2015年07月18日

◆ アーチ式球場が 250億円

OitaStadium1.jpg 新国立競技場のザハ案に似た、アーチ式のスタジアムが、250億円で建設された。それは大分県の大分銀行ドームだ。 ──

 ザハ案は 2520億円だが、同じようなアーチ式のスタジアムが、1割にあたる 250億円で建設された。(正確には 251億円。)
 これを Wikipedia から転載しよう。


OitaStadium1.jpg

OitaStadium3.jpg

OitaStadium2.jpg


 さすがに、まったく同規模というわけではなくて、観客席は4万人だ。新国立競技場の8万人の半分となる。それでも、同様のスタジアムが、倍の規模で、250億円の2倍にあたる 500億円で作れそうだ。
( ※ そううまくは行かないかもしれないが、おおざっぱにはそのくらいだろう。)

 で、どうして、ザハ案に比べて格安で済むのか? 理由は(前項で述べたように) 次の点だ。
 「ドームの高さが高いので、曲率が急であるアーチを使える」

 というわけで、どうしてもアーチにしたいのなら、上記のようにすれば、低コストでアーチ式のスタジアムを作れるわけだ。

( ※ 写真を見ればわかるように、このスタジアムには、陸上競技用のトラックもある。9レーンもある。その意味で、規模は、ザハ案とたいして差がないと言える。それでいて、費用は 10分の1だ。)

( ※ なお、屋根は、開閉式であるそうだ。開閉式でありながら、この値段。お買い得ですね。……ただ、屋根は、半透明なガラス繊維一重膜ということなので、軽量ではあるが、騒音防止には向いていない感じだ。それでも、雨よけにはなるし、騒音防止効果も少しはある。)
 
( ※ 金属製の屋根の付いたスタジアムだと、神戸の御崎公園球技場がある。これは、重厚な屋根があって、建設費も 230億円で済んだ。ただし残念ながら、トラックがなくて、規模が小さめの球場である。座席も 34,000人しかない。)

( ※ ザハ案に比べて格安で済む理由は、もう一つある。下記で説明する。)
 


 【 追記 】
 次の見解を見つけた。
  → 建築家、片山惠仁氏による、新国立競技場の問題点の考察
 ザハ案はたいして高額ではないとか、新国立競技場が高額になったのはデザインのせいではないとか、あれこれとザハ案を正当化している。しかし、妥当でない。なぜなら、本項の方式ならば、4万人規模のスタジアムを 250億円で建設できるからだ。

 そもそも、ザハ案は、どうしてあれほど巨額なのか? それは、本項の屋根と比べるとわかる。
 「大分銀行ドームは、アーチが細いアーチの分散構造だったから、軽量で、工事しやすくて、安価で済んだ。一方、ザハ案は、すごく太いアーチだから、重量があって、工事しにくくて、超高額になった」

 つまり、「すごく太いアーチを使う」というデザインそのものに問題があったわけだ。このようなアーチを使うことで、「風雨を防ぐだけ」という本来の目的を越えて、「橋のような構造物になる」(前項)というオーバースペックの構造体となった。
 比喩的に言えば、針金のハリボテでガンダム人形を作れば済むところを、超重量物の金属骨格のあるガンダム人形を作った。まるで本物のガンダムみたいな頑丈なガンダム人形を作った。かくて、前者ならば1000万円で済むところが、後者では 10億円になった。……これはまあ、基本コンセプトからして、コスト無視の滅茶苦茶であったことになる。

 ちなみに、ザハには、次の作品もある。
  → Heydar Aliyev Center
 このちっぽけな建物のために、何と 310億円もかかっている。
  → the cost of the center at $250 million
 これは超高層ビルの デビアス銀座(350億円)とほぼ同価格である。
 戦艦大和みたいにデカいデビアス銀座と、駆逐艦みたいに小さいザハの建物が、ほぼ同じ価格なのだ。いかにザハ案が超高額かがわかる。(金のあり余っている産油国だからこそ建築された。)
 
