新国立競技場の計画が白紙になった。
安倍晋三首相は17日午後、2020年の東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場について、首相官邸で記者団に「現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直す決断をした」と表明した。見直しの理由については「コストが予定より大幅に膨らみ、国民、アスリートからも大きな批判があった。このままでは、みんなで祝福できる大会にすることは困難だと判断した」と語った。
( → 朝日新聞 2015年7月17日 )
その理由は、こうだ。
首相は「一カ月ほど前から計画を見直すことはできないか検討を進めていた。本日、五輪の開催までに間違いなく完成することができると確信できたので、決断した」と説明した。
( → 同上 )
何だ、これ。舌の根も乾かないうちに。
安倍総理大臣は「これから国際コンペをやり、新しいデザインを決めて基本設計を作っていくのでは時間的に間に合わない。2019年のラグビーワールドカップには間に合わないし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックも間に合わない可能性が高い」と述べ、デザインの変更は困難だという認識を示しました。
( → NHK 7月10日 )
あれほど「間に合わない」と言っていたのに、一転して、「間に合う」になってしまった。 (^^);
森元首相はもっとひどい。インタビューに答えて、こんなこと言っている。
「僕はもともとあのスタイルは嫌でしたからね」
「これをみたときに、おやっと思ったですがね。生カキをドロッと垂れたみたいでね」
「このデザインは嫌だなあと正直、思った。やっぱ(東京には)合わないんじゃないでしょうか」
( → 産経 2015.7.17 )
よく言うよ。その前に何を言ったか覚えていないんだろうか。
「五輪のレガシー(遺産)として残そうという考え方だ。50年、70年たっても一番優れた名所として使える」
( → 日刊スポーツ 2015年7月12日 )
──
さて。話を戻すと……
新国立競技場は「白紙」となったわけだが、では、このあと、どうするべきか? それが問題となる。
常識的には、次のようになりそうだ。
「決定されたザハ案のかわりに、次点または3位となる作品を選ぶ」
これでもいいだろう。ただ、その場合、「設計のやり直しに1年半もかかる」という従来の反対論も成立しそうだ。(嘘っぽいが。)
ま、キールアーチを設置しなければ、工期は1〜2年ぐらい縮まりそうなので、設計に時間がかかっても、たいして問題はない、と思う。だから、上記のようにしてもいい。
ただ、それだと、日程に余裕がない。もっといい案はないか?
──
私としては、次のことを提案する。
「開閉式の屋根という条件 を取り下げる。単に普通の屋根だけがあればいい。これによって、従来よりも簡単な基本構造となるので、工期を短縮して、費用も少なくすることができる」
実を言うと、開閉式の屋根という条件は、もともと必要のない条件だった。こんな方式のスタジアムは、オリンピック史上でいっぺんも採用されていない。あまりにも馬鹿げているからだ。
なぜ馬鹿げているか? 開閉式の屋根というのは、「年間の稼働日を増やすため」であるが、それによって増える稼働日は、年に 10日もないからだ。8万人ものスタジアムをいっぱいにできるようなコンサートなど、年に何回も開けるはずがない。
ちなみに、どういう例があったかというと、たとえばこんな例。
ももクロ夏のバカ騒ぎ2014 日産スタジアム大会
満員のように見えるが、ステージの後方には席が用意されていないので、満員ではない。7.2万人の席で、6万人(?)の客だということだ。
他に、福山雅治 や、SEKAI NO OWARI が、7万人規模のコンサートを実施するらしい。
ネットで検索しても、見つかるのはこの程度。年に 10回もない。それを今は横浜の日産スタジアムでやっているが、これを新国立競技場と分けあったら、年に5回も開催できないことになる。
また、スタジアムの貸出料金は、日産スタジアムならば 144万円である。( → リンク )(本項末で修正。)
これと競争できる水準として、(都内という地の利を勘案して)1000万円を呈示しても、年に5回で 5000万円の売上げにしかならない。20年で 10億円だ。
20年で 10億円の売上げなのだから、開閉式の屋根にかけられる費用は 10億円程度。なのに、実際には、 数百億円もの費用をかける。つまり、10億円の利益を得るために、数百億円の費用を投入する。狂気の沙汰だ。
