2015年05月14日

◆ 多摩川の鮎の遡上と取水堰

 多摩川で鮎が遡上しているが、途中で取水堰が鮎の遡上を阻害している。では、どうすればいいか? ──

 多摩川は水質が改善するにつれて、合うの俎上が急増している。しかし途中で取水堰が鮎の遡上を阻害している。
 東京都がアユの多摩川の遡上(そじょう)を“支援”する事業に乗り出した。
 多摩川は近年、水質が改善して遡上数が急増しているが、取水堰(ぜき)が妨げになり、途中で遡上ができなくなるアユが続出しているため。都は中流域で捕獲したアユをトラックで運び、釣り場に最適な上流域に放流して天然アユを増やし、観光の振興や特産品の開発などにつなげたい考えだ。
 アユの遡上を阻んでいる高さ3メートル程度の取水堰「二ヶ領宿河原堰」がある。
 都は今月から、中流域で仕掛け網による稚魚の捕獲を始めた。2日から4日間で計約2万匹を捕らえ、水槽を積んだトラックで運び、河口から45キロ以上離れたあきる野市や青梅市などの上流域に試験放流した。
 水質の改善後、新たに浮上した問題が、農業用水などを引き込む取水堰の存在だった。
 あきる野市、青梅市の上流域に達するまでに、アユを阻む取水堰は6〜8か所ある。各堰には、アユが遡上できるように傾斜をつけた「魚道」が整備されているが、「上流までたどり着かず、中流で群れて滞留してしまうアユが多い」(都水産課)という。
( → 読売新聞 2015-05-14





 この記事を読んだ私の感想は「鮎が戻って良かったな」ではなくて、「なんて馬鹿げたことをやっているんだ」だった。
 なぜか? 
 水槽を積んだトラックで運び、河口から45キロ以上離れたあきる野市や青梅市などの上流域に試験放流した。

 こんなことをやるなんて、馬鹿げている。まるで養殖か飼育だ。金を無駄遣いするということもあるが、こういう自然反することをやっているときは、たいてい、何かが狂っている。では、どこが?
 今回の例では「高さ3メートル程度の取水堰」(二ヶ領宿河原堰)というのが引っかかった。何でこんなバカでかいものを多摩川なんかに作るのか? (まるで小型ダムだ。)
 その説明は、文中にあった。
農業用水などを引き込む取水堰

 これを読んだとき、私は「変だぞ」と思った。多摩川近辺は大幅に都市化しており、農業なんかはやっていないはずだ。Google マップを見ても、田んぼや畑はないはずだ。……と思って、表示しようかと思ったのだが、その必要もなかった。単に文字データを検索しただけで、「宅地化にともなって農業用水の利用は激減した」と記述してあった。
 農業用水として多摩川から水を引いて造られ、かつては近隣の農業を支えた二ヶ領用水だが、時が流れて現在の沿川は宅地化が進んでおり、工業用水などに用いられるとともに、近隣住民の憩いの場としても親しまれている。
  ……
 現在は沿川の宅地化が進み、農業用水としての利用は激減したが、……
( → 二ヶ領用水 - Wikipedia
 二ヶ領用水は、江戸開府時に徳川家康の命により開削が開始され、川崎の農業地帯を潤してきたが、現在は業用水としての役目を終え、環境用水として地域に水を提供しているという。
( → 土木学会デザイン賞:二ヶ領 宿河原堰
現在も働き続ける「二ヶ領宿河原堰」。そしてそこから取水される「二ヶ領用水」は本来の役割を終えていますが、今なお多摩川の水が供給され、憩いと安らぎを与える「環境用水」として活躍を続けています。
( → 国交省 PDF

 以上のように、「農業用水を取得する」という目的は、すでに無効化している。
 で、かわりに何を目的としているかというと、こうだ。すぐ上に述べた通りだ。再掲しよう。
  ・ 環境用水として地域に水を提供している
  ・ 憩いと安らぎを与える「環境用水」として


 つまり、環境のための環境用水だ。
 そして、それがやっていることは、「鮎の遡上を阻害する」という自然破壊なのだ。

 ──

 ここまで見れば、物事の本質がわかる。これは、
 「ダムは無駄」
 という事例の典型である。
 全国各地に小型ダムがあり、魚の遡上を阻害している。さらには、台風のときにすばやく水が流れることも阻害している。また、土砂の堆積によって、川底が上がるという問題も発生している。また、土砂が河口の外に流れにくくなるという問題も発生している。……あれやこれやと、環境破壊だらけなのだ。
  → ダムと環境 - Wikipedia
 そういう問題の典型として、この問題はある。

