トヨタが燃料電池車を来月にも発売するそうだ。
→ トヨタ、燃料電池車「ミライ」を12月発売 723万円 (動画あり)
これまで 20年近くも、「3年後に発売予定」というのを、何度も何度も延期していて、「オオカミが来るぞ」という嘘を繰り返した嘘つき少年みたいなありさまだったが、今度はどうやら本当らしい。15年遅れぐらいで、ようやく予定が実現することになったようだ。
では、燃料電池車は普及するだろうか? 調べてみたところ、見通しは暗い。
(1) 白金は?
白金の資源量が問題だと思えたが、これな実は問題にならないらしい。埋蔵量そのものは十分にあるらしい。
「地球上に数万トンしかない白金を燃料電池車などに使ったらあっという間に枯渇するのではないか」という声やよく聞かれる。が、実はここに可採埋蔵量のトリックがある。
「地球はそんな小さなものではない。白金の存在量は実は100年分以上あるんです。100年というのはこれ以上カウントしても無駄という意味で、資源自体の枯渇を心配するような状況ではない。可採埋蔵量を少なく見積もるのは、資源をコントロールしている国際資本の常套手段ですから」
( → プレジデント )
コストはかかるし、コストダウンの見込みもないのだが、白金の使用量がだんだん少なくなりそうなので、あまりひどいことにはならないようだ。
というわけで、金さえかければ、白金の問題はとりあえずは解決するようだ。(ガソリン車並みにはならなくとも、いくらか高いという程度で済むし、量産の妨げにはならないようだ。)
(2) 水素は?
水素はどうか? 実は、これが最大の問題であるようだ。
まず、コスト的には、現状でもガソリン程度にすることは可能だ。
→ 水素を「戦略価格」で販売、燃料電池車普及を助けるか
ここでは、ガソリンと同程度の価格で販売するそうだ。もちろんガソリン価格の3分の1はガソリン税( → 出典 )だから、販売価格がガソリンと同じだといってもガソリンに並んだわけではないのだが、それでも一応は、ガソリンと同程度の価格で買えるようだ。
ただし、ここで注意すべきことがある。
現在の水素というのは、鉄鋼生産の副産物である。鉄鋼をつくるときには石炭のコークス(炭素)が必要とされるが、石炭(炭水化物)には炭素の他に水素も含まれる。そこで、必要となった炭素のあまりとして、水素が吐き出される。これは使い道がないので、ゴミのような扱いだ。このゴミのような扱いである水素を捨て値で買えるから、現状では水素を安価に利用できる。
それでも、実際にはかなり高額になるのは、水素本体の価格ではなくて、水素を圧縮するときの費用がかかるからだ。
ガソリン1リットル換算で100円前後もかかる高圧ボンベへの充填コスト
( → プレジデント )
このような捨て値で買える水素というのは、とてもありがたいものだが、残念なことに、量に限度がある。鉄鋼生産の副産物として生産される水素があるが、その量は鉄鋼生産の量に制約されるから、一定の限度がある。燃料電池車が数百台ぐらいならば十分にまかなえるだろうが、燃料電池車が何万台にも増えると、とうていまかなえなくなる。
つまり、現行の値段で購入できる水素の量には、限界があるのだ。
では、その限界を超えた量の水素は、どうやって入手するか? いろいろな水素生産の方法があるが、そのいずれも、多大な価格がかかる。
・ 石油や石炭から生産する方法
・ 太陽光発電から生産する方法
水素生産にはいろいろな方法があるが、そのいずれもコスト的にはかなり高額になるのだ。
副生水素以外の、いわば水素生産を目的として作られたものについては、電気分解だろうと改質だろうと、また圧縮水素だろうと液体水素だろうと、いずれも同熱量のガソリンに例えればリッター300円、方法によっては400円という価格になってしまうことが明らかになった。
( → プレジデント )
それだけではない。水素そのものが高額である上に、水素を充填する費用もかかる。(前出)
ガソリン1リットル換算で100円前後もかかる高圧ボンベへの充填コスト
( → プレジデント )
では、充填するかわりに、液体窒素を使ったら? それだと、もっとコストがかかる。
水素を大量に運ぶには液体水素にすればいいのではないかと思われがちだが、水素が液体になる融点は実にマイナス260度。絶対零度であるマイナス273度まであと13度、海王星の衛星トリトンや冥王星よりも低い温度まで冷却してやらなければ液体水素は作れないのだ。そのときに使われるエネルギーは、液化する水素の持つエネルギーの3割にも達するほどで、コスト面でもエネルギー効率面でも、タンカーで水素を運ぶようなシーン以外ではおよそ成り立たないのだ。
( → プレジデント )
というわけで、あれやこれやとコスト高の要因があるので、燃料電池車はとうてい普及しそうにない、とわかる。技術的には、「車両本体価格」の引き下げには一応成功した( → 出典)のだが、燃料の「水素生産」については、どうにもならない状況だ。
かくて、「燃料電池車については技術的に成功しても、水素生産がコスト的に成立しない」という理由で、普及はとても難しいだろう。
