スマートシティというものは、これまでにも提唱されてきたが、いよいよ現実に建設されることになった。千葉県の「柏の葉スマートシティ」というものだ。立地は、つくば市と秋葉原のちょうど中間。
これについて、メリットとデメリットがあるのだが、マスコミなどに流布している情報では、メリットばかりがやたらと宣伝されている。そういう偏った情報では、一般の人々には不便だと思えるので、メリットとデメリットをともに並べて紹介しよう。
大きな地図で見る
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まず、概念は、事業者の側が大々的に宣伝している。そこから引用しよう。
柏の葉スマートシティは、行政機関、大学や研究機関、三井不動産や日立などの民間企業などの「公・民・学」が連携し、「環境共生都市」「健康長寿都市」「新産業創造都市」という3つの取り組みにより、安心・安全・サスティナブルなスマートシティの実現をめざして取り組んでいます。
「柏の葉スマートシティプロジェクト」では、エネルギーの複線化、未利用エネルギーの徹底活用と効率的な運用でCO2排出量の大幅な削減をめざします。さらに発・受電量、消費電力量などエネルギー利用と地域の最適化を実現するコアとして「エリアエネルギー管理システム(AEMS)」を新たに構築し、エリア拡張と機能の充実を図りながら将来的には柏の葉全域で「スマートグリッド」機能を備えたネットワークの構築をめざしています。
( → 柏の葉スマートシティ(プロジェクト概要) )
より詳しい話は、リンク先にあるので、細かい情報を得ることができる。
なお、朝日新聞の記事でも、簡単な紹介がある。下記。
柏の葉スマートシティ
三井不動産がつくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅周辺の12万7千平方メートルに約1千億円を投じて開発した。「環境共生」「健康長寿」などがコンセプト。商業施設、オフィス、高層マンション、ホテルなどがあり約5千人が暮らす。中心街区が7月にオープンした。
太陽光や風力発電に加え、大型の蓄電池をそなえる。余裕があるときに電力をため、平日のオフィス、休日の商業施設など、必要な施設に効率的に電力を送る。街区間で電力の融通もしている。無人の中央制御室でコントロールし、災害時の停電を防ぐことにも役立つ。従来型の街づくりをした場合と比べて、2030年の二酸化炭素(CO2)排出量6割削減を目指す。
( → 朝日新聞 2014-08-25 )
もっと細かな具体的な話も、朝日新聞にある。
《 柏でお試し、未来の街「スマートシティ」 》
タブレット端末で家電を操作したり、アイデアを3Dプリンターで形にしたり。未来を感じさせる暮らしが、「柏の葉スマートシティ」(千葉県柏市)で始まっている。省エネや快適さに加え、世界的なビジネスや新商品を生み出す仕掛けも用意されている。
街は住民だけでなく、東大や千葉大など周辺の研究機関の人が利用する。街全体の「知」をビジネスにつなげる仕掛けが、ベンチャー企業向けの貸しオフィスと、併設のカフェだ。
三井不動産は 30年までに街を現在の約 24倍に当たる 300万平方メートルに拡張する計画だ。巨大な「新都心」が誕生することになる。
ただ、柏の葉の賃貸マンション棟は今のところ入居率が約6割にとどまっている。ここ数年、マンションやオフィスは都心回帰が鮮明だ。街までは秋葉原からつくばエクスプレスで30分とはいえ、並行して走る鉄道など代わりの交通手段は少ない。
街の「売り」である省エネシステムは初期投資がかさむため、マンションの販売額や家賃は通常より1割程度高い。長い目で見れば元がとれても、割高感があることは否めない。
( → 朝日新聞 2014-08-25 )
もっと詳しい話は、下記にある。
→ 本格稼動した柏の葉スマートシティ
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さて。このプロジェクトをどう評価するか?
朝日の記事によれば、「現在の約 24倍に当たる 300万平方メートルに拡張する」ということだが、これは途方もない計画だ。本当にこれが実現すれば素晴らしいだろう。
だが、私の判断では、これはとうてい実現しそうにない。実際、すぐ上にも「今のところ入居率が約6割にとどまっている」と記してある。これが現実だ。なのに、そのことに気づかないまま、やたらとイケイケドンドンで猪突猛進に突っ走れば、事業全体が破綻しかねない。
ゆえに、事業者の宣伝するメリットだけでなく、デメリットもまた十分に考察する必要がある。さもないと、プロジェクトは破綻しかねないし、居住者もまた目論見違いで悩むことになる。
そういう将来の失敗を避けるために、どういう問題があるかを指摘しておこう。転ばぬ先の杖として。
──
(1) 省エネか?
