備蓄は大切だ……というと、たいていの人はうんざりするだろう。
「そんなことは言われなくてもわかっている。いちいち言うな」
しかし、頭ではわかっているつもりでも、実際にはわかっていない。なぜなら、行動がともなわないからだ。
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例として、バターがある。バターが大幅に不足しいるが、なぜか?
→ バター、今年も品薄 自由に輸入できない需給のからくり
→ 農林水産省/バター不足に関するQ&A
→ バター不足騒動「本当の理由」 消費者には見えないカラクリはこうだった
→ 深刻バター不足が慢性化 背景には生乳の生産量の減少
朝日の記事で説明しているが、牛乳の生産量が縮小している。そのなかで、高価な生乳が優先され、安価なバターは後回しにされる。需給変動に応じてバターの生産量が変わるが、見込み違いになることが多く、乳製品の需要が増えたときには、供給不足はバターに集中するので、バターのみで供給不足が生じる。
理由はわかった。では、対策は?
政府は緊急輸入をするつもりだが、不足が起こってから対処するので、時間がかかる。それゆえ、バター不足が何カ月も続く。また、輸入量が足りないことも多く、せっかく輸入してもまだまだ不足となる。かくて、本来ならば2〜3カ月の在庫があるべきなのに、いつまでもバター在庫がゼロ同然の状況が続く。
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以上のことを読んで、問題の核心がどこにあるか、わかっただろうか? 読んでもわからない人が多いようだ。だから、「ああ、なるほど」と頷いて、それでおしまいだ。
そこで、私が指摘しておこう。問題の核心は、こうだ。
「備蓄が必要だということを理解していない」
こうして話は冒頭のテーマに帰った。
そもそも、バターのように保存の利くものは、十分に備蓄を備えておくべきなのだ。記事中にもある。
バターや脱脂粉乳は需要の2、3カ月分の在庫があるのが理想だ。
( → 朝日新聞 )
こういうふうに備蓄をしておくべきなのだが、現実には、備蓄をしていない。だから、ちょっと需要が増えると、たちまち「バター不足」が生じて、店頭では「ない、ない」と大騒ぎになるのだ。
備蓄は大切だ。にもかかわらず、農水省は備蓄をすることを恐れている。「在庫が溜まると市中価格が下がりそうで怖い。むしろ供給不足の方が、市中価格が上がって、農家の所得が増えて好都合だ」
こう思って、農水省は、備蓄を減らす。かくて、バター不足が発生する。
これでわかっただろう。バター不足が起こったのは、どこかで計算違いがあったのではない。農水省が意図的に「備蓄をなくす」という形でバター不足を起こりやすくしているのだ。そして、ちょっと需要が増えたり供給が減ったりすると、たちまちバター不足が起こるが、それでいて農水省はまともに輸入量を増やそうとしない。「焼け石に水」程度の輸入量でゴマ化す。……つまり、すべては意図的なのだ。未必の故意みたいなもので。
農水省は、備蓄をなくすという形で、意図的にバター不足をもたらしている。すべてはここが根源だ。
なのに、そのことに気づかない人々が、「そういう理由でバター不足が起こるのか。なるほど。原因はわかった」と頷いてしまう。備蓄ゼロを勝手に前提とした上で、「備蓄ゼロだと、こういうふうにバター不足が起こるのか。ふむふむ」と頷いてしまう。かくて、真実を知ったつもりになったまま、農水省の愚行・悪行に気づかない。
備蓄の大切さを、言葉でしか理解できない人々は、物資の不足に直面しても、何が根源であるかを理解できないのだ。
[ 付記 ]
基本的には、需給の変動があるときには、変動の調整弁としての備蓄が必要である。それはいわば、干ばつの対策として、貯水池(ため池)が必要であるのと同様である。また、病気になったときのために貯金が必要なのと同様である。
近年では、「ジャスト・イン・タイム」なんていう「在庫ゼロ」の方針が推奨されることが多い。だが、生産量の安定している工場ならともかく、人間の気分や気象しだいで変動する食品の需給について、在庫ゼロの方針を取るなんて、狂気の沙汰だ。
農水省は「需要以上に輸入するとバターが余ってしまう」というふうに恐れている。彼らは「余ったものを在庫にすることが大切だ」ということを理解できない。どうしようもない阿呆だ。そのせいで、バター不足が発生する。
バター不足が発生するのは、牛乳の生産量が少ないからではなく、農水省の知性(脳味噌の量)が少ないからだ。彼らは脳味噌がバターになっているのかも。
[ 余談 ]
バターがなければ、マーガリンでもいい。味はちょっと違うが、大幅に安い。また、溶けやすいので、料理でもパンでも使いやすい。
「マーガリンはトランス脂肪酸なので危険だ」
という俗説があるが、この点は、特に心配する必要はない、という旨を、過去記事で示した。下記。
→ 植物性脂肪は有害か?

無いから作れってことでは?
天下り先を作れますよとでも言えば官僚もやる気が出ます。:-p
とうおまじないが日本寺向けでしたっけ
言葉や認識は「備蓄」だけど、実態はただの「在庫」です。民間の倉庫に通常通り入れるだけ。以前からずっと2〜3カ月ぐらいの在庫はありました。
→ http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2011/jan/mi-jp06.htm
→ http://j.mp/1GzPplr
今はその在庫がなくなって、倉庫が空っぽになっている、というだけ。倉庫が足りないんじゃなくて、輸入するバターが量的に制限されている状態。
タイムスタンプは 下記 ↓
別にバターで油 ぎとぎと になるわけじゃないし。
バターが不足するのは価格が安いからに決まっているじゃないですか。
需要と供給の釣り合う価格より安いから品切れになるだけです。
小学校の教科書にも載っている法則ですよ。
つまり、価格に対して硬直性の高い商品。
このような場合には、需給曲線の 乂 みたいな図は成立しません。
真相は? 新聞記事を読めばわかる。需要に対して供給が不足気味のところで、政府が輸入制限をしているから。だから、「輸入制限をやめればいい」というのが正解。新聞記事を読めば、すぐにわかる。
> バターが不足するのは価格が安いからに決まっているじゃないですか。
店頭を見ればわかるが、価格は普段よりも大幅に上昇している。安いどころじゃない。
小学校の教科書ばかりを見ていて、現実を知らないと、机上の空論になる。ネットばかり見ていないで、外に出て、現実を見ましょう。