2015年05月26日

◆ 生活保護者に居住移転の自由を

 生活保護者に 居住移転の自由 を与えるといい。どこであれ、自分の好きなところに住めるようにする。 ──

 前項 では、「生活保護者を地方へ移住させよ」と述べた。これは強制ではないのだが、「強制だ」と勝手に誤読して批判する人々がわんさと湧き出た。「生活保護者を特定の場所に押し込めるのはけしからん」というふうに。
 そもそも、私が言っているのは「地方に移住する権利を与えよ」と言っているだけだ。もちろん、都市部に留まっていたければ、留まっていてもいい。
 なのに、これを正反対に誤読する人が多い。「好きなところに住む権利を与えよ」というのを、逆に「好きなところに住む権利を制限せよ」というふうに誤読するわけだ。

 そこで、この誤読が起こらないように、はっきりと論点を整理する形で示そう。

 ──

 私が言いたいのは、「居住移転の自由を与えよ」ということだ。これは憲法で規定された権利だ。
 居住移転の自由とは、自己の欲する所に住所または居所を定め、移転し、自己の意思に反して居住地を移されることのない自由。
 ──
 日本国憲法第22条第1項

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
( → Wikipedia

 この権利は、憲法できちんと規定された権利だ。
 だから、この権利に従って、
 「生活保護者にはどこにでも移住する権利を与えよ」
 というのが、本項の趣旨だ。この本項の趣旨から、
 「生活保護者には地方に移住する権利を与えよ」
 ということが派生する。これが、前項の趣旨だ。

 現実にはどうか? 生活保護者には、居住移転の自由がない。なぜなら、都会の生活保護者が地方に移ろうとしても、次のような制約があるからだ。
  ・ 行先の地方で、生活保護の認定を受け直す必要がある。
  ・ 引っ越し代がない。(交通費や運送費)
  ・ 地方に移住すると、生活保護費が減額される。


 特に、最後の点が重要だ。都会で毎月7万円の家賃を全額補助されている人が、地方で毎月2万円の家賃で暮らして、差額の5万円を浮かそうとしても、それができない。生活保護費が5万円そのまんま減額されてしまうからだ。つまり、
 「都会から地方に移ると、家賃の分だけ、生活保護費が減額される」
 というふうになっている。これは、一見当然のようであるが、全然、当然ではない。実質的には「地方の生活保護者を虐待することで、地方に移住しにくくする」というふうになっているからだ。つまり、居住移転の自由が損なわれている。

 このことを理解するには、年金受給者と比較するといい。年金は、どれだけもらえるか? 居住地に従って、都会の居住者は毎月5万円ぐらい多くもらえるか? いや、そうではない。年金の受給額は、居住地にかかわらず、同額である。家賃の高い都会に住んでいても、家賃の低い地方に住んでいても、受給額は同じだ。
 これは、一見、不合理のように見えるが、むしろ合理的だ。どこに住むかは本人が好きに決めることができるからだ。都会で高い家賃を払って暮らしても、地方で安い家賃を払って暮らしても、どちらでもいい。本人の好き勝手にできる。その意味で、「居住移転の自由」は、完全にある。

 生活保護者は、そうではない。都会から地方に移転すると、「毎月5万円の減額」というふうなペナルティが待ち受けている。こういう形で、「居住移転の自由」は制約される。

 ──

 そこで、「居住移転の自由」を与えよ、と唱えるのが、本項だ。換言すれば、「生活保護者には定額の金を与えて、あとはどこにでも好きに住むようにさせよ」ということだ。
 特に、地方に住みたければ地方に住むことができるようにしたい。それが前項の趣旨だ。

 前項で述べたことについては、私の主張は上記のように解釈するべきだ。ところが現実には、「都会に住む自由を制約して、地方に強制的に追い出せ」という趣旨だと誤読する人が多い。私は「強制ではない」「現地に留まっていてもいい」と何度か書いたのだが、それを理解できず、「強制移住はけしからん!」と怒り狂う人が多い。
 逆だ。生活保護者に対して、居住移転の自由を認めないのは、現行制度なのである。それに対して、「居住移転の自由を与えよ」と述べているのが、私の主張なのだ。 
 その具体策は、下記だ。(前出3項の逆)
  ・ 行先の地方で、生活保護の認定を受け直す必要がない
  ・ 引っ越し代を提供してもらえる。(交通費や運送費)
  ・ 地方に移住しても、生活保護費は減額されない

 
 こういう形で、居住移転の自由が与えられるわけだ。
 ま、あんまり何度も何度も引っ越すのは問題だが、3年にいっぺんぐらいは引っ越し代を出してあげていいだろう。そのあたりは、行政の裁量に任せていい。
 ともあれ、現状では成立していない「居住移転の自由」を、生活保護者にも与えるべきなのだ。都会の簡易宿泊所なんていう「高価で劣悪な住環境」から脱出する道を用意するべきなのだ。
 そして、その具体的な脱出策のひとつが、前項で述べたことだ。(つまり自治体の支援。自治体の強制ではない。ここを誤読する人が多いが。)
 


