米国が ISIS に武器を供給する、というのは嘘みたいだが、事実である。
「IS戦闘員が撤退する際に残していくなどした武器を昨年調べました。戦闘員が残していったM16自動小銃には「米国政府所有」の刻印が入ったものが多数ありました」
と新聞記事にある。引用しよう。
Q 過激派組織「イスラム国」(IS)が使っている武器はどこの武器ですか。
A ISは様々な武器を使って勢力を拡大しました。
英国に拠点をおく民間組織・紛争兵器研究所が、IS戦闘員が撤退する際に残していくなどした武器を昨年調べました。多くは米国製や中国製、ロシア製で、元々はイラクやシリアの政府軍が所有していたものだったと分かりました。戦闘員が残していったM16自動小銃には「米国政府所有」の刻印が入ったものが多数ありました。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、2003年にフセイン政権が崩壊した後、米国占領下のイラクで米軍が提供したものと同じでした。
またISがシリアで使った対戦車ロケット弾は、サウジアラビアがシリアの反体制派「自由シリア軍」傘下の部隊に供与したものと「まったく同じ」(同研究所)だったといいます。
武器取引の専門家らは
(1)イラク、シリア両政府軍やシリアの反体制派を攻撃した時に奪い取る
(2)原油密売の利益や誘拐で得た身代金を元手にして、中東や北アフリカで違法に流通している武器を武器商人から買う
(3)腐敗したイラク、シリア両政府軍の軍人と取引する
――などの武器入手ルートがあると分析しています。
特にISが昨年6月にイラク第2の都市モスルを攻略した際、逃げたイラク軍から、戦車や大砲など米国が供与した武器や車両を得たことがわかっています。
( → 朝日新聞 2015-03-06 )
いくらイラク政府に武器支援をしても、効果はない。いや、それどころか、逆効果がある。イラク政府に武器支援をすれば、その武器は、ISIS に渡ってしまうのだ。
──
これと似たことは、リビアでも起こった。
イラクに限ったことではない。リビアも同様だった。カダフィ大佐を排除することだけを考えて、後先のことを考えなかった。結果的に、リビア軍の大量の武器は、暴力的に奪われた。かくて、テロ組織が生み出されこととなった。……何のことはない。リビアで大量の武器組織を供給して、あえてテロ集団を誕生させたのは、カダフィ体制を崩壊させた西側諸国だったのである。西側諸国があえてテロ集団を誕生させたのだ。
( → イスラム国(ISIS)の本質( nandoブログ) )
さらに言えば、根源的には、(第二次)湾岸戦争がある。子ブッシュがフセイン体制を破壊したとき、軍人や武器が政府から放逐され、その多くが、ISIS に渡った。この件は、同じ項目で詳しく述べた。
→ イスラム国(ISIS)の本質( nandoブログ)
ともあれ、こう現実を見れば、「テロ組織を育てたのは、ほかならぬ米国だ」ということがわかるだろう。
[ 付記 ]
では、対策はどうするべきか? それも、同じ項目に記してある。
→ イスラム国(ISIS)の本質( nandoブログ) [ 付記 ]
要するに、政府軍の軍人に、まともな給与を払えばいいのだ。そうすれば、優秀な軍人は、ISIS に雇用されるかわりに、政府軍に雇用されるようになる。
その費用は? 米軍が出すのが好ましいが、何だったら、日本政府が出してもいい。イラク政府へ多額の資金援助をして、その資金で、イラク政府軍を養成すればいい。これで解決する。イラクには平和と秩序が戻るようになるだろう。
では、そのための金は? どこにある?
実は、安倍首相のめざす「後方支援」というやつにかかる費用を、転用すればいい。
ちなみに、湾岸戦争(直後)のとき、自衛艦派遣には、2000億円がかかった。このときも後方支援やら土木工事やらをやったわけだが、立ったそのくらいの活動のために、2000億円がかかった。これだけの大金を使うのならば、その金を丸々イラク政府の口座に振り込む方がいい。で、その金で、イラク政府はイラク政府軍を養成すればいい。
この方が、後方支援なんていう無駄な活動に金を使うよりも、ずっと有益だ。しかも、日本人の死者を出さずに済む。
ちなみに、自衛艦を派遣した場合には、かなりの死者が出る。先の湾岸戦争(機雷掃海など)では、戦闘活動による死者は出なかったが、PTSD みたいな心理的な後遺症があったらしくて、かなり多くの自殺者が出たらしい。
→ イラク帰還員が25人も!悩める自衛隊員の多すぎる自殺
なお、イラク政府が兵士にちゃんと給与を払えば、精鋭を雇うことができる。イラク政府軍は、給料をちゃんと払わないので、失業者崩れのクズばかりとなる。いざとなったら武器を放り出して逃げ出すばかりだ。かくて、武器が ISIS に大量に流れて、ISIS はどんどん強化されていく。機関銃も、戦車も、みんなイラク政府軍から奪ったものだ。そして、それらの武器を扱うのは、イラク政府から解雇されたあと、ISIS に雇用された精鋭たちだ。彼らはちゃんと雇用されて、ちゃんと給与をもらって、ちゃんと戦闘をする。イラク政府軍のクズ連中とは大違いのプロだ。
つまり、これが、ISIS がかくも強大化した理由であり、アラブ世界がかくもテロ組織だらけになった理由だ。
結局、テロ組織を増殖させているのは、ほかならぬ西側諸国なのである。
【 関連項目 】
本項は、武器供給という点だけを扱っている。
中東におけるテロ問題一般については、別項で扱っているので、そちらを参照。
→ イスラム国(ISIS)の本質( nandoブログ) (前出)
→ チュニジアのテロの本質 (次項)
本項は、次項(チュニジアのテロの本質)の脚注のような説明文です。肝心の話は、次項にあります。
マイノリティーだったが支配層だったスンニ派が元々軍事を握ってたのをマジョリティーのシーア派が政権取ったとしても
旧軍人を追放したら弱体な軍隊になるのは当然の事
そしてシーア派による政治にスンニ派が従う訳も無くIS他に協力と
日本で言うなら敗戦後に旧軍を追放して朝鮮や台湾人の軍が支配したとして従うかって言われたら反抗したでしょうね
宗派や人種によらない軍や警察が出来るまでは国連軍が何十年でも駐屯するしか無いかと
本項のテーマがそこだけ(ごく小さなことだけ)なんだから、当然です。(本項は、単独の話題を扱っているというよりは、次項のための補足項目であるにすぎません。脚注のようなもの。)
もっと大きなテーマは、リンク先や次項で論じているので、そちらを読んでください。
どうも、私の話(特にリンク先)をまともに読まないで書く人が多すぎる。クリックする手間も惜しむのか。
> 宗派や人種によらない軍や警察が出来るまで
だから、そういう軍や警察をただちに作れ、というのが、私の結論です。リンク先に書いてある通り。クリックぐらいしてから、コメントを書いてください。
本項末の<STRONG>[ 付記 ]</STRONG>にも書いてあるけどね。
なお、あなたが自説ふうに得々と書いていることは、リンク先できちんと記述済みですよ。リンク先をちゃんと読みましょう。