2015年06月23日

◆ 高齢者は地方に移住

 「高齢者は地方に移住すべきだ」という提言が出た。 ──

 これはちょっと古い話で、約半月前の 2015-06-04 の報道。一部を抜粋しよう。
 《 東京圏の高齢者、地方移住を 創成会議が41地域提言 》
 民間有識者でつくる日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)は4日、東京など1都3県で高齢化が進行し、介護施設が2025年に13万人分不足するとの推計結果をまとめた。
 東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県では、今後10年間で75歳以上の後期高齢者が175万人増える。この結果、医療や介護に対応できなくなり、高齢者が病院や施設を奪い合う構図になると予測した。
 施設や人材面で医療や介護の受け入れ機能が整っている全国41地域を移住先の候補地として示した。
 移住候補地は函館、青森、富山、福井、岡山、松山、北九州など一定以上の生活機能を満たした都市部が中心。過疎地域は生活の利便性を考え、移住先候補から除いたという。観光地としても有名な別府や宮古島なども入っている。
( → 日本経済新聞

 元気なうちは現在地で過ごして、介護が必要になったら地方に移住すればいいのでは……と思ったのだが、そういう趣旨ではないようだ。
 「元気なうちから移住してもらうため、医療・介護体制がどういう地域で整っているかを示すことが重要だ」と述べた。
( → 東京新聞

 移住先の候補地は、上の日経の記事に出ているが、朝日にその地図がある。これだ。

ijuu00.jpg
朝日新聞による図

 これを見ると、ずいぶんと田舎ばかりである。ど田舎といってもいい。これほど田舎だと、田舎過ぎるのと,遠すぎるのとで、移住する気にならない人が多いだろう。(元の地域に戻ることもままならない。)
 もっと近いところ(しかも地価も安いところ)の方がいい。
 具体的には? 家賃をざっと調べてみた。

 神奈川の湘南は、けっこう家賃が高い。神奈川は無理っぽい。
 千葉県は、南部は家賃が安いが、交通の便が悪すぎる。
 埼玉県は、郊外だとお得だ。家賃が安い割には交通の便が悪くないところが多い。たとえば、桶川市などだ。このあたりは、駅から少し離れると田畑がいっぱい余っている。





 要するに、埼玉県北部などでは、内陸部で土地もいっぱい余っていて、家賃が安い。その割には、交通の便も悪くない。さすがに毎日通勤する圏内(東京まで 60分)という条件は満たさないが、ときどき東京の繁華街に通うぐらいはできる(東京まで 90分)という条件は満たす。
 このあたりが移住先として最適だろう。
( ※ 東京圏でなければ,名古屋でも大阪でも、事情は同様だ。都心部まで 90分ぐらいのところが、便利さと家賃との兼ね合いで、ベストとなる。)
( ※ 実は、このあたりは、かつて都心に通うサラリーマンが一戸建てを建てたあとで、通えなくなって空き家になっている家が多い。そういう空き家を利用すると、一石二鳥だ。)

 こういう領域ならば、田畑がいっぱいあるので、介護施設を建設するための土地もいくらでもあるはずだ。(すでに造成した住宅地がいっぱい余っているはずだ。)

 なお、記事では「埼玉で高齢者が余る(介護施設が足りない)」というのは、単に施設が足りないだけで、土地は余っている。だから、施設を建設すればいいだけのことだ。残る問題は、施設の建設費だけだ。

 ──

 建設費は? ざっと調べたところ、建設の問題はないようだ。というのは、建設費は施設費として、入居者が全額負担することになっているからだ。(国や自治体からの補助金は出ない。)
 したがって、国や自治体が建設費の面倒を見ることはないから、国や自治体は何の負担も感じないでいいことになる。

 一方、介護の人件費については、国や自治体の補助金があるので、その分、国や自治体が負担する必要がある。このうち、自治体の負担の分が、自治体にのしかかってくるようだ。それで、地方の自治体は、あまり受け入れたがらない。
 「移住候補地」とされた地域では、困惑の声が広がった。
 「本来、都会でケアするものを地方でやるには財政的にも難しい。人材確保を含め、国全体でどう分担するかという仕組みづくりが必要だ」
 「県外からの入所受け入れは制度的に可能だが、職員が慢性的に不足し、介護報酬も引き下げられて厳しいのが現状。『リタイアした首都圏の人たちを地方で引き受けて』とは虫のいい話だ」(秋田市)
( → 朝日新聞 2015年6月5日

