2015年03月03日

◆ 光の粒子・波の性質を同時観測?

 (光の)粒子と波の性質を同時に撮影することに成功した、という報道が出たが。…… ──

 「量子は粒子または波の一方であり、量子が双方の性質を同時にもつことはない」
 と私はかねて述べてきた。つまり、
 「あるときは粒子、あるときは波。粒子と波の間で、相互転換する。量子が同時に、粒子と波の性質をもつことはない」
 というふうに。
  → 量子論/量子力学

 ──

 ところがこのたび、これに反するような趣旨の記事が出た。
 《 世界で初めて「光」の粒子と波の性質を同時に撮影することに成功 》
 光は「粒子」の性質と「波」の性質を併せ持っていますが、これまでは同時に観測できなかったこの両方の性質を、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームが世界で初めて電子顕微鏡で撮影することに成功しました。
( → GIGAZINE

 これは私の主張に反するように見える。では、どう解釈するか? 

 詳しい話は、上記の記事(リンク先)を見てもらうといいが、この記事では、次の二面性が示されている。
  ・ 定常波の形で、波の性質を示す。
  ・ 個別の光の粒子の反応を取得して、粒子の性質を示す。


 こうして得た画像(虹色の画像)では、
  ・ 画像全体では、定常波の図形が示されている。
  ・ 個別の一点では、粒子の反応がとらえられている。

 というわけだ。
 かくて、「粒子の性質と波の性質を、同時に観測した」と主張するわけだ。

 ──

 なるほど、「同時に観測した」というその主張自体は、間違っていない。
 しかし、(観測者が)「同時に観測した」ということは、(光が)「粒子の性質と波の性質を同時に備えていることを示す」ことにはならない。両者は別々のことだ。

 このことをわかりやすく示すには、音波の現象になぞらえるといい。
  ・ 音波は、気体分子の振動として、波の性質をもつ。
  ・ 音波を生じさせる気体分子は、粒子の性質をもつ。

 ここでは、波の性質と粒子の性質が、同時に観測される。しかし別に、「波の性質と粒子の性質を同時に備えている何物か」が存在するわけではない。波の性質をもつのは(広範な)媒体であり、粒子の性質をもつのは(個別の)気体分子である。両者は別々のものだ。
 なるほど、このとき確かに、波と粒子が同時に観測される。しかし、ひとつのものが波の性質と粒子の性質を同時に備えているわけではない

 なお、「音波 可視化」で検索すると、該当する画像や動画を見出すことができる。
  → 音波 可視化 - 画像検索
  → 音波 可視化 - YouTube

 次の動画も、「粒子の性質と波の性質を同時に示す」と言えそうだ。
  ・ 七つの球体がある。(粒子性)
  ・ 振り子は、揺れるので、波の性質がある。
   (衝突が伝わるのはまさしく波の効果。)




 
 ──

 実を言うと、「ひとつのものが粒子の性質と波の性質を同時に備える」ということは、ありえない。そのことは論理的に簡単に証明できる。
 粒子の性質をもつということは、1点に局在するということだ。量子の場合であれば、目に見えないぐらい小さな領域に局在していることになる。
 波の性質をもつということは、媒体(真空を含む)のあちこちに広範に伝播するということだ。電波ならばすごい長距離を伝わることができるし、真空という媒体を通じて宇宙全体に伝わることもできる。それは1点に局在するのではなくて、非常に広い空間を伝わる。
 ある何かが、狭い1点に局在することと、広い空間に拡散することは、論理的に同時成立しない。「1立方ミリメートル以下」であることと、「1立方キロメートル以上」であることは、論理的に同時成立しない。「1以下」と「1億以上」は、論理的に同時成立しない。
 それゆえ、量子が「粒子の性質」と「波の性質」を、同時に備えることは、あり得ないのである。

 冒頭で紹介された実験は、「音波の可視化」と同程度の、つまらない実験である。記事では「世界で初めて撮影した」というが、それは、「すごいことをやった」という意味ではなくて、「あまりにも無意味なことだから誰もやらなかったが、この人だけは勘違いして、無意味なことをやって鼻高々」ということであるにすぎない。
 で、そのあとで、「(光の)粒子と波の性質を同時に撮影することに成功した」と報道して、「光には粒子の性質と波の性質が同時に成立することを実験的に証明した」と勘違いした話を書く記事が出るわけだ。で、その勘違い記事を読んで、「わあ、すごい」と驚く素人が出てくるわけだ。
 


 [ 付記1 ]
 「ひとつのものが粒子の性質と波の性質を同時に備える」ということは、ありえない……と述べた。
 これに対して、「じゃ、振り子の動画は?」と思うかもしれない。ここでは、次の差に注意。
  ・ 粒子性があるのは、一つ一つの球体である。
  ・ 波の性質があるのは、七つの球体の全体(場)である。

 「場」は、粒子たちの全体から構成される。そこには、「波の性質」がある。ただし、個々の粒子がそれ単独で「波の性質」をもつわけではない。個々の粒子は、その場で少し振動するだけであり、遠方にまで伝わることはできない。個々の粒子はその場で振動するだけだ。その振動が「場」の全体に伝わるものが、波である。
 粒子は狭く、波は広い。その違いを理解しよう。

 [ 付記2 ]
 そもそも、「粒子/波」という対比は、何らかの直進するようなものを対象としての話だ。たとえば、二重スリット実験のでは、
  ・ スリットを通過する粒子
  ・ スリットを通過する波

 という形で対比される。ここでは、量子は粒子であっても波であっても、ほぼ直進する。
 一方、今回の実験では、次のようになる。
  ・ 粒子と見なされるのは、その場にある個々の光子。
  ・ 波と見なされるのは、光子の全体からなる「場」。

 ここでは全然別のものが比較されてしまっている。一つものが同時に「光子であり場でもある」のではない。一つの光子は一つの光子。たくさんの光子からなる場は、場。両者は別々のものだ。この両者が同一のものになっているわけではない。つまり、同一のものが「粒子でもあり波でもある」というわけではない。別々のものについて、一方は粒子であり、他方は波である、というだけだ。
 その意味で、今回の実験は、特別な新発見は何もない。



 【 関連サイト 】

  → 量子論/量子力学
posted by 管理人 at 21:41| Comment(0) | 物理・天文 | 更新情報をチェックする
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