オスプレイの墜落事故が起こった。これを見て、オスプレイは危険かどうか、という議論が起こっている。しかし、こんなことは、データを見ればすぐにわかる。
(1) 産経新聞
産経新聞に次の記事がある。
10万飛行時間当たりの重大事故の件数を示す「事故率」は、海兵隊が所有する固定翼や回転翼の航空機の平均事故率より低いのが実態だ。
オスプレイの事故率は 1.93。海兵隊の垂直離着陸戦闘機AV8Bハリアーの事故率は 6.76で、海兵隊全体の平均事故率は 2.45だ。
( → 産経 2012年7月23日 )
この元記事は消えてしまったが、同趣旨のコピペはたくさん残っている。
→ コピペ 一覧
(2) 防衛省資料
防衛省資料にも、他の軍用機との比較が出ている。グラフを見れば一目瞭然だろう。
→ 防衛省資料よりオスプレイ事故率データ決定版 : 週刊オブイェクト
以上からわかるように、オスプレイの危険度は、他の軍用機と比べて同程度である。旧式の軍用ヘリコプターよりは安全だ、と言っていいだろう。
──
問題は、このあとだ。
では、軍用機と比べれば並みだとしても、民間機と比べると、どうか?
民間機と同程度だ、と主張するブログもある。
オスプレイ事故率 1.93%
フィリピン航空━━━━━ :事故率 2.47
コリアンエアー━━━━━ :事故率 2.58
チャイナエアライン━━━━━ :事故率 7.16
( → オスプレ事故率,これが事実 )
ググるとこのブログが上位に来るので、この数字を信じて、そのまま転載する人もいる。しかし、この数字は正しくない。
そもそも、民間機については、出典が記してない。そこで私が出典を示すと、こうだ。
7.16 チャイナエアライン
……
2.58 コリアンエアー
2.47 フィリピン航空
( → AirSafe.com からの転載 )
数字そのものは、まったく同じである。だから、別に間違っていないように思える。だが、実は、単位が違う。
これらの民間機の事故率は、「100万フライトあたりの事故率」である。1フライトを5時間と仮定すると、500万時間あたりの事故件数である。
一方、先の軍用機の事故率は、10万時間あたりの事故件数である。
この両者は、単位の違いが 50倍もある。とすれば、数字自体が同程度だとしても、それにかかる時間が 50倍もの差があるわけだから、民間機の方が軍用機よりも 50倍ぐらい安全だ、ということになる。(当り前だ。民間機の方が安全性はずっと高いに決まっている。)
──
世の中には、グラフの読み方も知らない人が多い。数字だけを比較して、単位の違いに気がつかない人も多い。
しかし、数字が同じでも、単位が異なるがゆえに、軍用機は民間機の 50倍ぐらい危険なのだ。
また、上記の民間機というのが、事故の多い会社ばかりを挙げていたことを勘案すると、先進国の安全な航空会社の数値(たとえば全日空は 0.22 )と比較すると、軍用機は 500倍ぐらい危険だ、とわかる。
要するに、オスプレイは、軍用機としての危険率は並みであるが、全日空のような民間機と比べれば、危険率は 500倍ぐらい高い。これが事実だ。データを見れば、明らかである。
ところが、これを理解しないで、「他の軍用機と比べれば同じぐらいだから、危険ではない」と主張する軍事オタクが多い。彼らの頭には、論理がない。それはいわば、次の論理に似ている。
「ボツリヌス菌の毒素は、他の毒と比べても同程度だ。だから、ボツリヌス菌なんて、たいしたことはないんだ」
しかし、他の毒と比べて同程度だとしても、ボツリヌス菌は生物テロにも使われるような毒物だ。「他の毒と比べて同程度だ」というのは、安全性の保証にはならない。
オスプレイもまた同じ。他の軍用機と比べて同程度だとしても、それは、「どちらも危険だ」というだけのことであって、「どちらも安全だ」ということにはならないのだ。比べるべきは、他の軍用機ではなくて、民間機なのである。
──
以上は、論理だ。単純に、論理の間違いを指摘して、正しい論理を示した。それだけだ。
では、軍事的・政治的には、どうか?
