2015年05月17日

◆ 集団的自衛権のミスリード

 集団的自衛権を導入するために、軍事常識に反する虚偽を理由にしている。嘘で世論を誘導する。 ──

 詐欺師はいっぱいいるが、一国の首相や新聞社がこれほどにも嘘をつくのは困りものだ。朝日の「誤報」どころじゃない。意図的な反国家行為と言える。

  読売新聞(朝刊 2015-05-15 )では、次の趣旨の話があった。
 「日本人を乗せた米艦が攻撃されたときには、自衛隊が米軍を擁護するのが当然だ」

 これは、読売の独自の見解ではなく、安倍首相の見解でもある。
 しかし、これは軍事常識に反するし、米国の見解にも反する。つまり、読売と安倍首相は、一緒になって国民をだまそうとしている。
 この件は、朝日の古い記事を読めばわかる。
 《 「米艦で邦人救出」想定、過去に米は拒否 集団的自衛権 》
 朝鮮半島での有事(戦争)で「避難する日本人を乗せた米艦を自衛隊が守る」との想定が、注目を集めている。しかし、過去の日米交渉で米側はこの場合の日本人救出を断っていた。首相がこだわり、行使に慎重な公明党もこれなら容認できるとみる想定だが、現実には「日本人の米艦乗船」は極めて困難だ。
 「近隣諸国で紛争が起こって、逃れようとする邦人を輸送する米国の船が襲われたとき、その船を守れなくていいのか」
 11日の党首討論。安倍晋三首相は朝鮮半島の有事を念頭に訴えた。集団的自衛権行使の検討を表明した5月15日の会見でも、この例をパネルで示して強調。
 北朝鮮と向き合う韓国に在住する日本人は約3万人。「米艦による日本人救出」とは、戦争が起きた時に日本への避難民を運ぶ船や飛行機が足りないとみて、米軍に輸送の一部を依頼する想定だ。首相や公明がこの例に着目するのは、日本が直接攻撃を受けていない時に米軍を守るのは集団的自衛権の行使に当たると主張できる一方、日本の近くで日本人の命を救うと訴えれば、国民の理解も得やすいと考えるからだ。
 しかし実際には、朝鮮半島の有事で現地から日本の民間人らを米軍が避難させる計画は日米間で一度議論されたものの、最終的に米側に断られた経緯がある。
 当時の政府関係者によると、米軍が海外の自国民らを救出・保護する作戦では、国籍による4段階の優先順位があるという。「米国籍、米国の永住許可証の所有者、英国民らが優先で、日本人は最後の『その他』に位置づけられていると説明された」
( → 朝日新聞 2014年6月16日

 要するに、「米艦による日本人の救出」など、ありえないのだ。そうしたくても、米側がそうしてくれないからだ。

 それだけではない。いざというときに軍艦に乗るなんて、危険だろう。攻撃対象になるからだ。(攻撃対象にはならない、と思う人もいるだろうが、そうだとしたら、自衛隊の擁護自体が必要ない。)
 一般的には、逃げるなら、軍艦ではなく、航空機だろう。航空機ならば、北朝鮮軍が迫ってくることはないからだ。(迫ったらレーダーで検知されて、あっという間に撃墜されるだけだ。)
 仮に私が韓国にいるとしたら、現地に留まるか、航空機に乗るか、どちらかだ。軍艦に乗るなんて、ほとんど自殺行為に思える。そんな馬鹿なことをするはずがない。軍人でもないのに軍事作戦に参加するなんて、狂気の沙汰だろう。飛んで火に入る夏の虫みたいだ。

 戦争中に民間人が軍の艦艇に乗るというのは、常識的に言ってあり得ない。また、そういうことを政府が推進するのも、狂気の沙汰だ。仮に朝鮮有事になったら、政府は現地の国民に対して、「米艦に乗ってください」なんて絶対に言うべきではない。むしろ、「航空機に乗ってください。それまでは現地に留まってください」と言うべきだ。

 あるいは、もっといい方法がある。それは、韓国にいる日本人を、自衛艦や民間船舶で対馬に運ぶことだ。




 韓国と対馬は、目と鼻の先である。この間をピストン輸送すれば、あっという間に大量の日本人を対馬の北端の港に運べる。ここだ。↓




 この港に達したら、対馬の南端まで陸路をたどって、そこからまた船に乗って、日本に渡ればいい。
 だから、韓国にいた日本人は、米艦に乗るのではなく、自衛艦や民間船舶に乗って、対馬の北端に渡ればいいのだ。
 なお、米艦に乗った場合には、対馬には行けない。なぜなら対馬の港湾は(狭くて、小さくて、奥まったところにあるので)、米艦のような大型船が入るには適していないからだ。米艦の方が、こんなところに入るのをいやがる。