 なお、魚の遡上が阻害されるという問題は、前にウナギの話でも述べた。

川の環境がダムなどで破壊されると、ウナギは「川を遡上してから産卵地に戻る」ということが不可能になる。
( → ウナギの減少と環境悪化
 河川の途中に堰やダムがあるせいで、ウナギが遡上できなくなる、ということだ。このことのせいで、上流の淡水湖にたどりつけなくなる。
 具体的な例としては、琵琶湖がある。琵琶湖は、ウナギの名産地であったが、天ヶ瀬ダムができたあとは、遡上ができなくなった。かくて琵琶湖のウナギは絶滅することになった。
( → ウナギ絶滅を避けるには?

 東京都は鮎の遡上を助けるそうだが、鮎だけを助けても足りない。ウナギなどの遡上は不可能なままなのだ。この問題をなくすには、取水堰そのものを撤去するしかないのだ。もともと何の意味もないのだから。(農業には使われなくなっている。)
 国土省などは「環境のため」と言っているが、人間の作った人工的な景観という環境のために、自然環境を破壊するなんて、本末転倒というものだ。

 また、そもそもこの人工的な景観は、ちっとも美しくない。
 なるほど、土木学会は、デザイン賞として最優秀賞を与えた。
  → 土木学会デザイン賞:二ヶ領 宿河原堰(画像あり)
 しかしながら、その景観は、こうだ。
  → 動画 (二ヶ領 宿河原堰)
 こんなものは美しくも何ともない。私にはただの自然破壊としか見えない。仮に、ここから取水堰を撤去したなら、どうなるか? だいたいこんな感じになるだろう。
  → 多摩川 - Google 画像検索
 一例を示せば、次の画像。
  → 多摩川(画像)
 こういうふうに、川だけがある方が、よほど美しい。つまり、取水堰というものは、ただの環境破壊であり、ただの美的破壊であるにすぎない。
 こんなものを「美しい環境」なんてありがたがる土木学会や国土省は、頭のネジが狂っているとしか思えない。

 ──

 本項では、「物事の本質を考えよ」ということ訴えたい。
 (1) 農業用水のための取水堰は、農業がなくなったあとでは無意味だ。
 (2) 生物に害悪をもたらす環境改造は、環境保護でなく、環境破壊だ。
 (3) 環境を破壊したあとで魚をトラックで運ぶのは、善行ではない。
 (4) 自然の景観の中に巨大人工物を設置するのは、美しくない。


 現状では、以上とは逆のことをやっている。
 (1) 農業がなくなったあとでも、農業用水のための取水堰維持・拡大する。
 (2) 生物に害悪をもたらす環境改造を、環境保護だと見なす。
 (3) 環境を破壊したあとで魚をトラックで運ぶのを、善行だと自賛する。
 (4) 自然の景観の中に巨大人工物を設置したら、最優秀デザイン賞。

 
 狂気の沙汰だ。



 【 関連サイト 】

 参考資料を示す。
  → 国交省の取り組み (PDF)

 国交省もそれなりに努力している。魚が通りやすい魚道を整備している。
 しかし、魚道というものは、あまり効果がないことが知られている。実際、効果がないからこそ、上記記事のように、「捕らえてからトラックで運ぶ」なんてことをしているわけだ。
 これはどうしてかというと、魚道というのはきわめて小さいから、魚はそこに魚道があると気づかないのだ。川のなかに「あっちが魚道ですよ」というふうに地図を記して、それを魚が解読してくれるのならばともかく、現実にには、魚道は川の一部にちょっと穴があいているような感じで存在するから、たいていの魚は気づかない。それゆえ、ほとんど意味がないのだ。
 
 だから、取水堰なんてものは、撤去するのが一番なのである。それを必要としている人は、たぶん、この世に一人も存在しないのだから。(有害無益。)

 


 【 関連情報 】

 Google マップ。


posted by 管理人 at 20:07| Comment(1) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
水利権と、土木利権ですね。
山形ではこんなことが。
http://www.ogunigawa.org/
さらに河川整備を進めると。
http://yamagata-np.jp/news/201504/30/kj_2015043000707.php
天然遡上の鮎をダムで止めて養殖鮎を放流。見事なおもてなしの心です。
Posted by 京都の人 at 2015年05月14日 22:07
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