先に、消費税の軽減税率を批判した。
→ 軽減税率の愚
一部抜粋すると、こうだ。
公明党は「軽減税率が弱者に有利」というふうに主張しているが、実は、軽減税率は、弱者には不利で、大金持ちに有利なのだ。
そこで、もっといい代案を示した。
では、どうすればいいか? そのための対案はすでにある。
「国民一律に定額の減税をする」
これを消費税と併用すれば、次のようになる。
「支出に比例する増税と、定額の減税」
ここでは、次のモデルを示した。
所得 所得税 実質所得 消費税 10% 減税 差し引き 実質税率
100 0 100 10 10 0 0%
300 50 250 25 10 -15 5%
1000 300 700 70 10 -60 6%
消費税 10% と減税 10万円を組み合わせた場合、実質税率は、所得に応じて、可変的になる。
所得が 100万円なら → 税率 0%
所得が 1000万円なら → 税率 6%
このように、税率が可変的になるのだ。これは「軽減税率」に変わる「可変税率」とも見なせる。
さらに、次のようにも述べた。
なお、具体的な給付の仕方としては、次のようなものでもいい。
・ 年金料として納付する額を年額1万円下げる
・ 健康 保険 で 納付する額を年額1万円下げる
こういう感じで、全国民に一律で定額を給付する方が、ずっといいのだ。特に、余計な事務手続きがないので、国全体で多大な手間の節約となる。
つまり、減税に代えて、納付する額を減額することで、減税と同等の効果を出せるわけだ。
( ※ もちろん定額減税もいいが。)
──
さて。朝日新聞・朝刊 2015-05-27 を見ると、経済学者のピケティが同等のことを書いている。
フランスでは、「活動手当」という名称の給付金を出しているが、もらえる人は(いろいろ制限があるせいで)3分の1ぐらいしかいない。つまり、不公平かつ不正義な支給方法だ。フランス政府はこれを拡充することで、「低所得者対策」としている。しかし、むしろ必要な納付額を切り下げる方がいい、とピケティは主張する。
活動手当を支給する代わりにCSG(一般社会税)と社会保険料を減額することから始めるべきではないか。そうすれば、活動手当の対象となるすべての人の月額の手取り給与が増え、手当を受給できないという問題を解決することができるだろう。
最低賃金で働く人の手取り給与を確実に(源泉徴収によって)月額 300ユーロ以上も減らし、月額 130ユーロの活動手当を不確かな方法で支払うことにどんな意味があるのだろうか。CSGと社会保険料の合計額を月額 130ユーロ減らすほうが断然好ましいのではなかろうか。
( → 朝日新聞 2015-05-27 )
ピケティは「CSG(一般社会税)と社会保険料を減額する」というふうに述べている。
ここで、CSGの減額は(日本では)普通の所得税減税に相当し、社会保険料の減額は(日本でも)そのまんま社会保険料の減額に相当する。これらはいずれも、私の提案とほぼ同じだ。
──
私にしても、ピケティにしても、正しい低所得者対策の方法を知っている。それは、「低所得者対策をするならば、実際に低所得者対策の効果が出る方法を取るべきだ」ということだ。
しかるに、日本でもフランスでも、政府はそういうことをしない。
フランスでは、3分の1しかもらえない手当を増額することで、3分の1の低所得者だけが恵まれるような方策をとる。愚かしい。
日本では、もっとひどい。軽減税率を導入することで、低所得者よりも高所得者の方が、いっそう多額の減税効果を得る。「低所得者対策」と称して、高所得者に減税する。狂気の沙汰だ。
愚か者が税をいじると、こういうデタラメな結果となる。
[ 付記1 ]
これは、経済学の問題というより、算数の問題だ。経済学の知識は、何一つ必要としない。かわりに、小学校の四則演算の能力だけが必要だ。特に、割り算や引き算だ。
この能力が欠けているせいで、日本では「軽減税率を導入しよう」という方向に進んで、「得するつもりで損をする」という結果になる。
小学生レベルの算数の能力が欠落しているせいだ。
※ ついでだが、アホなのは、政治家だけじゃない。
このことに気づいていない大多数の国民も同様だ。
さすがにピケティは気づくけどね。
[ 付記2 ]
可変税率のモデルとしては、次のモデルの方がいいかも。減税額を5万円にしている。所得のかわりに、実質所得(所得税を引いたあとの所得)を基準にしている。
実質所得 消費税 10% 減税 差し引き 実質税率
100 10 5 - 5 5%
200 20 5 -15 7.5%
500 50 5 -45 9%
所得が上がるのに応じて、実質税率が
5% → 7.5% → 9%
と上昇する。このように税率が可変的に変化するわけだ。(所得が上がるのに応じて。)
【 関連サイト 】
28日の朝日の記事。
→ 軽減税率3案、課題それぞれ 負担減恩恵、高所得世帯にも
三つの案があるが、どれも税制として難点がある、という趣旨。また、高所得者の方が得をする、という根本的な難点も指摘されている。
三つとも駄目なんだから、三つとも捨てればいいのだ。なのに、あくまで軽減税率にこだわって、いつまでも無駄な議論をし続ける。アホの極みだが、自らがアホだと気づかないのが、どうしようもないところ。
一律の控除をどこで行うのが適切なのかという話でしょうか。
年末調整やら申告で控除の調整はできる気がしますが、年次ではなく月次で行うメリットがよくわからなかったです。
税金を支払いで控除を含めて控除が上まったらな還付となり、その場合はお金を戻す手間が増えるので、その通りな気がします。そういったケースになることが多いのでしょうか。通常は、控除されても税金を払うことになることが多いような気がして。
控除だと、金持ちの方が得をする。それでは軽減税率と同じような結果になる。
定額減税ならば、金持ちが有利ということはない。
納付金を定額で減額するのも、定額減税と同じ結果になる。
本文中に「具体的な給付の仕方」というのを引用してあるので、そこを見てください。
観点ではそぐわないということを日本じゃだれも気にしていませんよね。
本来そうしたことを報道各社が指摘して議論すべきなのに報道関係者自体が
気にしていないのか、或いは気づかせないよう黙っているのか。
いずれにせよ日本の報道が実質死んでいることは明らかでしょう。