メリットとしては「省エネ」が謳われている。なるほど、太陽光発電や風力発電を用いており、省エネだと言える。また、スマートシティによる電力調節で、省エネ効果もあるだろう。これらはメリットだと言える。
( ※ 実際には、再生エネは非常にコスト高なのだが、そのコスト高を補うための補助金制度があるので、現実のコスト高を隠蔽できる。すると、コスト高を除いて、省エネ効果だけが残ることになる。)
だが、本当に省エネかというと、そうでもない。実際には、かえってエネルギー消費が増える可能性がある。次の二点だ。
@ 郊外の立地
柏の葉は、郊外に立地している。つくば市と秋葉原の中間だ。新聞記事では「つくばエクスプレスで 30分」とのことだが、それは最短の場合。実際に路線案内で検索すると、30〜37分だとわかる。しかも、料金は 699円だ。
一方、東京駅までだと、47分〜50分で 802円だ。
いずれにしても、十分に通勤圏だと言える。マンションが駅のそばにあることも考えると、東京駅までは1時間で到達できる。東京駅や秋葉原のあたりに通勤する人ならば、十分に通勤圏内だ。
ただし、問題は、料金だ。片道 699円〜802円というのは、いかにも高すぎる。普段は会社に払ってもらうとしても、通勤とは関係のない子供や妻などの場合、自腹で高額を払う必要がありそうだ。もっと悪いことに、これほど高額の交通費がかかる人は、最近では雇用されないということだ。企業は交通費のかからない地域の人を優先して採用するので、片道 800円だと、採用されない可能性が出てくる。
それだけではない。片道 800円だということは、長い距離を走っているということだから、電気を食うのだ。特に、つくばエクスプレスは高速で走るので、電気をいっぱい食う。時速 125キロで走るから、速度は通常の電車の2倍ぐらいであり、食う電力は4倍ぐらいになる。「 30分しかからないからいいな」と思っているようだが、それだけ大量に電気を食っているのだ。家でいくら節約しようが、電車で莫大に電力を消費するので、まったく省エネになっていない。
要するに、柏の葉スマートシティというのは、「地域内では少しだけ省エネをするが、地域外では莫大にエネルギー浪費をするシステム」なのである。
だから、柏の葉スマートシティで暮らすことで、「これで省エネをしているんだな」などとは思わない方がいい。ここで暮らすことは、莫大なエネルギー浪費をすることを意味するのだ。(乗る電車のせいで。……少なくとも、東京またはつくば市に通勤する場合には。)
A 高層ビル
高層ビルには、エレベーターがある。これもまた、多大な電力を食う。一戸建てならば食う電気はゼロなのに、高層マンションならばエレベーターを利用するたびに多大な電力を食うのだ。この点でも、省エネにはなっていない。
どうせなら、高層ビルのスマートシティでなく、平地の一戸建てでスマートハウスを実行した方が良さそうだ。(細かな話は、以下で。)
(2) スマートシティのメリットは?
スマートシティのメリットはあるか? これについて、場合分けして考えよう。
@ 個別
スマートシティには、先進技術のメリットはある。さまざまな電子制御のシステムなど。それは事実だ。(スマートハウスとも共通する。)
では、先進技術を使うことに、メリットはあるか? あると思うのなら、多くの人が使っているはずだ。しかし現実には、そうではない。先進技術というものは、出始めのころには、やたらと高額であり、しかも、すぐに陳腐化しやすい。
比喩的には、初期のプリウス(ハイブリッド車)を思い浮かべるといい。現在のプリウスはたしかに魅力的だが、最初のころは、高額な割りには、たいして魅力はなかった。あくまで「物好きな人のため」のものだった。(現在の日産リーフに似ている。実用性よりも、物好きな好奇心を満たすために、やたらと高額の金を払う。)……その後、十年以上を経たころになって、ようやくプリウスは魅力的な車となった。
スマートシティの技術も同様だ。現時点では、「最先端」ということで興味深いが、やたらと高コストであり、すぐに陳腐化する。今は「時代の最先端」ではあるが、あと 10年もすれば「化石的に古い技術」と言われるだろう。まわりのみんなが安くて高性能のスマートグリッド技術を使っていても、柏の葉スマートシティの住民だけは 10年も前の古びた時代遅れの技術を使い続けることになる。しかも、コストは、周囲の人々の何倍もになる。何倍もの金を払って、何分の1のひどい性能のものを使い続けることになる。
( ※ 先進技術の初物というのは、そういう傾向にある。比喩的に言えば、柏の葉スマートシティというのは、enchantMOON の建物版だ。人柱になりたい人向けの未熟な商品。)
A 国全体
たとえ自分は犠牲になったとしても、国全体に奉仕する効果はあるだろうか? 電力調整や炭酸ガス削減を通じて、環境に改善する効果はあるだろうか?
