先月、広島で土砂災害があった。集中豪雨があったとき、火山灰の山面の土が水を吸い込んで、一気に土砂崩れを起こして、沢の下流に位置する領域に大量の土砂が流れ込んだ。それに埋もれて多数の人々が死んだ。行政による警報も手遅れだった。(警報が出たのは土砂崩れが起こった後だった。)
詳しくは、下記。
→ 広島土砂災害 - Wikipedia
では、どうすればよかったか?
災害の当時は、私は警報をきちんと出すシステムを提言した。「行政体は、素人の集団だから、正しい警報を出せない。ゆえに、プロに任せろ」と。
→ 豪雨の気象予想は誰がやるべきか?
また、個人レベルの対策としては、「建物の二階にいろ」とも提言した。
→ 広島の豪雨・土砂崩れ
ただし、あとで報道を見たところでは、「建物の二階にいろ」というのは災害時の常識らしく、すでにあちこちで提言されているそうだ。いちいち私が書くほどのこともなかったようだ。
ただ、この項目では、「砂防ダムはダメだ」ともの述べている。ここに注意。
一方、その後の報道では、長期対策として、砂防ダムについての話が出ている。
「砂防ダムが有効だから、砂防ダムを設置するべきだ」
「しかしながら、巨額の費用がかかるので、それが実現することは無理」
つまり、「絵に描いた餅」である。 (^^);
《 砂防ダム、効果と限界 広島土砂災害: 》
広島市の土砂災害で「砂防ダム」が注目されている。建設済みの地域では被害が抑えられたとして広島県は建設推進を主張するが、予算は限られる。
「早く造ってほしかった」。50人が死亡するなど被害が集中した広島市安佐南区の八木地区で自治会長を務める有田将義さん(72)は、悔しがった。
八木地区では9基の砂防ダム建設が予定されていた。事業主体の国土交通省が現地調査に入ることを8月18日、住民に告知した2日後、土石流が襲った。
一方、安佐北区では流木などを7基のダムがせき止めて土石流発生を抑えたといい、広島県は、ダムが減災効果を果たしたとしている。
湯崎英彦知事は31日、「砂防ダムがないところは、設置場所を1カ月半ぐらいで決め、事業に着手する」と発言。国が整備費の3分の2を負担する補助事業などを活用し、新たに建設を進めるとの意向を示した。
■「完成に750年」
1999年に広島市を中心に31人が死亡した豪雨水害後、国と県は、砂防ダム建設を推進してきた。計画された5607基のうち、完成したのは1376基だ。
国の補助を含めた関係予算は2001年度は175億円だったが、昨年度は65億円に縮小した。建設には1基1億〜4億円かかるとされ、整備率は24.5%(3月末現在)。進捗は年0.1%程度といい、「残り全てが完成するまで単純計算で750年くらいかかるペース」(県幹部)だ。
( → 朝日新聞 2014年9月1日 )
砂防ダムは、そこそこ有効ではあるが、効果は限定的である。(被害の完全阻止はできない。 → http://j.mp/1Bqza5L ) その一方で、砂防ダムは金が巨額にかかる。コストパフォーマンスはすこぶる悪い。こんな馬鹿げたことをするよりは、もっとまともな方法があるはずだ。では、どうすればいいか?
──
一案として、次のことが提言されている。
「危険な地域(沢の下流など)を、特別警戒地域に指定する」
これはたしかに大切だ。危険な場所は限られているのだから、そこに人が住まなくなれば、問題は解決する。沢に巨大な砂防ダムを構築するよりは、沢の下流に家を建てなければいいだけのことだ。実に簡単。コストも最小限で済む。
ただし、これは実現しにくいそうだ。
@ 該当地域の人々が、「土地の資産価値が下がる」と反対する。
A その反対を押し切って指定するために、厳密な調査が必要となる。
B 厳密な調査には時間がかかる。今のペースだと 20年もかかる。(読売の報道。紙の新聞。)
というわけで、「特別警戒地域に指定して、居住制限をする」という案は、最善の案ではあるが、実現は困難であることになる。
ただし、この困難さは、技術的・工学的・物理的な困難さではなくて、人間的・心理的・行政組織的な困難さである。それゆえ、何らかの工夫をすれば、回避可能であると推定される。
ここで、困ったときの Openブログ。「何か名案はありませんか?」
はい。あります。以下の通り。
──
まず、広島の地形を見るといい。
広島というのは、関東や関西のような、大きな平野部ではない。川の下流に堆積物が溜まっただけの、小さめの沖積平野だ。リアス式海岸の地域ではないが、それに近い感じもある。ここでは平地は貴重である。それゆえ、危険な山裾にまで人家が密集する。
今回の被災地もそうだ。ストリートビューで見るとわかるが、山裾でかなり傾斜の多い地域である。こんなに傾斜の多い坂道で、しかも交通の便の悪い周辺地帯だとしたら、たいていの県では人家は密集しない。ところが広島には、平地が足りないので、こんなところ(坂道だらけの傾斜地)にも人家が密集する。
大きな地図で見る
とすれば、問題の解決は、このような全体構造を考慮したものであることが必要だ。つまり、局所的な対策を取るのではなく、都市計画まで踏み込んだ「都市全体の構造改革」に踏み込むことが必要だ。
以上のことを踏まえて、次の基本方針を提案する。
(1) 危険な地域(山裾)は、原則、居住禁止とする。
