩れがあった。ここでは、最初の警報が発された午後4時から、土砂崩れがあった午前4時まで、12時間ほどの余裕があった。
  → 豪雨の気象予想は誰がやるべきか?
 この間、何時間も豪雨が続いていたわけだが、その降っている間に避難すれば、十分に間にあったのだ。
 ここでは、予報を30分か1時間ぐらい早めることの効果は、ほとんどない。それよりも、12時間の間に、確実に逃げ出すことが大切なのだ。

 ──

 では、どうやって逃げ出すか? 
 それには、強力スピーカーで避難を勧告するといい。たとえ夜中であろうと、たたき起こして、強引に避難させる。
 この件は、「津波のときには強力スピーカーで避難させる」という案があったので、それをそのまま使えばいい。
  → 津波対策の妙案
 その部分を抜粋すると、こうだ。
 この問題を解決するには、どうすればいいか? こうだ。
 「超強力スピーカーを用意して、家には留まれないほど、大音量で避難を促す。否応なしに追い立てる」

 だいたい 100デシベル以上の音量が妥当だ。「うるさくてたまらない」という程度の音量で追い出す。最初は 80デシベルぐらいでいいが、最終的には 110デシベルぐらいにして、とても家にはいられないようにする。避難を促すのではなく、強制的に追い立てる。
 具体的には、こんな製品だ。



     

ホーン型コールスピーカー(アンプ内蔵型)      ホーンスピーカー
   .


 ──

 もう一つ、大切なことがある。
 避難の勧告などの実務を、町長などの権力者に任せないことだ。つまり、専門家に委ねることだ。
 現実には、町長などの権力者に権限が委ねられる。そのせいで、避難勧告が遅れることもある。たとえば、伊豆大島の豪雨被害がそうだ。
 災害時には町長が対策本部長を務めることになっていたが、島根県で開かれた会議のため 15日から不在で、同日夕以降、16日午前3時すぎまで連絡がなかったという。
( → 時事通信社 )

 当時、大島に川島理史町長はいなかった。日本ジオパーク全国大会に出席するため 15日から島根県にいた。原田浩副町長も東京都檜原村での都副町村長会議のため不在だった。
( → 朝日新聞 2013年10月17日 )
( → 豪雨災害と気象温暖化

 さらに、専門家でないがゆえの、決断のまずさもある。
 伊豆大島の大島町の町長は、「豪雨になった真夜中に避難するとかえって危険だったから避難命令を発しなかった」と言う。
( → 伊豆大島の台風災害

 こういう問題を避けるには、避難勧告などの決断を、(権力者でなく)専門家に任せることが必要だ。特に、市町村単位の下っ端職員ではなく、全国共通レベルの高度な専門家の判断が必要だ。それには、民間気象会社のサービスを利用するのがいいだろう。(何らかの形で契約する。)
  → 豪雨の気象予想は誰がやるべきか?

 ──

 まとめて言おう。
 豪雨災害の被害を減らすには、気象で予測をすればいいのではない。むしろ、豪雨が起こったあとで、きちんと対策をすればいい。足りないのは、時間ではなくて、正しい知恵である。正しい知恵もなしに、あたふたと あわてふためいても、かえって余計な被害をもたらしかねない。

 ちなみに、天津大爆発では、「何をするべきか」を知らないまま、消防署員が出動して、水をぶっかけた。そのせいで、金属ナトリウムに引火して、さらに硝酸系の爆発物が大量に爆発したらしい。「何をするべきか」を知らないまま、あたふたと あわてふためいても、かえって余計な被害をもたらしかねない。
 被害を減らすのに大切なことは、急ぐことではなく、正しい対策を取ることなのだ。


