2014年08月10日

◆ 野口英世の論文不正(STAP)

 野口英世は、政府がお札で称賛しているほどだ。しかし彼は、論文不正をしたと見なされる。 ──

 野口英世は、政府がお札で称賛している。


noguchi.jpg
出典:日本銀行


 ところが、その野口英世の論文不正が疑われている。


 (1) 書籍

 次の書籍で論文不正が疑われている。



背信の科学者たち 論文捏造はなぜ繰り返されるのか?

 読者批評から抜粋しよう。
 本著書においては、ガリレオガリレイ、ニュートン、メンデル、そして我が国の野口英世といった、誰もが知る科学者の研究不成行為の可能性についてまで言及している。
 野口英世については、彼の指導者であるロックフェラー研究所のエリートであるサイモン・フレクスナーの弟子として、また、最も権威ある研究所の花形であるとして、欠陥を見つけ出す審査(ピア・レビュー)課程から逃れたのであると結論づけている。(実際、野口英世の研究のほとんどは現在その価値を失っており捏造が疑われているのであるが、近年、彼の肖像が千円札に用いられたり、野口英世アフリカ賞なるものが創設されるなど、日本国の科学リテラシーの無さを象徴するようなことが起こっており、ぜひ官僚や政治家の方には本書を読んで頂きたい。)
( → Amazon 読者批評

 Wikipedia には次の記述がある。
 有力な研究者の指導のもとで行われた研究や、研究者がある程度の地位を確保していると、論文の厳しい審査を逃れ、欺瞞や誤った結果は長く訂正されることがない。ジョン・ロング、野口英世の事例が紹介される。
( → Wikipedia[上掲書解説] )

 次の記述もある。
 「病原性梅毒スピロヘータの純粋培養に成功」と発表。世界の医学界に名を知られることとなる。(ただし継代培養された野口株は病原性を失い、また病原性梅毒スピロヘータの純粋培養は現在でも追試に成功したものがいない。試験管内での病原性梅毒スピロヘータの培養はニコルズI株について1981年以降に成功が複数報告されているが、その培養条件は野口の報告とは異なり、純粋培養の成功は現代ではほぼ否定されている)。
( → Wikipedia 「野口英世」

 以上でいろいろと示したが、これらは「疑惑」または「誤謬・錯誤」という程度だ。


 (2) 捏造疑惑

 以上よりも、もっとひどいことが指摘されている。はっきりと「捏造した」と言えそうな点がある。

 まず、基礎情報として、Wikipedia の記述がある。
1918年(大正7年)
  ロックフェラー財団の意向を受けて、まだワクチンのなかった黄熱病の病原体発見のため、当時、黄熱病が大流行していたエクアドルへ派遣される。野口に黄熱の臨床経験はなく、患者の症状がワイル病に酷似していたことから試験的にワイル病病原体培養法を適用し、9日後(日数については諸説あり)には病原体を特定することに成功しこれをレプトスピラ・イクテロイデスと命名。この結果をもとに開発された野口ワクチンにより、南米での黄熱病が収束したとされる。

1924年(大正13年)
  アフリカ・セネガルにて黄熱病が発生、イギリス、フランスの研究施設より野口ワクチンが効果を見せずイクテロイデスが発見されない旨の報告を受ける。

1926年(大正15年)
  南アフリカ出身の医学者マックス・タイラーらが、黄熱ウィルスの単離に成功。黄熱病についての野口説(イクテロイデスが病原であること)を反証する。
( → Wikipedia 「野口英世」

 このあと、次の指摘がある。
「野口英世は初めから間違いに気付いていた」と言ったら驚くだろうか。
英世は黄熱病の病原体を発見したと発表したが、それは間違っていることを承知の上で発表したと思われる。
なぜそのような考えに至ったか順次説明しよう。

更に英世は手紙に「ロックフェラー研究所で自分が作製した三種類の免疫血清もモルモットを防御した。」とうっかり(?)書いている。
この一文が私が「野口英世は初めから間違いに気付いていた」とする根拠である。

このことから英世は自分が黄熱病の病原体としたLeptospira icteroidesはワイル病の病原体であることを知ったはずである。
自分の間違いに気付きながら、それを隠して論文を書いたとすると、論文の見方も変わってくる。
( → 野口英世はなぜ間違ったのか(40)
自分の間違いに気が付きながら、英世はその後「黄熱病の病理学」のタイトルで14編の論文を書いている。間違いに気が付きながら論文を書くと、当然不自然な記載が見られると思われるので、改めて各論文を見直してそれらを検証してみようと思う。

