2015年07月21日

◆ 集団的自衛権のデマ

 集団的自衛権についてデマが出回っている。そこで誤りを指摘する。 ──

 デマの根源は、安倍首相だ。次の二点がおかしい。
  ・ ホルムズ海峡での機雷掃海
  ・ 米艦に乗った邦人を護衛する

 この二点が滅茶苦茶であることについては、すでに説明した。
  → 機雷掃海と集団的自衛権 , 備蓄の大切さ(石油)
  → 集団的自衛権のミスリード

 私としては、これで十分に説明し尽くしたつもりでいたが、世間にはひどいデマが出回っているので、「間違いの指摘」という形で、以下で説明する。

 読売新聞のデマ


 15日に自民党が法案を強行採決したあとで、17日に読売が解説記事を書いた。機雷掃海が起こる場合のシミュレーション記事。
 中東のX国は、近くのホルムズ海峡に機雷をまき、海上を封鎖した。
 民間船舶の回路が閉ざされたことで、日本国内への原油輸入はほぼ絶たれた。
 原油輸入が止まったままの日本国内では、電力各社の計画停電や灯油の買い占めが続き、凍死者が懸念される冬も間近だ。
 政府は「一日も早く機雷を除去しなければ国民生活に死活的影響が出る」として、存立危機事態を認定。自衛隊の掃海部隊の活動が始まった。
( → 読売新聞 2015-07-17 朝刊・特集面 )

 まったく、デタラメばかりだ。順に述べよう。

日本国内への原油輸入はほぼ絶たれた
 そんなことはありえない。他にも石油を生産する国はたくさんあるからだ。特に、サウジアラビアと米国が大増産するはずだ。ちなみに、フセインの湾岸戦争のときには、ホルムズ海峡が封鎖されて、石油価格が急騰したが、サウジアラビアが増産を決めたので、翌日には価格は平常に戻った。もちろん、世界的には不足は発生しなかった。
  → 備蓄の大切さ(石油) の (2)

原油輸入が止まったままの日本
 同じく、あり得ない。世界の他の場所から、いくらでも石油は入ってくる。

電力各社の計画停電
 石油不足による計画停電など、起こるはずがない。
 第1に、上に述べたように、石油は途絶えない。
 第2に、たとえ石油が途絶えたとしても、備蓄が約 200日分もある。だから、すぐには影響が出ない。
  → 機雷掃海と集団的自衛権
 第3に、たとえ備蓄がなくなったとしても、電力における石油の比率は、たったの 14.9% にすぎない。(2013年のデータ)。だから、真夏の昼間のピーク時を除いて、計画停電などあり得ない。
  → 備蓄の大切さ(石油) の (1)
 さらに言えば、真夏の昼間のピーク時であっても、需給調整契約で、大口顧客に休んでもらえば(夏休みを取ってもらえば)、停電などは起こらない。

灯油の買い占め
 もともと原油不足はないのだから、灯油不足もあり得ない。
 また、石油ショックのころならともかく、今は灯油なんかを使っている人が少ないから、よそからちょっと灯油をもってくれば済むだけだ。灯油不足など起こるはずがない。
 ま、北海道に限っては、灯油が主流だが、その程度は備蓄で十分に足りる。

凍死者が懸念される
 すぐ上に述べたように、灯油は不足しない。灯油不足で凍死者などは考えられない。
 また、今では、たいていの人はガスや電気を使うのだから、たいして心配する必要はない。

一日も早く機雷を除去しなければ国民生活に死活的影響が出る
 あわてる必要はない。備蓄が 200日分もあるのだから、200日以内に解決すれば済む。また,石油のかわりに LNG を多く輸入するとか、中東以外の地域から石油を輸入するとか、他の方法を取ることで、200日よりもずっと長い間、石油不足を避けられる。
 だいたい、こういうときのためにこそ、備蓄というものがあるのだ。焦る前に、「備蓄とは何か」ということを理解した方がいい。