──
というわけで、開閉式の屋根など、不要である。そもそも、コンサートなど、年に数日なのだから、たいして売上げに寄与しない。建設費のほとんどすべては無駄になる。だったら、最初からまともな施設は建てないのがベストだ。すべては仮設施設にするのが最善だ。
ただ、そうもできないのであれば、せめて、必要度の低い「開閉式の屋根」なんてものは、なくすべきだろう。
──
まとめ。
工作を募集するときの条件に、開閉式の屋根という条件 がもともと含まれていたが、この条件をはずすべきだ。つまり、開閉式の屋根をやめて、開きっぱなしの屋根にするべきだ。そのことで、工期を短縮し、費用を下げることができる。
( ※ 今から設計するのが面倒なら、2016年の 安藤案 を採用すればいい。それで特に問題ない。費用は 1000億円である。図は下記。
→ 拡大図 6.8MB , 出典 )
[ 付記 ]
一番いいのは? 前にも述べたが、こうだ。
「普通の屋根付きスタジアム。サッカー専用球場」
これならば、コンサートでなくサッカーの試合に貸し出せるので、多額の売上げが見込める。また、週に1〜2回も開催することができる。つまり、年間 50〜100回だ。これなら、かなり良い売上げとなるだろう。
[ 余談 ]
今回、「白紙撤回」になったわけだが、よく考えると、「白紙撤回しなくても、もともと建設できなかった」というふうになる可能性が高いと思う。日産スタジアムですら、3年9カ月もかかった。とすれば、2015年10月から 2020年8月までの4年10カ月で、あの巨大アーチつきのスタジアムを建設できるとは思えない。たぶん完成するのは 2021〜2022年ごろになっていただろう。つまり、たぶん史上初で、「オリンピックの開催に間に合わなかったスタジアム」というふうになる。いい恥さらしだ。
ま、白紙撤回で、「間に合わないスタジアム」を建設する恥は、一応避けられたわけだが。「できれば、未完成のスタジアムで、大恥をさらす」というのを、見てみたかった気もする。 (^^);
( ※ なお、たとえ形式的に間に合ったとしても、「屋根なしでアーチだけある」という「骨だけの傘」みたいになるわけだったから、どっちみち「間に合わない」わけだが。先にも述べたとおり。
→ 新国立競技場のペテン )
【 追記 】
実を言うと、「開閉式」であることが、超巨額であることの一因となっている。
「開閉式」は、他の球場のように、屋根が移動するタイプならば、まだ実用的である。
しかし、ザハ案のようにアーチがあるタイプだと、事情は異なる。ただのアーチならば、実は、コストは格安でできる。ちなみに、広島のサッカー場である「ビッグアーチ」というスタジアムは、たったの 93億円で、アーチのあるスタジアムとなった。
→ 写真1 、 写真2
ただし、このアーチは、曲率がきつい。直線ではなく、大きく湾曲したアーチである。この場合には、安価にアーチを建設できる。
一方、ザハ案は、アーチの曲率が緩い。あまり湾曲してなくて、直線に近い。このようなアーチは、普通のアーチとして建設することはできず、「橋」のように小さな三角形の組み合わせた構造体として建設するしかない。
→ 新国立競技場の工事費が下がらない理由
代々木の現場は、高さ規制があるせいで、背の高いアーチはもともと建設できない。そういうところで、低いアーチをもってきたのが、根本的なミスだとも言える。ま、それでも、エアドームによる全面密閉屋根にすれば、アーチつきでも格安で建設できただろうが、開閉式となると、エアドームにはできないので、巨額のアーチ(実態は巨大橋)を建設するしかなくなる。本四架橋のようなものだ。当然、超巨額となる。
さて。以上のことを考えると、物事の本質がわかる。
今回、予算を大幅に超過したことが問題となったが、それは、審査委員が建築工事に無知な人ばかりだったからだ。建築家だから、設計のことはわかっていたが、工事にどれだけの金額がかかるかはわからなかった。特に、建物のことは別として、土木工事のことをまったくわかっていなかった。
だから、この審査員会の場では、専門化を招くべきだった。具体的には、建築会社を参考人として招いて、工事費の見積もりをさせるべきだった。「A案は◯◯億円、B案は**億円、……」というような見積もりを。そして、その上で、予算が大幅に超過した案は、排除するべきだった。この時点で、予算が 3000億円以上となるザハ案は排除されたはずだ。
結局、コストのことを考えない選定システムそのものに問題があった、と言えるだろう。問題はシステムにあったわけだ。
【 関連項目 】
新国立競技場の開催日数と売上げについては、前にも言及した。
→ 新国立競技場の命運は?