 ──

 結局、「韓国にいる日本人が米艦に乗って逃げる」なんていうシナリオは、まったくあり得ない嘘八百である。そして、こんな嘘八百に従って、憲法に反する法律を作ろうとしているのだから、デタラメも極まれり。嘘つきだらけ。
 
 ついでだが、もう一つ、別の可能性もある。彼らは、嘘つきなのではなくて、正直である。有事になったら、本気で日本人を米艦に乗せようとしている。
 としたら、彼らは、軍事的常識も弁えず、外交常識も弁えず、しょせん乗せてくれない米艦に日本人を乗せようとしていることになる。そして、対馬に日本人を避難させるというベストの退避策を捨ててしまうことになる。
 危機管理能力が、最低だ。「飛んで火に入る夏の虫」というのは、自分自身でやるなら勝手だが、本件では、政府が国民を「飛んで火に入る夏の虫」にしようとしていることになる。せっかくの自衛艦を、自国民の救出手段として用いるかわりに、米軍の戦闘支援活動のために使おうとしている。
 たとえば、韓国にいる日本人が、船で対馬に渡ろうとしたら、自衛艦が守ってくれるとばかり思っていたのに、自衛艦はいない。なぜなら自衛艦は、米艦のあとを追って、太平洋を横断してグアムに向かっているからだ。かくて、米艦の援護ばかりが目的となって、韓国から引き揚げる日本人は見殺し。
 結局、安倍首相が何を狙っているか、よくわかる。つまり、「米艦の援護」という名目で、日本の防御を無効化することだ。日本の防御を無効化して、日本人の被害を最大化しようと狙っている。
 こいつら、きっと、北朝鮮のスパイだな。日本人を裏切る利敵行為。
 


 [ 付記1 ]
 この件では、政府の言っていることは軍事的には滅茶苦茶ばかりなのだが、どういうわけか、軍事オタクが指摘しない。まったく、不思議なことだ。彼らは、相手を殺すための知識はあるが、日本人を守るために自衛隊を使うための知識はないのだろう。

 [ 付記2 ]
 自衛隊を派遣したがっているのは、首相と外務省。
 一方、実際に派遣される側の防衛省(自衛隊)は、今回の方針に反対している。実際に戦って死ぬ側なのだから、平気でいられるわけがない。歯止めをかけるために、公明党と共闘した。
 自衛隊の活動に歯止めをかけたい公明と、隊員のリスクを減らしたい防衛省がおさえにかかる、という構図だった。
 与党協議で公明の窓口をつとめた北側一雄は、「スーパー支援法」は外務省主導の「高めのボール」と見て危機感を抱いた。これに歯止めをかけるため、相談役として高見沢を選び、防衛省と共闘した。
  ……(中略)……
 公明の求めた「歯止め」がかかった。この結果に、ある防衛省幹部は北側(公明)を訪ねて頭を下げた。「本当にありがとうございました」
( → 朝日新聞 2015-05-12

 実際に戦って死ぬ側に立つ防衛省は、戦争の危険性を十分に理解している。彼らは戦争のプロだから、戦争を現実的に理解できる。
 ひるがえって、これを戦争ごっこみたいに考えている人々もいる。下記(↓)を見ればわかるだろう。



 【 関連サイト 】

 → 首相「殉職自衛隊員 1800人いる」

 これへの感想。
  安倍「今までも1800人の隊員が殉職している」
 国民「わかりまちた。だからこれから100人200人増えてもたいしたことないでつね!」って言うと思ったのか、と。
( → はてなブックマーク

 


 【 補説 】
 戦死者が出るというのは、どういうことかわからない人も多いだろうが、朝ドラのマッサンを見た人ならば、覚えているはずだ。






 「生きて帰ってこい」
 そう言われて、送り出された。そして年月が流れて、一馬は帰ってきた。こんなふうに。




 ただし、一馬はまだマシだった。戦死したとしても、それは日本のために戦った結果だったからだ。
 しかし今後の自衛隊員は違う。彼らは、日本のために戦うのではない。米軍を守るために戦うのだ。それも、日本人を見捨てることによって。
 これじゃ、何のために戦死するのか、わかったもんじゃない。犬死にとは、このことだ。
( ※ 米軍の犬として、忠犬ぶりを発揮して、死ぬことになる。まさしく犬死に。)

