2014年08月12日

◆ 冤罪の報道被害(STAP)

 (冤罪の)報道被害は、STAP事件の前にもあったことを思いだした。それは松本サリン事件のときの報道である。 ──

 この件は、今では忘れられかけているが、ネット上にもいくらか情報が残っている。当時の新聞報道はほとんど消えてしまっている( or もともとネット上に存在しなかった)が、検証した人の記事が今でも見られる。

 まずは、Wikipedia に簡単な記事が見つかる。
 河野義行
 1994年に発生した松本サリン事件の被害者。事件後に警察およびマスメディアにより事件の有力な容疑者であると見なされ報道被害を受けた。
 1994年6月27日夜に発生した松本サリン事件に際して事件の第一通報者となった。警察から事件への関与が疑われ、長野県警は河野の自宅の家宅捜索を実施した。この捜索において農薬が発見されたことや、河野宅において不審な煙を見たとの証言があり警察の嫌疑が深まった。のちに証言については虚偽と判明し、また農薬からサリンは合成できないことが判明している。
 警察の捜査および情報のリークを受け、地元紙の信濃毎日新聞や主要な全国紙を含め多くのメディアが河野を犯人として扱った。
 その後、...河野への疑いは完全に解消された。
 捜査当時の国家公安委員長であった野中広務は河野に謝罪したが、マスメディア各社は報道被害を認めて謝罪文を掲載したのみで、本人への直接謝罪は皆無であった。
( → Wikipedia

 このときもマスコミは、犯人ではない人を「犯人だ」と決めつけて報道したあげく、何ら謝罪をしなかったわけだ。

 それにしても、「第一通報者となった」ということからして、犯人ではないことは自明だと思うのだが、例によって「第一通報者を疑う」という警察の癖によって、冤罪を起こした。典型的な冤罪ですね。マスコミもアホすぎる。
 STAP細胞事件もそうだ。「捏造だとすれば、再現実験によってすぐにバレるから、捏造のはずがない」と簡単にわかる。それは、「第一通報者が犯人のはずがない」というのと同様の理屈だ。(仮に犯人であれば、通報しないで知らんぷりするはずだ。)
 こういう簡単にわかる原理からして、「犯人ではない」とすぐにわかる対象に嫌疑をかけることがいかに馬鹿馬鹿しいか、知性のある人ならばすぐにわかる。しかし、知性のない人は、「最も身近にいる怪しい人物」というのを疑う。推理小説における馬鹿刑事の役割だ。それを、松本サリン事件でも、STAP細胞事件でも、マスコミは繰り返す。度しがたい阿呆というべきだろう。

 松本サリン事件の報道被害の詳細は、下記に記してある。
  → kaikocyu19012001 @ ウィキ - 松本サリン事件
 報道被害の部分を一部抜粋すると、下記。
 この記事を作るため、近所の図書館で94年7月の読売と朝日を見てみた

@ 市販薬でも作れる猛毒ガス、知識や経験あれば可能 朝日新聞 94年7月4日


陸上自衛隊学校の研究部員:熱を加えたり、かなり複雑な過程でできるものだし手に入りにくい物質も使うので簡単に調合ミスでできたとは考えられない

常石教授:製造方法がわかっているのは原爆も同じだが、はるかに身近な材料で殺人兵器とおなじものができてしまうことを見せつけたのが今回の事件だ

 しかし、この常石教授の話をちょこっとに読んだ人は、間違いなくサリンは簡単に作れると思うだろう。本当にリアルタイムで読まなくてよかったよ。しかし、どうして研究部員が作れんと言っているのにサリンが専門でもない常石教授の話のが見出しになってしまうのだろうか?