【 関連サイト 】
→ 「新国立競技場は、こうやって仕切り直しなさい」新しいプランはこれだ
※ 建築エコノミストの森山高至さんの見解。
「古い国立競技場の復活、これしかない」
だって。いくら何でも、それはアナクロ。
ももクロの方がマシ。
【 後日記 】
日産スタジアムの貸出料金は、144万円だ、と記したのだが、これは不正確だったようだ。
そもそも、前に探したときは、500万円ぐらいという数値だったので、その数値を掲載するつもりだったのだが、あらためて検索してみたところ、上記の 144万円という数値しか見出せなかったので、その数値を掲載した。
ただし、この数値には、「別途、追加の料金がかかる」という話も寄せられた。(コメント欄。)
これについても典拠を求めたところ、次の記事を見出した。
東京ドーム …… 基本料金 1750万円
日産スタジアム …… 入場料を徴収する場合 競技大会以外 入場料等の総額の8%
(チケが9000円の場合1人当たり720円、仮に5万人だとしても3600万円、75000人はいれば5400万円)
( → ドームでLIVEをする:席数と使用料 )
これに従って、「新国立競技場では、地の利も考えて、1日 1億円」として、あらためて計算し直すと、本文料金の 10倍だから、「20年で 100億円」という収入計画を得られる。
どっちみち、「屋根代だけで数百億円」というコストには見合わない。
ただ、サッカー専用球場に建て替えるなら、サッカーの試合での観客増を見込めるので、開閉式の屋根もペイしそうだ。(あくまでサッカー専用球場に建て替える場合の話。陸上競技場のままでは、とてもペイしない。)

タイムスタンプは 下記 ↓
→ http://www.sankei.com/politics/news/150717/plt1507170037-n1.html
→ http://www.sponichi.co.jp/sports/news/2015/07/17/kiji/K20150717010754370.html
→ http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL17HJK_X10C15A7000000/
逆の報道もある。「コンペはしない」と。
→ http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150718/k10010157621000.html
→ http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015071802000063.html
どっちなのかは、よくわかりません。
次の報道もある。
> 自民党内からは競技場単体の建設費を1000億円以下に抑え、五輪後には、野球やサッカーの専用スタジアムに改修して、収益性を高めるべきとの声が広がっている。
→ http://www.hochi.co.jp/topics/20150718-OHT1T50015.html
デザイン、設計、建築を一体化した入札を行い、来年早々に新デザインを決定する方針だ。新デザインの総工費について首相は、
「出来る限りコストを抑制し、現実的にベストな計画を作っていく」と述べた。
変更理由については、「コストが当初の予定よりも大幅に膨らみ、国民から批判があった」、「五輪は国民皆さんの祭典だ。
主役は国民一人ひとり、そしてアスリートで、皆さんに祝福される大会でなければならない」をあげた。
国民が納得する、合理的で正しい決断であった。
従来の日本は、国が関わる建設計画では、筋悪の計画を誰も止められず「ごり押し」で実行されてきた。今回の新国立競技場建設
計画(ザハ案)も「ごり押し」の流れで進んでいた。しかし、諸外国の五輪では500〜600億円で建設されていたものを、最終的には、
3500億円程度になり、その上に高額な保守・維持費用がかかり、陸上競技さえも開催できない、大地震には崩壊しそうな構造的にも