(1) 軍事的
軍事的には、オスプレイは有益であり、他のヘリコプターよりも高機能なので、配備することには十分に意義がある。やたらと価格が高価格なので、日本が購入するべきだとまでは思わないが、米軍が配備するのは日本にとって有益だろう。(軍事的に。)
その意味で、「オスプレイを配備する」ということは、それ自体は妥当である。(軍事的に。)
(2) 政治的
政治的にはどうか? これは、住民の被害が重要となる。そこを考えると、次の結論となる。
「住宅街のなかに基地があるような普天間や横田は、オスプレイを配備するには適さない。飛行機ならばともかく、オスプレイ、軍用ヘリコプター、垂直離着陸機などは、いずれも適さない」
これは、当たり前のことだろう。いちいち解説はしない。
《 普天間基地 》
《 横田基地 》
──
では、どうするべきか?
・ 軍事的には、配備した方がいい。
・ 政治的には、普天間や横田には配備すべきではない。
この二つは、一見、矛盾しているように見える。では、どうすればいいか?
ここでは、論理的に考えれば結論は出る。上の二つから論理的に頭を働かせれば、結論は次のことでしかない。
「普天間や横田のような人口密集地ではないところにある基地に配備する」
このことは、可能だ。というのは、オスプレイはヘリコプターであるから、滑走路がなくても離着陸ができるからだ。別に、滑走路のある基地は必要ない。別の小さな基地で離着陸すればいい。
とはいえ、実を言うと、オスプレイはヘリコプターモードで離着陸するだけでなく、飛行機モード(滑走モード)で離着陸することもある。この場合には、滑走路が必要だ。そして、基地の主目的が訓練であることを考えると、飛行機モードの離着陸訓練のために、滑走路は必要であろう。
となると、普天間・横田以外で、滑走路のある基地を使えばいい、ということになる。
では、具体的には、それはどこか?
米軍基地の配置図を見ると、岩国とか、佐世保とか、三沢とか、各地にいくつかの候補が見つかるが、実際にオスプレイが配備されて反対された箇所があったりして、どうも好適な場所は見つからないようだ。
また、米兵の多くが首都圏に住みたがっていることを考えると、「僻地に行け」とは言いがたいし、「横田に行きたがるのもわかる」という気持ちにもなる。
しかしながら、その一方で、「横田みたいな人口密集地に軍事基地なんかを設置するのはとんでもない」という政治的な問題がある。
──
以上のことから、私としては、次のことを提案したい。
「首都圏の東京近辺で、人家がほとんどない広大な田畑を買収してから、そこを米軍基地とすればいい。そこに滑走路を整備して、横田基地のすべてを、そこに移転すればいい」
つまり、横田基地の移転案だ。これで、問題はすべて解決する。
しかも、横田基地の上空が日本に返却されるので、日本の民間機はすごく便利になる。
※ 現状では、横田基地の空域を通れないので、民間機は遠回りをしなくてはならない。そのせいで航空機はいろいろと不便な目に遭っている。
→ 首都圏の空域について
──
では、移転先は、どこがいいか? 具体的には、千葉県南部だ。このへんには、巨大な田畑の領域がいっぱいある。たとえば、ここだ。
こういうところに滑走路を作って、横田基地を移転すればいい。そこにオスプレイでも何でも持ってくればいい。
これですべては解決する。
( ※ なお、地主の反対があったら、どうするか? 買収するかわりに、横田の土地と交換すればいい。それなら、財産が大幅に増えて、大喜びだろう。「使い道のなかった田んぼが、東京の住宅地に化けた! ボロ儲け!」と大喜び。/また、場合によっては、近辺の土地の田んぼと交換してもいい。あたりにはいっぱい田畑があるのだから、どこかで購入できるはずだ。)
【 追記1 】
コメント欄で「茨城空港(自衛隊百里基地と共用)はどうか?」という提案を受けた。
これはこれでいいと思う。(九十九里浜に置く、という案も受けたが、これでもいいと思う。)
ただ、いずれにしても、東京からかなり遠いので、米軍関係者から不満が出そうだ。特に茨城空港は、ど田舎なので、不満たらたらになりそうだ。