 この問題は、解決可能だ。財源について、地方分担をやめて全額国費にすればいい。そもそも、国民(または国)の問題なのだから、自治体に負担を押しつけるのでは道理が通らない。高齢者が場所を移るたびに負担する自治体が変わるというのは、まったく道理が通らない。こういうことだから、介護施設の不足が起こるのだ。(押しつけられるのを厭がるから。)
 つまり、介護施設の不足というのは、もともと構造的にそういうふうになるような制度になっているからだ。「介護施設を作らなければ作らないほど、赤字の負担を免れて、自治体は得をする」というふうに。……こういう滅茶苦茶な制度が根源にある。
 だから、「介護施設が不足する」という問題は、「国庫による全額負担」で解消する。もしそうすれば、介護施設がある自治体は、税収や雇用ができることで、得をする。現状では施設があると損をするが、改定後には施設があると得をする。……こういうふうに制度を変更すればいいのだ。



 [ 付記1 ]
 なお、高齢者が地方に移転するときには、注意するべき点がある。次のことだ。
 「財政が悪化した自治体は、税や納付金の負担が高いので、そこには住まない方がいい」


 具体的な例は、札幌市だ。証言がある。
 札幌の国民健康保険税(国保)があまりに高いので,札幌から逃げて,一時関東に住民票を移している市民です。関東に移動したことで,国保を数万円節税できましたw
 うわさでは札幌市の借金が市債を中心に2兆円あるらしいです。たとえば,東札幌のコンベンションセンターの総事業費は206億円,赤字の主原因ではないですが,さらに財政を悪化させたのは間違いありませんね。丘珠空港整備事業もそう。石狩開発株式会社への出資も破綻,北海道住宅供給公社への貸し付けも回収不能,ハイテクヒル真栄もハイテク企業が来ない,駅前通地下歩行空間も余計な事業かも。こんなことばかり何10年も,やってきたからですよ。
 道路やビルは立派できれいが,市内の生活は高コスト体質。国保も高い,これは札幌にいて感じる実感ですね。観光に来るだけなら,天国に見えるでしょうけど,実際に住んでみると役人の赤字のツケを払わされる町,それが札幌です(大阪や福岡も札幌と同じように,かなり財政がひどいようですけど)。
( → 教えて goo

 [ 付記2 ]
 政令指定都市で財政の悪い順に並べると、次の通り。
   熊本市 > 北九州市 > 札幌市 > 新潟市 > 神戸市 > 岡山市 > 京都市

        [ 出典: Wikipedia

 この7都市が特に悪い。この7都市だけはやめた方がいいだろう。(大阪市は、意外にも、中ぐらいの位置なので、特に悪くはない。)
 ※ もっとも、本項の趣旨は、「大都会を離れよ」だから、
   これらの政令都市は、もともと対象外だ。

 なお、これらの都市がどうして財政が極端に悪いかというと、理由は札幌市と同様であるようだ。つまりは、無茶な公共事業である。
 神戸市の場合には、神戸空港が大赤字の原因であるようだ。
 京都市の場合には、地下鉄が大赤字の原因であるようだ。(他にもあるようだが。)

 都道府県では、こうだ。
  → 都道府県の財政力指数ランキング

 当り前だが、大都会の県は指数が良く、地方は極端に悪い。ただし、県レベルでは、地方交付税による補填があるようだ。県レベルの違いは、あまり考えなくていいのかも。
 ただし、大阪府の関空の問題は、重しとしてのしかかっているように思える。(上記の数字では、他の県とあまり差はないが。)

 [ 付記3 ]
 国保の保険料は、ネット上で数字を見出せる。
  「国民健康保険料 ××県」
 という語で検索すればいい。
  → 国民健康保険料 埼玉県 - Google 検索
  → 国民健康保険料 神奈川県 - Google 検索

 たとえば、神奈川県では、下記の一覧を得る。
  → 神奈川県内の市町村における国民健康保険料(税)の賦課状況の一覧
 ちなみに、札幌市。
  → 保険料の計算/札幌市
 川崎市に比べればずっと高いが、横浜市に比べればちょっと高いぐらいの額だ。思ったほどには差がないな。
 
 [ 付記4 ]
 ともあれ、国保の保険料は、その自治体の財政力のバロメーターとなるので、その自治体に移るべきかどうかの判断の一助となる。
 
 [ 付記5 ]
 なお、本当を言えば、介護施設は外国(途上国)にある方がいい。人件費が圧倒的に安いし、生活費も安いからだ。
 フィリピンあたりに「全額無料」もしくは「負担金はわずか5万円だけ」みたいな施設を作れば,国民は負担金がわずかで、高度な介護サービスを受けることができるので、とてもいいはずなのだが。

 [ 付記6 ]
 なお、「地方や海外へ移住」といっても、強制ではないので、念のため。あくまで自発的な移住だ。
 ここを勘違いして、「現代の姥捨て山だ」と非難する人も多い。
  → はてなブックマーク
 どうも、誤読しまくっていますね。被害妄想というか。……



