エスカレーターの転落事故があった。
2階の下りエスカレーターの手すりに後ろ向きに接触して乗り上げ、エスカレーターの側面から約8メートル下の1階に転落して死亡した。
( → 読売新聞 2015年06月27日 )
階の下りエスカレーター乗り口で起きた。当時45歳だった会社員片山聡さんが、手すりのすぐ横に開いていた吹き抜けの空間から約9メートル下の階下に転落し、死亡した。
事故は、飲食店前の通路で記念撮影をした直後だった。防犯カメラの映像には、片山さんの尻が下りエスカレーターの手すりに接触し、体が手すりの上に持ち上げられて転落した様子が残されていた。
( → 朝日新聞 2015年6月20日 )
2階の飲食店を出た東京都多摩市の会社員、片山聡さん(当時45歳)が下りエスカレーターの乗り口付近で後ろ向きに立ち、手すりに寄りかかったところ、巻き込まれる形で背中から乗り上げた。片山さんは、左足が手すりと2階にあった柵の間に挟まって引きずられ、吹き抜け部から約9メートル下の1階に落ちて死亡した。
( → 毎日新聞 2015-06-27 )
どうもよくわかりにくいが、状況を示した動画がある。NHK の動画。
→ エスカレーター 手すりに潜む危険性指摘 NHKニュース

テレ朝の動画もある。
これらの動画を見るとわかるように、下りのエスカレーターに後ろ向きのまま近づいて、ベルトに接触してから、あれよあれよと引きずり込まれるような感じで運ばれていって、エスカレーターの脇から落ちたようだ。
私が見た感じでは、「引きずり込まれる」(後方に移動する)というだけであって、「乗り上げた」という感じはしないのだが、事故調は「乗り上げた」と見ているようだ。
毎日の記事(上記)には「引きずられ」と書いてあるが、朝日の記事(上記)には、「体が手すりの上に持ち上げられて転落した」と記されてる。
また、毎日の記事(上記)には、次の内容もある。
事故調は、手すりと被害者がはいていたズボンとの摩擦係数などを測定し、コンピューターを使ってシミュレーションを実施。接触から 0.37秒で体勢が不安定になり、0.53秒で体が完全に持ち上がったとの検証結果を公表した。
カメラの動画で見た限りでは持ち上がっていない用に見えるのだが、事故調は「持ち上がった」というシミュレーションをしている。不思議なことだ。
しかしまあ、以上のことは、「見解の違い」「認識の違い」ということで済ませることもできる。
──
問題は、対策だ。このあとの対策がおかしい。
対策としては、引きずり込まれないように、手すりのそばに柵か柱のようなものを置けばいいはずだ。次の図がある。
→ 読売の図
→ 朝日の図
どちらにしても、手すりに体を近づけることはできなくなるから、体が乗り上がることはなくなる。引きずり込まれることもまずないだろう。
ところが、記事はこのあと全然別の方向に進む。今回の事故は、エスカレーターの乗り場(フロアの上)で起こったのだから、フロアで対策すればいいはずだ。
一方、転落防止板というのもある。これは、エスカレーターに乗っている途中で、エスカレーターの手すりを乗り越えて転落する(ほとんど曲芸師のようなことをする)のを、防ぐためにある。曲芸師みたいなことは、普通はできないから、こんな転落防止板みたいなものはまったく不要なのだが、なぜかこういうものを持ち出す。
そして、「転落防止板にはものすごく費用がかかるから、ごく安価で済むフロアの柵を設置しないでいい」という滅茶苦茶な結論を出す。
再発防止策として、@物理的に手すりから外に乗り越えられなくする「転落防止板」Aいきなり手すりに接触することがないようにする「誘導手すり」――の設置が有効と判断した。ただ、設置には1階段分だけで200万円程度かかることから、「推奨」にとどめる予定だ。
( → 朝日新聞 2015年6月20日 )
これは朝日の記事だが、読売(紙の新聞)にも、同趣旨のことが書いてある。(それを読んで「変だな」と思ったのが、本項を書いた動機だ。)