実は、あることはあるが、ほとんど無意味である。
第1に、電力調整というものは、ひとつの地区だけでは無意味だ。電力調整は、東京電力なら東京電力という電力管内で調整すればいいのであって、一つの地区だけで調整することには意味がまったくない。
で、電力管内で調整するなら、次のことが基本となる。
「電力不足のときには、クーラーやテレビを切るのではなく、工場が夏休みを取ればいい」
これで問題は解決する。そもそも、家庭による電力の消費量は、多くはない。産業用の電力消費が多いのだ。そして、産業用の電力消費が多い理由は、真夏の暑いさなかに無理をして工場を稼働させていることにある。
仮に、日本が諸外国並みに夏休みを取れば、夏の電力不足などは一挙に解決する。
【世界各国の会社の夏休み】
オーストラリア → 1ヵ月半
スペイン → 1ヶ月
スウェーデン → 年齢に応じて25〜32日
オーストリア → 35日
フランス → 5週間+労働時間が半分になる日が2週間
ドイツ → 最低33日・最大37日
イタリア → 最低32日・最大42日
日本 → 5日
( : ツイッターで出典多数 )
電力調整のために必要なのは、スマートシティではなく、夏休みなのだ。夏休みさえ十分であれば、電力調整はまったく不要である。それどころか、夏には電力が余って困るはずだ。「皆さんが電力を使ってくれないと、電力会社が倒産してしまいます。だからどんどんクーラーを使ってください」と訴えることになるかもね。 (^^);
なお、炭酸ガス削減の効果はいくらかあるようだが、これについては、(1) で前述した。
(3) 不動産状況
柏の葉スマートシティの特徴は、電力や省エネなどの効果だけにあるのではない。特徴というほどではないが、不動産としての面もある。これについては、普通の不動産と同様の問題がある。
@ 空き家状況
現在の日本は、空き家がマンションが非常に多くなっていて、過剰である。
→ 空き家率40%時代に備えよ!
少子化のせいで、人口が減っており、空き家がやたらと増えている。都心のマンションもそうだ。こういう状況では、地の利の悪い柏の葉では、マンションが売れるはずがない。冒頭の朝日の記事でも、なかなか売れないということだが、それが当然だろう。
それでもこのマンションを買ってしまった人は、将来、売るに売れないことになって、困ったことになりそうだ。引っ越ししたくても、それもままならないだろう。下手をすると、ゴーストタウンに一生住み続けることになりかねない。
A マンションの老朽化
マンションといものは老朽化する。特に、先端技術を使った場合には、かなり早い時期に陳腐化して老朽化する。下手をすると、10年後には、全面改修に迫られるかもしれない。先端技術というものには、そういうリスクがあるのだ。今は最先端でも、10年後には最も古い技術になるのだから。
( ※ 女性の服の流行に似ている。今現在なら最先端の流行だが、10年後のはひどい時代遅れだ。)
で、老朽化した技術の詰まったマンションは、あとでいろいろとトラブルに巻き込まれることになる。下記記事も参考となる。
→ 超高層マンションは格差社会の縮図
(4) 一戸建てとの比較
スマートシティを、一戸建てと比較しよう。
まず、このスマートシティは、「田んぼや畑や草地の中に、高層ビルが寂しく建っている」という感じのものだ。次の画像がある。

出典
これだったら、周辺の空地に一戸建ての住宅を建てた方がいいだろう。
そもそも、スマートシティというものは、都心の高層ビルでこそ意義がある。都心ならば、地価が高いので、高層ビルにするメリットがあるからだ。(一戸あたりの土地の代金が安価で済む。)
一方、こんな田舎ないし郊外では、土地代も安いのだから、高層ビルにすることのメリットはない。それどころか、建築費がやたらと高額になるというデメリットがある。
だったら、最初から一戸建てにする方がいいだろう。それなら、エレベーターに莫大な電力がかかるという無駄もなくなる。
特に、つくば市や東京に通うのではない場合(柏市の会社や学校に通う場合)には、駅のそばに住む必要はないのだから、駅から離れた土地で一戸建てを買う方がいいだろう。費用もずっと安く済むはずだ。
( ※ 一方、つくば市や東京に通う人は、もっと勤務先に近い土地に居住するべきだろう。)