無理のある新国立競技場を「ごり押し」すると、自民党、安部政権への拒否反応が確実に増幅していったでしょうね。首相が英断を
下し筋悪の計画を正すという新しい流れを作ったという意味で、安倍氏は新時代のリーダーにふさわしい資質を明快に示しましたね。
なぜ、新国立競技場建設計画(ザハ案)が「ごり押し」されようとしてきたのか? 大変興味深い。
森氏が盾になった。誰も森氏の不興を買いたくなかったことが計画変更を阻んだようだ。しかし、森氏の発言からわかるように、
ワルの人柄ではない。ただ、「3000、4000億は高くない」という国費過剰使用も気にしない発想があり、財政破綻へひた走っている
日本では相応しくない存在になった。森氏には五輪より、ロシアのプーチン氏と北方4島返還の交渉と実現の大仕事を望みたい。
ザハ案を「ごり押し」した安藤氏は、高校中退で国際的な建築家まで上り詰めた立志伝の人物である。ただ、学力不足は如何とも
しがたく、構造計算など物理学の原理がわからない。デッサン画の見た目のカッコ良さから選んだようだ。安藤氏の成功体験では、
標準的なデザインから逸脱していることで今日の地位を築いた経歴から当然の選択だったろう。また、ザハ氏との個人的な互助関係
があったのかも知れない。今回の件で幻滅され、安藤マジックは終焉を迎えたようだ。
下村氏はどうか? 圧倒的に「感心しない政治家」というマイナス評価を定着させた。この時期の文科省の大臣となっていたため、
資質の低さを露呈させた。
それでも、文科省が「ごり押し」を自主的に止める行動をとらなかったのは、高級官僚の天下りの皮算用からだろう。新国立競技場
建設計画(ザハ案)なら、最終的には3500億円程度になり、その上に高額な保守・維持費用がかかる。費用が高額になる程天下りの椅子
が増えるので、川が低きに流れるように当然の組織的行動。
森氏のような浪費・調整型政治家と天下り拡大のため予算規模を膨らませたい官僚組織が、筋悪の新国立競技場建設計画(ザハ案)の
「ごり押し」の推進力となっていたようだ。しかし、そういう悪しき非効率な伝統・システムを、新時代に相応しい合理的なものに変え
てもらわないと(例えば、公務員を定年延長した方が害は遥かに少ない)、東京五輪後に日本は財政破綻、ハイパーインフレと、国民は
大変な困難に襲われる可能性が高いでしょう。
そもそも条件として1300億円が提示されていたんですから、それが倍以上になるなんて『一発アウトの条件違反』なので、むしろザハ事務所が違約金を払うべき事態のはず。
デザイン監修料(という名目の設計料)13億円(各方面の人件費でとっくに使い切っちゃって、20億円くらい買掛になっちゃっている気もしますが)は、もちろん返還で。
何とでもなる、どこからででも出てくると、ロンドンで味をしめちゃったのでしょうか。
↑のまとめに詳しい説明が載ってる
このブログみたいな印象論じゃなくて明確な理由が記されてる
本項は、「白紙になった理由」を述べているのではなくて、「白紙になった後でどうするべきか」をテーマとしています。「白紙」は共通だが、その前か後かというふうに、テーマはまったく異なります。北極と南極ぐらい違う。全然別の話。
なお、白紙になった理由は、コストがかかるからですが、それについて、上記の紹介ページはまったくのデマを書いています。つまり、「アーチが飾りだ」と書いていいます。これは、デマ。
正しくは? 真相は朝日に書いてあります。
→ http://www.asahi.com/articles/ASH7B444GH7BUTQP011.html
つまり、アーチは飾りでなく、骨格とタイビームがあります。これが真相。上記のデマページを信じると、騙されますよ。
なお、どうしてコストが上がったか、という真相は、こちら。
→ http://openblog.meblog.biz/article/25917151.html