これについては賛否両論が出ているが、たいていは「橋下が好きか嫌いか」という点からの議論ばかりで、理屈の点からの議論がなかった。私としても、特に考えたことはなかった。
しかし、理屈の点から考えると、一つの結論が出たので、以下に記す。
──
大阪都構想の理由は「二重行政の解消」である。では、大阪都構想を実現すれば、二重行政は解消するのか? 賛成論者ならば、「イエス」と答えるだろう。しかし、論理的に考えると、それは正しくないことがわかる。
まず、東京都と比較しよう。東京都は、23区(都区部)は、面積こそ3分の1ぐらいだが、西の奥多摩地域は森林ばかりで人は住めない。人口の大部分は 23区(都区部)に属する。
つまり、東京都の本体は、23区(都区部)である。あとは「付け足し」みたいな扱いになる。
では、大阪府はどうか? 地図を見てみよう。

見ればわかるように、大阪市の領域は全体のうちのごく一部にすぎない。人口で言っても、
「大阪府 886万人、大阪市 266万人」
というふうに、大阪市の占める割合は半数にも遠く及ばない。
以上のことから、次のように結論できる。
「たとえ大阪市を解体しても、二重行政は解消できない。なぜなら、大阪市以外にもたくさんの市があって、そこでは二重行政が残るからだ。二重行政をやめたければ、大阪市だけでなく、他の大部分の市も解体する必要がある」
要するに、「大阪市を解体すれば、二重行政は解消できる」というのは、論理的には嘘八百だ(実現不能なことだ)と結論できる。
──
だが、ここでもう一つ、二重行政を解体する方法がある。それは、こうだ。
「大阪市を解体するのではなく、大阪府の方を解体する。解体するというと語弊があるが、要するに、大阪府の権限を大阪市などの市に委ねる形で、権限委譲する」
これならば、二重行政は解消する。実際、神奈川県では、横浜市や川崎市などが県にかわって仕事をしているので、特に二重行政の問題は生じていない。
これが、あるべき姿だろう。つまり、大阪市よりも、大阪府(の業務)の方を解体するべきなのだ。橋下市長の言うことよりも、その逆のことの方が正解であるわけだ。
──
よく考えると、今回の「大阪都構想」は、橋下府知事の遺恨試合みたいな面があった。橋下府知事(当時)が、大阪市庁と対立して、大喧嘩した。そこで「市長が府知事の言うことを聞かないのであれば、大阪市を解体してやる!」と尻をまくった。
しかし、この争いは、本来、市の側に分があったのだ。府知事は「府は市よりも上なんだから、市は府に従うべきだ」と思ったのだろう。しかし本当は、「府は市に権限委譲しているのだから、府は市のやることには口を挟まない」というふうにするべきだったのだ。
そこを勘違いして、「おれの方が偉い」と思ったのだろう。かくて、「府の権限を解体するべきだ」という本来の方針(権限委譲)ができずに、大阪市の方を解体するという逆方向の方向に突っ走ってしまった。「たとえ大阪市を解体しても、他の市がいっぱいあるから二重行政は解消できない」と理解できないまま。
仮に大阪都構想が実現したとしたら、橋下市長は今度は別の市も次々と解体する必要がある。東大阪市、吹田市、豊中市、堺市……など。これらを次々と解体しないと、二重行政は解消できないままだ。かといって、これらを次々と解体しようとしたら、橋下市長の寿命が先に尽きてしまう。
というわけで、「大阪都構想」なんてものは、しょせんは無理な空想なのである。仮に住民投票で「イエス」という結論が出たら、混乱が増すばかりだ。
今回の騒動は、物事の是非というよりは、橋下市長の喧嘩に住民が巻き込まれた、というだけのことだろう。三度の飯より喧嘩が好きな市長がいると、住民は迷惑を被る、ということだ。
[ 付記1 ]
あとで思い直したのだが、二重行政を解消したいだけであるなら、別の方法もある。こうだ。
「大阪市を残したまま、その権限の大部分を大阪府に吸い上げる」
この場合、東大阪市、吹田市、豊中市、堺市……などの権限も、いっしょに吸い上げることになる。
こういう方法でなら、橋下府知事(当時)の狙ったような形で、二重行政が解消することになる。これはまた、東京都の23区制にも似ている。
とはいえ、「市の権限の大部分を大阪府に吸い上げる」というようなことを、市民は本当に望んでいるのか? 望んでいるのは、橋下市長だけではないのか? そういう疑念がある。
ちなみに、大阪府の全市で「市の権限の大部分を大阪府に吸い上げる」ということを住民投票で問うてみるといい。否決されることは、まず間違いないだろう。
とすれば、「大阪市だけを解体する」というような中途半端なことは、もともと筋がよくない、と言える。
( ※ 別に大阪市を解体しなくても、単に市の権限を大阪府に権限委譲してしまえばいいのだ。大阪市長としてそういう方針を決めればいい。……おそらく誰かも支持されないまま挫折することになりそうだが。)
( ※ 実際、大阪市の隣の堺市では、「堺市を解体する」という大阪都構想は否決された。ここでは、堺市の市長は、もともと橋下と同調していたのに、大阪都構想が理由で橋下とたもとを分かった。[ → Wikipedia ]この意味でも、大阪都構想は住民から支持されていない、とわかる。)
[ 付記2 ]