 【 関連項目 】
 
  → 生活保護者を地方へ移せ

 ここでも「地方へ移住」という案を示しているが、「強制」ではない。
 なのに、「強制だ」と勘違いした人が多数いる。(はてなが多い。)
 はてなブックマークの人って、やたらと誤読する人が多いようだ。
posted by 管理人 at 22:33 | Comment(11) | 一般(雑学)3 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
北海道すごいと思ったら県(支)庁単位だった
車で2時間(笑)
Posted by 先生 at 2015年06月24日 06:45
千葉県南部と埼玉県北部の交通の便の良し悪しの違いがあまりピンと来ないですが、何が違うのでしょうか?
新幹線があるかないかでしょうか?
埼玉県でも八高線沿線や秩父方面は交通の便が悪そうですが。
Posted by まりん at 2015年06月24日 20:16
なんとなく分かりましたが、埼玉県北部の場合、高崎線や宇都宮線や東武線など、東京直結路線が充実してるが、千葉県南部の場合、それが殆ど無いの違いですかね。確かに内房線沿線、外房線沿線だと、殆どの場合、東京に向かうのに、千葉駅か蘇我駅で乗り換えなくてはならないですからね。
Posted by まりん at 2015年06月24日 20:26
名古屋のことはよく知りませんが、大阪だと中心部まで90分も離れなくても低家賃です。
賃貸ではありませんが、私が住んでいる土地も大阪の中心部まで45分の土地が、坪単価15万円で上下水道と都市ガスが来ています。
Posted by クルマ好き at 2015年06月24日 21:16
東京を念頭に書きましたが、他の大都市だと ↑ のように、もっと事情がいいようですね。
 特に、福岡はいいようだ。中心部からいくらか離れると、もう田畑が広がっていて、地価が安くなる。鉄道が発達していないので、自動車またはバスに乗る必要があるが、福岡の都心部までの距離はごく短くて済む。けっこう評判がいいですね。
  http://ushigyu.net/2011/09/01/tokyo_fukuok/
  http://kugelschreiber.ldblog.jp/archives/42887097.html
Posted by 管理人 at 2015年06月24日 21:49
冒頭の記事を見たら、
 「東京圏の高齢者、地方移住を」
 なので、移住すべきなのは、東京圏だけであるようです。他の大都市の高齢者は、別に移住しなくてもいいようです。
Posted by 管理人 at 2015年06月24日 21:54
千葉県の木更津に住んでいます。
最近、アクアラインバスが便利になり、
 東京駅、横浜駅、川崎駅: 1時間
 羽田空港: 40分
と埼玉県北部よりも交通の便はよくなっています。特に羽田が近いのが出張時に非常に便利です。

地価は最近上がっていますが、10万円/坪以下で買えるのでお勧めです。
Posted by 千葉県人 at 2015年06月25日 12:51
木更津の郊外は、田んぼだらけなので、土地は安いが、いかんせん、アクアラインが馬鹿高い。片道 1550円だし、木更津までは別途かかる。合計 1800円ぐらいか。
 交通の便が大事なら、北上尾が東京駅まで46分で、760円。このあたりだと通勤圏内かも。
 ま、羽田を多く利用する人なら、木更津もありでしょう。東京南部や横浜に通勤する必要のある人向け。交通費を会社が負担してくれることが前提。
Posted by 管理人 at 2015年06月25日 19:51
高齢者が住むぶんには、たまにしか東京都内に行かないのであれば、木更津もアリかと思いますが。片道1550円は許容範囲かと思いますが。
Posted by まりん at 2015年06月25日 20:09
> たまにしか東京都内に行かないのであれば、木更津もアリ

 そう言われてみるとそうですね。……と思ったが、やはり、埼玉だと、途中に大都市があるのが大きい。
 樋川駅から大宮駅まで、13分、240円。
 樋川駅から浦和駅まで、24分、320円。
 大きな買物はすべてこれで済ませることができるから、気楽に何度でも通える。利便性がすごく高い。
Posted by 管理人 at 2015年06月25日 20:20
桶川は穴場ですね〜。
旧遠山家住宅(素晴らしいです)を観に行ったとき、初めて桶川駅で降りてブラブラしてみたのですが、旧街道沿い(桶川宿)は静かだし、少し歩けば緑は豊か。
京都の亀岡に少し似た感じで好感を持ちました。
おまけに武蔵野うどんに似た糧うどん(?)が素朴で美味しく、地野菜も安かったです。
都内は騒々しいので、週末だけでも住みたくなりました(笑
Posted by 丸義 at 2015年06月27日 23:42
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