このことはすでに九州では現実化している。太陽光発電の最大発電量が、九州電力の需要の最大量(夏のピーク需要)を上回ってしまったのだ。
現実に九州の太陽光発電設備は急増している。2014年5月末までに固定価格買取制度の認定を受けた太陽光発電設備の容量は1782万kWに達して、夏の電力需要のピーク(約1600万kW)を上回る状況になった。
( → スマートジャパン )
九州電力が再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の契約を25日から中断し、波紋を呼んでいる。太陽光発電の接続申し込みが急増して管内の想定需要を超える勢いで、電力の安定供給に支障が出る恐れがあると判断した。
九電は急伸した買い取り申し込みをすべて接続すると、想定を上回る供給力となり、電力需給の均衡が崩れて送電網が逼迫(ひっぱく)し、容量をオーバーする可能性があると指摘する。最悪の場合、大停電につながる恐れがあると説明している。
電力を安定供給するためには、需要と供給力を均衡させ、周波数を一定に保つ必要がある。周波数は供給過多になると上昇し、需要が供給を上回れば下がる。周波数が変動すると電気の質が落ち、工場などの電気設備が正常に動かなくなるなど経済活動に支障が出るという。さらに自動的に発電所が停止し、大規模停電につながる可能性も挙げている。
九電によると、既に契約済みの太陽光と風力発電の出力は 390万キロワット。これとは別に 870万キロワット分の契約申し込みがある。これらを全て受け入れた場合、春と秋のピーク時需要約 800万キロワットを超える 1260万キロワットになる。さらに申し込み前の接続検討分の 680万キロワットも合わせると、夏の電力需要のピーク約 1600万キロワットを上回る。
ここまで増えれば、火力による調整能力を超えてしまうとして、九電は新規買い取り中断の決定をした。
( → 佐賀新聞 2014年10月01日 )
これは 2014年の秋の出来事だが、その後、中断はなくなり、受け入れを再開した。ただし、受け入れには上限が付いて、太陽光の発電量が需要を上回るような場合には、太陽光発電の受け入れを中止する。(実際にはもっと少ない段階で、危険度を勘案して、受け入れを中止する。)つまり、制限付きで受け入れるわけだ。
九州電力は22日、中断している太陽光発電の買い取り手続きを1月中旬から再開すると発表した。新たな契約について、需要が少なく電力が余りそうな場合、九電が事業者に無補償で発電抑制を要請できる期間を、現行の年間30日から日数に上限を設けず無制限とする。
( → 佐賀新聞 2014年12月23日 )
九州電力は4日、太陽光発電を無制限で抑制できる新ルールに関し、年間の抑制日数が最大で 165日になるとの試算を公表した。
( → 佐賀新聞 2015年03月05日 )
受け入れ上限に達してしまったので、大口の供給者の発電については、電力会社が受け入れ制限をするわけだ。(ただし小口の家庭電力は別。全量受け入れのままだ。)
さて。このことは、九州電力に限らない。同様のことは、他の電力会社でも起こっている。
(九電の)突然の“契約中断”宣告は、30日には北海道、東北、四国の各電力会社にも連鎖した。
各社ともに、出力10キロワット未満の住宅用太陽光は当面対象外としたが、10キロワット以上の住宅用も少なくない。
( → 東洋経済 2014年10月13日 )
中断だけでなく、再開でも同一歩調を取ったようだ。
九州電力など4つの電力会社が約3カ月にわたる中断を経て、再生可能エネルギーによる発電設備の接続手続きを再開する。
九州電力に続いて発電設備の接続申込を保留してきた北海道・東北・四国の3電力会社も同様の方針を12月18日に発表した。3社は九州電力のように太陽光に対する回答の再開時期を明らかにしていないが、同じ2月中に再開する可能性が大きい。
( → スマートジャパン 2014年12月24日 )
接続を保留もしくは拒否してきた北海道電力、東北電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の5社のうち、すでに接続申し込みが接続可能量を超えているのは、北海道電力と東北電力、九州電力の3社。
( → 日経テクノロジー 2015/01/24 )
では、この5社を除いた、東電、関電、中電はどうか? これらは需要がたっぷりあるので、まだまだ太陽光発電を受け入れることが可能か? どうも、そうではないようだ。

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ここでは「全量買い取り」という量が重要だ。東京電力の場合、414万kW になっている。東電のデータによると、8月の最大需要は 5000万kW 程度だから、その8%に相当する。5月の日曜日の最大需要は 3000万kW 程度だから、その 14%に相当する。
