2015年06月12日

◆ 備蓄の大切さ(バター不足)

 備蓄というものは大切だ。このことは当り前のようだが、多くの人がまともに理解できていない。 ──

 備蓄は大切だ……というと、たいていの人はうんざりするだろう。
 「そんなことは言われなくてもわかっている。いちいち言うな」
 しかし、頭ではわかっているつもりでも、実際にはわかっていない。なぜなら、行動がともなわないからだ。

 ──

 例として、バターがある。バターが大幅に不足しいるが、なぜか? 
  → バター、今年も品薄 自由に輸入できない需給のからくり
  → 農林水産省/バター不足に関するQ&A
  → バター不足騒動「本当の理由」 消費者には見えないカラクリはこうだった
  → 深刻バター不足が慢性化 背景には生乳の生産量の減少

 朝日の記事で説明しているが、牛乳の生産量が縮小している。そのなかで、高価な生乳が優先され、安価なバターは後回しにされる。需給変動に応じてバターの生産量が変わるが、見込み違いになることが多く、乳製品の需要が増えたときには、供給不足はバターに集中するので、バターのみで供給不足が生じる。

 理由はわかった。では、対策は? 
 政府は緊急輸入をするつもりだが、不足が起こってから対処するので、時間がかかる。それゆえ、バター不足が何カ月も続く。また、輸入量が足りないことも多く、せっかく輸入してもまだまだ不足となる。かくて、本来ならば2〜3カ月の在庫があるべきなのに、いつまでもバター在庫がゼロ同然の状況が続く。

 ──

 以上のことを読んで、問題の核心がどこにあるか、わかっただろうか? 読んでもわからない人が多いようだ。だから、「ああ、なるほど」と頷いて、それでおしまいだ。
 そこで、私が指摘しておこう。問題の核心は、こうだ。
 「備蓄が必要だということを理解していない」


 こうして話は冒頭のテーマに帰った。
 そもそも、バターのように保存の利くものは、十分に備蓄を備えておくべきなのだ。記事中にもある。
 バターや脱脂粉乳は需要の2、3カ月分の在庫があるのが理想だ。
( → 朝日新聞

 こういうふうに備蓄をしておくべきなのだが、現実には、備蓄をしていない。だから、ちょっと需要が増えると、たちまち「バター不足」が生じて、店頭では「ない、ない」と大騒ぎになるのだ。

 備蓄は大切だ。にもかかわらず、農水省は備蓄をすることを恐れている。「在庫が溜まると市中価格が下がりそうで怖い。むしろ供給不足の方が、市中価格が上がって、農家の所得が増えて好都合だ」
 こう思って、農水省は、備蓄を減らす。かくて、バター不足が発生する。

 これでわかっただろう。バター不足が起こったのは、どこかで計算違いがあったのではない。農水省が意図的に「備蓄をなくす」という形でバター不足を起こりやすくしているのだ。そして、ちょっと需要が増えたり供給が減ったりすると、たちまちバター不足が起こるが、それでいて農水省はまともに輸入量を増やそうとしない。「焼け石に水」程度の輸入量でゴマ化す。……つまり、すべては意図的なのだ。未必の故意みたいなもので。
 農水省は、備蓄をなくすという形で、意図的にバター不足をもたらしている。すべてはここが根源だ。
 なのに、そのことに気づかない人々が、「そういう理由でバター不足が起こるのか。なるほど。原因はわかった」と頷いてしまう。備蓄ゼロを勝手に前提とした上で、「備蓄ゼロだと、こういうふうにバター不足が起こるのか。ふむふむ」と頷いてしまう。かくて、真実を知ったつもりになったまま、農水省の愚行・悪行に気づかない。