 [ 付記1 ]
 生活保護費を定額にするとしたら、家賃分はどのくらいの額が妥当か? 
 現実に払う生活保護者の家賃は「4万円」ぐらいが平均的らしいので、このくらいの額が妥当だと思う。(ただ、どんぶり勘定をしたくないのであれば、統計を取って、きちんと平均値にすればいい。)
 で、家賃分として4万円をもらったあとは、どこに住んでもいい。家賃 2.5万を払って 矢板市 に住んでもいいし、家賃7万円を払って川崎の簡易宿泊所に住んでもいい。それは本人の自由だ。
 たとえば、矢板市に住めば、家賃分として4万円をもらって、実際には 2.5万円を払うわけだから、差額の月 1.5万円だけ生活費が増える。それだけ豊かな生活ができる。
 川崎の簡易宿泊所に住めば、家賃分として4万円をもらって、実際には 7万円を払うわけだから、差額の月 3万円だけ生活費が減る。それだけ貧しい生活を強いられる。
 そのどちらを選ぶかは、本人の自由に任せればいい。ただ、どちらでも選択できるように、引っ越し代の提供は必要だ。

 [ 付記2 ]
 ともあれ、年金受給者に与えられているのと同程度の「居住移転の自由」を、生活保護者にも与えるべきだ。
 仮に、それが駄目だというのであれば、年金受給者の「居住移転の自由」も同様に阻害するべきだろう。つまり、「都会に住んでいる年金受給者が、地方に移住したら、年金を月5万円ぐらい減額する」というふうにするべきだろう。
( ※ この箇所、背理法 である。)

 [ 付記3 ]
 地方の家賃は低い。それは、なぜか? 交通不便で、交通費が余分にかかるからだ。
 ここで、家賃がまるまる減額されたら、交通費が余分にかかる分だけ、損をすることになる。
 ゆえに、このような減額は不当だ。(田舎だからといって減額するべきではない。)
 家賃を全額補填するのであれば、地方における交通費もまた全額補填する必要がある。そうでなければ、地方に住む人が損をする。
 だから、政策としては、二者択一だ。
  ・ 家賃も交通費も、全額をきっちり補填する。
  ・ 家賃と交通費は定額にして、本人の裁量に任せる。

 このいずれであってもいい。
 しかし現実は、
 「家賃は補填するが、交通費は補填しない」

 となる。これでは、都会の人ばかりが恵まれ、地方の人は虐げられる。不公正ですね。
( ※ 特に、僻地の人は、自動車が必要なのだから、僻地に住む人には自動車代まで補填するのが筋だろう。……実費主義に従うのであれば、だが。)
( ※ 結局、自動車代まで補填するのが駄目なのだとしたら、実費主義を捨てるしかない。つまり、全員定額にするしかない。これが私の主張だ。)

 [ 付記4 ]
 居住移転の自由のための具体策として、先に3項を示した。ただし、この3項だけでは足りない。もう一つ、次のことも必要だろう。
 「借りる部屋の保証人を、自治体が引き受ける」

 現状では、保証人がいないので、生活保護者は部屋を借りることが困難だ。そこで、自治体が保証人を引き受ければいい。

 ただし、次の方式の方が、もっといい。
 「生活保護者が借りたい部屋については、自治体(または住宅公団)が、家主から借りる。いったん借りた部屋を、生活保護者に提供する」

 この場合、家主と契約するのは、自治体(または住宅公団)である。だから家主としては、家賃の取りはぐれがない。契約も長期化して安定的となる。家主にとってもありがたい。
 このようなサービスも必要だろう。(絶対必要というほどではないが、あった方がいい。必要度はかなり高い。)
posted by 管理人 at 21:39 | Comment(2) | 一般(雑学)3 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
被生活保護者も擁護する人たちも、そんなことはわかってるんですよ。
でもね、都会に比べて田舎は悪意と退屈にみちてるんですよ。だから、わかっていても移転しないんですよ。
あと、擁護する人たちは、被保護者に、精神的にか金銭的にかわかりませんが、寄生する人たちです。相手にしちゃいけません。
Posted by 素人 at 2015年05月27日 00:32
地方と田舎はイコールじゃありません。適当な近郊に住めばいいでしょ。地価が高いのは東京都心から60分の通勤圏内だけです。東京都心から90分になると、空き家が続出で、家賃も安い。そのあたりは田舎でもないから、問題ない。

大切なのは、川崎みたいな大都市の駅前に住む必要はない、ということ。私だってそんなに交通至便なところに住んでいるわけじゃない。ついでだが、板橋の焼け死者も、都内の駅前という交通至便なところに住んでいた。

こういうふうに交通至便な駅前のボロ屋に住んで火災死する、という愚行をなくすようにしたいわけ。現状では、それはできない。移動は制限されている。引っ越し代も出ない。
Posted by 管理人 at 2015年05月27日 06:54
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