(2) その分、都市部(中心部)の人口を高める。
つまり、「周辺部には住まずに、中央部に集中して住む」ということを基本方針とする。
この基本方針に基づいて、これを推進するために、次の新原則を立てる。
「周辺部で奪った居住権を、都市部の居住権へと、移転する」
具体的には、次の法制度を構築する。
「周辺部の危険地域(特別警戒地域)における土地の容積率を、都心部の容積率へと、移転することを認める」
例としては、次のケースがある。
「特別警戒地域にあたる八木地区の土地を取得して、そこを空地にしておく場合には、その分、都心部において、ビルの容積率を高めることができる。法定容積率が 500%だとしても、(取得した八木地区の土地を空地にしておくことの代償として)、容積率を 500%から 600%や 800% ぐらいまで高めることが許容される」
つまり、危険地域の容積率を、都心部の容積率へと、移転するわけだ。このことで、危険地域の居住人口をゼロにすることができる。また、危険地域の土地の持主は、(実質的に容積率を売買する権利をもつ形で)、財産権を失わずに済むことができる。こんな感じ。
例。八木地区のAさんは、もうここに住みたくないと思っていた。しかし、土地を売りたくても、売ることができない。ところが不動産業者がやって来て、「土地を売ってくれ」と言われたので、土地を売ることにした。Aさんは土地を売って、その代金で、都市部のマンションに住むことにした。一方、不動産業者は、その土地を購入して、空地にした。その分、都市部に建設するマンションの容積率をアップしてもらった。容積率がアップするというのは、土地が増えたのと同じ効果を持つ。おかげで多くの戸数を建設できて、多くの戸数を販売できた。かくて、Aさんの土地を購入した分のコストをまかなうことができた。
これぞ名案 (^^)v
[ 付記 ]
いったんこのようにして「特別警戒地域」を指定したら、そのあとは、「ここは特別警戒地域です。危険です。居住制限がかかっています」ということを、常時、看板などで表示しておくべきだろう。
そうすれば、いざというときに、自分で逃げ出そうという意欲も湧く。
そもそも、「危険なときには行政が避難警報を出す」という体制そのものがおかしい。釜石では、「津波が来たら各自が自分で逃げる」という「津波てんでんこ」という運動があった。それゆえ、各人が自分で避難して、逃げることができた。
→ (続)何のために勉強するの?
土砂災害も、かくあるべきだ。「豪雨になったら行政の警報を待つ」のではない。「豪雨になるとわかったら、各人が自主的に避難する」べきなのである。いや、むしろ、「豪雨になったら危険だ」という地域からは、あらかじめ脱出しておくべきなのだ。
ただし、現実には、それは困難だ。危険な土地は売りたくても売れないからだ。
そこで、危険な土地にも買い手が付くように、「容積率の売買」ができるように、制度改革をすればいいのだ。これは、金は1円もかからず、単に法制度の改正だけで済む。
一方、「砂防ダムの建設」なんて、莫大な金がかかる割りに、効果は限られている。しかも、実現には、何百年もかかる。(つまり実現不可能。仮に砂防ダムを造っても、何百年もたつうちには、何度も繰り返される土砂災害のせいで、砂防ダムはとっくに土砂で埋もれてしまっている。元の木阿弥。)
山頂に岩を上げてはまた落とす、というようなことを繰り返しても、ただの無駄である。(シーシュポスの神話)
そこで、「金よりも知恵を」というのが、本サイトのモットーだ。
抜本対策がベストです。コンセプトは「最悪の地域をパラダイスに変える」
1)土砂崩れが起こりえないような、大規模な基盤改変工事をすること。
(a) 問題の山系を削り、大田川より、5〜10m高い平地にする。
(b) 山を削るとき出てくる岩は、砕き、地盤強化に使う。
2)新しくできた、安全で広い一等地を有効活用する。
(a) 超魅力的なコンパクトシティかつエコシティを創る。
(b) 一部は、ディズニーランドのような施設を誘致する。
(c) 広島・瀬戸内の味覚が味わえる、レストラン街を誘致する。
(d) 生活に必要な公共施設(郵便局、銀行、区役所など)を配置。
(e) 美しい街路とオープンカフェ、公園などを配置する。
(f ) エコ住宅(高断熱、太陽光発電)を適正配置する。
3)健全な経済活性化
(a) 巨大防潮堤など、効果が疑わしい大工事に天文学的な国費を投入は無駄。
ごくごく一部の業者のみが潤う。それらの費用は国の膨大な借金になる愚策。
(b) 広島市安佐地区のような、「最悪の地域をパラダイスに」する工事は有益。
圧倒的に広範囲の企業が参加できるので、国中が潤う。
国のすみずみまで大量のお金が循環するようになる。健全な好景気になる。
社会に極めて有益な事業なので、投入費用が回収できる。
(c) 国の借金がゆきだるま式に膨らむことなく、巨大事業が持続可能。
都心に近く、改変工事すれば一等地になるような危険地域に限定しても、
大規模事業の対象地域は、向こう100年分はある。
安部内閣の決断力・実行力が問われます。
実際は、号令をかけさえすれば、能力と使命感のある組織や人々がやってくれます。
根の浅くなる挿し木苗の植林が、急斜面では、土砂災害の引き金になります。
以上の記述がありました。
参考までに。