燃料電池車を普及させるには、燃料電池車だけをいくら開発しても無意味なのだ。(水素ステーションをいくら整備しても無意味である。)なぜ? 肝心の水素が生産されないからだ。
ただ、現状では、限られた量の水素がごく安価に入手できる。そのせいで、肝心の問題が隠蔽されてしまっているのだ。
( ※ 最重要の問題点を隠蔽して、きれいごとに見せかけて、未来はバラ色だと見せかける……というのは、まさしく詐欺ですね。燃料電池車というのは、詐欺商売。)
[ 付記1 ]
「燃料電池車は水しか排出しないから、究極のエコカーだ」
と言われる。だが、そのことは、水素自動車(内燃機関のエンジンでガソリンや LPG のかわりに水素を燃やすもの)にも当てはまる。実際、BMW やマツダは、水素自動車の研究を進めていた。しかし、技術的には可能であったようだが、途中で放棄した。
なぜ? やはり、「水素生産そのものに問題がある」ということに気づいたからだろう。つまり、自動車そのものはできても、普及させようとしたら、水素の価格があまりにも高額すぎて、とうてい実現性がない。(普及は無理。)
そうわかったから、開発を放棄したのだろう。
燃料電池車も、遠からず、その壁にぶつかるはずだ。
[ 付記2 ]
トヨタは年産 400台の予定。どうしてたったのこれっぽっちなのか? こんなに少数では大量生産の効果もない。だから 5倍ぐらいの大量生産にすればコストは3〜4割ぐらいは引き下げられるはずだ。……と思ったのだが、ようやく、真相が判明した。
5倍ぐらいの大量生産にすればコストは3〜4割ぐらいは引き下げられるだろう。しかし、大量生産すれば、水素の供給ができなくなってしまうのだ。そうなれば、「燃料電池車(の普及)は、絵に描いた餅にすぎない」という真相がバレてしまう。
そういう真相を隠蔽するために、あえて大量生産を避けているのだろう。
詐欺師はゴマ化す知恵に長(た)けている。
【 関連項目 】
→ サイト内検索(燃料電池車)
【 参考情報 】
参考記事。
→ 走り出す「究極エコカー」 トヨタとホンダ、燃料電池車市販へ:朝日新聞

日本自動車研究所の試算では、水素製造時なども含めると、FCVの CO2排出量は、HVなどと比べ、飛び抜けて優れているわけではない。
現状では、太陽光発電でつくった水素で走ると、ガソリン車の 10倍超も燃料代がかかるといわれる。
( → 朝日新聞 2014-11-19 )
ハイブリッド車との燃費比較(右図)を見ると、たいしたことはない。図にはないが、「ハイブリッド・ディーゼル」とほぼ同程度だろう。
( ※ 以前私が書いた数値に比べると、現在の燃料電池車は大幅に効率が改善しているようだが、それでもハイブリッドディーゼルと比べて大差ない。ただ、ハイブリッドディーゼルはガソリン車に比べて 50万円ぐらい高い。そこが問題だね。)
( ※ なお、電気自動車の場合は、右上図の数値よりもさらに向上する。 @ 最新式のガス発電[川崎など]では、効率が大幅に向上している。A 原子力発電を稼働させれば、 CO2排出量は大幅に減る。)
【 関連サイト 】
下記サイトに詳しい情報がある。内容はだいたい同じだが、各種車種の比較が詳しいデータで示してある。
→ http://hori.way-nifty.com/synthesist/2013/08/jhfcco2-854a.html
現在の二次電池(リチウムイオン充電池やニッケル水素充電池)若しくはその改良型くらいで足りると思うのです。
現状では、自動車に固定的に二次電池を搭載していますが、これを取り外し交換可能、そして、規格化するのです。
電池残量が少なくなったら、燃料スタンド(危険物としての扱いが許せばコンビニエンスストア)で充電済のものと交換するのです。
スタンド等では外したものを(深夜電力等で)充電し、次回の交換に備えてる訳です。
定期的に、若しくは、充放電サイクルを診断してメンテナンスすれば寿命も伸びるでしょう。
自動車個体の進化よりも、インフラ整備の方が効果的ではないかという趣旨です。
→ http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1306/19/news106.html
→ http://response.jp/article/2013/06/24/200705.html
テスラの電池はパナソニック製なので、パナソニックも協力しているのでしょう。
──
なお、数年前にこれをやった会社は、開発難航で倒産してしまった。
→ http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1305/27/news072.html
いずれも反応が複雑になるので、車載は無理でスタンドにプラント設置になりりますね。
それでも総コストでアウトになりそうです。
アンモニアは水素を利用すると窒素ガスになります。また工業的に肥料の合成などに多用されているので扱いも容易です。
副産物で塩と酸素も出来るので、一石三鳥と!