結局、こういう遠い郊外に高層ビルを作るという構想が、根本的に狂っていることになる。これはもともと無理な構想なのだ。どうしてもスマートシティを作りたいのであれば、遠い郊外ではなく、都心に作るべきだった。
(5) 結語
まず、これまでのことをまとめて言うと、こうなる。
そもそもの話、スマートシティには何のメリットもない、ということに気づくべきだった。なぜなら、電力調整の本道は、「企業が夏休みを取ること」だからだ。また、省エネの目的ならば、スマートシティには最初から何の効果もない。効果があるのは、併設した太陽光発電や風力発電の設備であって、それはスマートシティとは何の関係もなく独立的に作れば済むからだ。たとえば、福島でも、九州でも、広島でも、どこでもいいから、太陽光発電や風力発電の設備を作ればいい。それをスマートシティと一体化させることには何の意味もないのだ。だから、それをスマートシティの効果と呼ぶことはできないのだ。
スマートシティの効果はただ一つ。それは電力調整だけだ。そして、「企業が夏休みを取る」という正しい状況になれば、その効果は完全に消失してしまうのである。(夏の電力はありあまるから。)
また、家庭内の先端的な電子機器は、スマートシティとは何の関係もなく、単に各人が勝手にやればいいだけのことだ。未完成な技術を使いたいという物好きだけが、enchantMOON のようなものだと思って、勝手にやればいいだけのことだ。スマートシティという形で、人柱を大量に募集することには、何の意味もない。(むしろ、だまされた被害者を増やすだけだ。enchantMOON を買った素人のように。)
以上のことから、結論が出る。
柏の葉スマートシティの正しい方策は、ただちにこのプロジェクトを中止することだろう。そうすれば、被害を最小限に留めることができる。
一方、これを強引に推進した場合には、巨大な問題が生じる可能性がある。
最善の場合には、このプロジェクトは大失敗するだろう。購入者がほとんどいなくて、売れ残りばかりとなり、プロジェクトのあとに残るものは、巨額の赤字と、ゴーストビル(人気の少ないビル)になるだろう。……ひどいものだが、これが最善のシナリオだ。
最悪の場合には、このプロジェクトは大成功するだろう。一個残らず売り切れて、プロジェクトは次々と遂行され、多くの建物が建設され、事業は大幅な黒字となり、あとには大きな先端都市ができるだろう。……ただしそれは、そのときだけのことだ。そのすべては、20年後にはゴミの山も同然となる。しかも、買った人は、引っ越したくても、売るに売れないありさまだ。それでも、多くの人々が不便で高コストな環境から逃げ出す。そのあとには大量の空き家だけが残って、ゴーストタウンができる。結局、会社だけは(詐欺師のように)大儲けできるのだが、購入者の方は(詐欺師の被害者のように)大損することとなる。
最善の場合には、被害はあるが、一部に限定される。
最悪の場合には、最初は大々的な成功だが、最終的には大被害が生じる。それはちょうと、太平洋戦争のときの日本のようだ。緒戦は連勝連勝で浮かれていたが、最終的には原爆を落とされて国家の破滅に導かれた。
柏の葉スマートシティがどうなるかは、興味深い。それは、浮かれた人々が根本的に間違ったプロジェクトを中止できるか、それとも、間違っていると気づかないまま大きな破滅に進むか、というテストケースになるからだ。
ま、私としてはどっちでもいいのだが、詐欺師の口車に引っかかった人々が、身の破滅には陥らないように、ここでは注意を喚起しておきたい。下手をすると、老後に首を吊るハメになる。(たとえば、マンションの改修費に、莫大な負担を迫られるが、負担できないので、追い出されて、野垂れ死にする。)
[ 付記 ]
朝日の記事には、こうあった。
「省エネシステムは初期投資がかさむため、マンションの販売額や家賃は通常より1割程度高い」
これは高いのは1割だけか、と思うかもしれないが、さにあらず。
金額が1割高いということは、その分、借金の返済期間が長くなるということだ。人が毎月払える額は決まっているから、借金の総額が1割多くなれば、返済期間はかなり多くなる。この額は、利率に依存するが、決して少ない額ではない。利率が高い場合には、「借金の総額が1割増えると、返済期間が延びるせいで、返済額は2割も増えてしまう」というふうになりがちだ。
この場合、利息を込みにすると、省エネ設備のためには、購入価格の倍の金額を払うことになる。(換言すれば、省エネ設備と同等の額を利子として払う。)