U報では、自分の発見した黄熱病の病原体は感染性黄疸(ワイル病)の病原体に似ているとの記載はあるが、ワイル病の免疫血清に反応したことは伏せられている。

ワイル病の病原体として由来の明確な日本株やアメリカ株、ヨーロッパ株を用いて作製したものを用いず、わざわざグアヤキルでネズミから分離した株で作製したものを用いている。しかも日本株等で作製した免疫血清を既に持っているのに、それらを用いていない。これは明らかに不自然な実験のやり方である。

それぞれの免疫血清にそれぞれのレプトスピラを反応させ凝集試験、Pfeiffer反応を行っているが、結果は同種の血清には反応するが、他種の血清には殆ど反応せず、交差反応は見られなかった。この結果は英世が先に書いたFlexnerへの手紙の内容とは異なることからデータの捏造がなされたといわざるを得ない。
しかし、この捏造は「野口英世はなぜ間違ったのか(34)」に書いたようにタイラーとセラーズによって明らかにされる。彼らは英世と同じ実験を行い、これらのレプトスピラは血清学的に同一であることを証明したのである。すなわち、英世が黄熱病の患者から発見したicteroidはワイル病の病原体のicterohaemorrhagiaeと同じものであり、黄熱病の病原体ではないと突きつけたのである。
( → 野口英世はなぜ間違ったのか(41)
ここには英世は間違いだと気付きながらも、なぜ黄熱病の病原体を発見したとの論文を出さなければならなかったのかを考えるのに助けとなるであろう一文が載っている。それを、そのままここに記載する。英世が畑に語った内容である。
  (中略)
これを読むと、英世は明らかに黄熱病の病原菌についてはまだ自信を持っていないことが窺われる。そしてロックフェラー研究所が研究所としての業績を上げるために焦る様子も見て取れる。最近どこかの国でも同じようなことがあったように思うが。
( → 野口英世はなぜ間違ったのか(42)

 以上を読むと、野口英世が「捏造」をした疑惑は非常に大きい、と言えるだろう。

 それにもかかわらず、日本政府は彼をお札の肖像画にして、称賛している。
 その一方で、ずっと規模の小さな捏造を疑われた天才科学者は、自殺に追い込まれた。
 そして、世間の大部分の人は、こういう状況を「正しい」と思っているのである。是正する気もない。笹井さんはいまだに汚名を着せられたままだし、せいぜい同情されるだけだ。誰一人として、「私が笹井さんを殺しました」と名乗り出ることはない。(「私には責任がありません」と言って、逃げ回っている人々ばかりだ。)

 分子生物学会であれ、学術会議であれ、NHK であれ、どうせ捏造を問題視するのであれば、野口英世の捏造を問題視するべきだった。その上で、「日本は捏造科学者をお札の肖像画にして称賛しています」と大々的に宣伝するべきだった。
 なのに、それができない。本物らしい捏造犯については見逃して、捏造の冤罪を着せられた人については死に追い込む。
 狂気!



 [ 付記 ]
 お札だけじゃない。政府はもっと大々的に野口英世を称賛している。「ノーベル賞級の賞」という形で、「野口英世アフリカ賞」というものを創設したのだ。
野口英世アフリカ賞は、……ノーベル賞に匹敵する賞を目指して創設された。
( → Wikipedia

 政府の公式ページもある。
noguchi-pri.jpg  → 野口英世アフリカ賞 - 内閣府
 野口博士の志を引き継ぎ、アフリカのための医学研究・医療活動それぞれの分野において顕著な功績を挙げた方々を顕彰し、アフリカに住む人々、ひいては人類全体の保健と福祉の向上を図ることを目的とします。
 21歳の時「英世」となった清作青年は多くの人々に支えられて世界へ羽ばたき、多くの成果を残しました。医学研究に生涯を捧げた努力と勇気は、野口英世アフリカ賞の原点です。

 捏造学者をこれほど大々的に称賛しているのだ。これ以上ないというほどの、最大級の扱いだ。こっちを是正するのが先決だろう。
 なのに、分子生物学会も、学術会議も、知らんぷり。彼らにとって、捏造か否かなど、本当は問題ではないのだろう。彼らは単に、笹井さんの足を引っ張りたいという、やっかみだけがあったのだろう。