→ http://www.asahi.com/articles/ASGCM45S8GCMPLFA008.html
→ http://www.sankei.com/economy/news/141119/ecn1411190037-n1.html
しかし、これでは効率が悪い。どうせなら LNG の冷熱を利用するべきではないか?
→ http://openblog.meblog.biz/article/14753171.html
そう思ったのだが、「すでに誰かが考えているかも」と思って、検索してみた。
→ http://is.gd/KtB1L9 (Google 検索結果)
見ればわかるように、すでに研究が進んでいる。岩谷が頑張っているようだ。ただし、実現しているかどうかは不明。(発表から何年もたっても、実現していないようだ。)
水素の酸化物 昔はタダでしたが値段がつくようになって 世界が変わったんですよね
人間の移動 その必要性はいつまであるでしょうか 車に愛情をもって接した人々はもう死に絶えました
水によく溶けて弱酸の炭酸になる。炭酸はカルシウムなどのアルカリ土類とよく結合する。さらに光合成の元になる等、用途は色々あります。
分解プラントで必要な熱源に分離したカーボンを使うことも可能でしょう。
アンモニアが光触媒で水素と窒素に分解するのなら面白いのですが、実際はなんらかの熱源が必要です。
それを水素の燃焼熱でまかなうとしても、純粋に酸素だけを供給する燃焼過程ではDHMOの生成だけとなりますが、大気中の酸素で燃焼させるとNOxが副産物で生成します。これは二酸化炭素よりも健康被害が大きくなりそうです。
ま、触媒で分解できればいいんですけどね。
一つの方針に凝り固まらずに色々やればいいんじゃないでしょうか。そうすればDFCのようなシステムの種ができるんじゃないかな。と思っています。
最初からアンモニアが使えればそれでいいのです。
アンモニアを使うのには、既にいろいろな基盤がそろっているのです。
今のままじゃ車載のシステムは無理だろう。ならば、水素キャリア方式として、ご提案されたアンモニアだけじゃなく、メタンもある。
大きく見ると水素キャリア方式も一つの方法にすぎないので「メタン→二酸化炭素→ダメ」ではなく、色々試した方がいい。
二酸化炭素は嫌われものなので仕方がないのですが、アンモニアにも瑕疵はあるよ。と少し二酸化炭素を贔屓したまでです。実際今も二酸化炭素を呼吸で排出してますし(笑)。
http://www.hess.jp/Search/data/36-04-034.pdf
アンモニアは炭素原子を有しない水素化物の中で、唯
一大量製造されている化学物質である。アンモニアの水
素密度は18mass%と高く、水素貯蔵、輸送用の水素キャ
リアとしての可能性を有するものの安全性などが問題で
ある。
本論からずれるかも知れませんが、私は次の仮説を持っております。
「普及するかではなく、無理にでも普及させたい人達がいるのでは?」
根拠としては次の2点です。
@水素社会を促進する研究会に自動車会社や石油会社がズラリ
http://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/dtc/fcv-society-support.html
A高温ガス炉の売りは水素製造
http://httr.jaea.go.jp/
従って、高コストな自動車を作り続けたい勢力と原子力村と利権を漁る政治家が良い関係になっております。
個人的には高温ガス炉に賛成です。
しかし、こんな姑息な手段で進めているうちに、日本以外は低コストなEVへシフトし、気がついたらまたガラパゴスという未来を危惧しております。