たとえば、返済期間が25年から30年に延びるとしたら、省エネ設備の購入のために、30年も利息を払い続けることになる。(省エネ設備がなければ、その分の支払いは一切ないのだ。)
こうして見ると、「余分な費用を支払うことが、住宅ローンでは非常に不利になる」ということがわかるだろう。
したがって、柏の葉スマートシティの住居を購入するとしたら、現金で即金で払う場合に限られそうだ。あるいは、10年ぐらいですべて返済すること。借金の期間が 20年以上もかかるようであれば、ここをやめて、借金の期間が短くで済む別の物件を選ぶべきだろう。さもないと、身の破滅になりかねない。
( ※ 現金で即金で買ったとしても、身の破滅になりかねないが。それは先に述べたとおり。)
( ※ ともあれ、利息のことを考えると、返済期間は1年でも短くするように努めるべきだ。下手をすると、デフレが続いたあげく、借金の額は実質的にどんどん増えてしまうかもしれない。……これは冗談ではない。10〜15年ぐらい前には、デフレのせいで住宅ローンを払えなくなって、自宅を失い、ローンだけが残った、という人が多数発生した。その二の舞になる可能性もある。)
【 関連項目 】
スマートシティというものがいかにダメであるかは、前にも述べたことがある。
→ スマートシティの愚
スマートハウスについても、別項で論じた。
→ スマートハウスの愚
→ スマートハウスの愚 2
スマートグリッドについても、多くの項目で論じた。
→ スマートグリッド (サイト内 検索)
スマートメーターについても、多くの項目で論じた。
→ スマートメーター (サイト内 検索)
特に、次の二項目が重要だ。
→ スマートメーターの強制普及
→ スマートメーターの普及強行をやめよ
ここでは次のように述べている。
「スマートメーターが必要だ」というのは、「家庭の電力を抑制しよう」というものだ。特に、電力が逼迫する猛暑日に、クーラー[エアコン]を抑制するのが主眼だ。
だが、こういう猛暑日にクーラーを抑制するというのは、人命に関わる。こういうときには、クーラーは最優先の順位が与えられる。なのにクーラーを切ろうとするスマートメーターは、本末転倒なのだ。(重要!)
では、どうすればいいか? お盆の時期の電力需要を見ればわかる。この時期、企業がみんなお休みになることで、電力需要は激減する。そのことで電力はたっぷりと余る。
これが正解だ。つまり、猛暑日には、家庭でなく企業の側が節電するべきなのだ。そのためには、家庭の側にスマートメーターを置いても、何の役にも立たない。
「猛暑日には、産業界(≒ 家庭以外)で電力消費を下げるべし」という結論が得られる。それはつまり、「猛暑日には猛暑休業にせよ」ということだ。
ひるがえって、「猛暑日にはスマートメーターがエアコンの電源を自動的に OFF にする」なんていう方針は、人殺し政策も同様だ。熱中症による死者が続出するだろう。
電力調整は、家庭でなく、企業の側でやるべきだ。家庭の側で電力調整をやろうというシステムは、一種の人殺しシステムなのである。主客転倒というべきだろう。
比喩的に言えば、「生きるために食べる」という本質を見失って、「食べるために生きる」というふうになったあげく、食べ過ぎになって死んでしまう……というふうな。同様に、「省エネをするために死んでしまう」というふうになりかねない。生命よりも省エネを大事にしているのが、スマートシティやスマートメーターの発想だ。そこでは人命のことなど無視されている。すべては省エネが優先。
( ※ 上記のようなことをきちんと学んでおけば、失敗を避けられたのにね。)
【 追記1 】
柏の葉スマートシティがまったくダメかというと、そうでもない。郊外型の都市開発と見なせば、それなりに意義はある。特に、東大や千葉大などのキャンパスの誘致にともなって、企業の研究開発拠点が誘致されるのならば、つくば市よりもずっと近いから、それなりにメリットはあるだろう。
つまり、企業の進出先としては、「一極集中」を避けるという意味で、つくば市のようなものを作る効果はある。企業が進出する限りは、何の問題もない。
ただ、個人がここに住居を構えるのは、大きな問題がある。特に、スマートシティという言葉に夢を感じて、ここでマンションを買うようなことがあれば、身の破滅に近い。
企業の場合と、個人の場合とは、大いに異なる。ここがポイントだと言えよう。
