飲酒運転をしたら厳罰に処される、と思っている人が多いようだが、そうではない。ひき逃げをすれば、重罰を回避できる。 ──
飲酒運転をしたら厳罰に処される、と思っている人が多いようだ。実際、その趣旨で、法改正がなされた。しかしながら、この法改正には、重大な穴がある。そのせいで、厳罰を回避できるようになっている。
どうするかというと、事故を起こしたあとで、さっさと逃げ出してしまえばいいのだ。そうすれば、重罰を回避できる。
具体的な例は、下記にある。
→ 女性3人が死亡した飲酒ひき逃げ事件で危険運転致死傷罪に問われないワケ
飲酒運転事故で3人死亡、1人重症。これは通常ならば、「危険運転致死傷罪」に問われるはずだ。その趣旨で法改正がなされたからだ。
ところがこの事件では、危険運転致死傷罪は適用されず、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)と道交法違反で起訴されただけだった。これでは軽い罰にしかならない。
では、その理由は? ひき逃げをしたからだ。つまり、ひき逃げをすれば、厳罰を回避できるのだ。
では、なぜ? 以下の理由による。
危険運転致死傷罪 を適用するには、法的に、次のことが条件となる。
「正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる」
ところが、ひき逃げをすれば、事故を起こしたあとで、正常な運転をすることができたと証明される。(今回の事例では、コンビニまで買物に行ったそうだ。)
こうして、「事故を起こしたあとで、正常な運転をすることができた」と証明されるので、「正常な運転が困難」という法的要件を満たさなくなる。かくて、たくさん酒を飲んでいたとしても、厳罰を回避できる。
──
これはどういうことか? 法律に欠陥があるということだ。
危険運転致死傷罪は、
「正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる」
というふうに書いてあるので、少しでも「正常な運転」をしたら、その要件が否定されてしまう。これはむしろ、
「危険性の高い運転状態で自動車を走行させる」
というふうに書き直されねばならない。
一般に、交通事故というものは、確率的な現象である。どれほど酒を飲もうと、必ず事故を起こすとは限らない。だから、「事故を起こす可能性の高い状態」であることが、法的処罰の要件であるべきだ。
ところが現実の法律は、「事故を起こす可能性の高い状態」というふうに確率的な記述はしないで、「正常な運転が困難な状態」というふうに記述している。しかしながら、どれほど酒を飲もうが、正常な運転は(ある程度は)可能なのである。
とすれば、現実の法律は、酒酔い運転を処罰する能力がないのだ。つまり、欠陥法である。そして、この欠陥を突くには、「事故のあとで正常な運転能力があると示せばいい」つまり「事故のあとでひき逃げをすればいい」となる。
飲酒運転で死亡事故を起こしたあと、そのまま黙って待っていれば、厳罰に処せられる。しかし、さっさと逃げ出して、正常な運転能力があることを示せば、厳罰を免れ、「ただの過失に過ぎません」と言い張ることができてしまうのだ。
法的欠陥。
[ 付記1 ]
この3カ月後、怒った遺族などの署名運動の結果、起訴の訴因を「危険運転致死傷罪」へ変更することが決まった。検察の方針転換。
→ 危険運転致死傷で起訴へ、訴因変更-小樽ひき逃げ4人死傷事件
とはいえ、検察が訴因を変更しても、裁判所がこれを認めない可能性は十分にある。いくら検察が「重罰で処したい」と主張しても、法律には、「さっさと逃げ出せば(ひき逃げをすれば)、厳罰を免れます」という形で規定されているのだから、法律に逆らって厳罰に処することは無理っぽい。
法律に欠陥があるときには、法律の欠陥をなくすことが大切だ。法律の欠陥を放置したまま、解釈だけで勝手に重罰に処することは、法治国家としては好ましくない。
国はさっさと法を改正するべきなのだ。もともと間抜けな(穴のあいた)法だったのだから。
[ 付記2 ]
ただし、ひき逃げをしても、途中で頓挫しないことが必要である。ひき逃げをしたあとで、途中で頓挫すれば、逮捕されただけでなく、「ひき逃げ」の分が加重されて、すごい重罰となる。
→ 福岡海の中道大橋飲酒運転事故 - Wikipedia
→ 福岡海の中道大橋飲酒運転事故 - NAVER まとめ
この事件では、ひき逃げをしたあとで、自動車がエンストしてしまった。(自動車が事故で大破していたせいで。)
かくて、「正常な運転をする」ことは不可能となり、「正常な運転をする能力」を証明できなかった。単に「ひき逃げ」の罪が追加されただけだった。
かくて「危険運転致死傷罪」が適用され、さらに「ひき逃げ」の罪が追加されたので、罪は大幅に重くなった。
法律逃れをしたければ、きちんと完遂しなくてはならない。中途半端にやって、法律逃れに失敗すれば、罪はかえって大幅に重くなる。
2015年03月01日
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