そして、これほどの量が、正午に発生して、夕方には消えてしまう。あまりにも大きな変動だと言えるだろう。
九州電力の場合には、その変動の大きさが、14%どころか 100%に近くなった。他の地方の電力会社も同様だった。
では、東電や関電はどうかと言えば、中電や関電の数値を見ると、もはやかなり受け入れ可能の上限に近くなりつつある。
東電は、14%なので、まだ大丈夫のように見えるが、この値を 100%近くにしたら、いざというときに他の電力会社に頼ることもできないまま、とんでもないトラブルになりかねない。
結論としては、こう言える。
北海道電力、東北電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の5社は、すでに受け入れ可能な上限に達しており、太陽光発電の受け入れ制限を実施中だ。
中電、関電、北陸の3社も、余裕は多くないので、現状のような太陽光発電の伸びが続けば、近い将来に、受け入れ可能な上限に達して、太陽光発電の受け入れ制限を実施するだろう。
東電だけは、まだかなり余裕があるが、東電まで上限ギリギリまで太陽光に依存したら、いざというときのバックアップのような保証がなくなり、日本全体でとんでもないトラブルが発生しかねない。東電についてまで上限ギリギリまで太陽光発電を受け入れるというのは、トラブルの元だ。となると、上限よりもかなり低い値で、受け入れ制限を実施せざるを得ないだろう。
要するに、太陽光発電は、もはや受け入れ可能な上限に達しつつあるので、これ以上の急激な拡大は見込めない。
──
ここで疑問が湧くだろう。
国全体では、3〜4%ぐらいの発電量にすぎないのに、どうして制限が必要となるのか? いったい、なぜ?
それは、太陽光発電の発電量の変動が大きすぎるからだ。正午には 100%の発電をするのに、夕方にはゼロ同然の発電しかしない。……これほどにも大きな変動があるので、一日のトータルの発電量は小さいまま、正午の最大発電量はやたらと大きくなる。そのせいで、受け入れ制限が必要となる。
要するに、太陽光発電は、安定的な電力ではない。きわめて質の悪い電力だ。それは常にバックアップとなる火力発電と組み合わせる必要がある。
太陽光発電は、二酸化炭素を削減する効果は数%ぐらいはあるのだが、そのために国全体にかける負荷は途方もないものがある、と言える。コスト的にも大変だ。
結論としては、太陽光発電は、まだまだ未完成な技術だと言える。将来的にはコストダウンが進んで普及するだろうが、今という時点であわてて大金を注いで普及を急ぐようなものではない。
(なのに、新国立競技場なんかよりも、はるかに巨額の無駄遣いがなされている、と言えるだろう。愚の骨頂。)
[ 付記 ]
※ 細かな話です。
データを読み直したら……
図表では、九電は全量買い取りが 403.1万kW となっている。なのに報道では 1600万kW だ。
つまり、図表の値は、実際の4分の1ぐらいの値らしい。(よくわからないが。)
同じことを東電に当てはめると、図表では 14%でも、実際にはその4倍の 56% に到達していることになる。となると、100%までの余裕は少ない。
このあたり、どういうことか、よくわからないが、いずれにせよ、あまり楽観できる状況ではないようだ。
なんにせよトンデモナイ数字で「春と秋のピーク時需要約800万キロワット」だって毎日出るわけじゃない(しかも太陽光と時間はずれる)し、週末はピーク自体がもっと小さい。こんな時にお構いなく発電したら確実に供給過剰で停電になります。
コストも膨大だし、太陽光発電バブルも極まれりといった感がありますね。
電力会社の言いなりになってませんか?
基本的には賛成ですが、将来は不明とすればもっとよろしいのでは?
水素社会が到来することを考えれば、余剰電力はいくらでも貯蔵できますから・・・
> 将来的にはコストダウンが進んで普及するだろうが、今という時点であわてて大金を注いで普及を急ぐようなものではない。
不明どころか、将来は太陽光発電が大幅に普及すると見込んでいます。20〜30年後。
私は太陽光発電の否定論ではなくて、「大金を投入しての今現在の強引な普及は無駄だからやめろ」とともに、「将来は普及するから、今は技術開発に専念しろ」という趣旨です。
ただ、水素社会については懐疑的。水素を経由すると大幅に効率が低下する。電力のまま貯蔵する方向に進むと見込んでます。たとえば、キャパシタ。燃料電池車は、電気自動車よりもかなり効率が劣るので、主役にはならないと見込んでいます。
左側の方々がイデオロギーで反対を叫んでますが、熱中症で倒れる人が多いことを考えたら、他の原発も、次々と再稼働して貰えたら、と思います。