( ※ なお、企業の進出は、企業が独自の採算ベースで決めればいいことだから、ここで私が口を出すことではない。勝手にどうぞ、と言うしかない。)
( ※ なお、構想は企業向けだけでなく、個人向け住居も含まれる。「住宅一体型の研究開発複合拠点」と謳っているとおりだ。これは、まずい。すぐそばにいくらでも空地があるのに、個人住宅を高層ビルにする必要性がない。)
【 追記2 】
太陽光発電や風力発電は、「災害時のバックアップ電源」としての効果も狙っているようだ。しかし、太陽光発電や風力発電は、お天気任せで不安定であるがゆえに、バックアップ電源としては適さない。バックアップ電源となるのは、ガスによるコジェネ発電だ。
ところが、柏の葉スマートシティには、排熱を回収するマイクロコジェネレーションシステムがあるだけで、コジェネ発電はないようだ。
では、災害時の電力バックアップは? 一応、ガス発電の設備があるようだ。あくまで非常用であって、常時稼働するのではない。(たぶん効率が低いせいだろう。)
ららぽーと柏の葉には出力約500kWの太陽光発電設備があり、6月下旬には容量約1万1850kWh、出力約1800kWの大規模蓄電池を設置する。ゲートスクエアは、約220kWの太陽光発電と約3800kWh、約500kWの蓄電池に加え、非常時に稼働させる出力約2000kWのガス発電機を備える。
( → 日経BP )
省エネのシステムは災害に強いまちづくりにも役立っていて、蓄電池でエネルギーを蓄えることなどで地震などで停電しても平常時の60パーセントの電力を3日間提供できるということです。
( → NHK のコピペ )
これを見ると、一応、バックアップ発電はできているようだ。とはいえ、「平常時の60パーセントの電力を3日間」だ。これっぽっちのために、莫大な蓄電池を用意するというのは、正気の沙汰じゃないね。どれほどのコストがかかることやら。
→ スマートグリッドという幻想
→ 太陽光に蓄電池は不要
→ 蓄電池よりも良い案
ごく限られた機能のために巨額の金を投資するというのは、あまりにも馬鹿げている。金をドブに捨てるもの同然だろう。そして、この都市に住むに人々や企業は、その無駄なコスト負担を強いられる。ここに進出する企業や住民は、その途轍もないコスト負担のことを留意しておいた方がいいだろう。
( ※ ついでだが、太陽光発電や蓄電池というものは、10年〜20年ぐらいの寿命しかない。あとでまた更新の費用が巨額にかかるのだ。それをお忘れなく。)
( ※ 一方、ガスコジェネの場合には、普通の電気代と比べてほぼ同等のコストになるので、コストの心配はしないでいい。賢明な人は、ガスコジェネにする。 → Google 検索)
【 追記3 】
太陽光発電と蓄電池の関係を考えると、おかしなことに気づいた。
一見したところ、スマートシティとして、太陽光発電の電力を蓄電池に溜め込んでいると思える。しかし、もしそうしたら、太陽光発電の電力は自家消費されてしまうので、再生エネとして高額販売できなくなる。(再生エネとして販売すれば、相場の2倍以上という高額で販売できるのだが、そのメリットを失う。)
これはコスト的にあり得ない。とすれば、現実には、こうなっているはずだ。
「太陽光発電の電力は、蓄電池に溜め込まないで、そっくりそのまま外部に販売する。一方、蓄電池の電力は、夜間電力を利用して溜め込む」
これならば、太陽光発電の電力を高額で販売できるので、経済的合理性がある。だからきっと、こうしているはずだ。
それはそれでいい。しかし、それは、「スマートシティ」というコンセプトとは大幅に異なる。単に太陽光発電設備と蓄電池とがバラバラに(無関係に)存在しているだけで、スマートシティやスマートグリッドという概念とはまったく関係がなくなる。
どうも、誇大宣伝または虚偽宣伝しているみたいですね。羊頭狗肉というか。
( ※ ついでだが、夜間電力を蓄電池に溜めて、昼間に使う……というのは、コスト的にはまったく割に合わない。途方もないコスト高になる。愚の骨頂。/ちなみに、日産リーフの蓄電池はたったの 24KWh で約 200万円。)
【 関連動画 】
YouTube の動画
・木材ペレット(里山の木くずが元)
・小型エコストーブ(米国製の大型を日本人が改良した小型タイプ)
でエネルギーをまかなう(最先端国家はオーストリアだそうです。
