2015年05月18日

◆ 火災と生活保護

 川崎で火災があって、死傷者がたくさん出たが、その多くは生活保護を受けていた人々だ。 ──

 記事を引用しよう。
 17日午前2時10分ごろ、川崎市川崎区日進町で「建物から煙が出ている」と119番があった。簡易宿泊所「吉田屋」から出火し隣接する宿泊所「よしの」に延焼、木造2階建ての2棟延べ計約千平方メートルを全焼した。吉田屋の焼け跡から男性1人と性別不明3人の計4人の焼死体が見つかり、宿泊者ら19人が重軽傷を負った。
 川崎署によると、2棟の名簿には宿泊者計74人が載り、川崎区によると大半が生活保護を受ける高齢者
( → 日本経済新聞 2015-05-18
 簡易宿泊所はかつて、戦後の高度経済成長を支えた京浜工業地帯の労働者が多く利用していたが、現在は生活保護を受ける高齢者の長期滞在が目立つ。全焼した2棟には90歳前後の人や、働けずに介護が必要な人も泊まっていたという。
 これは、川崎市が生活保護の受給に不可欠な「住所」を簡易宿泊所に置くことを認めており、住宅扶助の月の上限6万9800円で1カ月の宿泊費がまかなえるためだ。市によると、この2棟では、ほぼ全員に近い計68人が生活保護を受給していた。
( → 朝日新聞 2015-05-18

 これには既視感がある。実際、そっくりな事件が前にもあった。2012年だ。
 「生活保護費の問題」について。
 火事で焼け死者が出た、というニュースがあった。そこに、次のように記してあった。

 部屋は8畳ほどで、月約15万円の生活保護費のうち6万9800円を所有者に支払っていた。
( → 朝日新聞・朝刊 2012-05-31 )
     http://www.asahi.com/national/update/0531/TKY201205310221.html

 約半額が家賃になっている。これは高額すぎる。神奈川や埼玉なら、月3万円で、バス・トイレ付きのワンルームマンションが借りられるからだ。(駅からはバス20分ぐらいで。)
 生活保護者ならば、通勤の必要はないから、駅の近くに住む必要はない。なのに7万円の家賃というのは、よほど交通至便のところに住んでいたのだろうか。そう思って調べたら、駅から 100メートルの場所にある。
  → Google マップ http://goo.gl/maps/y2Hb
 生活保護者が駅から 100メートルの特等地に住むなんて、馬鹿げている。それで家賃7万円。旅館ばかりがボロ儲けだ。
( → 生活保護の根本対策[コメント欄] )

 場所は東京都板橋区だが、家賃が7万円ということも、駅のそばの簡易宿泊所という点も、同様だ。
 ちなみに、今回の場所は、ここだ。やはり、駅の近く。それも、川崎駅というターミナル駅だ。





 ──

 呆れるね。川崎駅のそばなんて、よほどの金持ちでないと住めない。そんなに家賃の高いところに、生活保護の受給者が住む。で、駅のそばだけあって、土地の便は最高だが、かわりに、建物は最低レベルだ。かくて、スプリンクラーもないボロ宿に寿司詰めとなり、最後は火事で死ぬ。……板橋も川崎も、同様だ。

 では、どうすればいいか? そのことも、前出項目に書いてある。ただ、そこに書いてあることはちょっと極端すぎるから、暫定案として、次のように提案したい。
  ・ 生活保護費は、家賃を含めて、定額とする。
   (現状は家賃は別建て。都会なら高い家賃が許容される。)
  ・ そのことで、家賃の低い郊外に住むように促す。
  ・ 安い家賃の空き家を、自治体が紹介する。


 最後の点については、次の項目で論じた。
  → 生活保護と集団居住

 とにかくまあ、現状では、生活保護を受ける老人が、駅のそばで寿司詰め暮らし、という状況にある。それで得をするのは、ボロ宿の経営者だけだ。その一方で、ときどき火事が起こって、老人たちが大量死する。で、そういう状況を推進するために、自治体は高い家賃を払って、老人たちが高い家賃のボロ屋に住むことを許容しているわけだ。
 つまり、税金を使って、悪徳家主がボロ屋でボロ儲けするように仕向けながら、人殺しをしているわけだ。狂気の沙汰だ。政策がボロボロだ。
 


 [ 付記 ]
 対策としては、どうするべきか? 
 「このような古い小規模な旅館は、すべて廃業させるべきだ」
 というのが本筋だと思う。廃業させて、あとは土地を売却すればいい。その金を得れば、文句はないだろう。

 ただ、どうしても事業を継続したいのであれば、「スプリンクラーの設置」を義務づけるといい。スプリンクラーは、本格的なものは 2000万円以上かかるが、水道管直結方式ならば、500万円程度で済む。水圧が低いので、1〜2階ぐらいまでしか使えないが、それでもたいていのボロ屋には適用できる。(今回の宿も2階建てだ。)
 だから、次の二者択一だ。
  ・ 500万円を出して、簡易スプリンクラーを設置する。
   (同時に、宿代をいくらか値上げする。)
  ・ 500万円を出さずに、廃業する。
   (土地を売却して、その売却益で何とかする。)

 このように、旅館の火事に関しては、簡易スプリンクラーがポイントとなる。この件は、前にも似た例を論じた。
  → 火災事故の問題点(福岡)
  → 火災で新幹線停止(有楽町)
 このいずれも、「簡易スプリンクラーを設置せよ」と結論している。本項も同様だ。
posted by 管理人 at 21:43 | Comment(3) | 一般(雑学)3 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
生保家賃商売はどこに行ってもありますからね
Posted by 先生 at 2015年05月18日 21:54
実際には三階建てだったという報道があります。
木造の三階建ては認められないし鉄筋でも三階建て以上だとスプリンクラーが義務化されるので二階建てだと嘘をついてたようです。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015051902000150.html
Posted by のぐー at 2015年05月19日 15:00
> 実際には三階建て

朝日に写真があります。
http://www.asahi.com/articles/ASH5L4JH0H5LULOB00Y.html
http://www.asahi.com/articles/ASH5M320HH5MULZU001.html
建物自体は二階建てですが、内部構造を改造して、二段ベッドふうの構造で、ハシゴで昇る三階部分(屋根裏部分)を追加したのです。しかも消防署のチェックをパスしていたそうです。

この旅館が特別に悪いというのではなくて、同様の旅館は他にもたくさんあるということです。ここが悪質というより、慢性的な問題があるようですね。
Posted by 管理人 at 2015年05月19日 18:59
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