新たな選考方法については、まだ固まっていないようだが、私としてはいくつかを注文したい。
・ 選考の過程を公開するべきだ
・ 選考途中で国民の声を聞くべきだ
・ 費用は概算だけでいい
(1) 選考の過程を公開するべきだ
いきなり「これに決まりました」と示すのでなく、途中の選考過程を示すべきだ。特に、応募した全作品と、途中の審査で残った作品を示すべきだ。( ※ 当り前だ。前回もそうした。)
ただ、単に結果を示すだけでなく、選考の理由も示すべきだ。「この作品はここが美点だが、ここが弱点だ」というふうに。( ※ 前回は漏れ伝わっただけで、公開はされなかった。)
(2) 選考途中で国民の声を聞くべきだ
これが重要だ。単にデザインの良し悪しだけでなく、コストの高低も勘案して、「これは価格が高すぎるから駄目」というような国民の声を受け付けるべきだ。
( ※ 前回は、国民の声を聞くことはまったくなかった。)
(3) 費用は概算だけでいい
政府は詳細設計まで求めているようだが、選考途中では、費用は概算だけでいい。途中選考で3作品ぐらいまで絞ったあとで、詳細な費用見積もりを出させればいい。
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なお、これは昨日のうちに下書きを書いたのだが、これを書いたあとで、本日(23日)になって、朝日朝刊に似た趣旨の話が掲載された。隈研吾へのインタビュー記事。
今回の白紙撤回に至った要因については「むしろ日本のコンペのやり方の問題ではないか」と指摘する。というのは経験上、フランスのコンペではコストの査定などをする積算事務所をチームに加えて、概算見積もりを作ることが義務づけられていることが多いからだ。
新国立競技場は今後、新たに「設計・施工型」の競争で案が選ばれる可能性が高いと見られている。設計者と施工者が一体となって提案する方法で、「建設スケジュールやコストがある程度保証される」。設計者には、建築家や大手設計事務所、ゼネコンの設計部が想定される。一方で、途中段階でのチェック機能が働きにくい、という指摘もある。
( → 朝日新聞 2015-07-23 )
というわけで、一応、上記の情報をここで紹介しておく。
[ 付記 ]
政府は新たにコンペをやり直すようだが、別に、やり直さなくてもいい。次の方法もある。
「前回のデザインから、そのうちの一つをゼネコンが勝手に選んで、その費用を算定する。それを自分の案として、ゼネコンが提出すればいい」
例。
松建設が A案を 1000億円、B案を 1200億円、C案を 1100億円。
竹建設が A案を 1100億円、B案を 1300億円、C案を 1000億円。
梅建設が A案を 1100億円、B案を 1100億円、C案を 1100億円。
それぞれを吟味したあとで、コストと提案内容とを比較して、最適のものを選べばいい。これなら、前回の案が無駄にならずに済むし、費用も最適に収まる。
一方、今の政府の方針では、ゼネコンが勝手にデザインを出すことになる。つまり、ゼネコン案になってしまう。これでは本末転倒だろう。下手をすると、ものすごく醜い案がものすごく高価格で決まりかねない。最悪だ。
[ 補足 ]
ついでだが、事後にサッカースタジアムに改造する方がいいので、そのことも条件に加えた方が良さそうだ。
そもそも、現状の予定では、新国立競技場には補助競技場がないので、まともな大会を開くことができない。国際大会を開けないのはもちろん、国内の全国大会も開けない。こんな欠陥競技場に、8万席があっても、ただの無駄だ。狂気の沙汰だ。