市の規模を小さくして、東京の 23区程度( 30〜50万人程度)にした方がいい、という主張もある。
→ 大阪都構想 なぜ賛成なのか
しかし、そうであるならば、大阪市を五つぐらいの市に分割すればいい。市が増えるだけで、区制度は必要ない。つまり、大阪都構想は必要ない。
上の論拠は、「大阪市を分割すること」のメリットを主張しているが、分割と大阪市廃止とは、方向性が逆だ。分割ならば市の数が1から5に増えるが、廃止ならば市の数が1から0に減る。
権限にしても、分割ならば権限は下位(分割後の市)に移るが、廃止ならば権限は上(府)に移る。
話の論拠と結論とが矛盾している、という滅茶苦茶意見。
( ※ 橋下のブレーンみたいな人だから、こういう滅茶苦茶を言う。)
( ※ 他にも、賛成論には、論拠がデタラメであることが多すぎる。ある反対論のサイトでは、そのことが具体的に指摘している。)
[ 付記3 ]
「大阪は現状では駄目だから、とにかく何か改革する必要がある」
という意見もある。だが、これはほとんど自暴自棄の暴走論だろう。変えなければ駄目だとしても、変えれば現状よりよくなるという保証はない。
大阪府と大阪市がともに推進した関西空港の大失敗を見ても、馬鹿と馬鹿の争いでは、どちらが勝っても馬鹿が生き残る。これはどうしようもないことだ。
歴代の大阪府知事を見ると、どうも、あまりまともな人材はいなかったと思える。(ま、東京だってひどい例は多かったが。それでも今の舛添は、かなり優秀な部類に入る。)
[ 付記4 ]
大阪都構想というのは、橋下の独創ではない。太田府知事の時代にすでに提出されていた。(そしてポシャった。)この件は、ネット上にいくらか情報がある。
→ Google 検索結果(一覧)
ここから、次の話も見つかる。
橋下さんは「大阪都」という言葉を口に出したのはいつのことだったのか。いまでこそ橋下さんは大阪市を解体・再編して大阪府に統合しようと訴えてはいるが、それ以前は壊す対象は大阪市ではなかった。府知事時代には、むしろ大阪府の解体を口にしていたのである。
( → 大阪都構想を考える/都構想のルーツを探る )
同趣旨の情報は、他にもある。
→ Google 検索結果(一覧)
[ 付記5 ]
物事の根本から考えると、大阪都構想というのは根本的におかしい、とわかる。
そもそも、大阪都構想が話題になったのは、橋下府知事と平松・大阪市長との対立があったからだ。朝鮮学校や文化団体への補助金を削減しようとした橋下府知事に対して、大阪市庁はこれに反対した。それで橋下府知事がぶち切れて、「おれの言うことを聞かないなら大阪市なんかぶっ壊してやる」と息巻いた。
しかしこれはもともと大阪市の権限のことなんだから、大阪府は口を挟むべきではなかったのだ。二重行政が成立する場面では、大阪府が大阪市に譲るべきだったのだ。そして、大阪市の方針が気に入らないのであれば、大阪市をぶっ壊すかわりに、自分が大阪市長になって、政策を変えるべきだったのだ。
ところが橋下府知事は、大阪市長になる目的を、「大阪市をぶっ壊すこと」(大阪都構想)だと見なして、本来の「大阪市の政策の改革」を見失ってしまった。目的と手段を混同した。手段の方を目的だと見なした。そのせいで、本来の目的がないがしろになった。
橋下市長は、ちゃんと市長になったのだから、自分の望む政策は実現できる。「大阪市優位」という条件の下で、二重行政もなく、自分のやりたい政策を実現できるのだ。なのに、政策の実現は二の次で、手段であるはずの「大阪都構想」ばかりに熱中した。2011年に当選して以来、時間は十分にあったはずなのに、大阪市長としての政策の実施はろくにやっていない。大阪都構想と中央政治にばかりかまけていて、大阪市長としての仕事をろくにやっていない。これでは本末転倒だ。
橋下は、府知事時代には、かなり優れた実績を上げた。仕事の量も多大だった。多くの人はその残像を覚えていて、彼を支持しているのだろう。しかし大阪市長になってからは、彼は喧嘩をしているばかりで、ろくに市長としての仕事をしなかった。二重行政の解消ができている状況下で、やるべきことをやっていなかった。自己矛盾。
となると、橋下市長の存在意義は、すでになくなっていると言える。引退するのも当然と言えるかもしれない。
タイムスタンプは 下記 ↓
タイムスタンプは 下記 ↓
NHK 、日テレ、どちらも同様。
したがって、深夜になるまでわからない。深夜になっても、まだわからないかも。
→ http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150517/k10010082861000.html
賛成多数になっても、二重行政は解消せず、混乱だけが残る……というのが本項の趣旨だったから、否決されたことは好ましかった。
大阪市民は良識を働かせた、ということかもね。
橋下さん、引退おめでとうございます。これからはたっぷり稼いで、お金持ちになれますね。
「僕みたいな政治家はワンポイントリリーフです。課題が出てきた時に出る実務家だ。僕みたいな政治家が長くやるのは危険です。敵をつくる政治家は本当にワンポイントリリーフ。いらなくなれば、もう交代。権力なんてのは、使い捨てが一番いいんです。(いつまでもいるのは)世の中にとって害悪です。求められた時に求められ、いらなくなったらいなくなる。」