まったく変な話ですね。たしかに転落防止板というのは、空中に設置する形になるので、大規模な工事が必要となり、多額の費用がかかるだろう。しかし、フロアに柵のようなものを立てるだけなら、ごく安価に設置できるはずだ。で、「転落防止板には多額の金がかかるから、ごく安価な柵まで設置しなくていい」と結論する。何だこれ? あえて事故を起こしやすくするのを容認する。狂気の沙汰だ。
比喩的に言えば、こうだ。
交通事故が起こりがちの交差点があった。信号を設置してほしい、と自治体に要請したら、「金がありません」と断られた。「じゃ、せめて横断歩道を設置してくれ。これなら白いペンキを塗るだけだから、安価にできるだろう」と要請したら、自治体は「横断歩道も設置できません」と断った。「どうしてだ? ペンキ代が高いからか?」と質問すると、「いや、信号機の設置代が高いからです。信号機の設置代が高いから、ペンキを塗れないんです」
これじゃ理屈にならない。そして、それと同様に、全然別のことのコストがかかることを理由に、安価な対策を否定する。それが事故調だ。
呆れる。事故調の頭が事故になっているな。脳味噌を検査してもらった方がいいぞ。もしかしたら「頭のネジが緩んでいます」と教えてくれるかもしれない。
頭のネジをはずしすぎるとこうなる!を描いてみた(^-^)/ #momoclo pic.twitter.com/yRXnNc4i
— ピロシキ好き (@Piroshkisky) 2012, 8月 11[ 付記1 ]
私としてはやはり、原因は、「乗り上げたこと」ではなくて「引きずり込まれたこと」だと思う。
だから、対策は、「乗り上げ防止」よりも、「引きずり込まれるのを防止」という形にした方がいいだろう。
そのためには、朝日の図 で、エスカレーターとエスカレーターの間の領域を、高い柵のようなものでふさいで、人間が入り込めないようにすることが大切だ、と思う。
つまり、ベルトに近づけないようにするよりも、エスカレーターとエスカレーターの間の空間に入れないようにすることが大切だ、と思う。
事故調はどうも、原因をよく理解できていないせいで、対策もよく理解できていないようだ。
( ※ 仮に「乗り上げた」のだとしたならば、エスカレーターのベルトの手前に尻を付けて、ベルトが上昇するときの力(ちから)で体が持ち上がったことになる。しかし動画ではそうではない。ベルトの手前ではなくて、ベルトの脇に立っている。この場合、重心はベルトよりも低いままだから、体が持ち上がったことにはならない。ただし、後方に移ると、ベルトの位置が下がるので、相対的には、体がベルトよりも高くなる。……これは、体が持ち上げられたのとは違う。単に「乗っかった」だけだ。)
[ 付記2 ]
次の参考画像がある。
→ 2013/11/25 の日経の記事
【 追記 】
真相が判明したので、以下に記す。
コメント欄にも記したが、判決の要旨がある。
→ http://www.tokiorisk.co.jp/risk_info/up_file/201310041.pdf
ここでは、「尻から接して持ち上げられた」という趣旨の説明が図とともに記してある。
同趣旨だが、本項でも、先に次の記事を引用した。
「片山さんの尻が下りエスカレーターの手すりに接触し、体が手すりの上に持ち上げられて転落した」(朝日)
「手すりに寄りかかったところ、巻き込まれる形で背中から乗り上げた」(毎日)
しかし、以上は誤りである。つまり、「持ち上げられた」ことはないし、「背中から乗り上げた」ということもない。
正しくは、こうだ。(ビデオを見ながら読んでほしい。)
・ 後方に移動した。(凭れかかるか、ふらついた。)
・ 尻がエスカレーターに接触した。
・ 接触したせいで、よろめいた。
・ 体重のバランスを崩しながら、後方に移動した。