 要するに、ザハの建築は、デザイン優先の彫刻であるにすぎない。そこでは、建築物としての構造が無視されている。そのせいで、無理なデザインを実現するために、超巨額のコストがかかるようになる。
 上の建築家は、「ゼネコンが滅茶苦茶に金を吊り上げた」というふうに説明しているが、ゼネコンのせいにするばかりではいけない。ゼネコンは、建築物としての常識に逆らった、無理なデザインを実現するために、滅茶苦茶な工事を強いられたのだ。そのせいで、精査したら、大幅にコストが上がると判明したのだろう。
 建築物としての常識に逆らった、無理なデザインを提出しておいて、「普通の価格でできなければ、ゼネコンのせいだ」と決めつけるのは、安直すぎる。まずは、建築物としての常識によるデザインを採用するのが先決だろう。そして、そういうふうにすれば、「たったの 250億円で建設できる」という事実を、理解することができるようになる。
 ゼネコンのせいにして喚くよりは、まずは事実を見るべきだ。「たったの 250億円で建設できる」という事実を。
 
( ※ なお、「誰が悪いのか?」という疑問に対しては、「コストを考慮しないでデザインだけを先に決める」という方式を採用した文科省自体に責任がある。最初からコストとデザインをセットで選定するべきだった。そうすれば、今回のように、「コスト無視でデザインだけを決める」なんてことはなかったはずだ。また、せめて、安藤忠雄ではなく、まともな建築知識のある建築家を委員長に据えるべきだった。そうすれば、「コスト無視でデザインだけを決める」なんてことはなかったはずだ。……すべての根源は、文科省にある。たぶん、事務次官が一番悪い。)
 
( ※ 大分銀行ドームは、なかなかの傑作だな……と思って、設計者を見たら、黒川紀章だった。さすがに、建築のことをよくわかっている。)

 《 参考 》

 では、どうすればいいか? 私としては、次のような解決案をひとつの案として示したい。
  ・ 新国立競技場は、屋根なしで、8万人規模とする。
   大部分は、仮設スタンドとする。
  ・ 事後、仮設スタンドは撤去する。
   4〜5万人規模のスタジアムを残す。
  ・ そのあとで、開閉式の屋根を設置する。

 この方式ならば、250億円に加えて必要なのは、4万人規模の仮設席だけだ。これが 50億円だとして、総額で 300億円で設置できる。あれやこれやの資材値上げを考えても、500億円で足りる。要するに、1600億円も必要ないのだ。(上記の建築家のように 1600億円を正当化することはできない。)
 
 なお、サッカー W杯を招致したいのならば、次のようにする。
  ・ 新国立競技場は、屋根なしで、8万人規模とする。
   大部分は、仮設スタンドとする。
  ・ 事後、仮設スタンドは撤去する。
   さらに、トラックをつぶして、スタンドを移動する。
   トラックと外周部の場所の分だけ、座席が増えるので、
   8万人のサッカー球場ができる。
  ・ そのあとで、開閉式の屋根を設置する。




 [ 余談 ]
 「費用の見積もりが甘すぎる!」という批判があったが、別に甘くはない。その証拠に、次の例がある。
  「埼玉スタジアムは、63700人収容で、356億円」( → 出典
 大分銀行ドームと比較しても、8万人規模なら、500億円程度でできるはずだ。
 なお、埼玉スタジアムには、特に美点がある。この件は、別項で論じた。
  → Open ブログ: 開閉式の屋根(スタジアム)
posted by 管理人 at 16:30| Comment(3) |  東京五輪・豊洲 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
後半に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2015年07月19日 11:42
ザハのデザインはロンドン五輪でも予算の3倍になって批判された。
 以下、引用。

  ̄ ̄

 ザハ・ハディド氏(64)。2012年ロンドン五輪では水泳センターを担ったが「野心的なデザインの結果、工費が3倍に膨れた」
 水泳センターは波形の屋根が特徴。見た目は美しいが工費は見積もりを大幅に超過し、建築を簡素化しても約2億7千万ポンド(約522億円)にかさんだ。
 英市民団体「納税者連合」のアンディ・シルベスター氏は17日、日本政府の白紙撤回について「ロンドン五輪ではそのような勇気ある決定がなされず、市民は高額な請求書を押しつけられた。日本はロンドンの失敗から学んでいる」と評価した。
  → http://www.sankei.com/world/news/150718/wor1507180045-n1.html

  ̄ ̄

 なお、建物の解説は
  → http://j.mp/1OeXzAQ
Posted by 管理人 at 2015年07月19日 14:56
最後に <STRONG>[ 余談 ]</STRONG> を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2015年07月19日 22:16
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

過去ログ