朝日新聞が夏の電力状況について、1面トップと3面で、大々的な記事を書いた。次のように。

話題のテーマは、私が前に述べたテーマと同様だ。
→ 夏の電力事情(東電) (8月05日)
テーマは同様だし、「この夏は猛暑だが電力不足は起こらない」という話題も同様だ。
ただし、細かく見ると、朝日の方は内容に大きな誤りを含む。特に、次の点だ。
夏場の電力需要のピーク時の供給には不安があった。だが、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)のもと、太陽光発電の導入量がこの5年間で10倍近くに急増。晴れた日に発電量が多くなる太陽光が夏のピークに対応し、電力供給の安定につながっている。
( → 朝日新聞 2015-08-08 )
夏のピーク時の電力供給を補う存在になりつつあるのが太陽光発電だ。太陽光は天気に左右される不安定な電源とされるが、猛暑の日はまず晴れており、電力の供給面では頼りになる。天気が悪くなれば出力は落ちるが、その分、気温も下がって電気の需要も減る。
太陽光発電協会の穂岐山孝司・広報部長は「夏の電力需要の動きにあった電源。同じ再生可能エネルギーでも風力発電とは違う特徴だ」と話す。
( → 朝日新聞 2015-08-08 )
いずれにしても、「太陽光発電の発電量が大きくなったから、電力不足が発生しなかった」という趣旨だ。特に、夏場の昼間についてその効果が大きい、という趣旨だ。
しかしこれは、「太陽光発電の推進」にまっしぐらな朝日の歪曲報道だ。
では、正しくは? こうだ。
(1) ピーク時間
「太陽光発電によって、電力供給のピークと電力需要のピークが一致する」
という趣旨で述べられているが、これは事実ではない。
・ 太陽光発電の電力供給は、サインカーブで示される。
(12時が最大で、朝や夕方にはゼロ同然となる。)
・ 夏の日中の電力需要は、10時〜17時までピークが保たれる。
このような不一致がある。したがって、12時ごろ(供給が最大量になる時刻)ならともかく、夕方には、電力需要がほぼ最大値であるにもかかわらず、太陽光発電の電力供給はゼロ同然となり、両者はまったく不一致となる。(つまり朝日の記事は嘘八百だ。)
この件は、下記項目で、グラフとともに詳しく説明した。
→ 太陽光発電の時変化
特に今年の夏の電力需要については、下記項目でグラフを示した。
→ 夏の電力事情(東電)
この項目でも、「太陽光発電はピーク対策にはならない」と説明してある。(朝日の記者は、この項目を読んでおけば、間違えずに済んだのにね。)

結論としては、こうなる。
太陽光発電は、夏の電力需要のピーク対策(電力不足対策)には、まったく無効である。たとえ現在の 10倍の量の太陽光発電を設置しても、ピーク対策としてはまったく無効である。なぜなら、12時ごろには発電するが、午後5時ごろにはほとんど発電しないからだ。真っ昼間以外では、常に電力不足が発生するし、夕方以降では惨憺たるありさまとなる。
夏の電力需要のピーク対策としては、太陽光発電以外に頼るしかない。(具体的には、火力発電だ。当り前だが。)
ま、炭酸ガスを削減するという効果なら、一応あるわけだが、ピーク対策としては、まったく無効だと結論していいだろう。(朝日の記事は間違い。)
(2) 太陽光発電の発電量
そもそも、たとえ太陽光発電がピーク対策になったとしても、その効果はろくにない。なぜなら、太陽光発電の発電量は、日本の発電量のうち、たったの 3% 程度にしかならないからだ。
つまり、この程度の発電量しかないのであれば、いくら頑張ったところで、大幅に増えた夏の電力需要を満たすことができるはずがない。
ちなみに、最大電力実績カレンダー によると、5月の平日は 3200万kW ぐらいの日が多く、8月上旬の平日は 4800〜5000万kW ぐらいの日が多い。5月に比べて8月上旬は、 1600万kW (5割)も発電量が多いのだ。(2:3 ぐらいの比率。)
これほどにも増えた電力需要を、たったの 3% 程度の太陽光発電がまかなえるはずがない。夏の電力需要を太陽光でまかなうという発想自体が、とんでもなく過大な夢であるとわかる。
ただし、である。3%という数値は、平均値である。一方、最大限で効果があった状況を見ると、12時ごろには発電量の1割程度を占めていると推定される。つまり、12時ごろに限っては、いくらかはお役立ちになっているようだ。(まったくの無駄というほどでもない。)
この件は、いろいろと情報を調べたので、次項でまとめて調査報告をする。そちらを参照。