・ (ベルトの上でなく)ベルトの脇で、よろめいた。
・ (ベルトに持ち上げられるかわりに)重心を下げた。
・ 重心が足から外れたので、倒れかかった。
・ 倒れかかった先には、ベルトがあった。
・ ベルトに対して(背面でなく)前面から倒れかかった。★
・ ベルトに体重が乗った状態で、ずるずると引きずられた。
・ 右足に体重が乗った状態で、さらに右側に引きずられた。
・ 右足が停止したまま引きずられたので、体が回転した。¶
・ 体が回転したせいで、背中がベルトの上に乗った。
・ このとき重心は、上がるのではなく、下がった。
先の記事と比べると、次の点で異なる。
「ベルトに持ち上げられたということはない」(重心は下がっただけだ)
「背中から乗り上げたということはない」(背中でなく腹側から乗り上げた)
「姿勢の変化があった。それは体の回転が生じたせい」
「体の回転は、右足が地面で固定されていたことから生じた」
「その後、背中から乗ったときには、重心は大幅に下がっている」(乗り上がったというより、乗り下がった)
どうも、裁判官も事故調も、認識ミスだらけだ。その理由は二つ。
第1に、ビデオを正しく見ていない。ビデオを正しく見れば、「ベルトに対して(背面でなく)前面から倒れかかった。★」というのがわかるはずだ。また、背中が乗っているときには、重心が大幅に下がっているとわかるはずだ。ビデオをきちんと見直すべき。
第2に、頭の上で考えているだけだから、正しく認識できない。体を動かして、シミュレーションするべきだ。そうすれば、「右足が停止したまま引きずられたので、体が回転した。¶」ということが、自分の体で理解できるはずだ。自分で体を動かさないと、こういうことはわかりにくい。
以上の話を読んでも、まだわからない人がいそうだ。だから、そういう理解力の欠けた人のために、誰かが再現実験をして、「同様のことが起こる」ということを示すといいだろう。再現実験をすれば、否応なくわかるはずだ。
それにしても、再現実験もしないで、勝手に決めつけるというのは、ひどいね。STAP細胞事件よりも、もっとひどい。「再現実験ぐらいやれ」と言いたい。そうすれば、「事故調の認識通りでは、転落事故などは起こらないが、本項の認識通りでは、転落事故が起こる」ということが、はっきりと証明されるはずだ。
【 関連サイト 】
エスカレーターの手前に柵を設定している例は、すでにたくさんある。(上記の朝日や読売の画像に相当するものが、現実に設定されている例がある。)
次の画像だ。
→ 新大阪駅の画像 (該当ページ)
→ 防護柵の設置例の画像 (該当ページ)

→ http://www.tokiorisk.co.jp/risk_info/up_file/201310041.pdf
「エスカレーターの端っこに尻が触れて持ち上げられた」と認識している。
しかしこれは、<STRONG>[ 付記1 ]</STRONG> で述べた誤認である。判決は誤審だね。
ま、事故調も誤認しているわけだが。
かくて真相は葬られる。真実を示すのは本サイトだけ。……毎度のことか。
ならば、極力弱い駆動力を与えておけばいい。つまり通常より負荷がかかったら滑る程度の弱い駆動力にする。
これが本質安全である。そのためにはトルクリミッターやトルク監視部を強化するためコストアップになるが総工費からみれば僅かだ。
かつて森ビルで回転ドアに子供が挟まれて死亡する事故があった。そのとき当日に私は対策をネットに書いた。
本質安全の視点から、ドアに挟まったらドアを折り曲げて負荷を逃がす構造を提示した。事故調が1年以上検証して得た結論は
これと同じだった。センサーの多重化のアイデアも出したがそれはなかった。
畑村氏は失敗学の先達で現場解析に詳しい。ベルトで体が持ち上がったか論は見解の違いでマスコミ語的用法だろう。
私が設計した機械は極力モーター出力をギリギリに抑えて、異常があればモーター自体が回転できないようにした。だから壊れない。