 
      《 急いては事を仕損じる 》
 

 ──

 その一方で、あまりにもグズグズしていることは、命に関わる。動きにくい老人たちには、強引に動かす大音声が必要だ。



[ 逃げろ! > 

前出  



 【 関連項目 】

  → 土砂崩れと天気予報

  ※ 土壌センサーを使って、土砂崩れを予測する、という研究がある。しかし……
posted by 管理人 at 22:00 | Comment(3) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
土砂災害のあった、広島市安佐南区に在住しているものです。年初から、サイレンがつくようになりました。結構大きな音がします。

ちなみに昨年の土砂災害の時は深夜寝ている間に自宅付近2箇所土石流が流れていきました。
確かに夕方から土砂降りだったのですが、数時間位の土砂降りは珍しくなかったので、記事のように夕方4時から翌朝4時まで12時間猶予があるというのは後知恵だと考えます。よく降るなぁと感じたのは夜11時位でした。深夜1時になっても続くのでスマホの雨雲レーダーの予報を見ると翌朝4時か5時くらいまで続くとのことだったので、あらあら、大丈夫かな?とぼんやりと思っていました。そんな状況でした。当時を思い返すと、サイレン、スピーカーはあると避難の気づきにつながるので大変いいと思いますが、予報技術の向上も悪い選択肢ではないと思います。両方あるとベターと考えます。何故なら超のつく土砂降りの中を避難所まで歩くのはそれなりに抵抗感があるからです。サイレン、スピーカーを鳴らすタイミングを多少なりともコントロール出来うるのであればそれはあると助かると考えます。
Posted by やまさん at 2015年08月19日 01:13
> 超のつく土砂降りの中を避難所まで歩くのはそれなりに抵抗感がある

 超のつく土砂降りであるからこそ、危険度が高いのであり、いくら抵抗感があっても、避難するべきなのです。
 
> 予報技術の向上も悪い選択肢ではないと思います。

 それはそうですね。広島で言えば、降り始めたあとの午後7時ぐらいの時点で、翌日4時の土砂崩れを予測できるとすれば、大いに効果があるでしょう。ゆえに、予測技術の向上自体は、大切です。
 しかしながら、記事の趣旨は、「降り始める前に避難できること」です。この方針だと、「降り始めたあとは避難しない」という発想になりがちです。それは死者を増やす。
 だから、いくら避難したくなくても、豪雨の中を避難するべきだ、という発想が何よりも大切なのです。いくら予測技術が向上しても、肝心の本人の腰が重いのでは、死者は減らせません。
 豪雨の中をずぶ濡れになって避難するようなリアルな訓練が必要でしょう。

 ──

 サイレンはいいですね。情報をありがとうございました。
Posted by 管理人 at 2015年08月19日 07:52
管理人さん
返信ありがとうございます。去年の今日は夕方から大雨が降っていました。
私の住んでいる広島市安佐南区八木では、今年春から毎年1回避難訓練を行うようになりました。私の住んでいる地域にはお年寄りが多いので、これは避難意識向上に寄与すると考えています。

しかし、将来に関しては他地域の同様事例発生を予防することこそが重要と考えており、少し複雑な気持ちになっております、、、。

今回の記事の内容とは少し離れるのですが、土石流という表現はいささか誤解を生むのではないかと思っております。私自身、土砂災害の前はなんとなく、水を含んだ土砂がざーっと流れるというイメージしか持ってなかったのです。実際のところは、深さ4メートル幅30メートルくらいの土砂、岩石が押し流され、自動車位の大きな岩がゴロゴロ転がり、2階建てのアパートをアパートごと押し流し、自動車に至っては元の車種が何か分からない位まで変形するというありさまでした。地形が変わったといっても過言ではありません。家の近所の車は数十メートル押し流され、ぐちゃぐちゃになりました。
岩山のがけ崩れのスケールアップ版と考えるのがより適切ではないかと感じました。
これは報道されていないのですが、亡くなられた方も体がバラバラになった方がおられたそうです。(人数まではわかりませんでした。)

こういった命の危険にかかわるとんでもない現象であるというのを強調して伝える必要性があるのではないかと思いつつあります。
Posted by やまさん at 2015年08月19日 23:11
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