2015年07月16日

◆ ガラスが透明である理由

 ガラスが透明である理由について、世間で話題になったが、それは誤りであるので、正解を示す。 ──

 ガラスが透明である理由について、世間で話題になった。
  → ガラスが透明な理由を科学者が解説 - ログミー
  → はてなブックマーク - なぜガラスは透明なのか?

 ここで示されたのは、変な翻訳による短縮版だ。元となったオリジナルの動画は、下記だ。こっちを見た方がいい。





 短縮版よりはマシだが、やはり根本的に記述が間違っている。そこで私が正解を示す。

 ──

 まず、話の前半は正しい。特に「結晶内の細かな傷が光を散乱させる」という記述は重要だ。


sanran.jpg


 一方、話の後半は間違っている。「ガラス以外のものが透明ではないのは、光を吸収するからだ」というふうに説明しているが、これはまったくの間違いだ。100%、間違っている。
 どうしてか? ここでは「透明」と「無色」とを混同しているからだ。

 ガラス以外のものが透明でないのは、なぜか? 光を吸収するからか? 違う。光を散乱するからだ。(前半の細かな傷がある場合と同様。)
 散乱というのは、「細かな反射」と言ってもいいから、「反射」の一種である。たいていの物質は、内部が結晶や非晶質ではないので、内部に反射面がある。金属であれ、生物の細胞であれ、土や石であれ、それらが不透明であるのは、光が散乱するからだ。
 光が散乱しないのは、液体である。液体ならば、境界面がないので、境界面での反射というものがない。ガラスのような非晶質も同様である。(話の前半にある通り。)
 一方、たいていの物質は、異なる物質同士が接しているので、そこで光の反射が起こる。つまり、散乱が起こる。だから、たいていの物質は不透明なのだ。
 ここでは光の「吸収」ではなく「反射」が起こっていることに注意。(ゆえに「吸収」を理由とした説明は正しくない。)

 一方、光の「吸収」があると、どうなるか? その場合、吸収された波長に応じて、色が付く。青以外のものを吸収すれば、青くなる。赤以外のものを吸収すれば、赤くなる。あらゆる光を吸収すれば黒くなる。
 ガラスはどうか? どの色も吸収しない。その場合は、「透明」になるのではなく、「無色」になる。だから、「ガラスは光を吸収しない」というのは、「ガラスが透明である理由」ではなくて、「ガラスが無色である理由」なのである。(それゆえ、動画の説明は間違っている。)

 ちなみに、着色ガラスというものがある。青いガラスや、赤いガラスだ。これでステンドグラスができる。





 このような着色ガラスは、不透明か? いや、透明だ。青い透明とか、赤い透明とかだ。この場合、光の一部は吸収されるが、残りの光は透過する。ゆえに、着色ガラスは透明である。(ただし光の一部を吸収する。)つまり、光を吸収することは、透明でないことを意味しない。

 逆に、真っ白なホワイトボードは、光を吸収しないが、不透明だ。この場合、光は、吸収されずに、散乱する。

 ──

 以上から明らかだろう。
 「光を吸収しない」というのは、「透明である」ことの理由ではなく、「無色である」ことの説明だ。
 一方、「透明である」ということの理由は、「光が散乱されない」(反射されない)ということだ。それは、「液体」とか「非晶質」とかの概念で説明される。その原理は、「境界面がない」ということで説明される。
 こちらが正解だ。冒頭の動画の説明は、正しくない。



 【 追記 】
 書き忘れたが、不透明である理由は「反射」だけではない。「吸収」もある。「吸収」があるせいで、「色」や「暗さ」が生じる。
 ま、真っ黒である物体ならば「吸収」が主な理由だが、それ以外では、「反射・散乱」が不透明であることの理由で、「吸収」が着色された理由だ、とおおざっぱに理解してよい。現実には、「反射・散乱」も「吸収」もどちらもある。
 ただ、ガラスの場合には、「着色」がないので、「反射・散乱」がないことが透明であることの理由だ、と考えてよい。
posted by 管理人 at 23:44| Comment(4) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
有色が可視光の波長別強度が一様ではない事を念頭にすると、反射(散乱を含む)では鏡面仕上げのクロムやモリブデンの様な可視光域反射率の低い金属と、銀やアルミの様な可視光域反射率の高い金属の違いは説明できません。
金属は可視光域の光を吸収するので不透明なのです。
それはd電子の励起遷移(共鳴に近い)だったはず。
それがより高い準位に行けば光電効果にもなります。
薄膜屋なら透明、不透明は複素屈折率n+kiの減衰項kと吸光係数εの関係で把握されていると思いますので、もしかしたらより詳しい解説が得られるかもしれません。
無色、透明、散乱、屈折、反射、空の色、海の色、光学の世界は微妙に文学が入るので同じことを異なる言葉を用いるキライがあります。
そこに光化学まで入ってくると大変です。
Posted by 京都の人 at 2015年07月17日 08:17
最後に 【 追記 】 を加筆しておきました。
Posted by 管理人 at 2015年07月17日 08:18
ガラスは非晶質のため散乱がありません。それはその通りでしょう。
水晶などは巨大結晶であるため内部では散乱がありません。
しかし冷蔵庫で作成した通常の氷は微細結晶であるにもかかわらず透明だったりします。何故なのでしょうか?
Posted by のぐー at 2015年07月17日 14:34
> 何故なのでしょうか?

 散乱するのは、屈折率の異なる物質の境界で、反射が起こるからです。
 氷の場合には、内部に微細な結晶があっても、それと接しているのが(非晶質の)氷なので、どちらも氷であり、接している境界面で屈折率の差がありません。だから反射もしない。
Posted by 管理人 at 2015年07月17日 19:23
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