 日本の科学者が顕彰するのは、過去の人物だけだ。なぜなら、過去の人物ならば、ライバルにはならないからだ。そして、生きているライバルについては、最優秀の人の足を引っ張って殺してしまう。
 それが日本社会だ。
posted by 管理人 at 13:42| Comment(15) |  STAP細胞 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
単純に時代の違いですよ。
今、野口が生きていて同じことをしたら袋叩きでしょう。メンデルしかりミリカンしかり。そして彼らが発見した事項も他人の業績とされるか歯切れ悪く(「最初にいったヒトは誰それなんだけどねえ、研究不正があったんだよね。きっと目のつけどころは悪くなかったんだろうけどね、もったいないけど、不正があった以上、誰それの発見とはいえないね。」)言及されるでしょう。そして彼らの科学研究者としての生命は断たれるでしょう。

要は彼らが生きていた時代のコミュニティがそれらを問題視するか否か、それだけです。
それを今の時代の科学倫理で裁く意味はありません。
過去の植民地支配の非を現在鳴らすことの愚かしさと同じです。
Posted by とおりがかり at 2014年08月10日 23:03
> 単純に時代の違いですよ

 勘違いされているようですが、千円札は2004年だし、野口賞は 2006年です。さらに、それが継続している今日も含まれます。

 本項が述べているのは、大昔のことではなくて、現代の我々の態度です。大昔の人が悪かったと述べているのではない。今現在の我々が悪いと述べている。
Posted by 管理人 at 2014年08月10日 23:26

現代を生きる者が現代の基準で過去のヒトをジャッジする態度は誤りであり、過去の基準で評価され、さらにその中に見るべきものが残っていればしかるべく評価するのが適切です。
野口の場合であれば、蛇毒の研究や梅毒スピロヘータを患者の脳から発見したことは現代でも否定されていない重要な業績であるので、評価されているのでしょう。それ以外にも極貧の中から医術開業試験に合格したとかそういったパーソナルヒストリーも重要な要素でしょう。仮に野口が帝大教授の息子で何不自由なく医師になったとかいうパーソナルヒストリーをもっていたらここまで評価されなかったと思います。
その評価をもとに紙幣の肖像や賞の名前として現代のヒトが採用するのは適切です。

小保方氏や故笹井氏は現代を生きている(生きていた)ヒトですから、現代の倫理基準にしたがって現代のヒトが評価するのが適切です。
Posted by とおりがかり at 2014年08月11日 00:11
野口英世を紙幣の肖像画として用いたり、「野口英世アフリカ賞」というものを創設したりすることが恥ずべきことだとすることには同意する。だが、野口英世と比較して笹井氏を擁護することには同意できない。

笹井氏は捏造に直接関わってはいないと考えられる。しかしながら、氏はCDS副センター長として、捏造論文が問題になった時にそれを隠蔽しようとした。その結果、氏の立場が大変悪くなった。それに耐えられず自死を選んだことは科学者として評価できない。氏が自死を選んだことの重要な要因は氏が強い鬱病的体質を持っていたことにあると考えるのが自然である。
Posted by kamokaneyoshi at 2014年08月11日 00:17
> 捏造論文が問題になった時にそれを隠蔽しようとした。

 それは濡れ衣だ、というのが本サイトの立場です。

> 氏が自死を選んだことの重要な要因は氏が強い鬱病的体質を持っていたことにあると考えるのが自然である。

 → http://openblog.meblog.biz/article/23280744.html
Posted by 管理人 at 2014年08月11日 07:38
笹井さんのエリート人生が打たれ弱いとかテレビでコメントしている人もいますが、挫折経験はきっと2年間で京大教授職を捨てた時にあったと思います。
その時は救いの手があった。
今回は四面楚歌。
Posted by 京都の人 at 2014年08月11日 09:46
管理人様

笹井氏の自死に関する私の見解はBLOGOSのエントリーに対するコメントとしてこれまで沢山書いてきました。以下のサイトからいくつかピックアップしてご覧いただければ幸いです:

  http://blogos.com/member/1763/opinion/
Posted by kamokaneyoshi at 2014年08月11日 10:19
創始者である神様の論文も間違いはなかったのでしょうか
Posted by 先生 at 2014年08月11日 11:03
野口英世に関しては捏造なんかよりも梅毒の人体実験の方がよっぽど問題ではないかと。
仮にSTAP論文が笹井氏主導による悪意有りの捏造だとしても、野口に比べたら遥かにマシでしょう。
野口は漫画とかに出てくるようなマッドサイエンティストに近いですよ。
Posted by OKO at 2014年08月11日 12:04
人体実験については下記記事がある。
 → http://karapaia.livedoor.biz/archives/52154124.html