 ……

 というわけで、読売の記事は、嘘ばかり。こういう嘘で集団的自衛権を正当化するのだから、呆れたデマ記事である。
 ただ、次の意味はあるかもしれない。
 「実際には国家の危機などは何も存在しないのに、国家の危機が生じたと嘘をついて、政府が勝手に自衛隊を派遣して、日本を戦争に巻き込む」
 こういう可能性は、十分にある。その意味で、読売の記事は、政府が嘘をついて戦争を始めることのシミュレーションになっている。
 つまり、集団的自衛権というのは、日本を外敵から守るためにあるのではなく、日本を勝手に戦争に引きずり込むためにあるのだ。

 過去の例で言えば、こうなる。
 イラクに大量破壊兵器がないときに、「イラクに大量破壊兵器があります」と嘘をつく。その嘘で国民をだまして、「米国を守るため」という名目で、集団的自衛権を発動する。かくて、日本を戦争に引きずり込む。最終的にはフセインを打倒するが、そのあとでタリバーンや ISIS みたいな勢力が伸長して、イラクは恐ろしいほどの国家崩壊状態となる。(まるでマッドマックスだ。)
 結局は、世界の平和を破壊して世界を地獄化するために、日本は関与するわけだ。


 ネットのデマ


 ネットにもデマ記事が出回っている。

 (1) 山本一郎

 次の記事がある。
  → 山本一郎の記事
 集団的自衛権は、中国の南沙諸島侵略を阻止するためにあるのだ、という趣旨。
 呆れた話だ。政府が一言も言っていないし、保守派の論客も言っていないことを、勝手に妄想して、デマ記事を書く。これを読んで「我が意を得たり」と思って、賛同するはてなーも多い。
  → はてなブックマーク
 政治の常識もわからない素人がデマ記事に踊らされるのは、まったくみっともない。以下で説明しよう。

 第1に、南沙諸島を守るのなら、これらの諸国と同盟関係を結んでいる必要がある。それでこそ「集団的自衛権」となる。しかし現実には、これらの諸国と同盟関係を結んでいないのだから、「集団的自衛権」を発動できない。

 第2に、「米艦を守る」ということのつもりのようだが、米国と中国が戦争しているときには、日本が出る幕はない。この二国が戦争をしているときには、核爆弾が飛び交う。自衛隊の出る幕じゃない。
 逆に言えば、実際には核爆弾が飛び交うことはないから、米国と中国が戦争をすることはない。当然、自衛隊が出ていく場面もない。

 第3に、南沙諸島のある南シナ海で、中国が機雷をまくことはありえない。なぜなら、ここは、中国の前庭だからだ。自分の前庭に機雷をまく馬鹿はいない。それで困るのは自分自身だ。自殺行為。
 一方、ここに機雷がまかれても、日本は困らない。たしかにここは日本のシーレーンだが、ここを避けて日本に来る航路は別にある。ちょっと遠回りをする必要があるだけで、別にどうってことはない。

oilroute.jpg
出典:日本のシーレーン

 だから、中国が南シナ海に機雷をまくことなど、あり得ないのだ。どちらかと言えば、日本が南シナ海に機雷をまく方が現実的だ。そうすれば中国はすごく困るが、日本はちっとも困らないからだ。
 ま、「(自分の前庭にあたる)南シナ海に、中国自身が機雷をまく」なんて考える時点で、素人丸出しだ。

 第4に、仮に対中制裁をするとしたら、世界各国がそろって行なう「経済制裁」だ。これが最もシナリオとして可能性が高い。だから、日本が中国を牽制したいのであれば、「対中経済制裁」をサミットなどで唱えればいいのだ。
 一方、日本と米国が勝手に中国に武力行使するなんて、とうていあり得ないことだ。こんなことを言い出したら、昔の日本軍みたいに、盧溝橋事件でも起こしかねない。狂気の沙汰だ。
 ま、ネトウヨというのは、狂人がそろっているが、こういう狂人は、いきなりドンパチやりたがる前に、「経済制裁」という概念を理解するべきだろう。
 まったく、山本一郎みたいな人は、頭が「艦これ」状態だね。呆れるしかない。(馬鹿ではないが、自分が無知な分野について、知ったかぶりで語るところが滅茶苦茶だ。)