 ──

 自衛隊員に戦死者が出るという話は、私も前に書いたことがある。独立ページで。
  → 自衛隊への勧誘ページ

 ※ いま今見直しても、よくできたページだ。是非お読みください。
posted by 管理人 at 09:14| Comment(7) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ソースが朝日あので怪しいと思って調べたら、続報ありました。

http://www.sankei.com/smp/politics/news/140618/plt1406180004-s.html
Posted by けけ at 2015年05月18日 21:05
↑ なるほど。米艦に法人を乗せることもある、という趣旨ですね。

 しかし、意味がないと思いますよ。そこで示しているのは、アフリカなどの紛争のときに、米艦が民間人を避難させる、という話。
 一方、本項で話題になっているのは、戦争の真っ最中で、米軍が攻撃を受ける、という状況です。比喩的に言えば、戦争をしているときの空母に民間人を乗せる、というような話。現実的に、あり得ないでしょう。陸地にいればまだ安全なのに、何でまたわざわざ戦争の最前線に行って、攻撃を受けようとするんだ? 意味がない。
 
 この件では、戦争の真っ最中に米軍が民間人を乗せることなどはあり得ない、というのが軍事的常識です。
 その軍事常識に逆らって、ありえないシナリオで嘘をついて、何とかして自衛隊を戦争に参加させたい、というペテンが、安倍首相の狙い。
 だまされちゃ駄目ですよ。

 だいたい、米軍が民間人の輸送なんかしていたら、米軍の攻撃能力がなくなって、戦争で不利になります。これはいわば、自衛隊で言えば、敵が攻めてきたときに、航空機や艦船が民間人の輸送に手いっぱいで、戦争をすることができない、という状況。自分で自分の手足を縛る状況。
 F-15 や イージス艦は、戦争をするためにあるのであって、民間人を運ぶためにあるのではない。米軍もまた同じ。
 これが軍事常識です。
Posted by 管理人 at 2015年05月18日 22:02
米軍はISSから人質救出作戦実行してますよ。
成功したのか知りませんが、成功した場合は民間人の輸送はしますよ。

その時に別にF15やイージス艦使わなくても、米軍の輸送機で運んでもらって、自衛隊が守りますって事に何も疑問は感じませんが。
Posted by けけ at 2015年05月18日 22:25
人質救出作戦なら、戦争のど真ん中(敵地)でしょ。軍事作戦を実行するのは軍の輸送機に限られているし、民間機でそれの代替ができるわけじゃない。

 本項で述べているのは、戦争の前線にはいない民間人が、あえて戦争の最前線に行くはずがない、という話。全然別のことです。天と地ぐらい違う話。

 ついでだけど、人質救出作戦に自衛隊が関与するはずがない。最高度の機密なので、事後通告しかあり得ない。
 ま、人質を米軍基地か空母に運んだあとで、それを日本まで運ぶことはあり得る。そのために自衛隊が米艦を擁護しに来ることはあり得る。……だけど、その分、日本の本土の防衛はお留守になるから、人質擁護のせいで、本土が攻撃されるかもね。愚の骨頂。頭隠して尻隠さず。

 そもそも、戦争中には、人質なんかいません。いるとしたら、それは「人質」ではなく「捕虜」と呼ばれます。そして、戦争中には、「捕虜の奪還」なんて、目的にはなりません。まずは敵国を打倒することが最優先であり、「捕虜の奪還」のために戦力を投入することはあり得ません。そんなことをやっているせいで戦争に負けたらどうするんだ。
 
 あと、イスラム国は、IS または ISIS です。ISS は、国際宇宙ステーションのこと。
Posted by 管理人 at 2015年05月18日 23:02
私の記憶違いかもしれないが、産経の記事みたいな話は、朝日にもあったはずです。
 上記の朝日の記事が掲載されたあとで、何とかそれを否定しようとして、限定された場面で米艦に邦人が乗艦する場面を想定して、「ほら、米艦に邦人が乗艦する場合があるんだよ、こういうふうに」と無理なシナリオを建てている……という話。
 失笑。
Posted by 管理人 at 2015年05月18日 23:36
「民主主義の地雷」という概念があるそうです。
http://sorceress.raindrop.jp/blog/2015/05/#a001482
Posted by ヒルネスキー at 2015年05月26日 12:23
そうなんですよ。
戦争がおきているのを想定しての集団的自衛権で、抑止力を高めるも何もないだろうと。

アベノバカスなのです。
Posted by ***は大嫌いだ! at 2015年06月20日 10:18
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