 一部抜粋

 ──

> 1911年、この研究機関で野口英世は進行性麻痺性疾患である梅毒の病原体を発見した。彼は146名の患者にこの病気を感染させた。何人かは子供であったとされる。1913年、患者の脳に進行性の麻痺が確認された時、彼の病原体発見は証明された。ただしその後、病気に感染させられたということで、当時子供だった患者に訴えられている。
Posted by 管理人 at 2014年08月11日 12:25
故笹井氏が京大から理研に移ったのは本人の野心からでしょう。もちろん野心とは悪い意味ではなく、いい意味で、ですよ。
当時韓国のファン・ウソク氏がES細胞のはなばなしい「成果」を続けざまに出していたところで、ES細胞の分野で先を越されないため、大学よりも予算が潤沢で自分の権限も強化される理研への移籍を決断したのでしょう。
彼にとって誤算だったのは、
アメリカでES細胞の倫理的問題がクローズアップされ研究がほぼストップしたこと、日本政府もそれに追従したこと、
ファン氏の「成果」がほぼすべて捏造であったこと、
その一方で山中氏がより倫理的問題の少ないiPS細胞を発見し、特に日本ではiPSに一気にリソースが割かれるようになったこと、
でしょう。彼にとっては大きな挫折だったと思います。
Posted by とおりがかり at 2014年08月11日 14:18
> 彼にとっては大きな挫折だったと思います。

 これを読んでごらん。勘違いがわかるから。
 → http://openblog.meblog.biz/article/23262855.html

 簡単に言えば、笹井さんは iPS 研究のはるか先を行っていた。iPS研究が進めば進むほど、笹井さんのノーベル賞受賞が近づく、という仕組み。
 笹井さんは ES細胞の研究者ではありません。ES細胞を利用する立場です。その成果が花開くのは、iPS研究が進展したときです。
Posted by 管理人 at 2014年08月11日 19:02
ええ、そうなんですけどね、ES細胞っていうのはついてまわるんですよ。ノーベル賞の選考をしているのも所詮は人間。それとサイエンスの業績と同じくらいプロジェクトマネジメントも評価項目になります。たとえば小柴昌俊氏は彼独自のサイエンスの業績というよりはプロジェクトマネジメントに対してノーベル賞が授与されています。

ノーベル賞は先のはなしとしてもね、麻生政権のころiPSに150億円ポーンとついたりしましたよね。この裏では割を食っている研究者がいるわけです。それとCDBのみならず理研全体の問題でもあったのですが、投じられる予算に対するアウトプットが過小に過ぎるということが問題視されはじめていました。一般の方に見える形として噴出したのが蓮舫氏の「2位じゃダメなんですか?」だったわけです。
サイエンスの業績は別にして、CDBほどの組織を維持していけるのか、どうにかしないとという気持ちになったと思います。

ちなみに日本の美しい文化で死者には鞭打ちませんから、今の時点でいろいろ出てくる追悼のことばを真に受けるのはあまり賢くありませんよ。
Posted by とおりがかり at 2014年08月11日 22:51
評価も批判も等身大であるべきですね。
いつの時代でもそれが大きな価値や賞賛を生み出すものだから、科学者の良心と虚栄心・求められる成果の狭間で葛藤があるのでしょう。時代が変わっても根底は同じこと。業績の実態と評価の不一致は過去に遡って極力正しく認識されるべきです。政府主導の神格化には危険な臭いがします。
今後、研究不正や人体実験の横暴を許すとしたら原発と同じく我々の無知が背景にあるのかもです。それと科学者の、と云うよりは人間としての良心・倫理観の欠如。

STAP現象を取り巻く騒動は結果的に科学界の不透明なあれこれをあぶり出してしまいした。マスコミや炎上してしまう我々の不見識も一緒に。根拠不在、あるいは根拠誤認の集団が個人を追い込む構図は哀しすぎます。過去形にしなければなりません。心の再生治療が必要な我々の哀しい実態がここにあります。

黄熱病で倒れた野口博士の現実は意図しない贖罪や精算だったのでしょうか。
最期の場所を職場に選んだ笹井さんの哀しい選択もメッセージを抱いた殉職でありましょうか。どこに問題があったのか。何が哀しいことなのか。誰も責めることなく理解することを願われているでしょう。
Posted by 小平の義太郎 at 2014年08月11日 23:24
最初の新しい発見に錯覚や誤りがくっ付いているのは当たり前。(武田邦彦先生がいつも言っている)
野口英世も論文出した時は本当に発見したと思っていた。のちに自分でも怪しいと思うようになり、名誉挽回でアフリカに研究に出かけて亡くなった。
STAP研究だって錯誤や誤りはいっぱいある。真実はいづれ明らかになるので、科学者は捏造する意味はない。
Posted by jimジー at 2016年06月04日 14:05
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