http://www.nikkansports.com/general/news/1478245.html
潔いですね。この点では歴代の政治家では傑出している。
他の自治体はこの記事によると
府や県が広域行政 市の権限は身近な住民サービス
に特化しているとあり大阪市は政令指定都市であるがゆえに広域行政をやっていてこれを橋下さんは批判してたと思います。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yoneshigekatsuhiro/20150516-00045770/
あと川崎や横浜は県に代わって仕事をしているということですが横浜市は二重行政があり解消するために特別自治市構想をあげているということです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150518-00000044-san-pol
時がたつにつれて大阪市以外も人は住むようになり大阪市は大阪府の一部でしかなくなった。
大阪市はその現実を受け入れていないからこそ
広域行政だったり府がやるべきことをやりたがる
中心気質が残ってる。みたいなニュアンスだったと思います・・。
あと大阪市長として橋下さんは赤バス廃止、
高齢者の無料化廃止などしてそのお金で公立中学校の給食実施など政策はしたと思います・・。
■市職員数比較
政令市:職員数:職員数/人口1万人
大阪市:3.9万人:147人 ※参考:市人口267万人
横浜市:2.8万人:77人 ※参考:市人口370万人
名古屋市:2.7万人:120人 ※参考:市人口226万人
神戸市:1.7万人:112人
■市民一人当たりの市債
政令市:市債/市民1人
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大阪市:195.1万円
福岡市:172.2万円
神戸市:162.6万円
これはひどいことになっている。
「<大阪市の学校給食>おかず冷たい 食べ残し7割 」
http://j.mp/1Eyjl02
http://j.mp/1FHWKw4
http://j.mp/1E16VgF
http://www.sankei.com/west/news/150227/wst1502270078-n1.html
http://blog.livedoor.jp/yatanavi/archives/53179738.html
http://matome.naver.jp/odai/2140045978232661601
育ち盛りの生徒がまともに食べることができなくなっている。栄養失調の恐れもある。だったら給食なんか、やらない方がマシだった。弁当業者でも招いて校内販売でもした方がマシだった。
(不要な人は弁当で。)
橋本氏が嫌いなあまり、腐敗組織を温存することになってしまいました。というのが今回の評価だと思います。
以下引用
http://www.city.osaka.lg.jp/jinji/cmsfiles/contents/0000161/161367/saisyuhoukoku1.pdf
大阪市における最近の不祥事処分事案をみると、顕著なことは、覚せい剤、傷害・暴
行、窃盗などの重大な犯罪行為が、継続的に頻発していることである。
過去 5 年間で(平成 19 年度から平成 23 年度途中まで)、
・違法薬物(覚せい剤、大麻)に係る処分は 11 件
・傷害、暴行などに係る処分は 29 件
・窃盗に係る処分は 32 件
にのぼる(詳細は別紙のとおり)。上記のような犯罪行為は、一般社会において、日常
的に起こるものではない。
なお、上の数字は、大阪市の組織的腐敗というよりは、大阪人がそもそも未開人だからじゃないの? 腐敗を正しても、別の未開人が組織に入るのであれば、似た結果になりそうだが。
たとえば、大阪市を解体して、5つの特別区に分けたとしても、職員を全員解雇することはできない。5つの特別区に分配されるだけだ。だったら、結果は同じでしょ。
都道府県に与えられている権限の一部が市にも在ります。その大阪府にある権限はその他大阪府の市町村の為に機能を保持していますが、大阪市や堺市のようにプラスαとしてその機能を有しているのが無駄ですよね。お金のない破たん寸前の大阪市があえてコストをかけないようにするという考え方です。また、市長・市議会議員・その運営に関する費用が無くなります。
メリットがあります。大阪市の腐敗に関して言えば橋本市長になってからかなり是正をしていると思いますよ。全面的に支持しているわけではありませんが都構想の基軸となる行政コストの削減と60年にも及ぶ体制へのメスを入れる事は支持できると思っています。
だからそれをやれ、というのが、本項の趣旨。せっかく市長になったんだから、それをやればいい。大阪都構想なんて必要ない。市長として、やるべきことをやればいい、という趣旨。
大阪府知事が大阪都構想を主張するのなら、まだわかる。しかし大阪市長が大阪都構想を主張しても目的が不明。「自分の権力が大きすぎるので仕事ができない。自分の権力を削減すれば仕事ができるようになる」なんて、論理矛盾でしょ。