もともと日本が最先端国家だったはずなのに、ちょっと残念)。
里山資本主義っていうのは、柏葉とは対極の視点からアプローチ
しているスマートシティと言えるでしょうか。
どちらが成功するか興味深いですね。
>ならば食う電気はゼロなのに、高層マンションならばエレベーターを利用するた
>びに多大な電力を食うのだ。この点でも、省エネにはなっていない。
熱環境のプロが聴いたら、即死するレベルの無知さだな。w
体積の割に表面積が大きい一戸建住宅と小さい集合住宅では、集合住宅の方がエネルギー消費量が少ないに決まってるじゃないか。w
暖房に使うエネルギーに比べたら、エレベーターを動かすエネルギーなんてたかがしれてるぞ。
↓ ↓
用途別にみますと、家庭用エネルギー消費は、冷房、暖房、給湯、厨房、動力・照明他(家電機器の使用等)の5用途に分類することができます。(中略) 2012年度におけるシェアは動力・照明他(37.3%)、給湯(28.0%)、暖房(24.0%)、厨房(8.3%)、冷房(2.3%)の順となりました(第212-2-4)。
http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2014html/2-1-2.html
家を建て替えるんで、半年間、1970年代初めに建てられた無断熱のマンモス中古団地に住んだが、水道・ガス代は同じだったが、電気代と灯油代は半分以下で済んだ。アタリマエだが、地面以外の5面が外気に接している一戸建てより、団地の中層階の残念ながら角部屋だったので3面が外気に接している集合住宅の部屋(角部屋じゃなかったら、2面で済んだ)の方が暖房に使うエネルギーは少なくて済む。エレベーターの使用料は、共益費で取られたけど、たいした額ではなかった。
スマートハウスの問題点は、大した断熱気密性能がないにもかかわらず、太陽光パネルを載せることで(創エネw)、年間一次エネルギー消費量を少なく見せて、エコな住宅だと思わせることだろ。
こっちのコラムの方が役に立つぞ。
↓ ↓
「高断熱住宅の魅力をより深く知る連載記事インデックス」断熱住宅.com
http://dannetsujyutaku.com/serial/column
全員質量60kgの4人家族が高さ50mまで1日5往復するとしてモーターの効率が90%くらいだと考えると1年で
60[kg]x9.8[kg m/s^2]x50[m]x5[往復]x4[人]x365[日]*(1.0/0.9)
=240x10^6 [J]
消費することになります。
まあ実際のエレベータは単純にモータでひっぱりあげているわけではなく重りとのつりあいで上げ下ろしをしているし、その他いろいろと大きめの見積もりをしているので、実際の消費エネルギーは半分以下のような気がします。
この値を採用するとしても全体の1%以下ですね。
統計の内訳をみると給湯と暖房が強烈ですね。排熱の有効利用を考えたいところですが、排熱の温度が環境温度よりも大して高くないので、利用効率が高くないのが悩みどころです。
それはそうだが、別に暖房と比較しているわけじゃない。比較対象が全然違うでしょ。それはいわば「富士山の方が東京タワーよりも高いぞ」と文句を言うようなもの。
> 体積の割に表面積が大きい一戸建住宅と小さい集合住宅では、集合住宅の方がエネルギー消費量が少ないに決まってるじゃないか。
マンションと一戸建ての断熱性の比較は、本項の対象外。断熱性を気にするなら、一戸建てと比較するかわりに、低層のマンションと比較すべき。
ここでは「高層」が問題になっているのであって、「マンション」が問題になっているのではない。
だいたい、高層ビルについては軽く短文で触れただけです。こんな長い論考を読んで、ほんの数行だけにいちいち反応するなんて、重箱の隅みたいなもの。
> 地面以外の5面が外気に接している一戸建てより
その家の断熱性が悪いだけでしょう。断熱性が高ければ、暖房費用はもともとたいしてかかりません。断熱性が大事といいながら、自分が断熱性の悪い家に住んでいたせい。
あとね。集合住宅には「日当たりや風通しが悪い」という決定的な難点があります。また、洗濯物を干せないという問題もある。庭がないという問題もある。エネルギーコストだけですべてが片付くわけじゃない。だいたい、ご自分が一戸建てなんでしょ? 自分で実行していないくせに。
スマートシティがテーマなのに、見当違いの方向に話をずらすから、自分でも何を言っているかわからない状態になっている。