 備蓄の大切さを、言葉でしか理解できない人々は、物資の不足に直面しても、何が根源であるかを理解できないのだ。
 


 [ 付記 ]
 基本的には、需給の変動があるときには、変動の調整弁としての備蓄が必要である。それはいわば、干ばつの対策として、貯水池(ため池)が必要であるのと同様である。また、病気になったときのために貯金が必要なのと同様である。
 近年では、「ジャスト・イン・タイム」なんていう「在庫ゼロ」の方針が推奨されることが多い。だが、生産量の安定している工場ならともかく、人間の気分や気象しだいで変動する食品の需給について、在庫ゼロの方針を取るなんて、狂気の沙汰だ。
 農水省は「需要以上に輸入するとバターが余ってしまう」というふうに恐れている。彼らは「余ったものを在庫にすることが大切だ」ということを理解できない。どうしようもない阿呆だ。そのせいで、バター不足が発生する。
 バター不足が発生するのは、牛乳の生産量が少ないからではなく、農水省の知性(脳味噌の量)が少ないからだ。彼らは脳味噌がバターになっているのかも。



 [ 余談 ]
 バターがなければ、マーガリンでもいい。味はちょっと違うが、大幅に安い。また、溶けやすいので、料理でもパンでも使いやすい。
 「マーガリンはトランス脂肪酸なので危険だ」
 という俗説があるが、この点は、特に心配する必要はない、という旨を、過去記事で示した。下記。
  → 植物性脂肪は有害か?
posted by 管理人 at 22:40 | Comment(10) | 一般(雑学)3 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そもそも農水省にバターを備蓄する機能はあるの?米は備蓄しているようですが…
Posted by glg at 2015年06月13日 07:42
>機能はあるの?

無いから作れってことでは?
天下り先を作れますよとでも言えば官僚もやる気が出ます。:-p
Posted by クルマ好き at 2015年06月13日 08:33
「みんなもうやってますよ」
とうおまじないが日本寺向けでしたっけ
Posted by 先生 at 2015年06月13日 08:51
> 農水省にバターを備蓄する機能はあるの

 言葉や認識は「備蓄」だけど、実態はただの「在庫」です。民間の倉庫に通常通り入れるだけ。以前からずっと2〜3カ月ぐらいの在庫はありました。
 → http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2011/jan/mi-jp06.htm
 → http://j.mp/1GzPplr

 今はその在庫がなくなって、倉庫が空っぽになっている、というだけ。倉庫が足りないんじゃなくて、輸入するバターが量的に制限されている状態。
Posted by 管理人 at 2015年06月13日 09:21
なるほど、個人も備蓄すれば品薄に対応できますね。
Posted by wood at 2015年06月13日 09:52
最後に <STRONG>[ 余談 ]</STRONG> を加筆しました。バターがなければマーガリンでもいい、という話。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2015年06月13日 19:06
バターが無ければ、パンや洋風料理でなく、ご飯や和食を食べればよい…
Posted by あるみさん at 2015年06月13日 20:58
白身魚のバター焼きって、簡単で、美味しいんですよねー。シタビラメのムニエルとかも。
 別にバターで油 ぎとぎと になるわけじゃないし。
Posted by 管理人 at 2015年06月13日 23:12
南堂さんて主婦みたいな考え方になったんですね。
バターが不足するのは価格が安いからに決まっているじゃないですか。
需要と供給の釣り合う価格より安いから品切れになるだけです。
小学校の教科書にも載っている法則ですよ。
Posted by りーまん at 2015年08月28日 00:26
バターは価格にかかわらず、ほぼ一定の需要がある商品です。価格が半分になったからといって何倍も食べるような商品ではありません。
 つまり、価格に対して硬直性の高い商品。

 このような場合には、需給曲線の 乂 みたいな図は成立しません。

 真相は? 新聞記事を読めばわかる。需要に対して供給が不足気味のところで、政府が輸入制限をしているから。だから、「輸入制限をやめればいい」というのが正解。新聞記事を読めば、すぐにわかる。

> バターが不足するのは価格が安いからに決まっているじゃないですか。

 店頭を見ればわかるが、価格は普段よりも大幅に上昇している。安いどころじゃない。

 小学校の教科書ばかりを見ていて、現実を知らないと、机上の空論になる。ネットばかり見ていないで、外に出て、現実を見ましょう。
Posted by 管理人 at 2015年08月28日 04:42
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