これは、読売の記事 2015-07-04 にある。
福岡県朝倉市に「美奈宜の杜」(みなぎのもり)というシニアタウン(高齢者向けのニュータウン)があるそうだ。土地付き一戸建てが 2800万円。豊かな自然の環境で楽しくリタイア生活。ただし直近のスーパーまで8km もある。車が不可欠。若い人がいないので、いろいろと不便なことがあり、最近では、若い人を優先的に呼んで住んでもらうようにしているそうだ。
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私がこれを読んで思ったのは、こうだ。
「高齢者だけのニュータウンなんて、最初からおかしい。若い人をあとから招くのならば、最初からシニアタウンなんていう高齢者ばかりの発想をやめるべきだ」
これはまあ、当り前とも言える。私が言うまでもない。
さらに思ったのは、こうだ。
「 2800万円というのは、いかにも高すぎる。これは首都圏郊外の一戸建ての値段だ。九州でこの値段というのはいかにも高すぎで不当だ」
そこで調べてみたら……
ここは相当の田舎である。福岡の郊外というより、鳥栖の郊外だ。滅茶苦茶な田舎だ。写真で見ると、まわりは田畑だらけ。
この近辺(朝倉市)が田畑だらけであるだけでなく、鳥栖という都市でさえ、駅のそば以外は田畑だらけだ。
ただし、かなり離れた山間地にある美奈宜の杜だけは、どういうわけか、人家が密集している。そこだけ孤立した集落になっている。
で、こんなものを造成して、2800万円という高値で売りつけるわけだ。
ちなみに、はるかに便利な鳥栖の近辺では、同程度の大きさの新築住宅が 2300万円程度で購入できる。
→ 物件一覧
これらは、場所も交通至便であり、駅から徒歩圏であり、買物も便利だ。それでいて、価格は 2800万円よりもずっと安い。これは、相場だろう。
また、だいたい同じあたりの「朝倉市」に絞っても、駅のそばの新築が 1800万円だ。
→ 物件一覧
一方、冒頭のシニアタウンは、はるかに交通不便なところであり、陸の孤島でありながら、価格は 2800万円。(新築時の価格。)
これはもう、ほとんど詐欺に近いですね。誰がこんなものを買うんだか。
( ※ 実際、かなり売れ残っているらしい。)
結論。
シニアタウンというのは、老人だけというコンセプト自体がおかしい上に、過疎地に孤立したニュータウンを作って、価値のないものを高額販売するという点で、ほとんど詐欺に近い。
どうせなら、郊外の駅に近い場所(駅から徒歩圏)に住めばいい。それで解決。
( ※ なお、どうしても自然環境の豊かな場所に住みたいのなら、ひなびた過疎地はいくらでもある。そこでは土地が格安で買える。わざわざ新規造成した高価格のニュータウンを選ぶ必要はない。)
[ 付記 ]
読売の記事では、美奈宜の杜の住民の声として、
「今は車を運転するが、そのうちろくに動けなくなったら、博多のマンションに移りたい」
という声が紹介されていたが、これも極端すぎる。何だって都心部に移る必要があるんだ? 都心に通勤するわけでもないのに。
高齢者は、ど田舎でもなく、都心でもなく、郊外の住宅地に住めばいい。つまり、郊外の駅の周辺(駅から徒歩圏で、そばにスーパーがある住宅地)だ。
シニアタウンとか、都心のマンションとか、そういう極端なものを推奨する必要はない。読売の記事はおかしいね。
[ 参考 ]
Wikipedia に記述がある。
→ シニアタウン - Wikipedia
米国には人口数万人規模の「退職者の村」があって、ライフステージごとに住み替えているそうだ。
ま、米国ならば、車社会だし、土地はいくらでも余っているし、新たに人口数万人規模で都市開発をするなら、それはそれで意義があるだろう。
しかし日本は車社会ではなく電車が基本だし、駅のそばに繁華街ができるのが普通だ。そこに公的な住環境ができている。そこに住むのが普通だろう。
一方、駅から離れたところに
こんな不便な土地を馬鹿高い値段で売りつけるなんて、詐欺としか言いようがない。
金のある高齢者は、こういうのに引っかからないようにしよう……と警鐘を鳴らすのが、マスコミの使命だろう。なのに読売と来たら、詐欺師の片棒を担いでいる感じだ。被害者を増やそうとしている感じ。ひどいものだ。