 (2) 別の記事

 ネットにはもう一つ、「中国の侵略に対抗するため」という意味で集団的自衛権を唱える人もいる。
  → 安保改正法を憲法に抵触するのに急いだ理由はコレだと思う

 これも同じく、ネトウヨの発想。自分が中国の心配をするのは勝手だが、安倍自民はそんなことを狙っているのではない、という事実を理解するべきだ。
 これも、新聞の政治面を読まないせいだろう。新聞の政治面を読めば、現実がわかるはずなのだが。
 「保守派が議論しているのは、ホルムズ海峡と北朝鮮のことであって、中国への牽制ではない」
 これが集団的自衛権を必死になって導入したがっていることの理由だ。こういう現実を理解するべきだ。新聞の政治面を読めばすぐにわかる。
 新聞も読まずに、ネット記事と「艦これ」ばかりやっているから、現実を離れた軍事ゲームみたいな発想になってしまうのだ。呆れるばかり。
 


 【 関連項目 】
 中国を牽制したいのであれば、南シナ海に軍隊を派遣するよりも、もっと効果的な方法がある。中国の民主化を促進することだ。
  → 中国を民主化せよ

 まともな頭があれば、自衛官を使ってドンパチするよりも、世界規模で中国に民主化の圧力を加えるべきだ、とわかる。つまり、軍事力よりも外交力を駆使するべきなのだ。同時に、中国国内の反体制派(民主化勢力)と協調するべきなのだ。
 さらには、世界中の各国とも協調するべきなのだ。
  → 中国による侵略

 一方、日本が自分一人の力で軍事力を動かしても、中国を軍事的に打ち負かすことなどできはしない。それもわからないで、中国と軍事衝突をしたがるのだから、今のネトウヨというのは、昔の日本軍と同じレベルの危険勢力だ、と見なせるだろう。
 彼らに任せていたら、日本はふたたび真珠湾を勝手に攻撃するだろう。ただし今度は、ハワイの島でもなく、盧溝橋でもなく、南シナ海の島で。
posted by 管理人 at 20:33| Comment(4) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ただ中国の場合、民主化による複数政党制を認めると日本のような全国政党ではなく地域政党が
各地に乱立して自立を目指し、中国大分裂になりかねないので民主化受け入れは困難でしょうね。

思えば言語の中国語と言っても北京語、広東語などで違いがあり、歴史的にも分裂・統合を
繰り返している国ですから。
Posted by ルート at 2015年07月22日 02:00
↑ それを言ったら、日本だって明治維新のときに分離したがった地域があったが、軍事的に制圧されている。
 まあ、自治権の拡大あたりで手を打つことが可能。スコットランドふう。

 あと、そもそも中国を民主化すること自体は必要ない。「民主化しろ」と圧力をかけることで、中国が日本を批判するのを抑圧することが目的です。中国が民主化するかどうかは、日本にとってはどっちでもいい。日本への批判をなくすことが目的で、その手段として「民主化の要求」があるだけです。
Posted by 管理人 at 2015年07月22日 07:54
是非 その貴重な意見を保守派の人に聞かせてほしいです。
チャンネル桜という保守派のチャンネルがあり
そこで討論番組をやっているので
そこに出ていただいて意見を述べてほしいです。
反対派がみんな論破されていますから。
Posted by 山田 at 2015年07月24日 18:06
なお チャンネル桜は保守派では
ありますが右翼ではないのでちゃんと
説明していただければ納得してもらえると思います。 反対派は論理的な説明が出来なかったという事です。
Posted by 山田 at 2015年07月24日 18:19
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