> スマートハウスの問題点
それは別項で論じています。関連項目を参照。
> 太陽光パネルを載せることで(創エネw)、年間一次エネルギー消費量を少なく見せて、エコな住宅だと思わせることだろ。
それは、嘘をついているという道義的な問題であって、実質的なデメリットとは違う。だいたいそれは、スマートハウスの問題じゃなくて、太陽光パネルの問題だ。話題が違う。
> こっちのコラムの方が役に立つぞ。
断熱性の問題も、話題が違う。それはスマートハウスとは別個に論じればいいだけ。
スマートハウスの問題は、電力を勝手に調整するという、その主機能自体に問題があるという点です。ここを論じない限り、アラ探しまたは揚げ足取りにすぎない。アラ探しまたは揚げ足取りは、本サイトとは逆の方向です。やるだけ無意味。
あと、「即死するレベルの無知さだな」なんていう言葉遣いは、私は言わないけれど、カッコ悪いですね。恥ずかしい。知的レベルがバレてしまう。
それは、エレベーターの箱の分だけでしょう。正確には、おもりは「カウンターウェイトの総重量は無積載状態のかごの質量にかご積載容量の50%を付加した重量になるように設計されている。」
http://j.mp/VP7mbp
小人数だと、けっこうエネルギーを食いそうだ。10人乗りに1人乗った状態では、マイナス4人の重量を運んでいることになる。カラ状態でも、5人分を運ぶエネルギーを消費しているわけだ。
(マイナスの人数は、プラスの人数を逆方向に運ぶことに相当する。)
タイムスタンプは 下記 ↓
タイムスタンプは 下記 ↓
夜間の安い電力(今でも?)を蓄電池に溜め込んで高額販売できる昼間に売る輩が出るからだそうで。
なるほど。では、もともとスマートグリッドみたくするシステムは無理なわけなんだ。(もっとも、それが妥当ではあるが。やっても、意味ないし。……火力発電で調整できるから。)
日本は同調強制型社会なので、スマートシティで行こうとなると、異論を許さないオーラが発散されます。
原発も大事故がなければ、異論を1%も認めないオーラが支配し、代替エネルギーや自然エネルギーなどと
言おうものなら、異端者審判にかけられる雰囲気でした。「同調」強制型社会は、リスキーです。
「オルターナティブ」な発想を加えていくことが、日本社会の安全保障に寄与するのではないでしょうか。
「スマートシティ」に対するオルターナティブな発想は、「災害地域を高品質地域にする」、「貧しい田舎
を充足した地域にする」等が考えられます。ひとつに猪突猛進せず、オルターナティブなプランも探りたい。
「災害地域を高品質地域にする」は、例えば、広島市安佐南区一帯の災害原因である山地を削り取り、
平坦地にし地盤強化・舗装して、広島人が見たこともないような魅力的なエコ型コンパクトシティに生まれ
変わらせること。
「貧しい田舎を充足した地域にする」は、過疎化が進み何もない貧しだけと思われている田舎を、蘇生さ
せること(都会っぽくすることではなく)。高知県の梼原町が、かなりな程度成功させました。
1)町役場が、住民の希望者たちに「欧州の環境」視察させた(町議らの物見遊山でなく)。
2)彼らは欧州の風力発電を見て感動し、「おらが街にも、どこぞ適地はないか」と言い始めた。
3)探してみると、四国カルストの尾根は風が強い。測定して適地を決めて、風力発電を始めた。
4)売電で得た金で、住民の住宅に太陽光発電を普及させた(費用を補助した)。
5)小水力発電も始めた。
6)荒れていた森林を手入れするようになった(人件費を補助し、雇用を生んだ)。
7)しいたけ栽培や茶栽培など特産品にも力をいれるようになった。
8)伐採した雑木は、チップにする小さな工場を作った。
9)太い木は、建築資材に利用するようになった。役場も梼原の木材で建てた。
A)維持・管理費が嵩む利用度が低い箱物は、処分していった。
B)教育は「生涯教育課」だけに重点をしぼった。町全体が子供たちを育てる。青年になっても育てる。
何もないと思っていたら逆で、素晴らしい、光、山、水、空気、人情があった。持続可能な充足した生活
が送れる環境であることが再認識され、誇りを持つようになった。
梼原は在来工法の住宅建築なので冬場は底冷えがする。在来工法でも高断熱住宅にできるようになれば、
飛躍的な改善です。国は、そのような技術を開発し支援すべきでしょう。