また簡易な部品用エレベーターも作って定格荷重(数s)より重かったらギヤが滑るように作った。手を挟んでも"痛い"で済むようにした。
これが本質安全である。
いや、本質的に違いますよ。
事故調の見解ならば、ベルトの前に防護柵を付けて、ベルトの直立部( ⊂ 部)に触れないようにするべきです。
私の見解ならば、ベルトの脇に人が入れないようにして、ベルトの横からベルトに触れるのを防ぐべきです。
前者の対策をしただけでは、後者の対策はできていないので、事故は再発します。つまり、何の対策にもなっていません。
本項の <FONT COLOR="#dd0000">【 追記 】</FONT> の箇所をきちんと読んでください。
本項に異論はありません。見解の違いと書かずに表現の違いと書いた方が正しかった鴨。文系記者はボキャブラリーが足りない。
原則はエスカレータ端部に体が触れないような物理的な障害物を置くこと(カバー、柵)
ローコストでできることを発案できない人が多い。(正確にはそれを吸い上げる仕組みができてない) 故にコスパの悪い策しかでない
動画で両足がどこを通ったのかが分かりづらくて何度も見てしまいました。個人的な見解です。
〜0:22 → 2階にあった柵の端の真正面に直立していた
0:22〜0:23(やや前屈、前面の白いシャツが見えている) → 手すりに腰の右側か右足が触れたのか服か何かが引っかかったのか不明だが、手すりにも接触しながら2階の柵に触れるところまで後退した。(≒手すりと2階の柵の間の近くに全身が移動した。手すりには乗り上げていない)
0:23〜0:24(白いシャツが見えなくなった) → 手すりと2階の柵の交点付近に腰も両足もあったが、まず腰の右側か右太ももが手すりに持っていかれてしまい、しかし両足先とも2階の柵に引っかかったため、上半身が(真上から見て)時計回りで回転しはじめた(正面から45度ほど向いた)状態。その直前に前屈していたため、「ベルトに対して(背面でなく)前面から倒れかかった。★」
0:24〜0:25 → 腰が手すりに引きずられ続けて2階の柵を通り過ぎてしまった状態。しかし両足先とも柵にまだ引っかかっている(ここで“左右の靴が手すりと2階の柵の間にある”(床から浮いたほうは多分右足の靴)ことが確認できる)。ベルトにしがみつきはじめる。
0:25〜0:26(手前側の手すりが助けようとした人で隠れる) → 上半身はベルトにしがみついているが、両足先が未だに柵に引っかかっているせいで全身が斜めになりはじめた。
0:26〜0:27 → ベルトにしがみつききれなくなったか、片足が柵から抜けた反動で上半身がベルトから落下
対策としては、
・朝日読売両方の図にある誘導手すり
・エスカレーターと(エスカレーターor壁)の間の領域を高い柵のようなもので塞ぐ
の両方をやれば、高価な転落防止板はいらないと思われます。
>「エスカレーターの仕様や安全性に欠陥があったとはいえない」として、
>施設管理会社やエスカレーターの製造業者の責任を否定
し、その結果、
>棄却の判決を受け、遺族は控訴している
らしいですが、個人的には
「ハンドレールと転落防止柵との隙間を9cmも開けていた」施設側に責任があるように思います。
エスカレータの形状によっては最も狭い場所が9cmで、
他の場所がもっと開いているなら、手すりの力で足も腰も通り抜けてしまうのではないでしょうか。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm20659868
(2013年04月21日 12時00分 投稿)
別の監視カメラによる別角度からの映像や
エスカレーター正面の写真等が確認できました。
9cmの隙間部分に透明な板があることや、
落下直前に手すりの正面に立っていたのは確認できましたので上記の私の推測は外れだったようです。