そこで、もっと東京近辺にないか、と思って探ってみたら、余っている田んぼはいっぱいあった。そこを見ていると、すでに飛行場があった。「龍ヶ崎飛行場」だ。
ただ、Wikipedia を見たら、まずい点がある。
成田国際空港に近く、飛行場周辺上空は成田国際空港の管制を受け、飛行に一定の制約がある。
( → Wikipedia )
とのことだ。これはまずい。空域が制限されると、訓練がうまくできない。
しかし、新たなアイデアが浮かんだ。二つの空港を一体的に運用する、というアイデアだ。
「龍ヶ崎飛行場と茨城空港を、共用して運用する。軍人の住宅は、龍ヶ崎飛行場のそばに置く。基地の本部は、龍ヶ崎飛行場に置くが、茨城空港にも一部を置く。離着陸は、龍ヶ崎飛行場を主体にするが、訓練の空域は、茨城空港の空域を主に使う」
これなら、問題なく利用できそうだ。
難点は、滑走路が短すぎて、面積が小さすぎることだが、周辺には農地がいっぱいあるので、農地を買収すれば片付くだろう。
( ※ ただ、移転先は、どこでもいい。「移転先の候補はいっぱいありますから、好きなのを選んでください」と米軍に呈示するだけで足りるだろう。大事なのは、横田から移転する、ということだけだ。)
【 追記2 】
オスプレイの墜落時の目撃者談。
MV22は着陸と離陸を繰り返し、離陸のたびに砂煙が高く舞い上がった。だが突然、離陸した複数機のうち1機が地上 200メートル付近から急降下。そのまま地面に激突して炎上、周囲に轟音(ごうおん)が響き渡った。「落下するまで、爆発音も炎もなかった。異常は何もなかった」と話す。プロペラも、通常通り回っていたように見えたという。
( → 朝日新聞 2015-05-20 )
通常ではあり得ない墜落の仕方だ。やはり、複雑な機構を持つことが、構造的な問題となっているのだろう。
そもそも、オスプレイの事故率は、配備直後の新品状態の事故率だ。もともと低くて当然だ。(オンボロのヘリコプターと対比するのは不当だ。)
今後、オスプレイが使用期間が長くなるにつれて、経年劣化が進み、事故率はどんどん高まるだろう。「オスプレイの事故率は古いヘリコプターよりも低い」なんて主張をする人は、「オスプレイが古くなったら(事故率が高まるので)廃棄せよ」と主張する必要がある。
だが、1機 100億円以上もする兵器を、時間がたったら廃棄するなんて、とんでもない無駄だ。やはり、最初から購入しないのが、ベストだろう。
【 関連項目 】
→ オスプレイ導入の愚
オスプレイという高額で低機能な兵器のかわりに、もっといいものを推奨している。
・ 高速ヘリ
・ 飛行艇
このいずれも、速度はオスプレイと同程度だ。しかも、前者は価格が圧倒的に低いし、後者は輸送能力が格段に高い。
横田基地の移転先は利根川流域など土地の広い北関東あたりが良いと思いますが。それか茨城〜千葉の太平洋東岸エリアですかね。
>飛行機モードで離着陸することもある
??? オスプレイのローターは通常の飛行機と同じ向きにした場合、地面に激突するはずですよ。
そのそも、水平滑走で離陸できるならば、最初から翼の揚力を利用できる分だけ、効率がいいはずなので、条件がそろえば水平離陸を行うべきですが、そんな映像見たことない。
(ローターを少し前方に傾けた状態で短距離離陸を行うことはできるが、翼の揚力のみで機体を浮かすわけではないので飛行機モード?ではないわな)
ただし、着陸では緊急時に、ローター回転を停止して、滑走路に水平侵入する場合があるかも知れない。(その場合でもローターはまず地面に接触して壊れますね)
成田の農家は喜ばなかったけどね。
自衛隊のオスプレイ運用のための訓練にもなり、整備施設も協同でコストダウン、いいことづくめな気がします。
> ローターを少し前方に傾けた状態で短距離離陸を行うことはできるが、
その意味です。なお、完全に前に向けることはできません。そんなことをすれば、巨大なプロペラが地面にぶつかって、壊れてしまう。
> 翼の揚力のみで機体を浮かす
そういう意味ではないです。まあ、言葉遣いは悪かったかもしれないので、(滑走モード)という語を加筆しておきました。
ただ、そもそもオスプレイは、翼の揚力のみで機体を浮かすことはありえません。水平飛行のときでさえ、翼の揚力のみではありません。