A 押収した薬品24種類、サリン合成不可能、専門家の見解一致 朝日新聞 94年7月11日


 サリンを作るのに不可欠な物質のフッ素化合物も押収したのはフロンだけだった(中略)複数の薬学・化学の専門家は「押収した薬品だけでサリンを合成するのは不可能」との見方で一致している。

江藤守総九大名誉教授:フロンはサリン合成に使っても反応しない

E 毒ガス事件、発生源の「怪奇」の系譜 週刊新潮 94年7月日


河野家親戚の一人:齢茂先生の見ず知らずの他人に取られてしまう。河野の姓を名乗ってほしくない

 家系図まで出したり、親戚を媒体にしてネガティブなことを書いている。河野さんは『週刊新潮』に対してのみ告訴を検討。謝罪文掲載の約束により告訴を取り下げたが、約束は守られていないらしい。

( → kaikocyu19012001 @ ウィキ - 松本サリン事件

 専門家が「農薬からはサリンを作れない」と断じているのに、「農薬が見つかったから、これでサリンを作ったんだ」という虚偽報道をし続けた。それが当時のマスコミだ。
 STAP細胞事件でもそうだ。「コンタミでも ES細胞にすり替わることがある」と専門家が指摘しているのに、あくまで「意図的にすり替えた捏造だ」と主張したり、「画像の切り貼りは無知ゆえの勘違いでやってしまった」(真正画像を別の真正画像と取り替えるのは悪いことだとは知らなかった)と本人が明かしているのに、「意図的に悪意ある捏造をした」というふうにでっち上げたりする。……こういうでっち上げの方が、はるかにひどい捏造報道なんですけどね。
 おまけに、「小保方さんと笹井さんは男女関係ができている」という虚偽報道も出回った。特に NHK はその方向で意図的に曲解を進めようとした。( → 前項[ 付記2 ])

 まったく、いつの時代も、マスコミはひどすぎる。
 そして、それに乗じて「あいつは犯人だ」と指弾する愚民たちも同様だ。困ったことだ。
 せめて、知識人が指摘すればいいのだが、STAP細胞事件では、まともに指摘する人も少ない。困ったことだ。

( ※ ちなみに松本サリン事件は、1994年なので、Windows95 の普及以前である。インターネットはまだ誕生したばかりのヒヨコだった。ネット上に情報があまりないのは、仕方ないだろう。)
posted by 管理人 at 11:03| Comment(8) |  STAP細胞 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
せっかくの夏休みなのに、こんなことを書いていてつぶれてしまって、悔しい。

 参考ツイート。(いっぱい出回っている。)

 ──

【世界各国の会社の夏休み】
オーストラリア → 1ヵ月半
スペイン → 1ヶ月
スウェーデン → 年齢に応じて25〜32日
オーストリア → 35日
フランス → 5週間+労働時間が半分になる日が2週間
ドイツ → 最低33日・最大37日
イタリア → 最低32日・最大42日
日本 → 5日
Posted by 管理人 at 2014年08月12日 11:24
> せめて、知識人が指摘すればいいのだが、

ここが日本の問題の本質と思います。
海外見ても、同じような愚民はたくさんいるし、酷いマスコミ報道もたくさんある。でも、まともな知識人が一定数いて歯止めになっている。

知識人と言われる人の中に、まともな論理的思考力を持った人がほとんどいなくて、知識人の中でさえ論理的な意見より感情的感覚的意見が多数を占めるところが日本の根本的な問題と思います。
Posted by Max at 2014年08月12日 12:23
Maxさんのコメントに「論理的思考」という言葉が出てきますが、そもそもその「論理的思考」というものを勘違いしていて、胡散臭い物だと認識している人が多いように感じます。
そしてむしろ、論理的思考とは即ち机上の空論であり、人を誤った方向へ導くと思われているのではないでしょうか。

逆説的ですが、もしかすると、ドラマ等で「論理的」(?)に考える人物が魔法のように真実に辿り着く描写が多いからかも知れないな、などと思ったりもします。
Posted by M.S. at 2014年08月12日 14:12
この手の話で日本が特別という事実はない。

海外とひとくくりに対比するのも不正確。

世界中で繰り返されてきた歴史的事実が物語る。


論理的思考や知識人の意見が歯止めになる事は

一定の期待しかできないのは、今回の事件を含む

多くの類似事例が示している。


そもそも情報の「まともさ」はリアルタイムでは

評価不能であり、多くは事後の評価による。


さて、ではどうするか?