> 成田の農家は喜ばなかったけどね。
成田の場合は等価交換だったから、もともと喜ぶはずがない。100万円分の土地を没収して 100万円を渡す、という感じだから、土地を没収される方は頭に来る。
そのかわりに、次のいずれか。
・ 100万円分の土地を没収して 300万円を渡す
・ 現地で3倍の面積の農地と交換する。
(その農地は相場で購入する。誰かが売ってくれる。)
・ 横田の土地と交換する。
・ すごく優良な土地を探して、国が買収してから、交換する。
ま、札束で頬を張るのとは違う、誠意ある対応を取れ、ということ。
あとね。もう一つ、うまい方法がある。「基地内にコンビニを出店するから、そのオーナーにならないか」と持ちかける。コンビニの店長としてずっと働ければ、いい現金収入が得られる。自分では働かないで、雇われ店長に任せてもいい。
米軍に接収されてから周りに人が集まり住宅密集地になった。普天間基地と同じ。
基地自体を大きくして、滑走路までの距離を広く取らないと難しいですね。
(それでも民間機に比べて安全性が低いことには変わりませんが)
軍用機10万時間とは何フライト分なのでしょうか?
日数あたりの事故率で言うと、とんでもない比率になるかも。500倍ならぬ 5000倍とか。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-06-27/2012062704_02_1.html
ハリアーの二倍となってますよ
米軍機が事故ったら即座に現場は治外法権と化すので
事故率は重要な問題と認識して欲しいですね
http://blogs.itmedia.co.jp/sakamoto/2012/07/osprey-mv22-cv2-8d5f.html
こういうことですね
で、「低い」と言いたい人は、MV22 の数値を出し、「高い」と言いたい人は、CV22 の数値を出す。
MV22とCV22の機体上の違いはなく用途のみ違うようです。
対してAV8Bハリアーの用途も違うとなると、その事故率の比較で評価する
両論ともあやしい気がしてきました。
事故率はその使用環境によって変わるというのが軍用機の中にでもあるようです。
MV-22は兵員輸送に主に使い、CV-22は特殊作戦に使う。特殊作戦とは特殊部隊が行う作戦でハードな任務が多く当然、事故率は高くなります。AV-8BハリアーUは敵の地上部隊を攻撃したり、施設を攻撃したり、場合によって敵機を撃墜する
タンデムローターのヘリコプターは、2つのローターを結ぶ線に対して揺れるとしても左右であって、それほど危険な状態にはならないと思われるが、左右にローターのオスブレイは、ローターを結ぶ線に対して揺れる場合には、前後になって、垂直離着陸には危険な状態だと思う。
ただし、少しでも前進しながらの着陸ならば、問題にならないかもしれない。
米軍も自衛隊もこれ位の事を知っていて、戦術上運用するのである。武器とはこんなものである。
@ロータを含む機体全幅の小さいこと。
Aホバリング、垂直離着陸時の性能、操縦性の良いこと。これらはミッション遂行サイトが危険、ミッション遂行そのものが困難であること、群馬・長野県防災ヘリの事故を見れば明らかである。
Bオスプレイの重量約50,000ポンド、2個のロータ直径は38フィート、これはヘリのCH47はタンデム2ロータ径は60フィート、CH46,21400ポンドで50フィート。これでオスプレイがホバリング性能が出るのであれば、ヘリコプタのロータ径をオスプレイ並みに小さくできるはずである。エンジン馬力が大きいからとゆうのであれば、ヘリにもそのエンジンを付ければよいが小さくならない。
Cロータ・エンジンをを垂直、水平をに回転させるために構造複雑、事故が起こりやすい。
❺ヘリ屋オスプレイの事故率は、1離陸当たりとすべきである。
❻2016年以降でも、大事故・不時着を含みその頻度は想像を絶するものである。
それでもオスプレイが安全なと言う人の常識を疑う。
❼陸自は2〜3回事故を中止し、運航を止めるであろう。パイロットが飛行を拒否するようになるであろう。