新たな切り口での論説が期待されます。
Posted by たろう at 2014年08月12日 14:20
>「第一通報者となった」ということからして、犯人ではないことは自明だと思うのだが、例によって「第一通報者を疑う」という警察の癖によって、冤罪を起こした。

冤罪事件を肯定するわけでは無いんですが、「第一通報者を疑う」という警察の癖って経験則的に実際犯人の率がそれなりに高かったから生まれたものではないのでしょうか?
それとも推理小説とかから生まれたただの俗説なんでしょうか?
いずれにせよ、第一通報者ってだけで犯人と決めつけるのは問題ですが、第一通報者だから犯人で無いと決めつけてしまうのも危険でしょう。
不当な捜査や情報リークなどがあったらならそこは批判されるべきですが、疑うことをもって馬鹿刑事呼ばわりするのは違うんじゃないかと。
拙速な報道をしたマスコミに関しては擁護の余地はありませんが。
Posted by しろお at 2014年08月12日 15:18
> 「第一通報者を疑う」という警察の癖

 ただのサボり癖です。
 第一通報者は、存在すれば、必ず容疑者の一人になります。
 真犯人が利口であれば、犯行の尻尾を残さないので、容疑者は他には見つかりません。(別に他の人が見つかることはあるが、警察が優秀であれば、そういう人は容疑者から除かれます。)

 というわけで、
   真犯人の知性 > 警察の知性
 である限り、真犯人は見つからないので、警察としては、次のいずれかを迫られます。
  ・ 適当に容疑者のうちの一人を真犯人として検挙する
  ・ お宮入りにして、敗北宣言する
 通常、前者になります。そのうち、最も疑われるのが第1通報者です。

> 第一通報者ってだけで犯人と決めつける

 決めつけるわけじゃありません。真犯人が見つからないから、手っ取り早く、そばにいる人をつかむだけです。
 真犯人が見つかれば、そっちをとらえますよ。問題は、真犯人が見つからないとき。
 
> 疑うことをもって馬鹿刑事呼ばわりする

 そうじゃないですよ。誤読。疑うだけなら何も問題はない。
Posted by 管理人 at 2014年08月12日 15:42
世界と比較すると吃驚しますね。でも夏休み5日でも、私のように無いよりはいくらかはましではないのかと。
こちらの一連の記事によりSTAP細胞事件が如何に発生し、どこに問題があり、何故に曲解されて騒動の輪が拡大していったのか。理解を深める事ができました。検証と先智恵が、無用な誤解や騒動の再発防止に繋がることを願います。

物事には結論を先に決めて有効な場合と、危険な場合があるようです。
目標を定める事は日々の糧になるわけですが、人間関係でもアクシデント対処でもあれこれ思い込みで決めつけるとロクな事になりません。頭の良い人間でも我の強いタイプは、先に結論を決めており、全てをそこへ導く為に組み入れていきます。何を見ても聞いても都合の良いように解釈する。処し方が殆ど詭弁の人もおります。語り口が上手いのでつい騙されますが、内側に蠢くものが曲者なのです。

研究等も必ず在る、成し遂げると強く信じることも必要なのでしょうが、そこに真理探究の慎重なプロセスがないと危険な迷路が待っている。社会生活も思い込みが強いと痛い目を見がちです。それもまた学びではありますが。

報道や検挙する側にそもそも不正や捏造が多いのは、人間共通の課題であることと慢心があるのではないかと。不正・捏造上等の組織・集団が事件を扱う。恐ろしいことですがこれが現実。背景には成果主義等もあるのでしょうけれど、根底には人間の尊厳の軽視がありそうです。

闇雲な決めつけや攻撃は決められた結果へ導く手段であります。相手の人間性を尊重するなら極力慎重に為らざる得ませんから。お互いに痛みを感じる存在であることを忘れたくありません。
Posted by 小平の義太郎 at 2014年08月12日 20:36
>そもそもその「論理的思考」というものを勘違いしていて、胡散臭い物だと認識している人が多いように感じます。

その通りで、「推理」みたいに考えている人が多いかもしれませんね。
論理的思考の基礎の基礎は、得た知識の関連性を考えて「知識を組み立てる」ことなんですが、その習慣を一流大学を卒業した後でも持ってる人がほとんどいないんですよね。新卒社員研修に関わった時にびっくりしました。
Posted by Max at 2014年08月14日 00:57
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